マツダ・アテンザワゴンXD Lパッケージ(4WD/6MT)
生真面目なパートナー 2015.02.25 試乗記 2014年の大幅改良により、「マツダ・アテンザ」にMT仕様のディーゼル4WD車が登場。日本で買えるクルマの中でも群を抜いてマニアックな一台の魅力に触れた。日本では屈指のマニアックさ
ワゴンの、ディーゼルの、マニュアルの、ヨンク。ちょっとマニアックなスペックの国産車が登場した。2014年11月の大幅改良と同時に4WDが追加された結果、マツダ・アテンザにラインナップされた選択肢だ。
なにをもってマニアックと言うかは、意見の分かれるところだが、2年間に約8500台しか作られず、日本では200台ほどしか販売されなかったクルマを所有する自分はマニアックだと言われるので、希少性が関係していることは間違いないだろう。そこへ行くと今回の取材車は合格だ。
SUVやクロスオーバーの人気に押されて、今や国産ワゴンは「トヨタ・プリウスα」と双子車の「ダイハツ・メビウス」を含めてもたった8車種。一方、ディーゼルの乗用車はマツダと三菱の6車種のみ。つまりディーゼルワゴンという時点でアテンザのみだ。4WDワゴンはほかに「スバル・レヴォーグ」があるけれど、MTのワゴンもまたアテンザだけとなる。
輸入車にも目を向ければ、4WDワゴンは数車種あるものの、ディーゼルワゴンは「BMW 3/5シリーズ」と「アルピナD3」「メルセデス・ベンツEクラス」、MTのワゴンは「MINIクラブマン」と「ルノー・メガーヌ」だけだ。
ヨーロッパに行けば、例えば3シリーズツーリングにディーゼル・MT・4WDという仕様は存在するけれど、それが輸入されないのは需要が少ないからで、あえて車種を用意したマツダはやっぱりマニアックな会社なのかもしれない。
ただしアテンザは高級車ではない。試乗した「XD Lパッケージ」は最上級グレードで、400万円近くするものの、ベースグレードの「XD」なら同じMT・4WDでも350万円を切る。限られた顧客向けの商品ではない。
しかも次ページ以降に記したように、大幅改良を実施したアテンザは従来以上に、万人に薦めたくなる良車になった。だからこそマニアックな設定が目立つのだ。
期待に応えるための改良
イメージカラーのソウルレッドをまとったボディーを見ると、グラマラスなスタイリングに対してあっさり風味だった顔つきが、グリルをなぞってヘッドランプに伸びるシグネチャーウイングが強調されるなどして、釣り合いが取れたような気がした。輸入車っぽいメリハリを手に入れたという感じだ。
それ以上に好感を抱いたのはインテリア。たった2年でインストゥルメントパネルを一新してしまったからだ。たしかに旧型のインパネは色気のあるエクステリアに対して実直すぎた。それが一転、走りの良さをアピールするコックピット感覚と、マツダのフラッグシップにふさわしい広がりを絶妙に両立させている。パーキングブレーキが電動になって、センターコンソールがスッキリしたこともクオリティーアップに貢献している。
現行アテンザで驚いたのは、3シリーズなどの輸入車と比較して買うユーザーが半分を占めたことだと、開発主査が語っていた。作りを認めてくれたからこそ、気持ちに応えなければいけない。それがたった2年での大幅変更につながったという。
今回のXD Lパッケージはレザーシートが標準装備。ファブリックに比べて張りの強い本革ながら、座り心地はしっとりしている。ペタッとした着座感だった旧型からの進歩が確認できた。後席も同様。ただこちらの居住性を重視する人は、ホイールベースが長いセダンを考えたほうがいいかもしれない。
僕は昨年だけでもマツダ以外のディーゼルMTに数台乗った経験がある。共通して言えるのは、低回転で粘り強い大トルクを発生するおかげで、ガソリン車よりシフトの回数が少なくて済むことだ。つまりマニュアルに向いている。とりわけアテンザは、イージードライブのレベルで言えば、話題のデミオ・ディーゼルよりも上だった。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
乗り倒してこそ光るクルマ
デミオの1.5リッターはシングルターボゆえ、MTではトルクの立ち上がりがやや唐突に訪れるのに対し、アテンザの2.2リッターはツインターボで排気量も大きい分、アイドリングのすぐ上からなだらかに力を盛り上げていくので、より運転しやすい。
シフトレバーや3つのペダルの位置関係は申し分なし。こういう部分へのこだわりも、MTのほうが実感しやすい。100km/h走行時のエンジン回転数は1750rpmぐらいなので、6速でクルーズコントロールを入れても大丈夫。登り坂に差し掛かったら、クラッチペダルを踏んでギアを落とせば、クルーズコントロールは継続する。
今回の改良では、安全装備の充実もトピックだ。そのうちマツダ初となる「レーンキープ・アシスト・システム(LAS)」を試した。操舵(そうだ)への反力が弱めなのは、違和感を抱かせないという配慮かもしれないが、直進付近に抵抗感があることは気になった。装置を切ると違和感は消える。オン/オフで操舵フィールに差が出ないのが理想だろう。
現行アテンザは設計当初、4WDは想定外だったので、今回センタートンネルの補強をゼロから起こすなど、大改造を実施したそうだ。そのかいあって、駆動系の騒音や振動が気になることはなかった。乗り心地も以前は気になった細かい上下動が巧妙に抑え込まれ、しなやかになっている。ハンドリングはディーゼルエンジンを搭載するノーズの重さが無視できるレベルになったうえに、コーナー脱出時にアクセルを踏み込むと後輪にも相応のトルクを配分してくれるので、積極的に曲がっていけることが確認できた。
東京に住む人なら、FFで十分かもしれない。でも故郷が雪国だったり、ウインタースポーツが趣味だったりする人には、4WDが刺さるはず。目的地までの距離が長ければ、ディーゼルの経済性や扱いやすさが重宝する。そこにドライビングプレジャーを求めるならMTは適役だ。
そんなシーンで走らせるとき、このアテンザワゴンは最良のパートナーになってくれるだろう。ウケ狙いで転がすクルマではない。マツダらしく、泥くさく乗るのが似合う。 存在はマニアックだけれど、中身は真面目だ。
(文=森口将之/写真=向後一宏)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
