第3回:スズキ・ジムニー/ジムニーシエラ(前編)
2018.09.12 カーデザイナー明照寺彰の直言 拡大 |
マニアやプロのための本格派オフロード4WD「スズキ・ジムニー」が、フツーの人のココロも強く揺さぶって爆発的人気となっている。その最大の原因がデザインにあることは間違いないが、初対面で激しく引かれつつも、「これは『メルセデスGクラス』の縮小版では?」という思いが頭をかすめた方も、少なくはないだろう。その点を含め、プロは新型ジムニーのデザインをどう見たのか?
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
“お客さん目線”だからできたデザイン
明照寺彰(以下、明照寺):……ジムニーについては本当に、何をしゃべったらいいか困ってしまいますね。
永福ランプ(以下、永福):それは、どういう意味で?
明照寺:デザイン的に、本当に完成されているからです。
永福:そっちですか!
明照寺:ひとつ前のジムニーって、ちょっと“カーライク”だったんですよ。
永福:カーライク?
明照寺:“乗用車ライク”という意味です。それに対して新型は、原点回帰してる。それがすごい。
永福:素直にそう考えていいんですね?
明照寺:スズキって、お客さん目線というか、お客さんが何を欲しているかをすごく考えている会社で、今回のジムニーもまさに、みんなこれが欲しかったんだと思います。それを、そのものズバリ出してきた。この潔さがすごい。
永福:「これ、Gクラスに似て見えるかも……」といったことも無視して、手加減なしに?
明照寺:そうです。
ジムニーは“チョップドルーフ”
永福:全体のフォルムはもちろんのこと、ルーフの雨どいの形状のせいもあって、ものすごくGクラスっぽく見えますよね。それも、余計なことを考えなければこうなる、と捉えていいんでしょうか?
明照寺:はい。余計なことは考えずに、ピュアにデザインしているだけだと思います。突き抜け切った感じですよ、まさに。
清水:そうなんですね……。まぁこの雨どいも、「ルーフキャリアが付けやすいように機能を優先した」と聞きましたが。
明照寺:そうですか。本当にそうなんだと思いますよ(笑)。たぶんデザイナーも、本当に自分が欲しいものを作っただけなんじゃないでしょうか。これだけやられると、同業者として何も言えないですよ。
永福:まぁそう言わずに、もうちょっとお願いします。
明照寺:あえて言うのであれば、結構サイドビューがスポーティーなんですよね。サイドウィンドウの上下幅が比較的薄いじゃないですか。その分ボディーの土台まわりが厚いんで、箱型だけどスポーティーに見えるんです。
清水:言われてみれば! 頭がちっちゃくて、胴体ががっちりしている、マッチョマンなイメージですね。
明照寺:そう。今だと全く同じようなフォルムのクルマってGクラスぐらいしかないですけど、Gクラスの方がまだキャビン、つまり頭の部分がデカくて、土台部分が薄い。比率として。
永福:並べてみると、そうですね~。
明照寺:だからGクラスはスポーティーな感じはあまりしないけれど、ジムニーはチョップドルーフ的で、スポーティーに見える。そんなところも「すげえなぁ……」っていうのが、偽らざる印象です。
永福:そこまで絶賛ですか!
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
細部の作り込みにうなる
明照寺:細かいところを見ていくと、すごく作り込んでいるんですよね。例えばパネルとパネルをつなぐ角の“面取り”。ショルダーラインも、フロントフードの下からフェンダーパネルのふくらみをすーっと後ろまで伸ばしていますけど、ここの分割比率とか角のRなんかが、製品の精緻感や厚み感にすごく寄与している。デザインはすごくシンプルなんだけど、作り手のこだわりがものすごいなと思います。ワイパーの付け根とかもちゃんとデザインされていますし、細かいところまで手が込んでいるなと、本当に感心しました。
清水:“ベビーGクラス”と海外で言われているようですけど、日本人としては、「これはマネじゃない」って言いたい気分があるんです。プロから見てどうですか?
明照寺:マネではないですよ。そもそもジムニーのほうが、出たの早いですし。
ほった:Gクラスは1979年ですね。で、初代ジムニーは1970年。新型によく似たバンの登場も、1972年でGより早いです。
明照寺:ジムニーがここで原点回帰したと主張しても、誰のマイナスにもならないでしょう。
ほった:「ミニGクラスみたいなのを作ろうよ」みたいな雰囲気は、やはりなかったと?
