ルノー・ルーテシア ルノースポール トロフィー(FF/6AT)
時代にそった進化を感じる 2016.02.03 試乗記 ルノーのモータースポーツ部門が手がけた「ルーテシア ルノースポール(R.S.)」シリーズの中でも、最もスポーティーな「トロフィー」に試乗。トラディショナルなスポーツモデルというイメージだけでは語りきれない、最新モデルの走りをリポートする。サーキット育ちの特別なR.S.
ルノーのハイパフォーマンスブランド、ルノースポール(R.S.)における「トロフィー」の称号は、かつてはサーキット専用だった。「スピダー」や「ルーテシア(クリオ)R.S. V6」などのミドシップ2シーターは、まずワンメイクレース専用車が登場し、その後公道向けが発表された。両車を区別すべく、サーキット仕様をトロフィーと呼んでいたのだ。これらのクルマを使用したレースの名称にも、トロフィーを冠していた。
その名前が公道向け車種に初めて与えられたのは、2005年にわが国でも限定販売された「メガーヌR.S.トロフィー」だったと記憶している。ステアリングを切るとノーズが瞬時に向きを変え、アクセルを閉じると後輪は簡単にスライドし、ドリルドディスクローターを採用したブレーキは素晴らしく利く代わりに盛大な摺動(しゅうどう)音を発するなど、スタンダードの「メガーヌR.S.」との違いに驚いた。
トロフィーは現行メガーヌR.S.にも、やはり限定販売の形で設定されたことがある。このときは「トロフィー」「トロフィーS」「トロフィーR」の3つの仕様が用意されていた。一方、ルーテシアの方は本国名のクリオを含めても、これまでトロフィーが設定されたのは最初に紹介したミドシップのV6のみだった。しかし2015年、そのルール(?)が破られた。ルーテシアR.S.にもトロフィーが設定されたのだ。
外見は控えめに、中身は大幅に改良
ルーテシアR.S.トロフィーがデビューしたのは2015年春のジュネーブショー。現地での名称は「クリオR.S.220トロフィー」となっており、その名のとおり1.6リッター直列4気筒ターボエンジンの最高出力を200psから220psにアップし、最大トルクも24.5kgmから26.5kgmに引き上げてある。
R.S.ではシャシー カップとシャシー スポールの2つのチューニングがあった足まわりについては、シャシー カップに対してステアリングギア比をクイック化し、スプリングレートはそのままにダンパー減衰力を約40%高め、車高をフロントで20mm、リアで10mmと、前のめりにローダウンしている。日本ではシャシー カップに代わってこのシャシー トロフィーが導入される。つまりトロフィー初のカタログモデルだ。
他のルーテシアR.S.よりやや低くうずくまるそのボディーには、フロントのエアインテーク内ブレードやサイドシルのモールに赤い「TROPHY」のロゴが入る。分かる人には分かる、粋な仕立てだ。内装はシャシー カップのそれとほぼ同じで、前席がバケットタイプになっていたりはしていない。サポートこそタイトだけれど、座り心地はガチガチではなく、衝撃を和らげる役目も持っている。
以前の取材で「R.S.のシートはサスペンションの一部として開発している」と聞いていたが、その伝統が生きているようだ。5ドア5人乗りの2ペダルドライブと、幅広いユーザーにアピールできる包容力を持つルーテシアR.S.だけに、シートの方向性はこれでよいのではないだろうか。
大きく変わった変速フィール
スタートボタンを押してエンジンを始動させると、同時に心地良い排気音が耳に届いてくる。マニュアルモードでギアをロー、セカンドとシフトして引っ張っていくと、その都度フォーンという音とともに回転が上昇していく。200ps仕様と乗り比べたわけではないので断定できないけれど、吹け上がりがより伸びやかになった感じがする。
運転モードを切り替えるR.S.ドライブをスポーツモードに切り替えると、低めのギアを多用するようになり、スロットルレスポンスもクイックになる。加えてデュアルクラッチ・トランスミッションの変速も早くなる。こちらはレースモードにするとさらに瞬間的にそれをやってのける。
従来のルーテシアR.S.は、素晴らしいエンジンやシャシーに対してここがおとなしい印象だったが、トロフィーはしっかり他のパフォーマンスに合わせてきていた。一方でノーマルモードではアイドリングストップが作動するなど、意外や社会的な一面も備えている。
俊敏さと安心感を併せ持つ
乗り心地はたしかに硬い。低速では路面の凹凸に合わせて揺すられる。でも段差や継ぎ目の処理は上手だ。速度を上げていくと揺すられ感も目立たなくなり、しっとり滑らかに感じるほど。硬いけれどフラットなので快適だ。これだけハードなダンパーを入れながら音を上げないボディー剛性も確認できた。
高速道路での直進性は、ルノーの例に漏れずリラックスできるほどの安定感。でもステアリングに少しでも力を込めると、反応の鋭さに驚かされる。微舵(びだ)の応答性が高くなっている。
そのせいか、その後の車体が旋回する動きとの間にタイムラグを感じるようにはなったけれど、コーナリングの能力が下がったわけではない。反応はクイックだけれど、それにつられて後輪がスライドしたりする気配はない。安定している。サーキットを見据えたセッティングなのかもしれない。
おかげで、記憶の中にあるひと世代前のメガーヌR.S.トロフィーよりも、はるかに安心して楽しめた。トラディショナルなスポーツモデルという印象があったルノースポールだが、実は時代の変化にきめ細かく合わせてきているのだ。
(文=森口将之/写真=田村 弥)
テスト車のデータ
ルノー・ルーテシア ルノースポール トロフィー
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4105×1750×1435mm
ホイールベース:2600mm
車重:1290kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:220ps(162kW)/6050rpm
最大トルク:26.5kgm(260Nm)/2000rpm
タイヤ:(前)205/40ZR18 86Y/(後)205/40ZR18 86Y(ミシュラン・パイロットスーパースポーツ)
燃費:--km/リッター
価格:329万5000円/テスト車=337万960円
オプション装備:フロアマット(3万240円)/ETC車載器(1万4400円)/エマージェンシーキット(3万1320円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:1707km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:464.4km
使用燃料:37.4リッター
参考燃費:12.4 km/リッター(満タン法)/11.0km/リッター(車載燃費計計測値)
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森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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