フォルクスワーゲン・ティグアン TSI Rライン(FF/6AT)
まずは手堅く 2017.02.11 試乗記 フォルクスワーゲン(VW)のコンパクトSUV「ティグアン」が8年ぶりにフルモデルチェンジを果たした。現段階では、1.4リッターのTSIエンジンに前輪駆動(FWD)のみの品ぞろえ。インフォテインメントシステムの強化も見どころのひとつだ。スポーティーなルックスを持つ最上級グレード「Rライン」に試乗した。乗りなれた安心感
首都高速を流れに乗って走っている限り、すっかり体になじんだあの感覚、つまり静かで滑らかでスイスイ軽快、そのうえ実用域で切れが良くて扱いやすいVWフィーリングにあふれていて落ち着くいっぽう、最新モデルなのにいつもの店のいつものランチ、のように感じていることを奇妙にも思う。視点が高いことを除けばVWであることは間違いないが、「パサート」か「ゴルフ」かどのモデルに乗っているのか、ふと運転している本人も定かではなくなるぐらい似ているのだ。
それは良くも悪くもSUVに乗っているという感覚が薄いということでもある。VWの横置きエンジン・モジュラープラットフォーム「MQB」の第5弾に当たるという新型ティグアンは、従来型より長く幅広く、低くなっており、ホイールベースも70mm延長されているからこれまで以上に安定感が高く、しかもFWDなので車重も従来型の4WDモデルに比べると100kgほど軽くなっているので、なおさら何に乗っているのかわからなくなる。走破性をうんぬんするSUVではなくクロスオーバーととらえるべきなのかもしれないが、ティグアンならではの特徴は何かと正面切って尋ねられると、ちょっと答えに詰まる。最新モデルだけあって、安全運転支援システムは充実し、最新のインフォテインメント関係もそろって“つながるSUV”をアピールしている。ただし、それはパワートレイン同様、他のVWと選ぶところがないし、広い室内や広大なラゲッジスペース(615~1655リッター)はもちろん魅力だが、その点はゴルフやパサートの「ヴァリアント」でも同じである。そつなく洗練されているが、特徴的な体臭はほとんど感じられないのである。
FWDのみのラインナップ
日本仕様のティグアンは「コンフォートライン」「ハイライン」「Rライン」の3車種が用意されているが、それぞれの違いは大ざっぱに言うとトリムレベル、装備の差だけである。エンジンは150ps(110kW)/5000-6000rpmと25.5kgm(250Nm)/1500-3500rpmを生み出す上に気筒休止システムが備わったおなじみのTSI 1.4リッター直噴ターボ、トランスミッションは6段DSGで全車FWDである。SUVなのにFWDだけというのは、私のようなオジサンにはどうも釈然としないのだが、その走破性を必要としないユーザーが多数だという冷静な判断からなのだろう。女性ユーザーがずうたいの大きなSUVを好むのは、もっぱらアイポイントの高さゆえという話を聞くが、一度高く座って見晴らしの良い車に乗ると、次からは低い車に乗るのが不安になるドライバーにとっては、とにかく着座位置が高ければいいということなのかもしれない。後に4WDモデルも追加されるとは思うが、今のところその予定は明らかになっていない。
細かく言えばハイラインとRラインにはドライビングプロファイル機能が備わり、エコ/ノーマル/スポーツ/カスタムとドライビングモードを切り替えることが可能で、さらに上位2グレードはアダプティブサスペンションのDCCもオプションで選ぶことができるが、それ以外のメカニカルな部分での違いは標準装着タイヤのサイズぐらいしかない。試乗できたのは255/45R19サイズを履くRラインだけ、比較的引き締まった乗り心地だが大きなタイヤを持て余している感じはない。ただしおそらくコンフォートラインに標準の17インチでもまったく問題ないはず、というよりそちらのほうがより軽やかで好ましいのではないかと思われる。
スマホで足りる?
新型ティグアンは丸みを帯びた従来型から一気にいかつく押し出しの強いスタイルに変わった。ゴルフを上からギュッと押しつぶしたのがパサートだとしたら、それを再び膨らませて分厚くしたのがティグアンという感じ。横桟(よこさん)が強調されたグリルやピシーッと通ったボディーのキャラクターラインをはじめ、エクステリアもインテリアもVWらしく端正で折り目正しく、クリーンに整っている。
フルデジタルメーターの「アクティブインフォディスプレイ」と最新のインフォテインメントシステムが採用されたことも新型ティグアンの特徴である。アウディ同様のデジタルメーターそのものは非常に見やすいが、表示される情報を切り替える使いやすさ、表示情報の実用性という点ではもう少し改良の余地があるように思う。切り替えはワンクリックで済まないものもあり煩雑だし、ステアリング角度やコンパスなどが表示される“オフロードディスプレイ機能”もいわば雰囲気装備というところだろう。舵角表示は極端なラフロードでは役に立つが、何しろFWDなのだからそもそも悪路に挑むことはないし、荒野を踏破するわけでもないからコンパスもアクセサリーのようなものである。ネット経由でセンターモニターにさまざまな情報を表示できるといっても、それはスマートフォンがあれば済むことで、わざわざ走行中の車に表示させる必要があるのか、これまたオジサンにはあまりピンとこない。
ライバルは身内に
ベーシックなコンフォートラインが360万円、ハイラインは433.2万円、Rラインは463.2万円という価格設定である。従来型は400万円そこそこで「4モーション」モデルも用意されていたから、全体的にちょっと割高な印象がするのは仕方ないところ。その分予防安全支援システムなどが充実しているのはもちろんながら、この価格レベルになるとVWのラインナップの中でも上のほうになる。パサート ヴァリアントの中位グレードでさえ400万円以下で買えるのだから、FWDだけの品ぞろえでは正直やや苦しいのではないかと心配になる。
日本市場におけるVWは苦しい状況にある。2014年の国内セールスは約6.7万台で輸入車ブランドトップだったが、2015年は5.5万台、昨年2016年は4.7万台と激減している。もちろん例のディーゼル不正問題の影響だが、日本には1台も輸入されていないにもかかわらず、この数字の変化はどれだけ皆がVWのブランドを大事に思っていたかの裏返しである。であればここは変化球のキャンペーンなどではなく、正々堂々一歩ずつ信頼を取り戻すしかない。ディーゼルエンジン+4WDモデルの導入にもできるだけ早く正面から取り組むべきである。
(文=高平高輝/写真=小林俊樹/編集=竹下元太郎)
テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・ティグアン TSI Rライン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4500×1860×1675mm
ホイールベース:2675mm
車重:1540kg
駆動方式:FF
エンジン:1.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:150ps(110kW)/5000-6000rpm
最大トルク:25.5kgm(250Nm)/1500-3500rpm
タイヤ:(前)255/45R19 100V/(後)255/45R19 100V(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5 for SUV)
燃費:16.3km/リッター(JC08モード)
価格:463万2000円/テスト車=499万3800円
オプション装備:テクノロジーパッケージ(30万2400円) ※以下、販売店オプション フロアマット(プレミアムグリーン)(5万9400円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:2230km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

高平 高輝
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