MINIクーパーS EクロスオーバーALL4(4WD/6AT)
電気で(も)走ります 2017.06.06 試乗記 2代目となる新型「MINIクロスオーバー」に、プラグインハイブリッド車(PHV)の「クーパーS E ALL4」が登場。1.5リッター直3ターボエンジンと電動モーターが織り成す走りを、スペイン・バルセロナで試した。中身は“あのクルマ”とほぼ一緒
本編を始める前に、ちょっとただし書きを。
今回、記者が試乗したのは欧州仕様の「MINIカントリーマン」であるが、いろいろややっこしいので、本稿では日本名の「MINIクロスオーバー」を使わせていただきます。あしからず。
さて、バルセロナ・エル・プラット空港で取材陣を出迎えたMINIクロスオーバーの姿に、記者はちょっと拍子抜けした。各方面で散々「MINI史上最大」とか「『3シリーズ』より幅がでかい」などと言われていたので、さぞやビッグな御車なんだろうと思っていたのだ。しかし、南欧の陽気な太陽を浴びたそのクルマは、何というかフツーだった。デザインの妙か、外観に間延びした感じがなくて、従来モデルより195mmも全長が延びているとは思えなかった。
巨大化を実感したのは、翌日、MINIクーパーS EクロスオーバーALL4を試乗する段になってからだ。このときはワタクシと他媒体の記者に加え、BMWジャパンのスタッフも同じクルマで移動することとなったのだが、新しいMINIクロスオーバーは大の大人3人と各人5日分の荷物をやすやすと……とは言わないまでも、後席を片方たたむだけで見事に飲み込んで見せたのだ。かつて御殿場で試乗した従来型MINIクロスオーバーでは、こうはいかなかったろう。荷室、後席スペースともに犠牲となっているはずのクーパーS E ALL4でさえ、このゆとりである。ボディーサイズの拡大に伴うパッケージングの改善を実感した。
しかし、本稿の主たるテーマは新型MINIクロスオーバーのパッケージングではない。というか、その話はもうwebCGでも散々されている。今回報告するべきは、あくまでも新採用のプラグインハイブリッド機構の出来栄えなのだ。……が、まあ詳しい方ならご存じでしょう。MINIクーパーS EクロスオーバーALL4の中身は、まんま「BMW 225xe iパフォーマンス アクティブツアラー」なのだ。ささやかなチューニングの違いはあるものの、基本的には同じプラットフォームに同じパワープラントが搭載されているわけで、同車についてはやはり高山正寛氏がwebCGでみっちりインプレ済みなのである。うーむ……。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
デイリーユースは電気だけでまかなえる?
気を取り直して、ちょいとパワープラントの仕組みをおさらい。動力源は1.5リッター直3ガソリンターボエンジンと電動モーターの組み合わせで、前者は6段ATを介して前輪を、後者はリダクションギアを介して後輪を駆動する。リアシート下方に搭載されるバッテリーの蓄電量は7.6kWhで、200V電源から約3時間でフル充電が可能。この状態からだと約42.4km(JC08モード)の距離を電気のみで走れるという。ちなみに、CHAdeMOによる急速充電には対応していない。
パワープラントの制御については、(1)車速125km/hを上限にEV走行を行い、キックダウン時を除いてエンジンを動かさない「MAX eDRIVE」、(2)車速80km/hを上限にEV走行を行い、強くアクセルが踏み込まれたときに加え、バッテリー残量が7%を切ったときにも状況に応じてエンジンを駆動させる「AUTO eDRIVE」、(3)エンジンを駆動し、蓄電量の90%までバッテリーを充電しながら走行する「SAVE BATTERY」の3つのモードを用意。これとは別に、スロットルレスポンスやシフト制御などを変化させる「MINIドライビングモード」も備わっており、双方で選択されるモードの組み合わせにより、回生ブレーキの利き具合などが変わってくるという。さすがBMW、マニアックである。
さてさて。カタログ上のEV走行距離が42.4kmとのことなので、ちょっと意地悪をして、実走でのそれを0.6掛けの25.4kmと仮定しましょう。充電ポイントから12.7km未満の場所であれば、電気だけで行って帰れるというわけだ。「Googleマップ」で調べたところ、東京・武蔵野のわが家からだと、調布IC先の江川亭調布店も、高円寺駅のラーメン大も往復可能という結果が出た。むろん、武蔵境のイトーヨーカドーや東八道路沿いのホームセンターなどは完全にその範囲内である。あくまで記者の生活圏を基準とした考察だが、このクルマのEV性能なら、週末の買い出し程度なら電気だけでなんとかなりそうである。
イマドキな都会派SUVの乗り味
投宿していたホテルを出て、まずはバルセロナの市街をうろうろ。工事による“つぎはぎ”やトラムのレールを乗り越えさせての感想は、「意外と乗り心地、キツくないですね」というものだった。……いや、変な意味じゃないですよ!? MINI一族は代々“ゴーカートフィーリング”を標ぼうしているので、SUVとはいえこのクルマも、ストロークを拒否るような足まわりではないのかと身構えていたのだ。
もちろん硬めは硬めだが、ガツン系の入力があっても角を丸める懐は持ち合わせているし、路面のうねりをそのままなぞるようなツッパリ感もない。個人的には「SUVなんだからもっとタイヤが動いてもいい」と思ったが、それはホントに好みの問題。競合モデルを見てもわかる通り、昨今の都会派SUVは“アシが硬め”が正道なわけで、MINIもそこは外していない。
