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第505回:交通事故死傷者ゼロを目指して!
最新の「Toyota Safety Sense」をテストコースで体感

2018.06.13 エディターから一言 大音 安弘
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第505回:交通事故死傷者ゼロを目指して!最新の「Toyota Safety Sense」をテストコースで体感の画像拡大

2018年より導入が開始された、トヨタの予防安全パッケージである第2世代の「Toyota Safety Sense」。「交通事故死傷者ゼロ」を究極の目標に掲げて開発が進む先進安全運転支援機能の“今の立ち位置”は? 静岡・東富士の同社テストコースで、プリクラッシュセーフティーを体感した。

2009年8月に発売された「ボルボXC60」。極低速での追突事故を未然に防ぐ安全技術「シティセーフティー」が搭載されていた。
2009年8月に発売された「ボルボXC60」。極低速での追突事故を未然に防ぐ安全技術「シティセーフティー」が搭載されていた。拡大
2015年にマイナーチェンジした「カローラアクシオ」と「カローラフィールダー」にトヨタ初となる「Toyota Safety Sense C」が搭載された。
2015年にマイナーチェンジした「カローラアクシオ」と「カローラフィールダー」にトヨタ初となる「Toyota Safety Sense C」が搭載された。拡大
「Toyota Safety Sense C」の、カメラおよびレーザーレーダーのセンサー部。
「Toyota Safety Sense C」の、カメラおよびレーザーレーダーのセンサー部。拡大

急速に普及が進む先進安全機能

2009年にボルボが完全停止可能な衝突被害軽減ブレーキを搭載した「XC60」を国内に初めて導入して以降、国産車や他の輸入車でも、同様の機能の採用が進み始めた。現在では、ブランドごとに名称はさまざまだが、複数の先進安全機能をパッケージしたものを標準化するまでになっている。例えばスバルの「EyeSight(アイサイト)」もそのひとつで、昨今のスバル人気のきっかけにもなった。数年前まではこれらの先進機能は付加価値のひとつであったが、市場のニーズと各社の普及への取り組みから軽自動車へも標準化が進められ、今では商用車にまで広がりを見せている。

トヨタ自動車は、2015年に「Toyota Safety Sense」と呼ぶ先進安全運転支援機能のパッケージの導入を開始した。普及を進めるために機能を絞ることで安価にしたエントリーの「Toyota Safety Sense C」と機能を強化した上級の「Toyota Safety Sense P」の2タイプを設定。現在では日米欧のほぼすべての車種に設定を完了し、世界累計販売台数は約800万台までになっている。1000万台達成も目前というから、その普及が加速していることが分かる。

ここで第1世代のおさらいをすると、「Toyota Safety Sense」には「C」と「P」の2タイプがあり、レーザーレーダーと単眼カメラを組み合わせた「C」は、「自動ブレーキ」「車線逸脱警告」「自動ハイビーム」のシンプルな機能を持つ。一方「P」は、単眼カメラとミリ波レーダーを組み合わせることでより高性能化。自動ブレーキの対象を車両のみでなく、昼間の歩行者までカバーするなど機能向上が図られた上で、「ACC(アダプティブクルーズコントロール)」を追加していた。そして2018年に市場投入が始まった第2世代では「P」をベースに開発した「Toyota Safety Sense」に一本化。これにより安全性を高めるだけでなく、基本的な機能については車種による差をなくしていく方針だという。

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夜間の歩行者、昼間の自転車にも対応

第2世代の「Toyota Safety Sense」は、単眼カメラとミリ波レーダーの性能を進化させ、検知対象を拡大。幅広い車種に対応すべくユニットの小型化も図られている。主な機能は、「P」の機能を向上させたもので、「ACC」も全車速追従とするなど進化。さらに新機能として「先行車発進告知」や「道路標識表示機能」を追加している。基本機能の中で大幅に機能向上が図られたのが衝突被害の回避や軽減を図る自動ブレーキ機能で、「夜間歩行者」と「自転車運転者」を検知対象に追加。これにより作動領域は、対車両(約10km/h~180km/h)、対歩行者(昼:約10km/h~80km/h、夜:約10km/h~80km/h)、対自転車(昼:約10km/h~80km/h)となっている。現時点では、2017年12月にマイナーチェンジが発表されたミニバン「アルファード/ヴェルファイア」に搭載済みで、今後登場する新型車にも積極的に展開していくという。

トヨタ自動車は「交通事故死傷者ゼロ」を究極の目標に置いて開発を進めており、従来型でも交通死亡事故の90%を占める「歩行者事故」「逸脱事故」「交差点事故」「追突事故」をカバーする内容となっていたが、それを第2世代では、センシング性能などの向上を図ることで、対応可能な状況やカバーエリアを拡大させたのが最大の特徴といえる。今回の説明会では、夜間の認識も可能となった「歩行者対応自動ブレーキ」と新機能の「自転車運転者対応自動ブレーキ」をテストコースで試すことができた。

2018年1月に発売された「アルファード/ヴェルファイア」の最新モデル全車には、第2世代の「Toyota Safety Sense」が標準装備となった。
2018年1月に発売された「アルファード/ヴェルファイア」の最新モデル全車には、第2世代の「Toyota Safety Sense」が標準装備となった。拡大
第2世代の「Toyota Safety Sense」では「P」で採用していた「単眼カメラ+ミリ波レーダー」の構成はそのままに、カメラ・レーダーの性能向上などによって機能向上を果たしている。
第2世代の「Toyota Safety Sense」では「P」で採用していた「単眼カメラ+ミリ波レーダー」の構成はそのままに、カメラ・レーダーの性能向上などによって機能向上を果たしている。拡大

