フォルクスワーゲン・ザ・ビートルRライン(FF/7AT)
ちょうどいいビートル 2017.02.14 試乗記 「フォルクスワーゲン・ザ・ビートル」のラインナップに、優れた走行性能と環境性能の両立を掲げる1.4リッターモデル「ザ・ビートルRライン」が登場。その走りの印象や乗り心地、燃費の計測結果を報告する。満を持しての中間グレード
もうすぐ「ゴルフ」のビッグマイナーチェンジ版である“ゴルフ7.5”と呼ばれるモデルが日本に導入されるそうだ。エンジンやトランスミッションが新型になるという。もともと評判のいいゴルフ7であるから、改良されれば間違いなくもっといいクルマになるのだろう。喜ばしいことだが、ザ・ビートルにとっては悩ましい事態だ。
2012年に登場したザ・ビートルは、ゴルフ6をベースにした「ジェッタ」と同じプラットフォームで作られている。もちろんさまざまな改良が加えられているはずだが、要するにひと世代古いわけだ。モジュール式の新プラットフォーム「MQB」が登場する前のモデルである。ゴルフのマイチェンによって差が開いてしまうのではないかと心配になる。ただ、ザ・ビートルはゴルフに先駆けて2016年9月からマイチェンモデルが日本に入ってきている。前後のバンパーデザインが変更され、先進安全装備やインフォテインメントシステムが充実した。
当初は「ザ・ビートル ベース」「ザ・ビートル デザイン」「ザ・ビートル2.0 Rライン」という3種だったラインナップに、2カ月遅れで加わったのが、今回試乗したザ・ビートルRラインである。1.2リッターターボの「ベース」と「デザイン」、2リッターターボの「2.0 Rライン」の間に位置する1.4リッターターボエンジンを搭載するモデルだ。ゴルフでは「TSIハイライン」に与えられているものと同じだが、チューンが違う。ゴルフの140psに対し、ザ・ビートルでは150psに高められている。
気分がアガるパワートレイン
昨2016年に発売されたクロスオーバー風に仕立てられた限定モデル「ザ・ビートル デューン」でも採用されていたエンジンで、カタログモデルとしては初採用になる。トランスミッションはおなじみの7段DSGだ。
かつて1.2リッターエンジンのザ・ビートルに試乗した時、パワー不足を感じることはなかった。スポーティーさを前面に出しているわけでもなく、快適な走りを楽しむには十分なパワーユニットである。ただ、1.2リッターの105psと2リッターの211psには2倍以上の差がある。さすがに離れすぎだ。中を埋めて多様なニーズに応える必要があったのは確かだろう。
排気量の違いは明確に現れている。余裕が感じられるのだ。もちろん圧倒的な速さではないのだが、加速したいというドライバーの意思に対する反応に遅れがないことが気分を高揚させる。ちょっと意外だったのは、アクセルを踏み込んだ時に聞こえる排気音の高さである。なかなかの快音で、ますます気分がよくなる。巡航していれば車内は静かだ。
7段DSGの出来のよさも良好なドライブフィールに貢献している。今回は本格的なワインディングロードでの試乗はできなかったが、少しだけ山道を走った時、自動変速にまかせておいて不満は感じなかった。低速でのつながりに若干のぎこちなさはあったものの、スムーズで素早い変速は第一級である。
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燃費の値は1等賞
今回は、高速道路主体でトータル350km以上を走り、燃費は14.1km/リッターだった。悪くない数字である。Rラインはザ・ビートルの中で最良燃費モデルなのだ。JC08モードの燃費値は、2.0 Rラインの13.4km/リッターはもちろん、ベースやデザインの17.6km/リッターを上回る18.3km/リッターである。
ブルーモーションテクノロジー採用のエンジンで、アイドリングストップ機構やブレーキエネルギー回生機構が装備される。1.2リッターモデルだとエンジンルームはスカスカだが、1.4はスペースが埋まっていた。走行性能と環境性能のバランスをとった、ちょうどいいエンジンなのだろう。
Rラインはタイヤサイズもラインナップの真ん中に位置する。ベースとデザインが16インチ、2.0 Rラインが18インチで、Rラインは17インチなのだ。足まわりは極端に固められてはおらず、乗り心地は良好だ。道路をしっかりととらえる落ち着いた動きは、ドライバーの安心感を高める。
