メルセデス・ベンツC200セダン(FR/9AT)/C220dステーションワゴン(FR/9AT)/AMG C43 4MATICクーペ(4WD/9AT)/AMG C43 4MATICカブリオレ(4WD/9AT)
想像以上の進化 2018.06.29 試乗記 4代目になってから5年目、「メルセデス・ベンツCクラス」が大幅改良。外観の変化は少ないが、パワーユニットはガソリン・ディーゼルともに一新。セダン、ステーションワゴン、クーペ、カブリオレの4ボディーすべてのモデルにルクセンブルグで試乗した。手触りが上質なディーゼルエンジン
3月のジュネーブモーターショーで発表された最新型メルセデス・ベンツCクラスの国際試乗会は、こうしたイベントの開催地としては非常に珍しいルクセンブルクをスタート地点として開催された。今やセダン、ステーションワゴン、クーペにカブリオレという4種類のボディーに、数多くのパワートレインを用意するワイドバリエーションのCクラスを、ここからドイツにかけての一般道や高速道路で、何台も乗り換えながら、じっくり試すことができたのだ。
まずステアリングを握ったのは、「C220dステーションワゴン」である。率直に言うとそのエクステリアは、言われなければ新型とは気付かないかもしれないくらい、軽微な変更にとどまる。変更されたのは前後ライトの内部デザイン、バンパー、ホイールの意匠程度にすぎない。
インテリアでは、12.3インチのTFT液晶を使ってメーターパネルをフルデジタル化したデジタルインストゥルメントクラスター、10.25インチに拡大されたセンターディスプレイが目新しいところだ。ステアリングホイールも、これらを操作するためのタッチスイッチが設けられた新意匠のものが採用されている。
しかしながら何といっても大きく変わったのは、パワートレインのフィーリングである。エンジンを始動させても、騒音、振動は非常に小さく抑えられていてガラガラという感触はほとんど伝えてこない。そして走りだせば、アイドリング付近からトルクがすぐに、しかも力強く立ち上がり、車体を軽やかに前に進めてくれる。トルク感は従来よりひと回り上で、かつ常用するエンジン回転数が低く抑えられるから、手触りがとても上質なのだ。
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48V電装系を使ったEQブースト
C220dのエンジンは、従来の2.2リッターに代えて2リッターの新開発ユニットに置き換えられている。シリンダーブロックのアルミ化などにより重量を16%も軽減しつつ、パワーは24ps増の194psに高めたこのエンジンの実力は、相当なハイレベル。この時代にあえてディーゼルエンジンを新開発してきた意味を、しっかり実感させてくれる。
履いていたタイヤは19インチ、しかもランフラットということで、あまり期待していなかった乗り心地も素晴らしかった。これは試乗車に装着されていたエアサスペンションのおかげ。硬さをまるで感じさせない、しっとり滑らかな乗り味は、このままどこまでも走っていけそうな気分にさせてくれたのだ。
国境を越えた先で乗り換えたのは「C200セダン」。こちらの目玉も、やはりエンジンである。新開発の直列4気筒1.5リッターターボユニットと、48V電装系を活用したEQブーストと呼ばれるベルト駆動のスターター/オルタネーターを組み合わせたマイルドハイブリッドシステムが搭載されたのだ
従来の2リッターから排気量が縮小されたエンジンが、最大トルクの280Nmを発生するのは3000~4000rpmの狭い間でしかないのだが、発進でもたつきを感じさせることはなく、クルマはスムーズに加速する。これは、過給が立ち上がるまでの間を、最大10kWの出力で後押しするモーターアシストと、9段ATのきめ細かな変速のおかげである。
モーターが滑らかな走りに貢献
実は電気モーターは、変速時のエンジンの回転合わせにも貢献し、滑らかな走りに貢献している。減速時には最大12kWのエネルギー回生を行い、加速は最大10kWの出力でアシスト。またECOモードでの減速時にはエンジンを停止して惰性走行するが、そこからの再始動をショックなしに行うのも、その役割のひとつだ。
要するに、このEQブーストの働きと、9段ATとの組み合わせを前提にしているからこそ、1.5リッターへの排気量ダウンが可能になったわけである。この総力を結集して高効率に走らせるパワートレインのコンセプトは、見事だと言いたい。
フットワークは、こちらも好印象だった。コイルスプリングと減衰力可変式ダンパーで構成される新設定のDYNAMIC BODY CONTROLと、18インチのノーマルタイヤの組み合わせは、適度にコシの感じられる滑らかな乗り味。ガソリンエンジンの軽さのおかげか鼻先が軽く、コーナーの連続する区間も大いに楽しめた。
ルクセンブルク市街からほぼ真東にほぼ100km行ったところに位置するボスタール湖畔のホテルが、とりあえずのゴール。この後もエンジニアに話をうかがい、さらに数台の試乗を行った。ここで選んだのは「メルセデスAMG C43 4MATIC」。クーペ、カブリオレを続けて試した。
V6エンジンの出力は23psアップ
最高出力を23psアップの390psとしたV型6気筒3リッターツインターボエンジンは、回転域を問わずぎっしり詰まったパワーとトルク、マルチシリンダーらしいスイートな吹け上がりで相変わらず魅了してくる。前後駆動力配分を31:69とリア寄りにした4MATICは、普段はFRと何ら変わらない走りと、安心感の高さがうれしい。
