第4回:押しも押されもしない高級車の共演
輸入車チョイ乗りリポート~1000万から2000万円編~
2016.04.19
JAIA輸入車試乗会2016
車両価格はいよいよ1000万円オーバーの世界へ。パフォーマンスが自慢のスポーツカーや“至れり尽くせり”のプレミアムセダンなど、押しも押されもしない高級車のなかから特にwebCGメンバーが注目したモデルを紹介する。
買っとけばよかった
ポルシェ・ボクスター スパイダー……1012万円
“自然吸気ボクスター”のフィナーレを飾るスペシャルモデルが「ボクスター スパイダー」である。ボクスター史上最大の3.8リッターフラット6は、ターボ化前の「911カレラS」ゆずり。最高出力375ps、最大トルク42.8kgmを発生する。
「軽量化」もボクスター スパイダーのキーワードだ。ソフトトップの開け閉めは、ほろの先端とリアリッドのロック解除だけが電動。他のボクスターとは違って、それ以外は手作業となる。スポーツバケットシートや、ベルト形状ドアインナーハンドルの採用もお約束だ。
シートに座り、「おもっ」と思った。クラッチペダルの話である。トランスミッションは6段MTのみの設定となる。エンジンに火が入ると、その存在感にほほがゆるむ。オープンカーでミドシップ。音源はすぐそこだ。アクセルを踏み込めば、3000rpm以上でレスポンスが鋭さを増し、5000rpmからはリミット目指して一気に吹け上がる。自然吸気フラット6の金属音と振動が心も揺さぶる。
ボクスター スパイダーは、“自然吸気ボクスター”の純米大吟醸である。残念ながら、正規輸入分はとっくに完売していて手に入らない。次期型の存在も定かではないし、あっても4気筒ターボになるかもしれない。あぁ、買っとけばよかったなぁ。……なんてヒト、多いんじゃないでしょうか?
(文=webCG こんどー/写真=田村 弥)
新感覚の走り
BMW 740i……1217万円
1時間ほど運転してみて頭に浮かんだイメージは、「魔法のじゅうたん」。「BMW 740i」は、常にフラットな姿勢をキープしつつ、乗員に不快な振動を伝えることなく、滑るように走る。さすがは、エアサス付きの高級セダン。
不思議なのは、それでいながら、全体的な印象がとてもスポーティーなことだ。快適なのに、ダルじゃない。やわらかなのに、ピンとしている。ステリングを握っているドライバーは、安心してクルマを操ることができる。
不思議といえば、サイズ感もそう。これほど立派な体格でありながら(全長×全幅×全高=5110×1900×1480mm)、いざ運転すると、その大きさを感じさせない。室内空間は、それ相応に広々としているけれど、走りだしてしまえば、まるで「3シリーズ」のよう。もてあます感じがまるでない。数値だけ見ると不安もあった3リッターの直6ターボエンジンは十分すぎるほどパワフルで、これまた感心してしまう。
そうした特徴は、軽量なカーボンを取り入れたハイブリッドモノコックのたまものなのか、あるいはハイテク装備の効果なのか。正確に言い当てる自信はないけれど、「大きくてリッパな高級セダン」にこれまで抱いていたのと違う、新感覚の走りを体感できるのは確かだ。
2016年の半ばには、車外からキーを操作して“リモコン駐車”できる機能まで追加設定されるとのこと。いやぁ、クルマって、まだまだ変われるんだなぁ……。
(文=webCG 関/写真=峰 昌宏)
進化するスーパーセダン
テスラ・モデルS P85D……1369万円
実物を前にして驚いた。デカい。全長は約5m、全幅は2m近くある。車重はなんと2190kg。自慢の航続距離(491km)と重量とは、トレードオフの関係なのだ。
グレード名の「P」は高性能(パフォーマンス)を、「85」はバッテリー容量(85kWh)を、「D」は前後に1つずつモーターが備わるデュアルモーターであることを示している。出力は、フロントが193kW(262ps)でリアが375kW(510ps)。前後合わせて568kW(772ps)にもなる。「テスラ・モデルS P85D」は、ヘビー級のスーパーカーだ。
乗り込んでまたギョッとする。センターパネルのタッチスクリーンは17インチもある。アップルのiPadが9.7インチだから、なんぼなんでも……というサイズだ。さすがアメリカ、大は小を兼ねるってことか? インパネにはスイッチ類が極端に少なくて、運転環境の調節からエアコンやカーナビの操作、サンルーフの開閉まで、ほとんどコレで操作する。ネットに常時つながっているので、Googleマップなんかも表示させることができる。
モデルS P85Dは、普通に走っている限り快適なクルマだ。とても静かだし、乗り心地もいい。床下にたっぷり積まれたリチウムイオン電池が、重量バランスの最適化と低重心化に効いている。そしてアクセルを踏み込めば……、顔がこわばり血の気が引く。「日産GT-R」並みのダッシュはただごとじゃない。0-100km/h加速は3.3秒! 高速の料金所から、イチ・ニイ・サンで法定速度に達する計算だ。
テスラが都心部でウケてる理由は、こんなハイパーEVならではのキャラクターを、従来の内燃機関搭載車とはまったく異なる“新しいツール”としてドライバーにアピールする、そんなシリコンバレー流プレゼンテーションの巧みさにある。
