メルセデス・ベンツGLE400 4MATICクーペ(4WD/9AT)/メルセデスAMG GLE63 4MATICクーペ(4WD/7AT)/メルセデス・ベンツGLE350d 4MATIC(4WD/9AT)
違いはフットワークにあり 2015.07.22 試乗記 「メルセデス・ベンツMクラス」がビッグマイナーチェンジを受けて「GLE」に進化。併せてラインナップに「GLEクーペ」が加わった。布陣が強化されたメルセデスの新しいミドルクラスSUVの実力は? オーストリア・キッツビュールで行われた国際試乗会からの第一報。今年はSUVの強化期間
Cセグメント系の「GLA」をエントリーに、「GLK」、「M」そして「GL」と、他社に負けじとSUVモデルを豊富にラインナップするメルセデス。が、同じドイツのライバルたちが数字に沿って整然とそれを並べているのに対すれば、確かに散漫な印象は拭えない。それもあってか、日本市場においては「メルセデス=SUV」というイメージは他メーカーに比べると低く、認知度の向上が課題のひとつとなっているという。
それらの事柄を踏まえてか、今後、メルセデスのSUVはタイプを示す「GL」と、クラスや車格を示す「A・C・E・S」の組み合わせで車名が記されるようになる。つまりGLKの後継車種は「GLC」、GLの後継車種は「GLS」、そしてMクラスのマイナーチェンジとなるこのモデルが「GLE」というわけだ。
GLCは先の上海モーターショーで既にアウトラインはお披露目済み。そしてGLSは2015年内の発表が公言されている。今ごろかよと言われそうだが、気づけば今年はメルセデスにとって、SUV強化期間ということなのかもしれない。
そして、その強化期間をことさら印象づけることになるだろう、GLEの登場に合わせてデビューした新たなモデルが「GLEクーペ」である。これすなわち、BMWでいえば「X5」と「X6」の関係と同じじゃんというツッコミにもメルセデスの側は動じない。開発担当はシャシーダイナミクスにおいて、GLEとは別のキャラクターに仕立ててあるとその商品力に自信をのぞかせる。とはいえライバルの動向もみるに販売台数が望めない……ということで、日本市場への導入が決まったのはつい最近のことらしい。
堂々たるスリーサイズ
ノリノリの日本法人をして導入を躊躇(ちゅうちょ)させたのは、GLEクーペのサイズにも理由があったのだろう。ざっと全長4900mmの全幅2000mm。GLEクーペの寸法はX6よりも若干大きく、メルセデスらしい最小回転半径を確保しているとはいえ、さすがに都市部では気を遣うことになりそうだ。
対して、全高は1730mmと、GLEに対して200mmほど低い。ロー&ワイドとクーペの常套(じょうとう)を当てはめた意匠なわけだが、果たして居住性や積載力がメタメタになっているわけではなく、181cmの筆者が後席に座っても、ミニマムながら頭上空間も確保されている。荷室も天地の容量は削(そ)がれるが、奥行きはまずまず確保されているという印象だ。もちろん、これがGLEとなれば共にまったく問題のない空間が確保される。
現状、GLEクーペに搭載されるエンジンは3種類。「350d」は現行「ML350ブルーテック」と同様、258psを生み出すV6・3リッター直噴コモンレールターボディーゼルが搭載される。次いで「400」に搭載されるのは新世代のV6・3リッターガソリンの直噴ツインターボで、最高出力は333ps、最大トルクは48.9kgm(480Nm)。
そしてメルセデスAMGモデルに搭載されるのが、AMGの主力ユニットとなるV8・5.5リッター直噴ツインターボだ。こちらはチューニングの違いで標準の「63 クーペ」が557ps、「63 S クーペ」が585psとなる。4MATICのドライブトレインは標準モデルが50:50のフルタイム式であるのに対して、メルセデスAMGモデルは40:60と若干旋回側を意識した設定となり、組み合わせられるトランスミッションもAMGスピードシフトPLUSの7Gトロニックだ。対して標準モデルは9Gトロニックが採用されている。
GLEにはこれらに加えて直4・2.2リッターディーゼルの「250d」や、満充電時最大30kmのEV走行を可能とするプラグインハイブリッド車の「500e」など、パワートレインのバリエーションは広がるが、日本仕様に関してはどういったグレードが用意されるかは現在検討中とのことだ。ただし両モデル共に、350dと400、そしてAMG系63の導入は確実だろうと予想される。蛇足ながら、メルセデスでは今後車名の語尾に、パワートレインの種別を示す小文字が据えられるようになるそうだ。
カイエンも射程範囲内
乗り味におけるGLEとGLEクーペの決定的な差は、開発担当者の仰せの通り、ハンドリングにみてとれる。ワインディングロードでの振る舞いはよほどのタイトターンでもなければ外にアゴを張り出そうともせず、スラスラとつづら折れを切り返す。ともあれ前述の寸法を知ればなおのこと、とてもそんな巨体を動かしているとは感じさせないほどターンがニュートラルだ。もちろんその背後では、アクティブなロール制御を筆頭に電子デバイスがしっかり働いているわけだが、それをそうと感じさせないナチュラルさがいかにもメルセデスらしいところだろうか。
対すればGLEの側は、限界域まで挙動は比例的に推移し、操舵(そうだ)応答性もしっかり確保されるものの、動きそのものはちょっとおっとりしている。この両者の位置づけを他モデルになぞらえれば「Eクラス」と「CLSクラス」ということになるだろうが、走りの性格はそれ以上にはっきりと差別化がなされており、GLEクーペの側は、X6はもちろん、「ポルシェ・カイエン」や「レンジローバー スポーツ」あたりのダイナミクスも射程に捉えているといっても過言ではない。
総合力に優れるGLE
AMGモデルの63になると、ここに強烈な動力性能も加わるわけで、その浮世離れした過剰感は一層高まるわけだが、そんなモデルですら長所として挙げられるのは乗り心地の良さだ。試乗車はオプションの22インチ、しかも後輪側は325幅とほとんどスーパーカー級のタイヤを装着していたが、乗り心地的には轍(わだち)路面で若干、左右の揺すりを感じる程度で、上下動やきつい突き上げの角はしっかりと丸められている。標準モデルの乗り心地にいたってはGLEと大差を感じないほどにフラットで滑らかだ。
つまり、オンロードユースがメインでサイズを気にせず、後席居住性や積載力に拘(こだわ)らないのであれば、GLEクーペはGLEに対しても比較検討するに値するモデルということになる。ではGLEのメリットは何なのかといえば、悪路走破性や耐久力も含めたSUVとしてのトータルバランスということになるだろう。それはメルセデスの側も言明しており、総合的なデュラビリティー、そしてコンフォートはGLEの側にはっきりとアドバンテージをもたせているそうだ。GLEの試乗では悪路を試す機会もあったが、その走破力をイージーに引き出せるだけでなく、モーグルやがれ場のような環境ですら、乗り心地に長(た)けていることに驚かされた。
