第145回:欲望の縮小限定化
2019.10.07 カーマニア人間国宝への道小さくて楽しいクルマがイイ!
先日、中古フェラーリ専門店コーナーストーンズに遊びに行ったところ、エノテン(榎本 修代表)に、「最近清水さんは、小さいクルマのことばっかり書いてますよねぇ」と言われた。
確かにその通り!
その時は、店内が「BMW 850i」の話題で盛り上がっていたのだが、私は傍観者に徹しながら、「850ってどんなクルマだっけ」と必死に思い出そうとしていた。
オレ:あ、思い出した! オレ、そのクルマ、箱根で試乗したよ!
エノテン:850、どうでした?
オレ:うーん、いいといえばいいに決まってるけど、あのクラスとしては、いまひとつインパクトに欠けたなぁ。オレはあれだったら、アストンの「DB11 V8」が断然いいな。
我ながらものすごく無責任なコメントである。
エノテン:そうですかー。でもひょっとしてアストンは、エンジンを始動するたびに、ブワ~ンってすごい音がしませんか?
オレ:するする!
エノテン:僕、ああいうのダメなんです。朝、家を出るたびにブワ~ンっていうのはツーマッチで。
エノテンや常連客様は、850を足グルマとして興味を持っているので、あんまり過剰な演出はノーサンキューだそうだ。
一方私は、あれくらいの価格帯のクルマを足に欲しいなんていう欲望はコレッポッチもなく、まったくのやじ馬である。高いクルマはフェラーリだけで十分! でもフェラーリの新車なんざ高すぎるし欲しくない。今の「328GTS」がサイコー! それ以外は小さくて楽しいクルマがイイ! そういうことで、自然な流れとして、いつのまにか小さいクルマのことばっかり書いている。
新型トゥインゴにプチ試乗
世のクルマの肥大化に歩調を合わせるように、私の小さいクルマへの欲望も肥大化しつつある。クルマは小さければ小さいほどイイ! もっと小さいクルマはないのかぁ! という感じで。
その欲望の対象の最右翼は、「ルノー・トゥインゴ」だ。
なにしろトゥインゴは小さい! 全長3645mm×全幅1650mm×全高1545mmしかない。特に全幅1650mmは超希少! これより幅の狭い登録車は、「フィアット500」と「パンダ」のFFモデルと「ソリオ」くらい? あとは軽! そんな感じだし、RRなので最小回転半径はフツーの軽より小さい! しかも運転が超絶楽しい! RRらしいリアの張り出し感は、そこらの四つ角曲がるくらいでも楽しめる! 900㏄ターボの3気筒エンジンも超楽しい!
こんなに楽しいクルマがあるのに、どうして850みたいにウスラデカくて無駄にパワーばっかりあってガソリンも食うクルマが欲しいんだろう。フェラーリ以外は小さいクルマのほうが楽しいに決まってるじゃないか! トゥインゴ最高! そんな感じなのである。
そのトゥインゴがマイナーチェンジを受けたので、試乗会に行って参りました。つっても、変わったのは見た目がちょっぴりと、タッチスクリーンがスマホとリンクできるようになった程度なのだが、なにせ大好きなクルマなので、一応確認せねば。
ちょびっとだけ新しくなったトゥインゴは、あのバンパー上の丸いフォグがなくなってツルンとした分、見た目のマヌケ度を増していた。うーん、前のほうが好きだなぁ。
メカはほとんど変更ナシとのことだったが、乗ってみるとなんか違う。ステアリングが渋いし、エンジンフィールも重い。
トゥインゴってこんなだったっけ?
新車のトゥインゴ買うのなら……
いや、これは初期ロットにありがちな、個体のバラツキによるものかもしれない。ヘタすると私の記憶違いかもしれない!
でもとにかく、なんだかこのトゥインゴは楽しくない! これをエノテンに乗せたところで、「ええっ、こんな楽しいクルマがあったんですかぁ! もう850なんかいりませんねウフフ~」とは言ってくれないだろう。
首都高を一周し、カーマニアの聖地・辰巳で記念写真を撮りつつ、私のココロは微妙に沈んだ。
会場に戻って、ルノー・ジャポンの皆さまにそのように報告すると、「じゃ、マイチェン前のモデルにも乗ってみてください」と言っていただいた。うおお、それはイイ! 乗ればすべての疑問が氷解する。
で、乗ってみたところ……。
これやこれや、これやがな!
パワステは軽くて軽快。エンジンも特に低回転域が軽快で気持ちよくターボが効く。まぁ微小な差ではあるでしょうが、カーマニア的には大違いで、「ここは絶対に譲れんポイントや!」って感じでした。フェラーリ328でいえば、触媒が付いてる日本仕様と触媒のないヨーロッパ仕様くらいの差でしょうか。
といっても、マイチェン後のトゥインゴが、みんなパワステがシブくてエンジンのフケが重いとは限らない。ただ私が乗った個体はそうでしたとしか言えないわけですが、新車のトゥインゴを買うのなら自動ブレーキなどのADASが付いてから! と思いました。それはいつになるのだろう。
ルノー広報様:本国でも、まだトゥインゴくらいのクラスでは、正直、需要があんまりないんですよ。
オレ:じゃ、トゥインゴへのADAS導入は、今後もなさそうですか?
ルノー広報様:取りあえず予定はないですね……。
850は乗ったこともド忘れしてしまうのに、トゥインゴに関しては微に入り細に入り、気になるのでした。
(文=清水草一/写真=清水草一、池之平昌信/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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