明照寺:(笑)。いやまぁ、多少はあるかもしれないですよ。ああいう武骨なデザインをしてみたいというのは、クルマのデザイナーをやっていると大なり小なりありますから。
今どきのクルマのデザインは、通常は面や線を放物線で作るわけですよ。放物線というのは、直線とかRの線とかいう意味ではなくて、“自由な曲線”という意味なんですけど、とにかくその放物線の集合体でデザインするんです。でもジムニーはほぼほぼ平らで真っすぐ。これまで自分もやったことがないデザインですし、それは他のデザイナーもそうでしょう。そういう点でも、手がけた方はやりがいがあったんじゃないかな。うらやましいですよ、これは。(後編へ続く)
(文=永福ランプ<清水草一>)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

明照寺 彰
さまざまな自動車のデザインにおいて辣腕を振るう、現役のカーデザイナー。理想のデザインのクルマは「ポルシェ911(901型)」。
永福ランプ(えいふく らんぷ)
大乗フェラーリ教の教祖にして、今日の自動車デザインに心を痛める憂国の士。その美を最も愛するクルマは「フェラーリ328」。
webCGほった(うぇぶしーじー ほった)
当連載の茶々入れ&編集担当。デザインに関してはとんと疎いが、とりあえず憧れのクルマは「シェルビー・コブラ デイトナクーペ」。
-
第41回:ジャガーIペース(後編) 2019.7.17 他のどんなクルマにも似ていないデザインで登場した、ジャガー初の電気自動車「Iペース」。このモデルが提案する“新しいクルマのカタチ”は、EV時代のメインストリームとなりうるのか? 明照寺彰と永福ランプ、webCGほったが激論を交わす。
-
第40回:ジャガーIペース(前編) 2019.7.10 ジャガーからブランド初の100%電気自動車(EV)「Iペース」が登場。SUVのようにも、ハッチバックのようにも見える400psの快速EV。そのデザインに込められた意図とは? EVデザインのトレンドを踏まえつつ、現役の自動車デザイナー明照寺彰が語る。
-
第39回:アウディA6 2019.7.3 アウディ伝統のEセグメントモデル「A6」が、5代目にモデルチェンジ。新世代のシャシーやパワートレインの採用など、その“中身”が話題を呼んでいる新型だが、“外見”=デザインの出来栄えはどうなのか? 現役のカーデザイナー明照寺彰が斬る。
-
第38回:三菱eKクロス(後編) 2019.6.26 この“顔”はスポーツカーにもよく似合う!? SUV風のデザインが目を引く、三菱の新しい軽乗用車「eKクロス」。迫力満点のフロントマスク「ダイナミックシールド」の特徴とアドバンテージを、現役の自動車デザイナー明照寺彰が語る。
-
第37回:三菱eKクロス(前編) 2019.6.19 三菱最新のデザインコンセプト「ダイナミックシールド」の採用により、当代きっての“ド迫力マスク”を手に入れた「三菱eKクロス」。そのデザインのキモに、兄弟車「日産デイズ」や同門のミニバン「三菱デリカD:5」との比較を通して迫る。
-
NEW
第861回:冬道性能やいかに ミシュランのオールシーズンタイヤ「クロスクライメート3」を北の大地で試す
2026.2.18エディターから一言2025年9月に日本ミシュランタイヤが発表した最新のオールシーズンタイヤ「クロスクライメート3」と「クロスクライメート3スポーツ」の冬道性能を確かめるために、北海道に飛んだ。ドライやウエット路面に続き、ウインターシーンでの印象を報告する。 -
NEW
マセラティMCプーラ チェロ(MR/8AT)【試乗記】
2026.2.18試乗記かつて「マセラティの新時代の幕開け」として大々的にデビューした「MC20」がマイナーチェンジで「MCプーラ」へと生まれ変わった。名前まで変えてきたのは、また次の新時代を見据えてのことに違いない。オープントップの「MCプーラ チェロ」にサーキットで乗った。 -
NEW
ストロングハイブリッドか1.8ターボか 新型「フォレスター」の悩ましいパワートレイン選択に雪道で決着をつける
2026.2.18デイリーコラム新型「スバル・フォレスター」には2.5リッターハイブリッドと1.8リッターターボの2つのパワートレインが設定されている。ローンチ時からの人気は前者だが、果たして後者の利点は「低価格」だけなのか。雪道をドライブして考えた。 -
NEW
第103回:フランス車暗黒時代(後編) ―おしゃれだったアナタはどこへ? フレンチデザイン没落の原因と再生への曙光―
2026.2.18カーデザイン曼荼羅おしゃれなクルマをつくりたくてもつくれない? かつてセンスのかたまりだったフランス車は、なぜコテコテ&ゴテゴテのデザインに移行せざるを得なかったのか? カーデザインの識者とともに、フレンチデザインが変節した理由を深掘りし、復活の光を探った。 -
アルファ・ロメオ・ジュリア クアドリフォリオ エストレマ(FR/8AT)【試乗記】
2026.2.17試乗記「アルファ・ロメオ・ジュリア」に設定された台数46台の限定車「クアドリフォリオ エストレマ」に試乗。アクラポビッチ製エキゾーストシステムの採用により最高出力を520PSにアップした、イタリア語で「究極」の名を持つFRハイパフォーマンスモデルの走りを報告する。 -
「ユーザーには伝わりにくいが、実は手間がかかっていること」は?
2026.2.17あの多田哲哉のクルマQ&A自動車開発においては、つくり手のこだわりや苦労のすべてがユーザーに伝わるとは限らない。そうした「気づかないかもしれないが、実はメーカーが多くの労力をかけている」こととは? 元トヨタの多田哲哉さんに聞いてみた。











































