第612回:米国の英雄リー・アイアコッカ
くめども尽きぬイタリアへの思い
2019.07.12
マッキナ あらモーダ!
両親はイタリア人移民
フォードの社長とクライスラーの会長を務めたリー・アイアコッカ氏が2019年7月2日、パーキンソン病に伴う合併症のためロサンゼルスで死去した。94歳だった。
1964年「フォード・マスタング」の生みの親であり、のちに倒産寸前のクライスラーを再生したあたりのアイアコッカ氏の業績については、数々のメディアで報じられているとおりだ。したがって本稿では繰り返さない。代わりに、筆者が拠点とするイタリアとの「つながり」という観点で振り返ってみたい。
リー・アイアコッカ氏は1924年10月15日、ペンシルバニア州フィラデルフィアの北にある工業都市アレンタウンに生まれた。本名はリド・アンソニー・アイアコッカ。両親はイタリア系移民の食堂経営者で、イタリア南部ナポリの北東サン・マルコ・デイ・カヴォーティ村の出身であった。
参考までに、「Iacocca」をイタリア語読みすると「イアコッカ」となる。筆者自身はイタリアに住んで23年目を迎えるが、いまだアイアコッカ姓の人物に出会ったことがない。
そこで日本でいうところの『ハローページ』に相当する電話帳『パージネ・ビアンケ』で、Iacocca姓を検索してみた。リストアップされたのはわずか13件。そのうち半数以上の8件がアイアコッカ氏の父の出身地と同じベネヴェント県である。いっぽう、それに近いCocca姓は、数名の歴代村長などの名前にも見られる。いずれにしてもローカルな名字であることがうかがえる。
『イタリア移民インターネット協会』の資料によると、20世紀初頭のカンパーニャ地方は、シチリアに次いでイタリアから出国する移民が多い地域であった。1861年のイタリア国家統一後、半島の政治の中心は最初トリノ、やがてローマへと移った。かつてのナポリ王国の繁栄は、世紀をまたいで明らかに過去のものとなり、新天地アメリカを目指す人々が絶えなかったのである。
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大矢 アキオ
コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。21年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』、『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。
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