一方で、競合モデルと大きく違うのが、路面からの入力に対する車体の抑えの利き具合。また高速道路では、コンパクトな腰高カーにそぐわぬお尻の据わった走りも印象的だった。この辺りについては、PHV化にともなう重量増が効いているはず。なにせCセグのボディーにして車両重量は1770kgである。効いていないはずがない。
スタートから10.8km。立派な邸宅の間を縫う急な坂道を走っていたところ、不意にエンジンがかかった。ディスプレイの表示を見るに、これはバッテリーが空になったからではなく、アクセルをグイッと踏んだからのご様子。ちなみに、走行モードはスタート時からデフォルトの「AUTO e-DRIVE」のまま、触っていない。
車両重量を忘れるなかれ
アクセルを深く踏み込まなければならないワインディングロードでは、ほぼ常にエンジンとモーターの両方が走行に使われていた。この状態でのクーパーS E ALL4は、その車重を感じさせないほどの力強さで加速し、坂道を登る。スペック表によると0-100km/h加速は6.8秒。このクラスのSUVとしては十分すぎるパフォーマンスだ。
重さを感じるのは、加速よりブレーキング、そしてなによりコーナリングである。ひょっとしたら単に重いというだけではなく、重量物が前後に分散していることも影響しているのかもしれない。操舵に対して車体の反応が遅れ気味で、動きそのものも穏やか系。ハンドルの力だけで曲がろうとすると、ほぼ確実にコーナー途中でブレーキを踏む羽目になる。
……とはいえ、まあこれも「だから何?」という話ではある。コーナー手前でしっかり減速。ペダルの踏み替えは旋回Gと要相談。重いクルマには重いクルマなりの走らせ方があるわけで、それを心がければいいだけだ。
スタートから28km、昼食会場のレストランへと向かう道程で、ついにバッテリーが底を突いた。こうなると、動力源は1.5リッターの直3ガソリンターボエンジンのみ。しかし、それでも走りに不足を感じることはなかった。ハイブリッド走行時の動力性能をあえて鈍(なま)しているのか、1.5リッターガソリンエンジンをよりパフォーマンス方向に調律してあるのか。コトバの壁でそこまでは聞き出せなかったが、「パワープラントの“切り替わり”によるガッカリ感は避けたかった」というのが、昼食を共にしたBMW技術者の弁であった。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
PHVか、クリーンディーゼルか
というわけで、実際に乗ったMINIクーパーS EクロスオーバーALL4の感想は、まんま「BMW 225xeのパワープラントを積んだMINIクロスオーバー」というものだった。国産PHV勢に比肩するようなEV性能は持ち合わせていないが、「PHV的にも使えるHV」と割り切れば、これはなかなか便利でオモシロいクルマである。
ただ、せっかくMINI史上初のPHVなのだから、もう少し“らしい工夫”があってもよかったんじゃないの? と思ったのも事実だ。例えば、オフロード走行の記録を表示する「カントリータイマー」や、オープン走行の累積時間を示す「オールウェイズ・オープンタイマー」などと同じように、EV走行の時間を積算してアニメーションで表示するギミックがあったらカワイくないですか? それに四駆の制御についても、225xeに対して「MINIのキャラクターに合わせてフィーリングを変えた」(by開発関係者)という違いしかないとのことなので、スタイリングなりの悪路走破性能は期待しない方がよさそう。不整地をSUVらしく走らせたければ、それ用のフルタイム四駆を積んだ「クーパーD ALL4/クーパーSD ALL4」を選んだ方が無難だろう。
とはいえ、上述のあれやこれやは、いささかワタクシが“求めすぎ”なのでありましょう。なにせ日本での479万円というお値段は、ディーゼル車のクーパーSD ALL4(483万円)よりむしろ安いのだから。エンジンの大小や装備の有無などもあるので一概に比較はできないが、それでもPHVとなると通常モデルよりウン十万円もお高くなるのが常の昨今、この価格設定はちょっと興味深い。すでにさまざまな形態の電動カーが普及しており、同時にクリーンディーゼルについても市民権を得た日本のユーザーが、この2モデルに対してどう反応するか。気になるところである。
(文=webCG 堀田剛資/写真=BMW/編集=堀田剛資)
テスト車のデータ
MINIクーパーS EクロスオーバーALL4
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4315×1820×1595mm
ホイールベース:2670mm
車重:1770kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.5リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:6段AT
エンジン最高出力:136ps(100kW)/4400rpm
エンジン最大トルク:220Nm(22.4kgm)/1400-4300rpm
モーター最高出力:88ps(65kW)/4000rpm
モーター最大トルク:165Nm(16.8kgm)/0-3000rpm