暗闇の中、ライトに人影が浮かぶ

歩行者対応自動ブレーキは、歩行者死亡事故昼夜割合の70%を占める夜間への対応に加え、死亡事故行動別割合で78%にも達する道路横断中のさまざまな歩行者の動きに対応。今回は日中だけでなく、新たに追加された夜間での機能の作動体験が行われた。日中のシチュエーションは、教習所でも強く注意を促される、駐停車中の車両の陰から道路を横断する歩行者と遭遇するというものだ。テスト車である「ヴェルファイア」は40km/hで走行。衝突警告が発せられた瞬間、もう飛び出した子供(5km/hで可動する人形)は目前におり、まさに衝突回避が難しいかもと思わせる状況だ。その時点でブレーキを踏めば回避できる可能性が高いが、今回は体験のため、警告を無視する。すると直後に自動ブレーキが作動。クルマは大きく揺れて完全停止し、見事に衝突を回避してくれた。さらに夜間の体験では、街灯もない道を30km/hで走行中に、目前に人が現れたという状況も体験。暗闇の中、前方を照らすライトが人影を捉えた直後に衝突警告が発せられ、緊急自動ブレーキが作動。こちらも見事に衝突を回避することができた。

追加された日中のみ対応可能な自転車運転者対応自動ブレーキは、15km/hで走行する自転車が40km/hで走る「アルファード」の前を横切る想定だ。ただ道路上に障害物はないため、かなり前から目視で存在を認識できる状況にあった。これではよほど長い時間わき見をしていない限り、衝突の危険は少ない。こちらも問題なく、警告後に自動ブレーキが作動。衝突を回避した。やや現実味がない状況とも思えたが、田んぼの中など見通しのよい交差点では、左右から接近してくる車両同士の速度を見誤り、衝突するケースもあるので、効果がないとは言い切れないだろう。

時速40kmで走行する「ヴェルファイア」の前に、子供を模したダミー人形が飛び出す。
時速40kmで走行する「ヴェルファイア」の前に、子供を模したダミー人形が飛び出す。拡大
衝突警告が発せられた後、緊急自動ブレーキが作動。「ヴェルファイア」は、ダミー人形の直前で停止した。
衝突警告が発せられた後、緊急自動ブレーキが作動。「ヴェルファイア」は、ダミー人形の直前で停止した。拡大

死傷者ゼロはクルマの進化だけでは難しい

実際にハンドルを握り、自動ブレーキが事故を回避してくれることを体験すると、確かに最新の自動ブレーキはすごい! と感じる。しかしながら、必ずしも自動ブレーキが作動すれば衝突回避できるわけではないのも事実だ。開発担当者によると、「今回の体験は、ほぼ確実に回避できるシチュエーションを想定しているが、それでも絶対ではない」という。また自動ブレーキの作動には、日差しや路面状況などそのときの状況で判断し、最適な制御を行うため、同じようなシチュエーションであっても全く同じ作動状況にはならないと断言された。実際、同日の体験者の中には、衝突被害軽減にとどまったケースもあった。

また画像認識は、さまざまなパターンを覚えさせ、それに合致するものを人や自転車と認識する。そのため、幼児や自転車を押して横断する歩行者など、状況によっては人として判断できないケースもあるのだ。また自転車などスピードの速いものは、早めに検知することができない限り、衝突回避が難しい。

もちろん、自動ブレーキの存在によって救われる命があるのは間違いない。ただこれらの先進機能を使う際に忘れてはならないのは、決して自動運転機能ではなく、あくまでドライバーをサポートするものであるということだ。高性能センサーは、人の目よりも優れた面もあるが、激しい雨や靄(もや)のかかった状況など、人間の目で見づらい状況は、やはりセンサーにとっても厳しい環境なのだという。またレーダーといえど、クルマや建物の陰に隠れた人を捉えることができるわけではない。先ほどの体験で、突然、飛び出してきたように感じた子供も、実際は目視で発見できる状況があったのに、ドライバーが注意を怠っていたにすぎないのである。また作動速度域にあっても、相対速度が速いほど回避は難しくなる。道路状況に合わせた運転が大切なことに変わりはないのだ。

近年の自動車の安全性向上により交通事故死傷者は激減した。しかしながら、それを限りなくゼロにするには、クルマの進化だけでは難しい。交通環境の改善に加え、ドライバーや歩行者などが、交通安全により積極的に取り組むことも重要なのだ。人だけでもクルマだけでもなく、人とクルマが協調することこそが、さらなる安全な交通環境実現に近づく大切な一歩となることをわれわれは強く意識すべきだろう。

(文=大音安弘/写真=トヨタ自動車、webCG/編集=近藤 俊)

街灯のないテストコースを30km/hで行く「ヴェルファイア」の前に歩行者が……。
街灯のないテストコースを30km/hで行く「ヴェルファイア」の前に歩行者が……。拡大
ロービームで走行していると、かなり直前にならないと肉眼では歩行者を確認できない。
ロービームで走行していると、かなり直前にならないと肉眼では歩行者を確認できない。拡大
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