ロータス・エヴォーラ400(MR/6MT)
より速く よりロータスらしく 2016.03.30 試乗記 最高出力406ps、車両重量1395kg。ロータスのフラッグシップモデル「エヴォーラ」が、より軽く、よりパワフルな「エヴォーラ400」に進化を遂げた。6段MT仕様の試乗を通して感じた、動力性能の向上だけにとどまらない進化のポイントを報告する。“隠れた良作”のさらなる進化
あれ? まだこんなによくなる余地があったんだ……。というのが、エヴォーラ400を走らせたときの驚きに近いファーストインプレッションだった。「エリーゼ」や「エキシージ」といったスター選手の陰に隠れ、2+2のシートを備えたやや大柄なエヴォーラに今ひとつ目立たない印象を抱いている人が多いようだけど、実はスポーツカーとしてもGTカーとしても、結構なポテンシャルを持つ実力派。もともとの完成度も高かった。だからこそ、そこからさらに望外といえるほどの進化を見せてくれたエヴォーラ400に、僕はうれしい驚きを覚えた、というわけだ。
でも考えてみれば、それも然(しか)りといえるのかもしれない。ロータス・エヴォーラの最新版であり、ロータスのフラッグシップに位置づけられているエヴォーラ400は、一見「エヴォーラにフェイスリフトを加えてエンジンをパワーアップしただけ」と捉えられがちだけど、実はほとんどフルモデルチェンジといえるくらいにさまざまな手が加えられたモデルなのだ。
確かに、最も目立っている進化が、スーパーチャージャー付き3.5リッターV6エンジンが従来の350ps/40.8kgmから406ps/41.8kgm へとパフォーマンスアップしたことであるのは事実だろう。おかげで、最高速はロータス史上初めて300km/hの領域へ届き、静止状態から100km/hまで4.2秒で到達する、ミドル級スーパースポーツカーとして十分に誇れるレベルの速さを手に入れたわけだ。
けれど、それは大いに歓迎すべき美点ではあるものの、あくまでも美点のひとつにすぎない。それを生かすためにあらゆる部分が磨きに磨かれていて、磨かれた部分がまたあまたの美点になっているのである。単純にスピードを手に入れただけじゃなく、クルマのパフォーマンスが全体的に底上げされているのだ。
MT仕様の車両重量は1395kg
この進化をかなえるために、ロータスは何をどうしたか。
乗降性を高めるためにサイドシルを低く狭くあつらえ直し、スタイリングにグッと腰のくびれた印象を与えたこと、そして前後にロータスとしてはやや大胆といえるフェイスリフトを加えたこと以外、地味な作業を積み重ねてきたようなものだ。
例えば、ロータスには「ライトウェイト・ラボ」という部門がある。そこでは、構成部品をひとつずつ検査しながらクルマの軽量化につながる部分を見つけ出す作業が行われていて、同じ機能を満たすパーツであってもサプライヤーごとにどれくらい重量が異なっているか、素材が変わることでどれくらい数値が異なるのか、といったことを取りまとめている。
当然のごとく、エヴォーラ400を開発するにあたってもフロントシートふたつで6kg、リアシートで3.4kg、エンジンマウントで5.6kg、ホイールで3.3kgといった具合に手が加えられており、さらにはステアリングホイールやドアのインナーパネルといった見逃しがちな部分まで含めた各部の素材の見直し、装備個数を減らせる多機能なエンターテインメントシステムや薄くて軽いスピーカーの採用など、ほとんどグラム単位と思えるような徹底した軽量化が推し進められてきた。
その結果、車重は6段MT仕様では1395kgと、1.4トンを下回った。AT仕様は1425kgと30kgほど重いが、これまでの「エヴォーラSスポーツレーサー」のAT仕様が1460kgだったことを考えれば、こちらも結構な軽量化である。エヴォーラはフラッグシップという位置づけにある以上、エリーゼのような割り切ったつくりが許されない宿命にあり、ロータスとしてはもともと重量級といえる部類だった。そんな中で、見栄えのするトリム類や求められるアメニティーの充実化を図りながら、ここまで軽く仕立て上げたのは見事だと思う。
けれど、この軽量化でさえあくまでも一例であり、ロータスはエヴォーラに“400”という華々しい数値を与えるにあたって、さまざまなパートでこうした地道な磨き込みをかけてきたのだ。
ミドシップスポーツの中でも随一の“足さばき”
エヴォーラ400は、段違いに速くなっていた。従来のエヴォーラを走らせたことのある人であれば、体感的にもハッキリ分かるだろう。エンジンは全域にわたって鋭さを増しており、特に4500rpm辺りからトップエンドまでの跳ね上がるような鋭い吹け上がりは見もの。快感ですらある。ご存じのとおり、このV6ユニットはトヨタの「エスティマ」などに使われている「2GR-FE」型をベースに開発されたものであるが、フィーリングやサウンドの気持ちよさといった“刺激”も、スピードへの親和性も、もはや完全に別モノ。ロータスのエンジン、といっていいくらいである。
けれど、僕が最も感動したのはそこではなかったのだ。
何と見事な足さばき!
