ホンダ・シビックセダン(FF/CVT)/シビックハッチバック(FF/CVT)
カーマニアは健在だ! 2017.11.24 試乗記 6年ぶりに日本に帰ってきた「ホンダ・シビック」。イメージリーダーを務めるのはもちろんホットバージョンの「タイプR」だが、果たして“素”のモデルの出来栄えは? 「ハッチバック(HB)」と「セダン」、それぞれの魅力を探った。怪獣並みの成長速度!?
新型シビックの受注が、予想に反して好調だという。これは大どんでん返しというべきかもしれない。なにせ、これほど売れない売れないと言われつつ発表を迎えたモデルも珍しいから。
売れないと予想された理由は、「あまりにも大きすぎてシビックじゃない」「イギリスからの逆輸入で値段が高くなる」といったあたりだ。
確かに新型シビックはデカい。セダンは「BMW 3シリーズ」や「メルセデス・ベンツCクラス」とほぼ同じ。かつてシビックといえば、「Aクラス」どころか「スマート」みたいなもんだったのだから、その成長速度は怪獣並みともいえる。
が、日本市場でのしばしの不在により、この怪獣的肥大化、マイナス面が打ち消された。
シビックは05年の8代目以降、国内ではまったく売れなくなり、ほぼ「いないも同然」だった。つまり、実質12年ぶりの復帰だ。
この間に、シビックというクルマに対するイメージそのものが曖昧になった。子供だって12年も会わなきゃ別人になるっしょ? そんな感じでこの成長、割合抵抗なく受け入れられているようなのだ。
価格については、ホンダがかなり頑張った。寄居工場製のセダンが約265万円。イギリス製のHBが280万円。全長が短いHBの方が15万円高いのは逆転だが、許せる範囲ではないか? HBの方が精悍(せいかん)でカッコいいし(私見)。
実際、タイプRも含めると、受注の75%をHBが占めている。1.5リッターターボのHBが全体の50%で、一番売れ筋なのである。これが295万円とかだったら、結果はかなり違うものになったのではないか。
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プラットフォームを新開発
今回の試乗会は1.5リッターターボを積んだフツーのシビックのみで、タイプRは用意されなかった。タイプRがあると、メディアの目がそっちにばかりに注がれるので、あえて外したといううわさだが、実際、(別の機会に乗った)タイプRはすごかった。走ってたらA・セナの顔が思い浮かんだ。こんなことはVTEC初登場の時――つまり30年ぶりくらいだ。新型シビック タイプRは、FFの「フェラーリF40」だった!
タイプRは320ps。一方フツーのシビックは、HBが182ps(ハイオク仕様)でセダンが173ps(レギュラー仕様)。パワーには大差がある。
が、乗った感じ、ボディーの剛性感や乗り心地はとても近かった。つまり、しなやかで快適だけど、しっかりダンピングが効いてロールも抑えられた、現代のプレミアムカー的なものだ。タイプRを含めて対応すべく、プラットフォームを新開発しただけのことはある。
一方ステアリングフィールは、ホンダらしく軽めで手応えが乏しく、ちょっと安っぽい。そこは価格なりだ。これはセダンもHBも同傾向である。
セダンに乗って思い浮かべたクルマとは?
セダンの強みは、静粛性と価格ということになろうか。タイヤやボディー構造の差もあり、HBに比べるとはるかに静か。乗り心地はスポーティーだが快適性のレベルはかなり高い。
エンジンも、レギュラー仕様のダウンサイジングターボとしてはかなり頑張っている。ダウンサイジングターボエンジンは、オクタン価が低いと性能を出しづらいが、このエンジンはそのハンディをほとんど感じさせず、全域でフツーに元気に走ってくれる。ただ、特にこれといった美点もない。
トランスミッションはCVTのみ。カラ回り感の小さい、よくできたものだが、これまた特にステキではない。パドルシフトで操作可能な7段の疑似MTも、めったに使うことはないでしょう。
セダンのフォルムはハッチバック的でスポーティーだが、エラの張った近年のホンダ顔は上品とはいえず、インテリアもごくフツー。走りを含めたトータルでは、可もなく不可もない薄味仕立てで、思い浮かんだのは「ギャランフォルティス」だった。
三菱ギャランフォルティスは、端正なフォルムを持った佳作だった。走りも可もなく不可もなかったが、極度の販売不振に終始したため、めったに見ないマイナーな存在となった。
新型シビックの初期受注は好調というが、セダンはそのうち25%で、最初から売れ行きが鈍い。つまり、将来的にも街であまり見かけない、薄味の佳作になる予感がする。ギャランフォルティスみたいに。
ハッチバックは“タイプRジュニア”だ!
