ロータス・エヴォーラS スポーツレーサー(MR/6AT)
クルマ好きの正道 2014.02.17 試乗記 「ロータス・エヴォーラ」に追加された新グレード「スポーツレーサー」に試乗。ドイツのライバルとも、同門のライトウェイトスポーツモデルとも異なる「4人乗りのロータス」ならではの魅力に触れた。少数派の中の少数派
日本で販売されたスマートフォンの7割はiPhone。昨年秋の調査で、そんな結果が出た。他の主な先進国はいずれも5割を切っていて、アンドロイドのほうがシェアが大きいという。
理由のひとつに挙がっているのは「嫌韓」。海外でのアンドロイドの主力格であるサムスンやLGが、日本ではさっぱりらしい。でも僕はもうひとつ要因があると考えている。この国のユーザーはとにかく、他人の評価に流されやすいということだ。まわりがiPhoneだから自分もiPhoneというパターンは多い。
クルマの世界にも圧倒的なシェアを誇る軍団がある。輸入乗用車におけるドイツ車で、昨年の登録台数では約72.5%に達している。もちろんiPhoneと違って複数のブランドを合算した結果だが、残りの国が嫌われていることはないし、もっと売れていい。
ロータスもそのひとつ。2013年の登録台数は305台と、ポルシェの16分の1だ。ちなみに、ポルシェ以外のすべてのスポーツカーブランドの登録台数を合算しても、ポルシェ(4869台)の半分に満たない。たしかにポルシェには「カイエン」などの車種もあるけれど、驚異的な寡占ぶりである。
実際、東京の街でポルシェはフツーに見かけるのに対し、ロータスを目にできたらラッキーという状況。しかも多くは「エリーゼ」で、2+2でパワーステアリングが付きオートマチックも選べることから、敷居が低いと思われる「エヴォーラ」にはなかなか遭遇しない。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
“4人乗りのロータス”という選択肢
なぜここまでポルシェに人気が集まるのか。冒頭で書いた理由も当てはまりそうだけれど、あまりこの傾向が極端になると、クルマ好きが減るような気がしてならない。
ロータスの主役はたしかに、エリーゼのような小型軽量の2シータースポーツだ。しかしエヴォーラのような2+2のキャリアが浅いかというとそうではない。1967年発表の「エラン+2」以来、いくつもの車種を送り出し、豊富な経験を身につけてきた。
だからクルマそのものでは、ポルシェに大差は付けられていないはず。ひさしぶりになるエヴォーラの取材は、それを確認する場にもなった。
デビュー5年目のエヴォーラは、2014年モデルへの移行に際して改良を受けた。日本仕様はスーパーチャージド3.5リッターV6エンジンを搭載する「S」に統一され、従来Sには設定がなかったIPS(インテリジェント・プレシジョン・シフト)と呼ばれる6段ATも、6段MTともども設定されることになった。従来どおりリアシートの有無が選べ、うち2+2仕様には「スポーツレーサー」という新グレードが用意された。
取材車はそのスポーツレーサー。名前のとおり、スポーティーかつレーシーな雰囲気を施したエヴォーラで、エクステリアはブラックルーフ、フロント19インチ/リア20インチと1インチずつアップしたグロスブラックのアルミホイールが特徴。おかげで2014年モデルから採用した赤いブレーキキャリパーが目立つ。
「エリーゼ」「エキシージ」とは違う
エヴォーラのアルミ製スペースフレームは、「エリーゼ」や「エキシージ」とは基本設計からして異なる。パッと見て分かるのはサイドシルが低く幅が狭いことで、乗り降りはポルシェ並みに楽だ。
キャビンに入ると、グレーのスエードに赤いステッチのトリムと、厚みを増したプレミアム仕様のレカロ製シートに目を奪われる。かなり低めの座面に腰を下ろすと、見た目から予想するよりはるかに快適な掛け心地だ。機能的だけれど事務的ではない、シンプルかつクールなインテリアの仕立ては、同じ英国生まれのマクラーレンやアストン・マーティンに通じる。ウッドパネルがなくてもイギリス車だとひと目で分かる。
後席は大人が座るにはつらいけれど、エリーゼやエキシージに乗った経験から言えば、背後に荷物を置くスペースがあるのはやっぱり助かる。エンジンルーム後方のトランクは熱の影響を受けやすいので、なおさらこの空間は大事だ。
V6スーパーチャージドエンジンは350ps、40.8kgmを発生する。別の取材で少し前に乗った「エキシージS」と共通のスペックだが、スタート後の印象はエキシージSとは天と地ほどの差がある。音が抑えられているうえに、試乗車がATだったこともあって、とにかくジェントルだ。
でも高速道路に入ってアクセルを踏み込めば、強烈なダッシュが体感できる。シフトスイッチの手前にあるスポーツモードのボタンを押すと、レスポンスが鋭くなるとともに、パドルシフトがギア固定になって、4000rpm以上での心地よいサウンドを積極的に堪能できる。トヨタエンジンとトルコンATのコンビとは思えない切れ味だ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
“優しさ”と“操る歓び”が同居している
インチアップということで懸念された乗り心地の悪化については、結果から言えばロータスらしい、つまりスポーツカーらしからぬしなやかさを保っていた。それでいて運動性能はスポーツカーを飛び越えて、レーシングカーを思わせるほどだった。
試乗の舞台となった横浜では、ハンドリングの限界などはチェックできなかったけれど、たとえ限界のはるか手前でも、重心の低さと身のこなしの軽さは、並のクルマとは別次元。街乗りでも操る歓びがしっかり満喫できる。
それはしなやかな乗り心地からも、車両重量1440kg、ホイールベース2575mmという数字からも想像できない世界だ。たぶんデータに表れない部分の設計に、ロータスならではの技が込められているのだろう。
