第129回:Eクラスがさらに安全に 〜新設定された「レーダーセーフティパッケージ」を体験する
2011.11.17 エディターから一言第129回:Eクラスがさらに安全に〜新設定された「レーダーセーフティパッケージ」を体験する
5つの“とりで”
2011年11月14日に発表された「メルセデス・ベンツEクラス」のマイナーチェンジモデルに、「レーダーセーフティパッケージ」が導入された。この装備は、走行中に車両の前後左右に向けてレーダー波を飛ばして周囲の車両や障害物を検知し、必要に応じて自動的にブレーキを作動させるなどして衝突を回避、あるいは回避できずとも、衝突時の衝撃を軽減するための予防安全システムだ。
まず大前提として「レーダーセーフティパッケージ」には以下の5つの機能が備わる。そしてこれらが単独、あるいは組み合わせられて機能し、危険を回避するようになっている。
・PRE-SAFEブレーキ
・BAS(ブレーキ・アシスト・システム)プラス
・ディストロニック・プラス
・アクティブブラインドスポットアシスト
・アクティブレーンキーピングアシスト
走行中にドライバーが前方の車両や障害物に気づかず接近すると、まず音とメーター表示で警告する(第1段階)。それでもドライバーが反応しなければ、自動的に40%の制動力でブレーキがかかると同時に、シートベルトが巻き上げられる。また助手席のシートポジションが、シートベルトやエアバッグの効果が最大となるよう修正される(第2段階)。
意識のあるドライバーなら、この段階で何らかの異常事態を把握してブレーキをかけるだろうが、さらにドライバーが何も反応しない、あるいはできない場合、最大制動力のブレーキが自動的にかかり、運がよければ衝突を回避でき、衝突してしまっても衝撃が軽減され、不幸中の幸いということになる(第3段階)。
これが「PRE-SAFEブレーキ」だ。どこかの段階でドライバーがブレーキ操作をした場合、(ドライバーの踏力に関係なく)最大の制動力となるようアシストする「BASプラス」も組み合わせられる。
車両前方の検知にはフロントグリル内に設置された77GHz帯ミリ波レーダーが用いられるのだが、このレーダーはクルーズコントロールを使っての走行中、前方車両との間隔を一定に保ち、前方車両が完全停止するとこちらも完全停止する「ディストロニック・プラス」にも使用される。
主眼は警告にある
同様の機能を持つシステムとしては、ボルボの「シティ・セーフティ」やスバルの「アイサイト」などがある。ボルボは車両検知にレーザーを用い、スバルはカメラによる画像認識を用いる。作動範囲はそれぞれ異なり、ボルボは30km/h以下、スバルは100km/h以下で作動するのに対し、メルセデスは200km/h以下で作動する。
こうしたアプローチの違いはコスト、国ごとの法規、コンセプトなどによるが、一般的にレーダーは天候の変化に強く、トンネル出口などの強い逆光時にも作動するのに対し、カメラは人など金属以外も検知しやすいなどの違いがあるとされる。
なおPRE-SAFEブレーキを実際に体験すると、40%の制動力がかかる第2段階は、感覚としては車両が対象に非常に近づいてから、続いて最大制動力がかかる第3段階は、本当に目前に迫ってからのため、ドライバーが普段通り意識しているとかなりの緊張感を伴う。メルセデスのブレーキ性能への自信の表れか、他社の同様のシステムよりもブレーキ介入は遅めだ。
もちろんこのシステムは自動運転を目的とするものではなく、あくまでも運転支援システムのため、PRE-SAFEブレーキが作動中にドライバーがステアリングを操作した場合、システムに「自分で回避を試みている」と判断され、キャンセルされる。
つまりドライバーがとっちらかっているのか、コントロールしているのかを車両が判断するわけだが、仮にとっちらかっていても、思わずステアリングを少しくらい切ってしまうこともあるだろうから、この辺のさじ加減がこれらのシステムの難しいところだ。現状、このシステムは追突に関して、もうダメだと思ったらドライバーは何もせず、クルマに任せたほうが被害を軽減できる可能性もある。果たして、それができるかどうか――。
とはいうものの、当然ながらPRE-SAFEブレーキの主眼は最終段階である自動フルブレーキではなく、そこに至る前の何段階かの警告にあり、一度でも目前にクルマが迫りハッとした経験のあるドライバーなら、そのありがたみを理解できるはずだ。
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斜め後方もしっかり感知
また、リアバンパー左右に設置された24GHz帯ウルトラワイドレーダーによって、車両の斜め後方のミラーで視認しづらいゾーンの車両を検知する「アクティブブラインドスポットアシスト」も備わる。30km/h以上で走行中に斜め後方に車両を検知すると、検知した側のドアミラーに内蔵された三角のインジケーターが点灯する。
その状態でドライバーが車線変更しようとしてウインカーを出すと、警告音とともにインジケーターが点滅する。それでもドライバーが車線変更を始めて対象の車両と接近すると、最終手段として(対象車両の)反対側の車輪のみに自動的にブレーキをかけ、対象車両との距離を保とうする。
このほか、フロントガラスに設置されたカメラを使って車線逸脱時にステアリングホイールを微振動させて注意喚起し、車線をはみ出したら反対側のブレーキだけを作動させて車両を中央に戻す「アクティブレーンキーピングアシスト」機能も備わる。
これらレーダーセーフティパッケージは、2005年に実用化されて以来、欧州、北米向けメルセデス・ベンツ各モデルに採用されているが、使用するレーダーの周波数が、国内の電波望遠鏡などが使う24GHz帯と重なるため、関係省庁との調整に時間を要し、日本では今年まで認可が下りなかった。現在でも、長野県の野辺山付近など、全国15カ所の周囲1〜20km圏内ではシステムがキャンセルされ、車両にその旨が表示される。
同パッケージはセダン、ワゴンともに「E350ブルーエフィシェンシー」、「E550ブルーエフィシェンシー」に標準装備され、その他のEクラス各モデルには19万円のオプションとして設定される。
(文=塩見智/写真=高橋信宏)

塩見 智
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