Rラインの内外装は、2.0 Rラインに準じている。ブラックのサイドモールディングやリアディフューザーがくっきりとした輪郭を見せ、上級モデルであることを主張する。インテリアにもブラックが多用され、スポーティーなイメージが演出されている。試乗車はCoolsterパッケージというオプションが付けられていたため、ダッシュボード上部に3連メーターが装備されていた。油温計、ストップウオッチ、ブースト計を組み合わせたもので、どうしても必要なものではない。しかし、これがあるだけでスポーティーな印象が格段にアップする。
フォルクスワーゲン愛にあふれる人へ
Rラインは、パーソナルカーとして高い総合力を持つ。余裕のあるパワーユニットを持ち、エクステリアとインテリアはスポーティーで上質感も高い。安心して人に薦められるモデルだ。
少しだけためらってしまうのは、やはりゴルフの存在だ。2ドアで後席が狭く荷室スペースにも限界があるザ・ビートルを選ぶには、何らかの理由が必要だ。30万円ほど追加すれば、同じエンジンを持つゴルフが手に入る。
Rラインと同時に、「#PinkBeetle(ハッシュタグ ピンクビートル)」という限定車も発売された。名前のとおり、ピンクのボディーカラーをまとったモデルである。ザ・ビートルだからできた企画だろう。1998年にデビューした「ニュービートル」は、ビートルこと「タイプ1」へのオマージュとして誕生した。丸っこくて愛らしい形は、フォルクスワーゲンにとって何ものにも代えがたい価値を持つアイコンである。
ザ・ビートルになってオリジナルのフォルムからは遠ざかったものの、依然としてフォルクスワーゲンのアイデンティティーを担う。ゴルフと比較検討して購入するケースは、実際は少ないだろう。ザ・ビートルは、最も大きなフォルクスワーゲン愛を持つ者が選ぶクルマなのだ。
(文=鈴木真人/写真=郡大二郎/編集=関 顕也)
テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・ザ・ビートルRライン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4285×1825×1495mm
ホイールベース:2535mm
車重:1370kg
駆動方式:FF
エンジン:1.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:150ps(110kW)/5000-6000rpm
最大トルク:25.5kgm(250Nm)/1500-3500rpm
タイヤ:(前)215/55R17 94V/(後)215/55R17 94V(ブリヂストン・トランザER300)
燃費:18.3km/リッター(JC08モード)
価格:294万5000円/テスト車=351万1460円
オプション装備:Coolsterパッケージ<バイキセノンヘッドライト[ハイトコントロール機能付き]+ダークティンテッドガラス[リア/リア左右、UVカット機能付き]+3連メーター[油温計、ストップウオッチ、ブースト計]>(21万6000円)/716DCWパッケージ<Volkswagen純正ナビゲーションシステム“716SDCW”[VICSワイド対応、CDダイレクト録音、CD/DVDプレーヤー、MP3/WMA/AAC再生、MP4/WMV動画再生、Wi-Fi Miracast再生、AM/FM、ワイドFM対応、地デジTV受信、iPod接続対応、Bluetoothオーディオ/ハンズフリーフォン、スマホ接続対応iPhone/Android、Intelligent VOICE、Smart Access 4Car、NaviCon対応、地図差分更新、フリックオペレーション]>(19万9260円)/電動パノラマスライディングルーフ(15万1200円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:2535km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(8)/山岳路(0)
テスト距離:366.8km
使用燃料:26.0リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:14.1km/リッター(満タン法)/14.1km/リッター(車載燃費計計測値)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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