No Garage, No Life! | オーナーの手づくりによるこだわりのガレージ
手づくりのマニアックな空間 多才なクルマ好きのひとつの答え 2019.07.01 Gear Up! 2019 Summer ぬくもりを感じるのは建物が木造だからではなく、自ら設計し組み立てたオーナーのこだわりを随所に見いだせるからかもしれない。そして、妙に美しく整然としただけのガレージにはない、いつも爪の先がオイルで汚れているようなクルマ好きにふさわしい空間がここにある。ガレージをつくることは見果てぬ夢だが、ガレージのある生活を想像しただけで気分が高揚する。大切なクルマをめでながらのんびりと過ごすもよし、クルマをメンテナンスしたりモディファイしたりするもよし、クルマ談義にふける場所として活用するもよし、と楽しみ方はいろいろあるはずである。
そもそも、どのようなガレージをつくるか、何を目的にしたガレージをつくるかを考えるだけでもワクワクしてくる。さらに一歩進めて、自分の好きなように設計して、自分の手でガレージを建てられたら、どんなにすごいだろうとも思う。そんな突拍子もないすごいことをサラリとやり遂げ、夢のガレージを実現させたのが、今回、紹介する久我敏徳さんである。
「本を読んで勉強してつくったんです」。そう言って久我さんが差し出したのは、『初めて学ぶ図解 ツーバイフォー工法』なる書籍。ちらりと目を通せば、家のつくり方を、図を多用して細かく丁寧に説明している。本を読んだだけで木造ガレージを建てられるとはにわかに信じ難いが、本当なのだ。久我さんが機械設計の仕事に長いあいだ携わっていること、当然ながら3次元CADの扱いにも慣れていること、手先が器用であること、そしてなにより氏の情熱とチャレンジングスピリットのなせるわざだったのだろう。
屋根を構成する重要な部材であるトラスを11個次々と組むときは、いとこや友人の力を借りたというが、基礎工事とシャッター扉の取り付けを専門家に任せた以外、ほとんどすべてを自力で製作したのだから、びっくり仰天だ。屋根も葺(ふ)き、外壁には防腐剤も塗った。ツーバイフォーではおなじみのSPF材をはじめとする建築資材も近くのホームセンターで購入し、レンタカーのトラックで自ら運んだ。着工は2009年の2月、竣工(しゅんこう)が同じ年の9月。本業の仕事の合間を縫いながら、約8カ月という短期間で完成させたという。驚きである。
なんでも自分でできる驚きのプロはだしの設備
緑美しい敷地に建てられたガレージは、屋根が切り妻タイプ、外壁は杉の部材を下見張りした板張り式で、外壁のこげ茶と窓枠や破風の白が好ましいコントラストを見せる。建物全体はガレージというよりこぢんまりしたかわいらしい住居みたいな趣だ。外国製キットガレージの類いと比べるとやや長めの軒であるのが独自設計ならではと思わせる。
ガレージ内部はメンテナンス工場といった眺めである。ノーズに手が加えられロールバーを装備するNB型「マツダ・ロードスター」がほぼ中央に居座り、その上方にははりからハードトップがつり下げられている。そして、ロードスターの両脇に油圧リフトの2本の柱がすっくと立っているのがなかなか強烈な印象だ。
学生時代に自動車工場で働いた久我さんらしく、工具もひととおりそろっているもようで、エアツールの備えもあるし奥にはサンドブラストまである。「溶接もできたらいい」と語るが、そこまで完備せずとも、すでに素人の域を越えている!