ちなみにGLEの日本導入は2015年内に、そしてGLEクーペはやや遅れて来春の上陸が予定されている。
(文=渡辺敏史/写真=ダイムラー)
拡大 |
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツGLE400 4MATICクーペ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4900×2003×1731mm
ホイールベース:2915mm
車重:2185kg(DIN)
駆動方式:4WD
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ ツインターボ
トランスミッション:9段AT
最高出力:333ps(245kW)/5250-6000rpm
最大トルク:48.9kgm(480Nm)/5500rpm
タイヤ:(前)275/50R20/(後)275/50R20
燃費:8.7-9.0リッター/100km(約11.1-11.5km/リッター、NEDC複合サイクル)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
※数値は欧州仕様のもの。
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
メルセデスAMG GLE63 4MATICクーペ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4918×2003×1720mm
ホイールベース:2915mm
車重:2275kg(EC)
駆動方式:4WD
エンジン:5.5リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:557ps(410kW)/5750rpm
最大トルク:71.4kgm(700Nm)/5500rpm
タイヤ:(前)285/45R21/(後)325/40R21
燃費:11.9リッター/100km(約8.4km/リッター、NEDC複合サイクル)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
※数値は欧州仕様のもの。
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
メルセデス・ベンツGLE350d 4MATIC
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4819×1935×1796mm
ホイールベース:2915mm
車重:2175kg(DIN)
駆動方式:4WD
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:9段AT
最高出力:258ps(190kW)/3600rpm
最大トルク:63.2kgm(620Nm)/1600-2400rpm
タイヤ:(前)235/65R17/(後)235/65R17
燃費:6.4-6.6リッター/100km(約15.2-15.6km/リッター、NEDC複合サイクル)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
※数値は欧州仕様のもの。
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD)【試乗記】 2026.5.28 前衛を身上とするフランスのラグジュアリーブランド、DSオートモビルから、新たなハイエンドモデル「DS N°8(ナンバーエイト)」が登場。当代屈指の性能を誇る電気自動車であり、かの地では大統領専用車にも選ばれる一台の、独創の魅力に触れた。
-
メルセデスAMG GLC53 4MATIC+(4WD/9AT)【海外試乗記】 2026.5.27 「メルセデス・ベンツGLC」にスポーティーな「メルセデスAMG GLC53 4MATIC+」が仲間入り。「43」と「63」の中間、AMGとしては松竹梅の竹にあたるモデルだが、今後はそのポジションの重要性がさらに増すことになるという。本国ドイツでドライブした印象をリポートする。
-
NEW
どうしてピアノブラックの内装材は多用されるのか?
2026.6.2あの多田哲哉のクルマQ&Aよく目にするピアノブラックの内装材は、「キズや脂汚れが目立つ」などネガティブな評価もしばしば。それでも多用されているのはなぜか? 車両開発者の多田哲哉さんに聞いてみた。 -
NEW
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】
2026.6.2試乗記かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。 -
レストモッドがイメージ 特別なオニツカタイガーの魅力に迫る
2026.6.1オニツカタイガーの新作ドライビングシューズを知る<AD>オニツカタイガーが、“レストモッド”と呼ばれるクルマのレストア&カスタム手法に着想を得たドライビングシューズを発表。4タイプ製作された、「MEXICO 66 DRIVING」のスペシャルバージョンの魅力に迫る。 -
新生アルピナは成功するか? その将来とBMWとの関係について考える
2026.6.1デイリーコラム具体的なデザインスタディーも公開され、いよいよ市場展開が見えてきた新生アルピナ。将来的な成功の“確度”やいかに? BMWによる新たなアルピナ像について、両ブランドに詳しい西川 淳が詳しく解説する。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】
2026.6.1試乗記「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。 -
日産リーフB7 G(前編)
2026.5.31思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「日産リーフ」に試乗。初代のデビューから15年余りを経て生まれた3代目はスタイリングも中身も刷新。苦境にある日産を立て直す重責を担っている。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。








