一方HBは、かなり濃い仕上がりだ。
まず見た目。ホンダデザインはいよいよマジンガーZ路線を貫くことを決定したのか!? と思いつつ、これが妙にカッコいい。超絶ガンダムなタイプRの性能に神を見てしまった影響もあろうが、タイプRをおとなしくした雰囲気が適度に戦闘的で、中高年の心を打つ。
HBはイギリス製だけに、エンジンもハイオク仕様。セダンに対してはわずか9psのアップだが、マフラーは中央の2本出しとなり、乾いたスポーティーなサウンドを奏でる。
クルマというものは、これだけで受ける印象がまるで違ってくる。低回転域でもかすかに気持ちいい響きがあり、中回転から上は明確にホンダ的(昔の)になる。トップエンドの伸びはさすがにいまひとつだが、そこまで望む人はタイプRに行くべし。6段MTはもちろん、CVTでも常に適度にスポーティーな快感が味わえて、たまにムチを入れればしっかり期待に応えてくれる。
正直、これで十分速い! 速すぎると走るところがなくて困るけど、この街中のオオカミ的な性格が中高年の小脳に響く。
HBは、セダンとは一転、ロードノイズはかなり入ってくる。ハッチバックボディーだし、タイヤもまるで違う。ハッチバックは18インチ。セダンは16インチ。ノイズが違って当然だ。
が、特にやかましいわけではないし、乗り心地はプレミアムスポーティーだし、後席もラゲッジルームも十分広い。実用性は完全に満たしつつ、プラスアルファの楽しみがある。
特に6段MTだと、印象はずばり“タイプRジュニア”。スペックを見ると、馬力はCVTモデルと同じだが、トルクがやや太くなっている。
実際に走ると、トルクが太いというより、ミッションの違いもあってキレが断然鋭い。このボディーにこの足まわり、そしてこのエンジンにこのミッション。タイプRまで行かなくても、これで十分マニアを満足させられる。
ところがHBのうち、6段MT車が受注の35%を占めているという。初速だけだろうなぁと思いつつ、マジすか!? 世の中、まだそんなにカーマニアがいたんスか!?
ホンダ側の想定も「MTが15%くらい行けば」だったそうで、HBのMTは、今注文しても、納車は来春になるという。
(文=清水草一/写真=田村 弥/編集=藤沢 勝)
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テスト車のデータ
ホンダ・シビックセダン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4650×1800×1415mm
ホイールベース:2700mm
車重:1300kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:173ps(127kW)/5500rpm
最大トルク:220Nm(22.4kgm)/1700-5500rpm
タイヤ:(前)215/55R16 91V /(後)215/55R16 91V (ミシュラン・プライマシー3)
燃費:19.4km/リッター(JC08モード)
価格:265万0320円/テスト車=294万7644円
オプション装備:ボディーカラー<プレミアムクリスタルレッドメタリック>(5万9400円) 以下、販売店オプション フロアカーペットマット(4万2120円)/Gathersナビゲーションシステム(16万5240円)/ナビ取り付けアタッチメント(2160円)/デジタルテレビ用フィルムアンテナ(7020円)/ドライブレコーダー(2万1384円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:1260km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
ホンダ・シビックハッチバック
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4520×1800×1435mm
ホイールベース:2700mm
車重:1320kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:182ps(134kW)/6000rpm
最大トルク:220Nm(22.4kgm)/1700-5500rpm
タイヤ:(前)235/40R18 95Y/(後)235/40R18 95Y(グッドイヤー・イーグルF1アシメトリック2)
燃費:17.4km/リッター(JC08モード)
価格:280万0440円/テスト車=324万8964円
オプション装備:レザーインテリア・運転席8Way/助手席4Wayパワーシート(21万0600円) ※以下、販売店オプション フロアカーペットマット(4万2120円)/Gathersナビゲーションシステム(16万5240円)/ナビ取り付けアタッチメント(2160円)/デジタルテレビ用フィルムアンテナ(7020円)/ドライブレコーダー(2万1384円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:1320km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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