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第420回:キーワードは“電化”と“自動運転”
「Honda Meeting 2017」でホンダの最新技術に触れた(前編)

2017.06.14 エディターから一言
今回のイベントで最初に試乗した「クラリティ」シリーズの3台。既出の燃料電池車に加え、同じ車台をベースとしたPHEVとEVが追加投入される。
今回のイベントで最初に試乗した「クラリティ」シリーズの3台。既出の燃料電池車に加え、同じ車台をベースとしたPHEVとEVが追加投入される。拡大

ホンダが開催する、現在開発中の次世代技術を、見て、乗って、知ることができる恒例のイベント「Honda Meeting(ホンダミーティング)2017」を取材。その会場から、ホンダが思い描くモビリティーの未来を示す、新技術の数々を紹介する。

今回のイベントでは、地域ごとに投入されるドメスティックなモデルとグローバルモデルの双方を生かすという、ホンダの世界戦略についても語られた。写真は手前から、南米市場に投入される小型SUV「WR-V」と、中国向けの「アヴァンシア」、北米などで展開しているプレミアムブランド、アキュラの「MDX」。
今回のイベントでは、地域ごとに投入されるドメスティックなモデルとグローバルモデルの双方を生かすという、ホンダの世界戦略についても語られた。写真は手前から、南米市場に投入される小型SUV「WR-V」と、中国向けの「アヴァンシア」、北米などで展開しているプレミアムブランド、アキュラの「MDX」。拡大
電動パワートレインの戦略に関する技術説明の様子。ホンダでは電動車開発の専任組織である「EV開発室」を創設。研究開発を加速させているという。
電動パワートレインの戦略に関する技術説明の様子。ホンダでは電動車開発の専任組織である「EV開発室」を創設。研究開発を加速させているという。拡大
電動パワートレインを搭載した「クラリティ」シリーズの試乗エリア。加速性能や高速走行時の騒音などを確かめることができた。
電動パワートレインを搭載した「クラリティ」シリーズの試乗エリア。加速性能や高速走行時の騒音などを確かめることができた。拡大
2016年3月に発表された燃料電池車「クラリティ フューエルセル」。燃料電池ユニットと水素タンクを搭載しながら、5人乗車が可能な車内空間を実現している。
2016年3月に発表された燃料電池車「クラリティ フューエルセル」。燃料電池ユニットと水素タンクを搭載しながら、5人乗車が可能な車内空間を実現している。拡大

内燃機関の展示は一切なし

ホンダは2017年6月、開発中の次世代技術を報道関係者向けに公開するイベント、ホンダミーティング2017を同社の栃木研究所で開催した。燃料電池車(FCV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(EV)を同じプラットフォームで実現した「クラリティ」シリーズや、2020年に実用化が予定される自動運転技術を搭載した実験車両などが公開された。

今回のホンダミーティングで驚いたのは、内燃機関系のパワートレインにまつわる新技術の発表がなかったことだ。前回は排気量1リッター直列3気筒の直噴ターボエンジンや、10段の新型自動変速機(AT)など、新世代のパワートレインについても紹介があったのだが、今回の発表ではそれがなかったのが意外だった。

それではどのような技術が発表されたのかといえば、その内容は大きく分けて2つあった。ひとつは電動化技術への取り組み、もうひとつが、自動運転技術に代表される「安全・安心」への取り組みである。

まず電動化技術関連では、ひとつのプラットフォームでFCV、PHEV、EVの3種類のパワートレインの搭載を可能にしたクラリティシリーズを試乗することができた。最初に乗ったのはクラリティのFCVである。アクセルを踏み込んだ時の加速感は、まさに電動車両そのもので、出力177ps(130kW)のモーターの発生する強力な低速トルクによって、1890kgという重い車体を強力に加速させる。乗り心地は良好で、欧州高級セダンのような硬質の乗り味ではなく、かなりソフトなセッティングといえる。加速時にはモーター騒音のほかに、エンジンルームからはわずかにヒューンという、燃料電池に空気を送り込むためのコンプレッサー騒音が聞こえるが、絶対的な騒音レベルは低く、大げさにいえば「異次元の加速」が得られる。

