第324回:次世代技術の体感イベント「2015 Honda Meeting」(後編)
燃料電池車、自動運転……ホンダの描く近未来のモビリティーをリポート
2015.11.05
エディターから一言
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本田技術研究所の栃木プルービンググラウンドで開催された、ホンダの次世代技術を報道関係者向けに公開するイベント「2015 Honda Meeting」をリポート。後編では新型の燃料電池車や、2020年の実用化に向けて研究を進めている自動運転の技術などを報告する。
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5人乗りを実現した新型FCV
新開発の燃料電池車(FCV)は、2008年にホンダが発表した「FCXクラリティ」とは設計思想をガラリと変えたのが目新しい。FCXクラリティは、センタートンネルに燃料電池(FC)スタックを縦置きにした設計が特徴だった。これに対して新型FCVは、FCスタックの出力は100kW以上と、100kWのクラリティ並みを確保しながら、スタックの容積を約33%小型化し、モーターや制御ユニットと一体化して前部のエンジンルーム内に収めている。
従来とは車両レイアウトを変えた理由としてホンダは二つの理由を挙げる。一つは、室内スペースの拡大だ。クラリティはFCスタックをセンタートンネルに収めているためトンネルの断面積が大きくなり、結果として後部座席に2人しか座れず、乗車定員は4人となっていた。ちなみに、
もう一つの理由は、多車種展開がしやすいことだ。新開発のFCとモーター、制御ユニットを一体化したパワートレインは、全体としての寸法をV型6気筒エンジン並みに抑えている。このため、V6エンジンを搭載している車種には、理屈としては搭載できることになる。もちろん、実際にFCVとするためには、ほかに水素タンクやバッテリーも搭載することが前提になるが。
33%小型化した新開発のFCスタックの出力密度(単位容積あたりの出力)は、トヨタ・ミライとまったく同一の3.1kW/リッター。これに対し、従来型のスタックは2kW/リッターだった。出力密度を1.5倍にできた理由は二つ。一つはスタックを構成するセルの厚みを約20%薄くしたこと。そしてもう一つは、セルの厚みを薄くしたにもかかわらず、セルの単位面積当たりの発電量を増やしたことにある。まだ詳細は明らかにされていないが、電解質膜の特性向上が寄与していると考えられる。
PHEVのEV走行距離を3倍以上に
次世代プラグインハイブリッド車(PHEV)に関する発表では、その技術を搭載した試作車も公開された。外観は現行の「アコード プラグインハイブリッド」だが、大きく異なる点が二つある。一つが、電池の性能向上によって大幅に伸ばされたEV走行距離(電池のみで走行可能な距離)、もう一つが大幅に改善されたパッケージングである。まずEV走行距離では、現行車は米国の測定モードで13マイル(約21km)となっているが、次世代PHEVではこれが3倍以上となる計画だ。これによって、米国のユーザーの平均的な使い方のほぼ9割をEV走行でカバーできるようになるという。
国内のJC08モードでのEV走行距離は37.8kmだから、これが3倍以上に伸びれば、EV走行距離は100km以上になる。国内のユーザーにとっても、ほとんどの使い方をEV走行でまかなえるようになるだろう。ただし、EV走行距離を3倍以上にするといっても、バッテリーの容量を現在の6.7kWhから3倍にするわけではないようだ。これは、電池の性能向上でより放電深度の深いところまで使えるようにする(より蓄電量がゼロに近い状態まで電気が使えるようにする)ことに加え、電池の容量が大きくなることで電流の受け入れ性が向上し、回生時のエネルギー回収の効率が上がることによるとのことだった。
もう一つのパッケージングの改善だが、これは新型FCVのプラットフォームを次世代PHEVにも流用することで達成する。現行車は電池を後席の背後に搭載しているので、トランクルームが狭くなっていた。これに対して、次世代PHEVでは前席下と後席下、および後席足元にバッテリーを搭載することで、トランクスルーが可能な広い荷室が確保できるという。後席下には現行車では燃料タンクが搭載されているが、次世代PHEVではこれを後輪の間に移動する。新型FCVは、左右の後輪の間に高圧水素タンクを搭載しており、これを可能にするためにコンパクトなマルチリンクサスペンションを採用している。次世代PHEVではこのタンクの代わりに燃料タンクを搭載するわけだ。
2020年の実用化目指す自動運転車
今回のイベントではパワートレイン関連の発表が多かったが、安全技術関連では、2020年に高速道路での自動運転技術の実用化を目指すことを初めて発表した。同社が2020年に実用化を目指す自動運転技術は、高速道路限定で、車線変更を含む運転操作を自動化するというもの。2015年10月27~29日に開催された、自動運転に関する国際シンポジウム「第2回 SIP-adus Workshop 2015」にともない、東京・台場地域の高速道路では自動運転のデモ走行が実施された。
同社の自動運転車のシステムは「外界認識」「行動計画」「車両制御」の三つの要素から成立しているという。外界認識では、ステレオカメラ、長距離用ミリ波レーダー、中距離用ミリ波レーダー、レーザーレーダー(同社はレンジファインダーと呼ぶ)などの各種センサーと、GPS(全地球測位システム)受信機を採用。GPS衛星からの位置情報を基に現在位置を測定し、レーダーやカメラによって周囲の白線や車線の認識、およびガードレールやほかの車両、歩行者、自転車などといった障害物の検知を行う。
こうした自車両の位置の測定と、周囲の障害物の動きの予測をもとに、次に自車両がどこに行くかを決定するのが「行動計画」である。この行動計画においては、ほかの車両や障害物と衝突しないという安全性を、乗員にとっての快適性と両立することが求められる。そして最後の「車両制御」では、行動計画に基づいて決めた「目標ライン」(目標とする走行軌跡)にそって車両が走行するようにエンジンやステアリング、ブレーキを操作し、もし何らかの外乱によって目標ラインからずれた場合には、それを補正することが求められる。
今回のホンダミーティングでは、この「車両制御」のデモを体験することができた。自動走行機能を搭載した「アコード」を、急なカーブのある周回コースで自動走行させるというものだ。タイヤからスキール音が発生するほどの、かなりの速度で走行するもので、一般的なドライバーよりもドライビングスキルは上だろうと思わせる運転ぶりだった。
このデモ走行自体は、ホンダのテストドライバーがあらかじめこの周回コースを走行したパターンを車両によって再現させているものだが、実際の走行ではどうしても誤差によるズレが生じる。この位置誤差を、精度数cmというDGPS(通常よりも高精度なGPS)で検知し、目標ラインに戻すように修正する車両制御機能を搭載している。
(文=鶴原吉郎<オートインサイト>/写真=webCG、本田技研工業)

鶴原 吉郎
オートインサイト代表/技術ジャーナリスト・編集者。自動車メーカーへの就職を目指して某私立大学工学部機械学科に入学したものの、尊敬する担当教授の「自動車メーカーなんかやめとけ」の一言であっさり方向を転換し、技術系出版社に入社。30年近く技術専門誌の記者として経験を積んで独立。現在はフリーの技術ジャーナリストとして活動している。クルマのミライに思いをはせつつも、好きなのは「フィアット126」「フィアット・パンダ(初代)」「メッサーシュミットKR200」「BMWイセッタ」「スバル360」「マツダR360クーペ」など、もっぱら古い小さなクルマ。
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