マツダe-TPV<次世代EV試作車両>(FF)
これからの人馬一体 2019.09.06 試乗記 2020年の発売に向けてマツダが開発を進める、電気自動車(EV)のプロトタイプに試乗。その走りは、これまで体験したことのない、ファン・トゥ・ドライブなEVの未来を期待させるものだった。ロータリーエンジンも活用
間もなく発売される「スカイアクティブX」搭載車で究極の内燃機関に一歩近づくマツダだが、その一方で電動化への戦略も着々と進んでいる。
技術開発の長期ビジョン「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」では、Well to Wheel(燃料採掘から車両走行まで)での企業平均CO2排出量を対2010年比で2030年には50%削減、2050年に90%削減することを視野に入れ、2030年には生産するすべての車両に電動化技術を搭載することを表明。そのうち純粋な電気自動車であるBEV(battery electric vehicle)は5%の想定で、その他の95%は電動化技術を搭載した内燃機関車ということになる。電動化が進むとはいっても当面は内燃機関が搭載されたモデルが大半を占める以上、まずはエンジンを徹底的に鍛え上げつつ、その上で電動化技術を効果的に組み合わせていくことで大幅なCO2低減を図っていく。この着実に積み上げていく手法は「ビルディングブロック戦略」と呼ばれる。
環境対応車は地域やエネルギー事情、クルマの使われ方によって最適解が変わってくるため、多様なパワートレインを用意することも肝要になる。マツダは伝統的な技術であるロータリーエンジンの特性を活用して、レンジエクステンダー(航続距離延長型電気自動車)、プラグインハイブリッド、シリーズハイブリッドを用意するべく開発を進めている。ロータリーエンジンは小型軽量で静粛性が高く、ガソリンのみならずCNG(天然ガス)やLPG(液化石油ガス)、水素などさまざまな燃料を使用することが可能。1車種で多くのxEV(さまざまな電動車の総称)を用意できるマルチソリューションな技術をマツダは開発しているのだ。
BEVは、クリーン発電地域においては最適なソリューションだ。今回、ノルウェーでBEVの技術検証車に試乗したのは、そんな事情もある。ノルウェーは世界有数の北海油田を有し、石油・天然ガスを輸出している資源大国だが、自国の発電構成は水力が90%以上。ここでBEVを走らせればCO2排出量は極めて少なくなる。「日産リーフ」クラスならば、CO2排出量は数g/km程度だ。ちなみに現在の日本の発電構成では60g/km台で、78g/kmの「トヨタ・プリウス」に対して物足りない。再生可能エネルギーなど循環型エネルギーの割合が増えていけばBEVの優位性も上がってくるだろう。
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