EVが秘める運動性能の可能性

次にPHEVに乗った。こちらはアクセルに仕掛けがあり、踏み込んでいくとクリック感を覚えるポイントが設けられていて、モーター走行優先のモードでは“クリック”の手前までしかアクセルを踏んでいない限り、エンジンは始動しない(もちろん、電池容量が規定よりも低下すれば始動するが)。それでも加速力は十分で、一般道ではほとんどこれ以上は必要ないといえるものだ。

アクセルを奥まで踏み込むと、確かにエンジンがかかり、加速時の騒音レベルは高まる。なので、恐らく通常のユーザーはなるべくエンジンがかからないように運転するようになるのではないだろうか。モーター出力は184ps(135kW)と、3モデルの中では最も大きいのだが、正直にいってFCVとの加速力の違いはよく分からなかった。

最後に乗ったEVモデルは、航続距離が短い点を除けば、走っていて最も楽しいモデルだった。モーター出力は163ps(120kW)と、3モデルの中では最も小さいのだが、加速感は一番鋭い。開発担当者にその理由を尋ねると、EVらしさを強調するために、アクセル開度に対する加速を3モデルの中で一番速くしているのだという。電池の出力が3モデルの中では一番大きいから、大出力を取り出しやすいという背景もあるだろう。EVになると運転の楽しさが失われることを危惧する向きもあるが、大多数の一般ドライバーは、低速トルクの大きいEVの運転感覚を、エンジン車よりも望ましいと感じるのではないだろうか。

こうしたEVの走行性能の可能性を示すモデルとして今回デモ走行を披露したのが、NSXをベースとした「NSX-Inspired EV Concept」である。2016年6月に米国で開催された「第100回パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」に出走したもので、改造EVクラス2位、総合でも3位の好成績を挙げた。

同コンセプトモデルは、市販の「NSX」が搭載している四輪駆動システム「スポーツハイブリッドSH-AWD」を発展させた、4輪を独立したモーターで駆動する進化型「SH-AWD」を搭載している。今回のイベントでは、パイクスピークでのドライバーである山野哲也選手が同コンセプトモデルを運転し、その猛烈な加速力や、4輪のトルクを自在にコントロールすることで得られる運動性能を生かした8の字走行などを披露した。

「クラリティ」のPHEVには、「アコード」シリーズに採用されていたハイブリッドシステム「i-MMD」の改良版が搭載されている。機構は1.5リッターガソリンエンジンと2基のモーターからなり、17kWhのリチウムイオンバッテリーにより、42マイル(約67.6km)の一充電走行可能距離を実現しているという(ホンダ車内測定値)。
「クラリティ」のPHEVには、「アコード」シリーズに採用されていたハイブリッドシステム「i-MMD」の改良版が搭載されている。機構は1.5リッターガソリンエンジンと2基のモーターからなり、17kWhのリチウムイオンバッテリーにより、42マイル(約67.6km)の一充電走行可能距離を実現しているという(ホンダ車内測定値)。拡大
「クラリティ」シリーズの中では、EVやFCVと比べて十分なラゲッジルームが確保されている点もPHEVの特徴。後席の分割可倒機構も備わっている。
「クラリティ」シリーズの中では、EVやFCVと比べて十分なラゲッジルームが確保されている点もPHEVの特徴。後席の分割可倒機構も備わっている。拡大
出力120kWのモーターと蓄電量25.5kWhのバッテリーを搭載した「クラリティ」のEVバージョン。一充電走行可能距離は80マイル(約128.7km)以上と公表されている(ホンダ車内測定値)。
出力120kWのモーターと蓄電量25.5kWhのバッテリーを搭載した「クラリティ」のEVバージョン。一充電走行可能距離は80マイル(約128.7km)以上と公表されている(ホンダ車内測定値)。拡大
デモ走行を披露した「NSX」ベースのEV「NSX-Inspired EV Concept」。2016年のパイクスピークヒルクライムに投入された車両で、本番同様、デモ走行でも山野哲也選手がドライバーを務めた。
デモ走行を披露した「NSX」ベースのEV「NSX-Inspired EV Concept」。2016年のパイクスピークヒルクライムに投入された車両で、本番同様、デモ走行でも山野哲也選手がドライバーを務めた。拡大