パワーが大きく増強された分だけ余計に締め上げられているはずなのに、足腰のしなやかさはさらに増した印象で、奇麗にストロークして乗り心地に“荒さ”も“粗さ”も感じさせない。コーナーではひたひたと、けれどしっかりと路面をつかみ続けていく。嫌なアンダーステアというものを全く意識させないまま、恐るべき速さでシュパーッ! シュパーッ! と曲がっていく。何かに吸い込まれるようにコーナーへと飛び込んでいき、何かにはじかれるようにして飛び出していく。クルマが曲がることを喜んでいるかのようだ。
そして、動きのひとつひとつが強固な車体を経由してドライバーの体に伝わってくるから、クルマの状態がとても分かりやすい。コーナリングの速さそのものは上級のスーパーカーを凌駕(りょうが)しそうな勢いなのに、まるでエリーゼを走らせているときのような“自在感”すら覚えさせる。素晴らしく優秀で、ニヤニヤしてしまうほど気持ちよく、クセになりそうなほど楽しかった。ミドシップのスポーツカーとしては、これはひとつのベストかも! とすら思う。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
深みを増したロータスならではの走り味
ここまでの内容だけでは、エヴォーラ400は単にパフォーマンスが高くなっただけのように思われてしまいそうだけど、そういうわけでもないのだ。
ロータスのスポーツカーは伝統的に、身のこなしの軽やかさやスピードとは不釣り合いなほどのしなやかさ、それらの中から伝わってくる懐の深さみたいなものを感じさせてくれて、それが独特のテイストを形作ってファンを魅了してきた。その“らしさ”のようなものが、エヴォーラ400ではこれまで以上に色濃くなっているように感じられるのだ。実は、個人的にはそこが最も喜ばしく感じられた部分。世界のトップの辺りにランク入りできる素晴らしいパフォーマンスと、ほかの誰もマネできない“ロータスらしさ”の高次元でのバランス。エンジニアたちはおそらくそれを念頭に開発を進め、そして成し遂げたのだ。
ここ1、2年、英国製のスポーツカーが元気だなという印象が強い。かつてはスポーツカー王国でもあったのに、妙にしょんぼりした時代が長く続いたことを知る身としては喜ばしい限りだけれど、その中にあっても、このエヴォーラ400の乗り味の素晴らしさは、僕にとってベスト3に入るくらいのものだった。これ、僕は大好きだ。
(文=嶋田智之/写真=田村 弥)
テスト車のデータ
ロータス・エヴォーラ400
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4390×1850×1240mm
ホイールベース:2575mm
車重:1395kg
駆動方式:MR
エンジン:3.5リッターV6 DOHC 24バルブ スーパーチャージャー付き
トランスミッション:6段MT
最高出力:406ps(298kW)/7000rpm
最大トルク:41.8kgm(410Nm)/3000-7000rpm
タイヤ:(前)235/35ZR19 91Y/(後)285/30ZR20 99Y(ミシュラン・パイロットスーパースポーツ)
価格:1355万4000円/テスト車=1525万5000円
オプション装備:アルカンタラパック(65万3400円)/ブラックパック(38万8800円)/クルーズコントロール(7万5600円)/グロスブラック鍛造アルミホイール(58万3200円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:6128km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(7)/山岳路(2)
テスト距離:269.7km
使用燃料:35.6リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:7.6km/リッター(満タン法)/12.0リッター/100km(約8.3km/リッター、車載燃費計計測値)
拡大 |

嶋田 智之
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
NEW
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
NEW
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。 -
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】
2026.1.17試乗記BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。 -
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る
2026.1.16デイリーコラム英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。