マツダ・アテンザワゴンXD Lパッケージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4805×1840×1480mm
ホイールベース:2750mm
車重:1590kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段MT
最高出力:175ps(129kW)/4500rpm
最大トルク:42.8kgm(420Nm)/2000rpm
タイヤ:(前)225/45R19 92W/(後)225/45R19 92W(ブリヂストン・トランザT001)
燃費:20.4km/リッター(JC08モード)
価格:396万9000円/テスト車=413万6400円
オプション装備:ボディーカラー<ソウルレッドプレミアムメタリック>(5万4000円)/電動スライドガラスサンルーフ(チルトアップ機構付き)(8万6400円)/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー(フルセグ)(2万7000円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:2410km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(5)/高速道路(5)/山岳路(0)
テスト距離:307.9km
使用燃料:22.0リッター
参考燃費:14.0km/リッター(満タン法)/14.9km/リッター(車載燃費計計測値)
拡大 |

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
-
日産リーフAUTECH B7(FWD)【試乗記】 2026.5.23 新型「日産リーフ」にもおなじみの「AUTECH」が仲間入り。デザインや質感などの上質さを目指した大人のカスタマイズモデルだが、走りの質感がアップしたと評判の新型リーフとは、さぞ相性がいいに違いない。300km余りをドライブした。
-
メルセデス・ベンツSクラス【海外試乗記】 2026.5.22 「メルセデス・ベンツSクラス」のマイナーチェンジモデルが登場。メルセデスの旗艦として、また高級セダンのお手本として世界が注目する存在だけに、進化のレベルが気になるところだ。本国ドイツでドライブした印象をリポートする。
-
マツダCX-5 L(4WD/6AT)/マツダCX-5 G(FF/6AT)【試乗記】 2026.5.21 日本でも、世界でも、今やマツダの主力車種となっている「CX-5」がフルモデルチェンジ。3代目となる新型は、過去のモデルとはどう違い、ライバルに対してどのような魅力を備えているのか? 次世代のマツダの在り方を示すミドルクラスSUVに試乗した。
-
DS N°4エトワール ハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】 2026.5.20 DSオートモビルから「DS N°4」が登場。そのいでたちは前衛的でありながらきらびやかであり、さすが「パリのアバンギャルド」を自任するブランドというほかない。あいにくの空模様ではあったものの、350km余りをドライブした。
-
アルファ・ロメオ・トナーレ イブリダ ヴェローチェ(FF/7AT)【試乗記】 2026.5.19 2026年3月に大幅改良モデルが発表され、ほどなくメディア試乗会も開催された「アルファ・ロメオ・トナーレ」。今回はこれをあらためて借り出し、一般道から高速道路まで“普通に”走らせてみた。進化を遂げたアルファの中核SUVの仕上がりやいかに?
-
NEW
車載カメラが普及した今、“デジタルサイドミラー”が主流にならないのはなぜか?
2026.5.26あの多田哲哉のクルマQ&Aサイドミラーの役割をカメラが担う“デジタルサイドミラー”は、レクサスやアウディなどで採用例があったものの、普及するには至っていない。その決定的な理由はなにか? 元トヨタの車両開発者、多田哲哉さんが語る。 -
NEW
マツダ スピリット レーシング・ロードスター12R(FR/6MT)【試乗記】
2026.5.26試乗記販売台数わずか200台の限定車「マツダ スピリット レーシング・ロードスター12R」に試乗。スーパー耐久レース参戦をはじめとするマツダのモータースポーツ活動を担うサブブランドが生み出した初の市販コンプリートカーは、いかなる走りをみせるのか。 -
買った後にもクルマが進化! トヨタ&GAZOO Racingが提供するアップデートサービスのねらいと意義
2026.5.25デイリーコラムGAZOO Racingが「トヨタGRヤリス/GRカローラ」の新しいソフトウエアアップデートを発表! 競技にも使える高度な機能が、スマートフォンのアプリで調整できるようになった。その詳細な中身と、GRがオーナーに提供する“遊びの機会”の意義を解説する。 -
第336回:やっぱり絶交!
2026.5.25カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。夜の首都高に200台の台数限定で販売される「マツダ スピリット レーシング・ロードスター12R」で出撃した。手作業で組まれた2リッター直4エンジンを搭載するマツダ入魂のスポーツモデルに、カーマニアは何を感じた? -
アウディQ6スポーツバックe-tronクワトロ アドバンスト(4WD)【試乗記】
2026.5.25試乗記アウディの電気自動車(BEV)「Q6スポーツバックe-tron」で、東京・渋谷と静岡・裾野を往復。雨のなかでエアコンを効かせ、高速や峠道を遠慮なく走らせるハードユースに、最新のBEVはどう応えてくれたのか? そこで感じた“本音”をリポートする。 -
ホンダ・プレリュード(後編)
2026.5.24ミスター・スバル 辰己英治の目利き軟派なクーペはアリやナシや。ミスター・スバルこと辰己英治さんが新型「ホンダ・プレリュード」に試乗。「シビック タイプR」とは趣を異にするシャシーに触れ、話題の「S+シフト」を試し、これからのスポーツクーペ像に思いをはせた。
