特に好印象だったのはカブリオレだ。オープンでアウトバーンを飛ばしても、まったく不安感のないボディーのしっかり感、ステアリングの正確性は素晴らしいの一言だし、150km/h超まで躊躇(ちゅうちょ)なく踏んでいける風の巻き込みの少なさも見事。ボディー剛性、重量の違いが影響しているのか、クーペより乗り心地がやや優しいことも含めて、最高のツアラーの1台だと再認識した。
単なるフェイスリフト、しかも外観はそれほど代わり映えしない……と正直、事前には思わないではなかったのだが、実際に走らせ、話を聞くと、想像以上の進化ぶりに驚嘆させられることになった。このうれしい驚き、日本でもそう遠くないうちに味わうことができそうだ。
(文=島下泰久/写真=メルセデス・ベンツ/編集=鈴木真人)
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テスト車のデータ
メルセデス・ベンツC200セダン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4686×1810×1442mm
ホイールベース:2840mm
車重:1505kg
駆動方式:FR
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:9AT
エンジン最高出力:184ps(135kW)/5800-6100rpm
エンジン最大トルク:280Nm(22.5kgm)/3000-4000rpm
モーター最高出力:14ps(10kW)
モーター最大トルク:160Nm(16.3kgm)
タイヤ:(前)225/45R18/(後)225/45R18
燃費:6.0リッター/100km(約16.7km/リッター、欧州複合モード)
価格:--万円/テスト車=--円
オプション装備:--
※数値は欧州仕様のもの。
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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メルセデス・ベンツC220dステーションワゴン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4702×1810×1457mm
ホイールベース:2840mm
車重:1645kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:9AT
最高出力:194ps(143kW)/3800rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/1600-2800rpm
タイヤ:(前)225/40R19 93Y/(後)255/35R19 96Y
燃費:4.7リッター/100km(約21.3km/リッター、欧州複合モード)
価格:--万円/テスト車=--円
オプション装備:--
※数値は欧州仕様のもの。
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター
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メルセデスAMG C43 4MATICクーペ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4693×1810×1402mm
ホイールベース:2840mm
車重:1675kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ ツインターボ
トランスミッション:9AT
最高出力:390ps(287kW)/6100rpm
最大トルク:520Nm(53.0kgm)/2500-5000rpm
タイヤ:(前)225/45ZR18/(後)245/40ZR18
燃費:9.5-9.2リッター/100km(約10.5-10.9km/リッター、欧州複合モード)
価格:--万円/テスト車=--円
オプション装備:--
※数値は欧州仕様のもの。
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
メルセデスAMG C43 4MATICカブリオレ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4693×1810×1405mm
ホイールベース:2840mm
車重:1810kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ ツインターボ
トランスミッション:9AT
最高出力:390ps(287kW)/6100rpm
最大トルク:520Nm(53.0kgm)/2500-5000rpm
タイヤ:(前)225/45ZR18/(後)245/40ZR18
燃費:9.8-9.5リッター/100km(約10.2-10.5km/リッター、欧州複合モード)
価格:--万円/テスト車=--円
オプション装備:--
※数値は欧州仕様のもの。
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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