プジョー508グリフ(FF/6AT)/508SWアリュール(FF/6AT)【試乗記】
落ち着いたライオン 2011.07.31 試乗記 プジョー508グリフ(FF/6AT)/508SWアリュール(FF/6AT)……414万円/409万円
「プジョー508/508SW」に、徳大寺有恒が試乗。歴代プジョーを乗り継いだ巨匠は、新たなフラッグシップをどう評価する?
重責のニューモデル
松本英雄(以下「松」):今日の試乗車は日本に導入されたばかりの「プジョー508/508SW」です。
徳大寺有恒(以下「徳」):「407/407SW」の後継モデルだな。
松:ええ。同時にフラッグシップである「607」の市場をも受け継ぐそうです。
徳:「607」は数年前から日本には輸入されていなかったが、本国でも後継モデルが出る予定はないのかい?
松:当面はないそうですよ。
徳:じゃあ、「508/508SW」に課せられた役割は大きいな。
松:そうなんですよ。ところで、巨匠とプジョーの関係というと? たしか「106」に乗ってらしたことがあると思うんですが。
徳:プジョーは昔から好きでさ、けっこう乗ってるんだよ。最初は中古の「403」だったな。
松:「403」って、『刑事コロンボ』の愛車ですよね。
徳:そう。コロンボはカブリオレだけど、俺が乗ってたのはベルリーヌ(セダン)。
松:あれって1950年代生まれのクルマでしょう? いつごろ乗ってたんですか?
徳:70年代だったと思う。初めてパリに行ったのは60年代後半だが、それから70年代にかけては、まだ向こうでは「403」がたくさん走っていたんだよ。それを見て、「ああいいな」と思って。昔のプジョーらしく堅実で、これといって特徴のないクルマなんだが。
松:“パリの薫り”がすると。シトロエンやルノーとはまた違う、独特の雰囲気がありますものね。しかし買った当時としても、すでに古いクルマだったでしょう?
拡大 |
拡大 |
拡大 |
徳:うん。作ってたのは60年代初頭までだから。次に後継モデルの「404」のベルリーヌを、やはり中古で買ったんだ。
松:また渋いところを。タフなプジョーの定評を築いたモデルですね。
徳:タフといえば、そのまた後継の「504」にも乗ったよ。ディーゼルエンジンの「504D」だったから、やかましくて遅いのには参ったけど、恐ろしく頑丈だった。
松:すごいですね。「508」の先祖にあたる中級モデルの「403」「404」「504」を乗り継いでいたなんて。
徳:その後少し間があって、初めて新車で買ったプジョーが「205GTI」。松:チャーミングなスタイルと小気味いい走りで、日本におけるプジョーの知名度を一気に高めたモデルですね。
徳:次がさっきキミが言ってた「106」で、今のところそれが最後のプジョーかな。そうそう、「205ターボ16」も買ったんだよ。2000kmぐらい乗って手放したけどさ。
松:え〜っ!? 「205ターボ16」って、200台限定のグループBのホモロゲーションモデルじゃないですか。見た目は「205」だけど、中身はミドシップ4WDの。
徳:そう。当時、並行で何台か入ったうちの1台を知り合いのクルマ屋が持ってきたので、話のタネに買ってみたんだ。
松:巨匠がそれほどのプジョー遍歴をお持ちだったとは……恐れ入りました。
拡大 |
拡大 |
DNAは受け継ぎながら……
松:じつは過去に6台も乗り継いだことのある、かなりのプジョー好きである巨匠にとって、その魅力とはなんでしょう?
徳:コンベンショナルで、凝ってないところかな。とくに昔のモデルはそうで、どこでもサービスすることができた。
松:だからアフリカで強かったんですね。往年の植民地政策の名残もあるでしょうけど。
徳:そうした堅実な実用車でありながら、ピニンファリーナによるエレガントなスタイリングを持っていた。かつては多くのモデルに、しゃれたクーペとカブリオレをラインナップしていたところもよかったな。
松:なるほど。新しい508にも、巨匠が好きだったそうしたプジョーのDNAは受け継がれていますかね。第一印象はいかがですか?
