第147回:やっぱ欲しいんです
2019.10.22 カーマニア人間国宝への道「C3エアクロスSUV」に一目ぼれ
愛車の「DS3」でシトロエンの100周年イベントに参加し、シトロエンづいているついでというわけではないですが、先日発売されたシトロエンの新型車「C3エアクロスSUV」(以下、C3エアクロス)に試乗させていただきました!
このクルマはすばらしいですよ!
なにより、見た瞬間に楽しくなる。子犬を見て自然と頬が緩むみたいになる!!
それにしても人はなぜ、子犬を見ると反射的に頬が緩むのでしょう?
たぶん、攻撃性がまったくなく、肌触りがやわらかそうで、やさしく扱ってやりたくなるからでしょう。やさしくしないと死んじゃいそうだから! というのもあるかもしれない。人間の本能には、弱いものに対する愛ってヤツが備わっているのですね!
近年はグリルの巨大化など、クルマの顔がどんどん威圧的になっているが、C3エアクロスはほぼ反対方向。それでいてただやさしいわけじゃなく、昆虫っぽい毒もあるので、思わず見入ってしまう。
この昆虫っぽさがダメだという方もいるでしょうが、自動車デザインは万人に愛される必要はなく、若干あばたもえくぼ的な、自分だけのコイビトって要素も重要なので、私はダイレクトにそういう反応が出ました!
これは、俺のためにつくられたクルマかもしれない……。DS3から買い替えようか!? 実物を見て5秒後くらいには、脳内にそのようなビビビ(電気)が走りました。
思えばもう2年もクルマを買ってない。クルマを買うことを趣味と自称しているカーマニアとして、2年は非常に長い年月だ。そろそろ来てもおかしくない。
愛車に勝る快適性
見て5秒後に「買い替えようかな」という思考が走ったので、比較対象は自動的に愛車のDS3になりました。
室内は、C3エアクロスのほうがかなり広い。サイズが一回り大きいし、室内高もあるし、なにより便利な5ドアだ。
DS3は3ドアゆえ日本ではまったく人気がなく、私もこうして激安登録済み未使用車を買うことができたわけですが、それでも時々、「リアドアがあったらなぁ」と思うのです。その点でC3エアクロスは大きくリード! なら最初から「C3」買っとけって感じですが。
パワートレインは3気筒の1.2リッターターボ+アイシン・エィ・ダブリュ製6段ATで、基本的に我がDS3と同じだ。このエンジン、下のトルクが非常に太くて、アクセルをちょっと踏んだだけで「ブイィィィィ~ン」と予期した以上の加速をするのがとっても気持ちイイ! 床まで踏みつけても大して速くないけど、ハーフスロットルで日常的に楽しいのが超ウレシイ!
ただ、ウチのDS3のエンジンには欠点がある。ATのシフトアップタイミングが早すぎるせいか、フツーに走ってるとヤケに低回転を保ち、そのせいでエンジン内部にカーボンがたまり(推測です)、いつのまにか濁ったような音が出て、トルクも出なくなるのです。
対策は、オイル交換やワコーズの燃料添加剤、あとはレッド手前までのブチ回し根性入れだ。これを組み合わせて実行すると直る。オイル交換や燃料添加剤の効果がこんなに体感できるクルマなんて初めて~! PSAがアイシンの6ATに慣れておらず、セッティングが未熟だったんだろうと思っております。
C3エアクロスは、そういうところはちゃんと改善されていて、もう少し高い回転を保つので非常にカイテキ! 現行C3からそのあたりは直っていた。PSAも勉強したんだネ!
子犬のようにお世話するなら
C3エアクロスは、乗り心地もふんわりシトロエンらしくてステキだ。特に、17インチのハンコック製オールシーズンタイヤ装着モデルが好印象。一方DS3はビックリするほど足が硬い。この点でもC3エアクロスが大幅リード。なら最初からDS3買うなって感じですが。
一方、インテリアはDS3のほうがエレガント。C3エアクロスもカジュアルでステキなのですが、そのカジュアルさを生んでいる布地(シートやダッシュボードに使用)の触感がいまひとつだ。特にシートはなんだかちょっとムレる。その点DS3のシートはオサレなメッシュなので夏でもスースー! 各所がムレやすいオッサンとしては、これは見逃せないポイントだ。
総合すると、C3エアクロスは猛烈に魅力的で真剣に欲しいのですが、結局買い替えの決断までには至りませんでした。
背景には、我がDS3の子犬的要素がある。フツーに乗ってると、エンジン内部にカーボンがたまって調子が悪くなるので(推測です)、乗るたびにそれが気になり、子犬のようにお世話をしたくなる。乗るたびに一度はエンジンをブチ回し、カーボンを除去してやらずにはいられない(妄想です)。調子が悪くなるからこそ、調子がいい時はとってもうれしくて、勝手に顔がほころんでしまう。このお世話感がなくなるのはサミシイ……。
私は基本的に、自分が必要とされたいタイプで、フェラーリに深くはまったのも、ひ弱で繊細なおクルマだったから。全然手がかからない丈夫なクルマもいいけれど、子犬のお世話はもっと好き! 3ドアでちょっとだけ不便っていうところも好き! なら最初から買い替えるとか言うな! って感じですが。
でもね、C3エアクロス、本当にイイよ。日本におけるシトロエン車として最大のヒットになるんじゃないか? 色はう~ん、スパイシーオレンジかな。やっぱ欲しいんです。
(文=清水草一/写真=清水草一、池之平昌信/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
第324回:カーマニアの愛されキャラ 2025.12.1 清水草一の話題の連載。マイナーチェンジした「スズキ・クロスビー」が気になる。ちっちゃくて視点が高めで、ひねりもハズシ感もある個性的なキャラは、われわれ中高年カーマニアにぴったりではないか。夜の首都高に連れ出し、その走りを確かめた。
-
第323回:タダほど安いものはない 2025.11.17 清水草一の話題の連載。夜の首都高に新型「シトロエンC3ハイブリッド」で出撃した。同じ1.2リッター直3ターボを積むかつての愛車「シトロエンDS3」は気持ちのいい走りを楽しめたが、マイルドハイブリッド化された最新モデルの走りやいかに。
-
第322回:機関車みたいで最高! 2025.11.3 清水草一の話題の連載。2年に一度開催される自動車の祭典が「ジャパンモビリティショー」。BYDの軽BEVからレクサスの6輪車、そしてホンダのロケットまで、2025年開催の会場で、見て感じたことをカーマニア目線で報告する。
-
第321回:私の名前を覚えていますか 2025.10.20 清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。
-
第320回:脳内デートカー 2025.10.6 清水草一の話題の連載。中高年カーマニアを中心になにかと話題の新型「ホンダ・プレリュード」に初試乗。ハイブリッドのスポーツクーペなんて、今どき誰が欲しがるのかと疑問であったが、令和に復活した元祖デートカーの印象やいかに。
-
NEW
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
NEW
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
NEW
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。 -
NEW
第939回:さりげなさすぎる「フィアット124」は偉大だった
2025.12.4マッキナ あらモーダ!1966年から2012年までの長きにわたって生産された「フィアット124」。地味で四角いこのクルマは、いかにして世界中で親しまれる存在となったのか? イタリア在住の大矢アキオが、隠れた名車に宿る“エンジニアの良心”を語る。








































