第7回:節電の夏は、ホームシアターで涼をとる − 夏休みに観たいクルマ映画DVD
2011.07.11 読んでますカー、観てますカー第7回:節電の夏は、ホームシアターで涼をとる夏休みに観たいクルマ映画DVD
ジブリ映画のクルマ選びにはハズレがない
今年の夏休み映画最大の話題作は、やはり『ハリーポッターと死の秘宝 Part2』ということになるのだろうか。ほかに大作としては、『トランスフォーマー/ダークサイドムーン』があり、カンヌ映画祭パルムドールの『ツリー・オブ・ライフ』も公開される。アニメ方面では『カーズ2』『カンフー・パンダ2』の続編モノ2作がやってきて、迎え撃つ日本のジブリは宮崎吾朗監督の『コクリコ坂から』。華やかなラインナップだ。
とはいえ、暑い中わざわざ映画館に出かける気にならない、という人も多いだろう。節電の折、扇風機にビールで炎熱をしのぎながらDVDを観るのも一興。そんなシーンにふさわしいクルマ映画のタイトルが発売されているので、新しいものの中からいくつかご紹介しよう。
まずは、昨年夏のジブリ作品『借りぐらしのアリエッティ』。クルマ映画と言うのははばかられるけれど、いつもながら登場するクルマの選定が心憎い。冒頭、老婦人が少年を乗せて洋館風の家に帰ってくるクルマが、薄いブルーの「メルセデス・ベンツW123」なのだ。そこそこ裕福で上品な暮らしを送る奥様の愛車として、まことに的確なセレクトである。堅実さ、上質さを重視し、派手好みではない趣味のよさを、このクルマで表現している。
『千と千尋の神隠し』では、森の中の道を乱暴な運転で突進するシーンで「アウディA4」が選ばれた。4WDであることを、運転している父親のセリフで明らかにしている。これも冒頭のシーンで、その後迷い込んだ不思議な街での身勝手な行動を予感させた。クルマ好きである宮崎駿ならではの判断で、企画・脚本しか担当していない今回の作品でも、おそらく彼の意向が働いたのだろう。
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ヒーローはクルマに乗って現れる
思いっきりクルマが主役という映画なら、『グリーン・ホーネット』がいい。悪を懲らしめる正義の味方グリーン・ホーネット(セス・ローゲン)が、愛車「ブラック・ビューティー」で毎夜出動する。これは「クライスラー・インペリアル」をベースにした改造車なのだ。なぜそんな古いクルマを使っているかというと、もともと1960年代に人気を博したTVシリーズのリメイクだからである。オリジナルに忠実に再現するために、1964年、65年、66年のモデルを使って29台もの改造車を仕立てたそうだ。
映画の中では、クルマの改造や整備を担当するのが、助手カトーである。TV版では若きブルース・リーが務めたこの役を演じるのは、ジェイ・チョウ。香港制作の珍品『頭文字D THE MOVIE』で藤原拓海を演じた彼なのだ。今回はドリフトこそ少なめだが、やはりカーチェイスシーンは見ごたえがある。ボンネットが反転して出現したガトリング砲を撃ちまくるし、荒唐無稽(むけい)なヒーローカーとしては完璧である。ほかにも「メルセデス・ベンツ300SL」「ブガッティ・ヴェイロン」など新旧の名車がたくさん登場するので、それも見どころだ。
ちょっと意表をつくカーチェイスを楽しめるのが、ヴァンパイア映画の『デイブレイカー』だ。2019年、原因不明の感染症で人口の95パーセントがヴァンパイアになってしまった世界が舞台である。ヴァンパイア映画やゾンビ映画では、クルマがシェルターとしての機能を帯びて重要な役割をはたすことが多い。古典的名作の『地球最後の男』では、主人公がクルマに乗って身を守りながらヴァンパイア狩りをしていた。
この映画では、ヴァンパイアが陽の光から逃れるためにクルマで移動する。外光から完全に遮断された車内で、モニターを頼りに運転するのだ。イーサン・ホークの演じる主人公エドワードは、人間と接触したことから仲間に追われることになる。銃撃を受けて車体に穴が開き、そこから光が漏れる。ただ逃走するだけではダメで、光が当たらないように運転しなければならない。カーチェイスのネタはそろそろ尽きそうなものだが、妙なことを思いつくものだ。このヴァンパイア向けに改造されたクルマが「クライスラー300C」で、ほかに初代「シボレー・ベルエア」、初代「フォード・マスタング」、2代目「ポンティアック・ファイヤーバード」が登場する。なぜか、アメリカ車天国の映画なのだ。
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英・仏・米クルマ博覧会映画
カーチェイスを心ゆくまで堪能したければ、『ナイト&デイ』がオススメだ。トム・クルーズとキャメロン・ディアスの組み合わせだから、正統派娯楽アクションである。カーチェイスシーンが満載、というより、カーチェイスの合間にドラマがあるという具合。クルマからクルマへの飛び移り、バイクの2人乗りでの銃撃戦、ヨーロッパの石畳路でのバトルなど、サービスいっぱいだ。最後には、牛までがチェイスに参加する。
名前の似ている『デート&ナイト』は、ばかばかしいほどに独創的なカーチェイスがある。「アウディR8」がタクシーと正面衝突し、そのままフロント同士がくっついた形でパトカーと追っかけっこをする。こちらは『40歳の童貞男』のスティーブ・カレル主演だから、ベタベタのコメディである。原題は「Date Night」だったのをトム・クルーズ作と絡めて売るために日本では無理やり「&」を入れてしまったのだが、実は本家より作品としては上かもしれない。
もっと静かな映画を見たければ、『ノーウェアボーイ』はどうだろう。ジョン・レノンの青年時代を描いた作品で、1950年代のリバプールが舞台だ。ジョンを演じるのは『キック・アス』でヘタレヒーローが似合っていたアーロン・ジョンソンで、これもハマリ役。しゃべり方などは生き写しだ。それはともかく、英国車好きなら背景で街並みを行く「オースティン」や「ジャガー」などを眺めているだけでも満足できるだろう。
フランス車がお好みなら、『しあわせの雨傘』を。ジャージ上下姿でジョギングするカトリーヌ・ドヌーヴという衝撃的なシーンから始まるこの作品は、昔ながらのフランス映画を本気とも冗談ともつかないトーンでなぞっていて、優雅な気分で鑑賞できる。「ルノー16」や「プジョー504」ほか、70年代のフランス車が続々と現れる。
アメリカ車をたくさん見たければ、『マチェーテ』がテッパンだ。クエンティン・タランティーノ制作、ロバート・ロドリゲス監督だから、問答無用で暴力とお色気の嵐。ダニー・トレホとスティーブン・セガールが戦い、ミシェル・ロドリゲスとジェシカ・アルバが華を添える。最後の戦闘シーンではハイドロを仕込んだ何十台ものアメ車がハネまくる中で、マシンガンが火を噴く。映画を観るのに脳みそなんかいらないことを実証してくれる作品だ。
まだまだあるけれど、とりあえずこのへんで。どの作品も、きっと暑さを忘れさせてくれるはず。
(文=鈴木真人)
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鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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