徳:先代の407に比べると、おとなしくなったというか、オーソドックスな路線に戻った感じだな。
松:そうですね。407はスポーツカーのような顔つきでしたから。
徳:ボディサイズは407より大きくなったんだな。607のマーケットまでカバーしなければ、ってこともあるんだろうが。
松:ホイールベースはプラットフォームを共有する「シトロエンC5」と同じ2815mmで407より90mm伸び、全長はセダンで4790mmと、105mm伸びてます。
徳:兄弟車ともいえるC5や「フォルクスワーゲン・パサート」あたりとほぼ同じ大きさか。
松:ええ。ボディは大きくなったものの、軽量化に努めた結果、車重は407の2.2リッター直4搭載モデルと比べて40〜70kgほど軽くなっているそうですよ。
徳:ほう。エンジンはすでにおなじみの、BMWとPSAグループの共同開発による1.6リッター直4の直噴ターボだよな。
松:そうです。508の登場によって、プジョー/シトロエンの日本向けモデルのエンジンは2種類に絞られました。全ラインナップが、1.6リッターのNAかターボのいずれかを搭載するわけです。
徳:日本市場のサイズを考えたら、合理的な判断だろう。
松:508についていえば、本国でもガソリン版は1.6NAと同ターボの2種しかないんですよ。主力となるディーゼルターボは1.6、2.0、2.2の3サイズ4チューンが用意されていますが。
徳:ということは、すべて4気筒か。ちょっぴり寂しい気もするが、ダウンサイジングがいよいよ本格化しているんだな。
松:ギアボックスはアイシン製の6AT。407から採用されていましたが、第2世代に進化したそうで、パドルシフトもついてます。ということで、そろそろ乗ってみましょうか。
|
拡大 |
拡大 |
拡大 |
走りも価格もグッとくる
松:508、508SWともに「Allure(アリュール)」という標準グレードと「Griffe(グリフ)」という上級グレードが用意されています。両グレードの違いはシート表皮の素材、ホイール/タイヤのサイズ、ヘッドアップディスプレイの有無、ヘッドライトの方式などで、試乗車は508のグリフです。
徳:例によって高級版はレザーシートか。それはともかくとして、内装が黒っていうのはどうも色気に乏しいな。俺の好みでは、やっぱりベージュやタンなどの明るい色のほうがいいよ。
松:そうですね。室内がより広く、開放的に感じられますし。でも両グレードとも内装色は黒しかないんですよ。
徳:そうか。残念だが、これまた日本市場の規模からすると仕方ないんだろうな。
松:車重は約1.5トン、今日はスタッフを含めて4人乗車なんですが、(八ケ岳付近の)こうした登りのワインディングでも力不足はまったく感じませんね。
徳:ああ。これより車重が重いシトロエンC5でも不満はなかったんだから、当然といえば当然なんだが、この1.6リッターターボはよくできてるよ。
松:ええ。先日乗った「フォルクスワーゲン・パサート」の1.4リッターターボのほうが、設計が新しいぶん静粛性では優っているように感じましたが、力強さではこちらのほうが上ですね。
徳:大昔のカローラのキャッチフレーズみたいだけど、プラス200ccの余裕ってとこか。個人的には6気筒の滑らかさに未練はあるが、実用上は直4ターボでもまったく不満はないな。
松:長年にわたって改良されてきたトルコン式のATもいいですね。CVTやデュアルクラッチトランスミッションより、慣れ親しんでいるせいもあって感覚的には好きだなあ。
徳:そうだな。乗り心地はやや固めじゃないか? 道路の継ぎ目などの突き上げがちょっと気になるのだが。
松:おそらく17インチのホイール/タイヤを履いているからでしょう。さっき16インチのアリュールに乗ったところ、もっとしなやかでしたから。
徳:なるほど。ということは、自分で買うんだったらアリュールでいいな。レザーよりファブリックシートのほうがいいし、ナビもいらないから。
松:ところがアリュールでもナビは標準装備なんですよ。
徳:そうか。で、いくらなんだい?
松:508のアリュールが374万円、グリフが414万円です。508SWだと394万円と437万円。
徳:508SWの広大なガラスルーフは、やっぱり高いほうだけに付いてくるのかな?
松:いいえ、「パノラミックガラスルーフ」はアリュールにも標準です。
徳:それで400万円を切るのはお買い得な気がするな。ちょっと魅力的じゃないか。
松:では巨匠、106以来久々となる、7台目のプジョーとしていかがでしょう?