スポーツレーサーというたけだけしい名前が加わっても、エヴォーラはエヴォーラのままだった。日常的なシーンでは、数あるスポーツカーのなかでも1、2を争うほど優しいのに、ひとたび鞭(むち)を入れ、非日常領域に入れば、実用車派生のスポーツカーでは味わえない感動が押し寄せる。
だから興味を持った人は、他人の評価に左右されず、その感動を味わってみて、欲しければ頑張って手に入れてもらいたい。それこそクルマ好きが目指す正しい道だ。
(文=森口将之/写真=荒川正幸)
テスト車のデータ
ロータス・エヴォーラS スポーツレーサー
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4380×1850×1230mm
ホイールベース:2575mm
車重:1460kg
駆動方式:MR
エンジン:3.5リッターV6 DOHC 24バルブ スーパーチャージャー付き
トランスミッション:6段AT
最高出力:350ps(257kW)/7000rpm
最大トルク:40.8kgm(400Nm)/4500rpm
タイヤ:(前)235/35ZR19 91Y/(後)275/30ZR20 97Y(ピレリPゼロ コルサ)
価格:1055万円/テスト車=1100万円
オプション装備:IPS<インテリジェント・プレシジョン・シフト>(45万円)
テスト車の年式:2014年型
テスト車の走行距離:780km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
-
メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(4WD/9AT)【試乗記】 2026.3.4 メルセデス・マイバッハから「SL680モノグラムシリーズ」が登場。ただでさえ目立つワイド&ローなボディーに、マイバッハならではのあしらいをたっぷりと加えたオープントップモデルだ。身も心もとろける「マイバッハ」モードの乗り味をリポートする。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.3.3 「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。
-
ドゥカティ・モンスター(6MT)【海外試乗記】 2026.3.2 ドゥカティのネイキッドスポーツ「モンスター」が5代目にモデルチェンジ。無駄をそぎ、必要なものを突き詰めてきた歴代モデルの哲学は、この新型にも受け継がれているのか? 「パニガーレV2」ゆずりのエンジンで175kgの車体を走らせる、ピュアな一台の魅力に触れた。
-
フォルクスワーゲンID.4プロ(RWD)【試乗記】 2026.2.28 フォルクスワーゲンのミッドサイズ電気自動車(BEV)「ID.4」の一部仕様変更モデルが上陸。初期導入モデルのオーナーでもあるリポーターは、その改良メニューをマイナーチェンジに匹敵するほどの内容と評価する。果たしてアップデートされた走りやいかに。
-
スズキ・キャリイKX(4WD/5MT)【試乗記】 2026.2.27 今日も日本の津々浦々で活躍する軽トラック「スズキ・キャリイ」。私たちにとって、最も身近な“働くクルマ”は、実際にはどれほどの実力を秘めているのか? タフが身上の5段MT+4WD仕様を借り出し、そのパフォーマンスを解き放ってみた。
-
NEW
BYDシーライオン6(FF)
2026.3.6JAIA輸入車試乗会2026“中国の新興ブランド”BYDにあこがれは抱かずとも、高コスパの評判が気になる人は多いだろう。では、日本に初導入されたプラグインハイブリッド車のデキは? 初めて触れたwebCGスタッフがリポートする。 -
NEW
実に3年半ぶりのカムバック 「ホンダCR-V」はなぜ日本で復活を果たしたのか?
2026.3.6デイリーコラム5代目の販売終了から3年半のブランクを経て、日本での販売が開始された6代目「ホンダCR-V」。世界的なホンダの基幹車種は、なぜこのタイミングで日本復活を果たしたのか? CR-Vを再販に至らしめたユーザーの声と、複雑なメーカーの事情をリポートする。 -
NEW
「ジープ・アベンジャー4xeハイブリッド」発表会の会場から
2026.3.5画像・写真ジープブランドのコンパクトSUV「アベンジャー」に、4WDのハイブリッドバージョン「アベンジャー4xeハイブリッド」が追加された。その発表会(2026年3月5日開催)の場に展示された同モデルの外装・内装を写真で紹介する。 -
NEW
スバル・トレイルシーカーET-HS プロトタイプ(4WD)【試乗記】
2026.3.5試乗記スバルから本格的な電気自動車の第2弾となる「トレイルシーカー」が登場。前後のモーターから繰り出すシステム最高出力はドーンと380PS。ただし、それをひけらかすような設定にはしていないのがスバルらしいところだ。スノードライブの印象をお届けする。 -
NEW
ホンダ・インサイト
2026.3.5画像・写真4代目はまさかの電気自動車(BEV)! ハイブリッドからBEVへ、4ドアセダンからSUVへと変身して、「ホンダ・インサイト」が復活を遂げた。ドアトリム/ダッシュボードヒーターにアロマディフューザーと、新たな快適装備を満載したその姿を、写真で紹介する。 -
BYDシーライオン7 AWD(4WD)
2026.3.5JAIA輸入車試乗会2026堂々たるスタイルにライバルの上をいくパワーと一充電走行距離、そしてざっくり2割はお得なプライスを武器とする電気自動車「BYDシーライオン7」。日本市場への上陸から1年がたち、少しずつ存在感が増してきた電動クーペSUVの走りやいかに。