ガレージの建築面積は42平方メートル(13坪弱)、クルマ1台を収めるだけなのでいろいろと作業するための十分なスペースが確保されている。オイル交換はもちろんのこと、ブレーキフルード、ブレーキパッドの交換、ブレーキキャリパーのオーバーホール、ダンパーやスプリングの入れ替えもこなすというから頭が下がる。これこそ久我さんの目指した理想のガレージなのだろう。
ほとんどすべてを自分でつくったガレージの中で、クルマを維持するための作業を自分の手で行う。なんともぜいたくだ。部品を交換、あるいは調整を済ませては、すぐ近くのお気入りのワインディングロードで効果を確かめたりするのだという。まさに正統かつ実践派の自動車趣味人と呼べる久我さん。そんな氏にふさわしいマニアックなガレージなのだ。
(文=阪 和明/写真=加藤純也)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
-
最新のギア&ファッション | ドライブクッション「HUG DRIVE」 2019.7.1 純正シートが体に合わない。長時間運転すると疲れてしまう。そんな悩みを持つドライバーは少なくないはず。この問題を解決する、新素材を使った自動車用の補完クッションをご存じだろうか? 「EXGEL SEATING LAB」がそれだ。
-
最新のギア&ファッション | キャンピングトレーラー「エメロード406 Vエディション プレミアム」 2019.7.1 好きな時に好きな場所をクルマで訪ね、アウトドアライフを満喫し、心を癒やす。クルマ好きなら誰もが一度は見る夢である。そんなあなたの夢をかなえるプロダクト、バカンスの国・フランス製のキャンピングトレーラーを紹介する。
-
Car Security | 防犯アイテムカタログ 2019.7.1 あなたは「リレーアタック」という言葉をご存じだろうか? 人気の国産車を盗んで海外に転売するクルマ泥棒の新しい手口だ。そこでこのコーナーでは、最新の防犯対策アイテムをご紹介する。
-
ここはクルマ好きのテーマパーク
A PIT AUTOBACS SHINONOME 2019.7.1 知る楽しみ、イジる楽しみ、磨く楽しみ、眺める楽しみ。東京・江東区東雲にリニューアルオープンしたA PIT(アピット)は、さまざまな方法でクルマ好きをもてなすテーマパーク。その取扱説明書をここに紹介する。 -
Gear up! Selection | CITROËN/SEETROËN 2019.7.1 シトロエンが発売した、車酔い対策の眼鏡が話題になっている。初回入荷分は即日完売し、再入荷したとか。ドライブを快適にする魔法の眼鏡「シートロエン」のヒットの理由に迫る。
-
NEW
「アルファ・ロメオ・ジュニア」は名門ブランド再興の立役者になれるのか?
2025.11.20デイリーコラム2025年6月24日に日本導入が発表されたアルファ・ロメオの新型コンパクトSUV「ジュニア」。同ブランド初のBセグメントSUVとして期待されたニューモデルは、現在、日本市場でどのような評価を得ているのか。あらためて確認してみたい。 -
NEW
ジープ・ラングラー アンリミテッド ルビコン(前編)
2025.11.20あの多田哲哉の自動車放談タフなクルマの代名詞的存在である「ジープ・ラングラー」。世界中に多くのファンを持つ同車には、トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんも注目している点があるという。それは一体、何なのか? -
NEW
第937回:フィレンツェでいきなり中国ショー? 堂々6ブランドの販売店出現
2025.11.20マッキナ あらモーダ!イタリア・フィレンツェに中国系自動車ブランドの巨大総合ショールームが出現! かの地で勢いを増す中国車の実情と、今日の地位を築くのに至った経緯、そして日本メーカーの生き残りのヒントを、現地在住のコラムニスト、大矢アキオが語る。 -
「レクサスLSコンセプト」にはなぜタイヤが6つ必要なのか
2025.11.19デイリーコラムジャパンモビリティショー2025に展示された「レクサスLSコンセプト」は、「次のLSはミニバンになっちゃうの?」と人々を驚かせると同時に、リア4輪の6輪化でも話題を振りまいた。次世代のレクサスのフラッグシップが6輪を必要とするのはなぜだろうか。 -
第92回:ジャパンモビリティショー大総括!(その1) ―新型「日産エルグランド」は「トヨタ・アルファード」に勝てるのか!?―
2025.11.19カーデザイン曼荼羅盛況に終わった「ジャパンモビリティショー2025」をカーデザイン視点で大総括! 1回目は、webCGでも一番のアクセスを集めた「日産エルグランド」をフィーチャーする。16年ぶりに登場した新型は、あの“高級ミニバンの絶対王者”を破れるのか!? -
ポルシェ911カレラGTSカブリオレ(RR/8AT)【試乗記】
2025.11.19試乗記最新の「ポルシェ911」=992.2型から「カレラGTSカブリオレ」をチョイス。話題のハイブリッドパワートレインにオープントップボディーを組み合わせたぜいたくな仕様だ。富士山麓のワインディングロードで乗った印象をリポートする。