システム最高出力:224ps(165kW)
システム最大トルク:385Nm(39.3kgm)
タイヤ:(前)225/50R18 99W/(後)225/50R18 99W(ピレリPゼロ)
燃費:17.3km/リッター(ハイブリッド燃料消費率、JC08モード)
価格:479万円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:2827km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
拡大 |

堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
-
ボルボXC90ウルトラT8 AWDプラグインハイブリッド(4WD/8AT)【試乗記】 2026.4.18 2016年に上陸した2代目となるボルボのフラッグシップSUV「XC90」の最新アップデートモデルに試乗。パワフルなプラグインハイブリッドシステムを採用する3列シートSUVの走りを、先にステアリングを握った「V60」や「XC60」との比較を交えながら報告する。
-
ハーレーダビッドソン・パン アメリカ1250リミテッド(6MT)【レビュー】 2026.4.17 アメリカの大地が鍛えたアドベンチャーモデル「ハーレーダビッドソン・パン アメリカ1250」に、充実装備の上級モデル「リミテッド」が登場! 試乗して感じられた、日欧のライバルに勝るとも劣らない魅力と、どうしても気になるポイントを報告する。
-
レクサスIS300h“Fスポーツ”(FR/CVT)【試乗記】 2026.4.15 「レクサスIS」のビッグマイナーチェンジモデルが登場。もはや何度目か分からないほどの改良だが、長年にわたってコツコツとネガをつぶし続けてきただけあって、スポーツセダンとしてひとつの完成形といえるレベルに達している。“Fスポーツ”の仕上がりをリポートする。
-
モーガン・スーパースポーツ(FR/8AT)【試乗記】 2026.4.14 職人の手になるスポーツカーづくりを今に伝える、英国の老舗モーガン。その最新モデルがこの「スーパースポーツ」だ。モダンながらひと目でモーガンとわかる造形に、最新のシャシーがかなえるハイレベルな走り。粋人の要望に応える英国製ロードスターを試す。
-
ボルボV60ウルトラT6 AWDプラグインハイブリッド(4WD/8AT)【試乗記】 2026.4.13 1990年代のステーションワゴンブームでトップランナーであったボルボ。その伝統を受け継ぐモデルが「V60」だ。現行型の登場は2018年とベテランの域に達しようとしているが、アップデートされた最新プラグインハイブリッドモデルの印象やいかに。
-
NEW
「洗車でボディーにキズがつく」って本当ですか?
2026.4.21あの多田哲哉のクルマQ&Aマイカーは常にきれいな状態で維持したいものの、クルマ好きの間では「洗車することでボディーにキズがつく」「洗いすぎは害になる」という意見もある。実際のところ、どうなのか? 元トヨタの多田哲哉さんに聞いてみた。 -
ディフェンダー110 X-DYNAMIC HSE P300e(4WD/8AT)【試乗記】
2026.4.20試乗記本格クロスカントリービークルの「ディフェンダー」にプラグインハイブリッド車の「P300e」が登場。電気の力を借りて2リッターターボとしては格段にパワフルになった一方で、カタログ燃費はなかなか悲観的な数値を示している。果たしてその仕上がりは? -
ポルシェジャパンのイモー・ブッシュマン社長に聞く 日本での展望とスポーツカーの未来
2026.4.20デイリーコラム2025年8月に着任した、ポルシェジャパンのイモー・ブッシュマン新社長。彼の目に日本はどう映り、またどのような戦略を考えているのか? 難しい局面にあるスポーツカーや電気自動車の在り方に対する考えを含め、日本における新しいリーダーに話を聞いた。 -
スバル・ソルテラET-HS(前編)
2026.4.19ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバル&STIでクルマを鍛えてきた辰己英治さんが、“古巣”スバルの手になる電気自動車「ソルテラ」に試乗。パワートレインの電動化以外にも、さまざまな試みが取り入れられた一台を、ミスター・スバルはどう評価するのか? -
第57回:スズキはなぜインドに賭ける? 変わらず牛が闊歩するインドの最新工場を小沢コージが直撃
2026.4.18小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ小沢コージがインドへ。日本の自動車ファンにとってインドといえばスズキのイメージだが、実はスズキは現在、インドへの大型投資の真っ最中だ。なぜスズキはインドでこれほどまでに愛されるのか。最新工場を見学して考えた。 -
ボルボXC90ウルトラT8 AWDプラグインハイブリッド(4WD/8AT)【試乗記】
2026.4.18試乗記2016年に上陸した2代目となるボルボのフラッグシップSUV「XC90」の最新アップデートモデルに試乗。パワフルなプラグインハイブリッドシステムを採用する3列シートSUVの走りを、先にステアリングを握った「V60」や「XC60」との比較を交えながら報告する。

















