(文=webCG こんどー/写真=田村 弥)
ヨンクは偉大だ
ジャガーFタイプ R AWD クーペ……1444万円
実はこの「Fタイプ」、もろもろありましてJAIAの合同試乗会とは別日に試乗しております。で、その日が雨だったんですね。最高出力550ps、最大トルク69.3kgm、ついでにお値段1444万円の御車を雨の高速道路で試乗したわけです。しかも、こういうときに限って現場の編集仲間が脅すのですよ。
「ほった君、Fタイプに乗るんだって? あのクルマ本当にすごいからね。ボクが乗ったのはFRだけど、交差点で不用意に踏んだら一回転するからね(笑)」
一回転とは大げさですが、Fタイプの硬派な走りぶりは方々の試乗記で語られているところ。多分に誇張があるとはいえ、その言わんとしているところは分かります。
ところが実際にはどうだったかというと、これがまったくもって平気でした。少なくともワタクシごときが首都高速で少々の度胸試しをしたところで、Fタイプはヒヤリとするような挙動を見せません。クツ屋の小人のごとく働いていたであろう姿勢制御の恩恵はもちろん、やっぱりテスト車が4WDだったことも大きいのだと思います。
一方で、敏しょう性といいますか、「コーナリング時の軽くて自然な鼻先の入り感」についてはFR車とかわらず。後輪駆動ベースの4WDでは前輪に対する駆動力の依存度が少なく、そのぶん前輪は進行方向の決定に専念できるわけですから、当たり前といえば当たり前のことなのでしょう。が、頭で理解するのと体験するのとでは話は別。ヨンクのハイパフォーマンス車に「頭が重くて、駆動力でゴリゴリ旋回していく」というイメージを持っていた私には、ちょっと新鮮な体験でした。
(文=webCG ほった/写真=峰 昌宏)

webCG 編集部
1962年創刊の自動車専門誌『CAR GRAPHIC』のインターネットサイトとして、1998年6月にオープンした『webCG』。ニューモデル情報はもちろん、プロフェッショナルによる試乗記やクルマにまつわる読み物など、クルマ好きに向けて日々情報を発信中です。
-
第5回:クルマ好きの桃源郷へようこそ
輸入車チョイ乗りリポート~オーバー2000万円編~ 2016.5.11 クルマ好き垂涎(すいぜん)のスーパースポーツや、名だたる名門のプレミアムカーが名を連ねるお値段2000万円オーバーの世界。今回はそんな夢の世界のクルマにチョイ乗り。webCG編集部員が注目したクルマは、くしくも4台すべてが英国車となった。 -
第3回:ここがインポートカーのボリュームゾーン
輸入車チョイ乗りリポート~500万から1000万円編~ 2016.3.17 紳士の国の4ドアセダンや、刺激的な伊・独のオープンスポーツモデルなど、価格帯が3ケタ万円の後半に入ると、さまざまな国の多彩なモデルが顔を出すようになる。“インポートカーのボリュームゾーン”の中から、webCGが注目した4台がこちらだ。 -
第2回:デビューしたてのフレッシュな3台を紹介
輸入車チョイ乗りリポート~350万から500万円編~ 2016.3.7 大磯ロングビーチに集結した魅力的なインポートカーの中から、今回はwebCGメンバーが350万~500万円という価格帯で気になるモデルをピックアップ。いずれも2015年の下期から2016年にかけて登場したばかりという、フレッシュな3台を紹介する。 -
第1回:ビギナーにもマニアな人にもオススメ!
輸入車チョイ乗りリポート~アンダー350万円編~ 2016.2.24 輸入車に興味を持ったばかりのビギナーはもちろん、「あえてブランドのエントリーモデルを選びたい」というマニアックなあなたにもオススメ。JAIA輸入車試乗会の会場より、まずは350万円以下の価格帯から、webCG編集部員が気になったクルマを紹介しよう。
-
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
NEW
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。 -
NEW
トヨタ車はすべて“この顔”に!? 新定番「ハンマーヘッドデザイン」を考える
2025.10.20デイリーコラム“ハンマーヘッド”と呼ばれる特徴的なフロントデザインのトヨタ車が増えている。どうしてこのカタチが選ばれたのか? いずれはトヨタの全車種がこの顔になってしまうのか? 衝撃を受けた識者が、新たな定番デザインについて語る! -
NEW
BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ(FR/8AT)【試乗記】
2025.10.20試乗記「BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ」と聞いて「ほほう」と思われた方はかなりのカーマニアに違いない。その正体は「5シリーズ セダン」のロングホイールベースモデル。ニッチなこと極まりない商品なのだ。期待と不安の両方を胸にドライブした。