意外と快適な新型「タイプR」

電動化や自動運転といった将来につながる技術の展示が多い中で、既存技術の進化の方向を示したのがダイナミクスをテーマにした展示だ。ホンダがダイナミクス性能で追求しているのは「信頼」と「意のままにドライブできる」の2点だ。その最新の成果が、すでに米国や欧州では発売され、日本でも2017年夏の発売が予定されている新型「シビック」である。

新型シビックには新開発のプラットフォームが採用されている。これは米国ですでに発売されている新型「CR-V」にも使われているもので、2017年秋に発売が予定されている新型「アコード」にも用いられる予定だ。このプラットフォームは「応答性」「安定性」「振動遮断性」を重視して開発されており、そのために車体やサスペンションの高剛性化が図られている。

今回のイベントでは、2017年夏に発売が予定されている新型「シビック タイプR」と、新型「シビックセダン」に開発中の技術を盛り込んだ研究試作車の2台が用意された。まず乗り込んだのは、セダンの研究試作車。詳細は明かされなかったのだが、車両の運動性能を向上させるために開発中の技術が盛り込まれているという。短い周回コースを2周するだけの試乗だったのだが、ステアリングの動きに対して車両が非常に機敏に反応することが印象的だった。自分の操作の結果がすぐに車両の動きに表れるので修正もしやすく、安心して運転できるのが特徴だ。

次に乗ったタイプRには走行モードのセレクト機能が搭載されており、1周目を「コンフォートモード」で回った。開発担当者いわく「後席の家族からも苦情の出ない乗り心地を目指した」という。平たんな周回コースなので詳細を確かめるまでには至らなかったが、その範囲での運転では、確かに乗り心地は良好だった。2周目は通常のモードを選択したが、それでも、それほど乗り心地が悪化した感じはしない。320psを発生するパワートレインの真価は、残念ながらこの短いコースでは発揮できたとはいい難い。いずれにせよ、かつてに比べてはるかに快適性が向上していることは確認できた。(後編へつづく)

(文=鶴原吉郎/写真=本田技研工業、webCG/編集=堀田剛資)

新型「シビック タイプR」と、新型「シビックセダン」をベースとした研究試作車。
新型「シビック タイプR」と、新型「シビックセダン」をベースとした研究試作車。拡大
ホンダの新世代プラットフォームが用いられた3台。写真奥から、新型「CR-V」「シビックセダン」「シビックハッチバック」。
ホンダの新世代プラットフォームが用いられた3台。写真奥から、新型「CR-V」「シビックセダン」「シビックハッチバック」。拡大
ワインディング東コースを走る「シビックセダン」ベースの研究試作車。ホンダはダイナミクス性能の開発においても、既出の「EV開発室」と同じく専門の部署である「商品・感性価値企画室」を新設。開発におけるプライオリティーを上げている。
ワインディング東コースを走る「シビックセダン」ベースの研究試作車。ホンダはダイナミクス性能の開発においても、既出の「EV開発室」と同じく専門の部署である「商品・感性価値企画室」を新設。開発におけるプライオリティーを上げている。拡大
新型「シビック タイプR」の見どころは、新開発のプラットフォームがかなえた大幅なボディー剛性の強化と軽量化。運動性能を高めるため、マルチリンク式のフロントサスペンションが用いられている。
新型「シビック タイプR」の見どころは、新開発のプラットフォームがかなえた大幅なボディー剛性の強化と軽量化。運動性能を高めるため、マルチリンク式のフロントサスペンションが用いられている。拡大
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