徳:う〜ん、現実的な話となると、今の俺にはもっと小さいクルマのほうがいいんだよなあ。
(語り=徳大寺有恒&松本英雄/まとめ=沼田亨/写真=峰昌宏)

徳大寺 有恒

松本 英雄
自動車テクノロジーライター。1992年~97年に当時のチームいすゞ(いすゞ自動車のワークスラリーチーム)テクニカル部門のアドバイザーとして、パリ・ダカール参加用車両の開発、製作にたずさわる。著書に『カー機能障害は治る』『通のツール箱』『クルマが長持ちする7つの習慣』(二玄社)がある。

沼田 亨
1958年、東京生まれ。大学卒業後勤め人になるも10年ほどで辞め、食いっぱぐれていたときに知人の紹介で自動車専門誌に寄稿するようになり、以後ライターを名乗って業界の片隅に寄生。ただし新車関係の仕事はほとんどなく、もっぱら旧車イベントのリポートなどを担当。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.3.3 「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。
-
ドゥカティ・モンスター(6MT)【海外試乗記】 2026.3.2 ドゥカティのネイキッドスポーツ「モンスター」が5代目にモデルチェンジ。無駄をそぎ、必要なものを突き詰めてきた歴代モデルの哲学は、この新型にも受け継がれているのか? 「パニガーレV2」ゆずりのエンジンで175kgの車体を走らせる、ピュアな一台の魅力に触れた。
-
フォルクスワーゲンID.4プロ(RWD)【試乗記】 2026.2.28 フォルクスワーゲンのミッドサイズ電気自動車(BEV)「ID.4」の一部仕様変更モデルが上陸。初期導入モデルのオーナーでもあるリポーターは、その改良メニューをマイナーチェンジに匹敵するほどの内容と評価する。果たしてアップデートされた走りやいかに。
-
スズキ・キャリイKX(4WD/5MT)【試乗記】 2026.2.27 今日も日本の津々浦々で活躍する軽トラック「スズキ・キャリイ」。私たちにとって、最も身近な“働くクルマ”は、実際にはどれほどの実力を秘めているのか? タフが身上の5段MT+4WD仕様を借り出し、そのパフォーマンスを解き放ってみた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.2.26 日本で久々の復活を遂げた「ホンダCR-V」の新型に、北海道のテストコースで試乗。雪上・氷上での“ひとクラス上”の振る舞いに感嘆しつつも、筆者がドン! と太鼓判を押せなかった理由とは? デビューから30年をむかえたCR-Vの、実力と課題を報告する。
-
NEW
BYDシーライオン7 AWD(4WD)
2026.3.5JAIA輸入車試乗会2026堂々たるスタイルにライバルの上をいくパワーと一充電走行距離、そしてざっくり2割はお得なプライスを武器とする電気自動車「BYDシーライオン7」。日本市場への上陸から1年がたち、少しずつ存在感が増してきた電動クーペSUVの走りやいかに。 -
NEW
ついにハードウエアの更新も実現 進化した「スバルアップグレードサービス」の特徴を探る
2026.3.5デイリーコラムスバルが車両の機能や性能の向上を目的とした「スバルアップグレードサービス」の第3弾を開始する。初めてハードウエアの更新も組み込まれた最新サービスの特徴や内容を、スバル車に乗る玉川ニコがオーナー目線で解説する。 -
NEW
第951回:日本が誇る名車を再解釈 「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」の開発担当者に聞く
2026.3.5マッキナ あらモーダ!2026年の「東京オートサロン」で来場者の目をくぎ付けにした「ホンダNSXトリビュートby Italdesign」。イタルデザインの手になる「ホンダNSX」の“再解釈”モデルは、いかにして誕生したのか? イタリア在住の大矢アキオが、開発関係者の熱い思いを聞いた。 -
メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(4WD/9AT)【試乗記】
2026.3.4試乗記メルセデス・マイバッハから「SL680モノグラムシリーズ」が登場。ただでさえ目立つワイド&ローなボディーに、マイバッハならではのあしらいをたっぷりと加えたオープントップモデルだ。身も心もとろける「マイバッハ」モードの乗り味をリポートする。 -
始まりはジウジアーロデザイン、終着点は広島ベンツ? 二転三転した日本版「ルーチェ」の道のり
2026.3.4デイリーコラムフェラーリ初の電気自動車が「ルーチェ」と名乗ることが発表された。それはそれで楽しみな新型車だが、日本のファンにとってルーチェといえばマツダに決まっている。デザインが二転三転した孤高のフラッグシップモデルのストーリーをお届けする。 -
第863回:3モーター式4WDの実力やいかに!? 「ランボルギーニ・テメラリオ」で雪道を目指す
2026.3.3エディターから一言電動化に向けて大きく舵を切ったランボルギーニは、「ウラカン」の後継たる「テメラリオ」をプラグインハイブリッド車としてリリースした。前に2基、リアに1基のモーターを積む4WDシステムの実力を試すべく、北の大地へと向かったのだが……。






























