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ジャガーFタイプP300ファーストエディション クーペ(FR/8AT)/FタイプP450 Rダイナミック コンバーチブル(FR/8AT)/FタイプRクーペ(4WD/8AT)

血湧き肉躍る 2020.02.19 試乗記 河村 康彦 マイナーチェンジでフロントフェイスの印象が大きく変わった、ジャガーのスポーツカー「Fタイプ」。では、その走りはどうか? 欧州ポルトガルで、タイプの異なる3モデルに試乗した。

ジャガー史における重要車種

「性能や価格の狙いどころは、『911カブリオレ』と『ボクスター』の中間あたりです」。

2013年、まずはオープンボディーのみでローンチされたFタイプの、当時スペインで開催された国際試乗会のプレゼンテーションで、開発担当のエンジニアは臆することなくそのように言い放った。

さまざまなスペックを検証すれば、なるほどそうした形容も“言い得て妙”だった。それでも、名指しで他社の作品を引き合いに出してオブラートに包むこともなくそこまでズバリと言ったことに、一瞬「聞き間違えたかな?」と感じたのを、昨日のことのように思い出す。

下手をすれば宣戦布告とさえも受け取られそうな、ちょっと刺激的なコメントだったが、これにはちょっとしたエピソードがある。ポルシェがかつて、911のみで“一本足打法”を強いられていた時代に陥った深刻な経営危機から見事復活を遂げたのは広く知られている。が、そのきっかけを作り出した当時のセールス&マーケティング担当副社長であった人物が「個人的な理由により」というコメントと共に突然社を去り、ジャガーのインハウス・エージェントに身を転じて情報発信やブランディング、マーケティングなどに大きく関与しているらしい……と、フとしたきっかけから後に知ることとなったのだ。

そんな動きは、くしくもこのブランドが「自身のDNAはスポーツカーにあり」と強調し始め、コミュニケーションカラーを以前のブリティッシュレーシンググリーンからワインレッドへと変更するなど、よりアクティブで若々しいイメージをアピールし始めた時期とも符合している。

となれば、“名車”として誉れ高い往年の「Eタイプ」に対するオマージュであることが明らかなネーミングを与え、ピュアなスポーツカーであることを強調するFタイプには、単に“新しいスポーツカー”という意味合いだけでなく、ジャガーをより若い世代にも好まれるブランドへと方向転換させる、重要な役割が期待されていたと考えられる。

このモデルは実は、さまざまな意味で、ジャガーが自身の歴史のターニングポイントにあることを示すモデルでもあるのだ。

モデルライフ半ばのマイナーチェンジが実施された、ジャガーのピュアスポーツカー「Fタイプ」。国内での受注は2020年1月に始まった。写真は「ファーストエディション」と名付けられた発売記念の特別仕様車で、エクステリアがブラックのパーツ類でドレスアップされている。
モデルライフ半ばのマイナーチェンジが実施された、ジャガーのピュアスポーツカー「Fタイプ」。国内での受注は2020年1月に始まった。写真は「ファーストエディション」と名付けられた発売記念の特別仕様車で、エクステリアがブラックのパーツ類でドレスアップされている。拡大
スポーツカーらしく適度なタイト感が味わえるキャビン。写真は「P300ファーストエディション クーペ」のもの。
スポーツカーらしく適度なタイト感が味わえるキャビン。写真は「P300ファーストエディション クーペ」のもの。拡大
センターコンソールの中央には、新たに12.3インチのインタラクティブドライバーディスプレイがレイアウトされる。
センターコンソールの中央には、新たに12.3インチのインタラクティブドライバーディスプレイがレイアウトされる。拡大
シフトレバーは、マイナーチェンジ前と同じガングリップタイプ。最もスポーティーな「FタイプR」ではMTモード選択時の変速スピードが一段と高められている。
シフトレバーは、マイナーチェンジ前と同じガングリップタイプ。最もスポーティーな「FタイプR」ではMTモード選択時の変速スピードが一段と高められている。拡大
センターが下方にオフセットされたステアリングホイール。メーターの視認性にも配慮したデザインだ。
センターが下方にオフセットされたステアリングホイール。メーターの視認性にも配慮したデザインだ。拡大
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文字通りのフェイスリフト

Fタイプが、ジャガーの大転換期を象徴するモデルでもあったことは、それに続いた各モデルの姿を振り返っても納得がいく。

「XE」に「Fペース」、そして「Eペース」に「Iペース」……と、それらはいずれも、かつてのこのブランドの製品とは大きく趣を変えたアクティブで若々しいイメージの持ち主。“ブランドの若返り戦略”が緻密に、そして長期的に練られたものであったことは、Fタイプ後のこうした一連の作品群を見ても明らかだ。

Fタイプの誕生以前、2008年デビューの初代「XF」やそれに続く「XJ」という、それまでのこのブランドの作品では考えられなかった“スポーティールックなサルーン”の出現に、戸惑いを感じた往年のファンも少なくなかったはず。けれども、Fタイプという2シーターのピュアなスポーツカーの投入で、このブランドの変革に対する意志の強さのほどをあらためて認識したという人は多かったのではないだろうか。

そんなFタイプが、誕生後丸6年を経てマイナーチェンジを迎えた。ひと目で明らかなように、新型の最大の見どころはまず、従来型から大胆に、かつ大きく変更された、その顔つきにある。

モデルライフ途中でのリファインゆえ、基本的なボディー骨格やパワーユニットは従来型のキャリーオーバー。一方、フロントマスクには従来の縦長からスリムな横型へと変更されたヘッドライトをはじめ、“フルチェンジ”レベルの手が加えられている。

そんなフロントマスクの変化の大きさゆえ、「自分は従来型の方が好みだった」という人が少なからず現れそうなのも事実。一方で、残るモデルライフにあらためて新鮮さを加え、あわよくば従来型Fタイプのユーザーにも“乗り換え意欲”をもたせるという可能性まで考えれば、印象を一新させる顔つきを採用するのも納得がいくというものだ。

「Fタイプ」には「クーペ」(写真)のほかオープントップの「コンバーチブル」がラインナップされる。
「Fタイプ」には「クーペ」(写真)のほかオープントップの「コンバーチブル」がラインナップされる。拡大
縦型だったヘッドランプがシャープな横型になるなど、マイナーチェンジを機にフロントフェイスのデザインは大幅に変更された。
縦型だったヘッドランプがシャープな横型になるなど、マイナーチェンジを機にフロントフェイスのデザインは大幅に変更された。拡大
リアコンビランプは、やや直線的なデザインに。その下方に添えられるグレード名は、エンジンの出力に基づき定められている。
リアコンビランプは、やや直線的なデザインに。その下方に添えられるグレード名は、エンジンの出力に基づき定められている。拡大
荷室の容量は「クーペ」(写真)の場合で299~509リッター。オープントップの「コンバーチブル」は233リッターとなる。
荷室の容量は「クーペ」(写真)の場合で299~509リッター。オープントップの「コンバーチブル」は233リッターとなる。拡大

持ち味は残してアップデート

そうはいっても、もちろん今回のリファインは“見た目だけ”の変更にとどまっているわけではない。

多彩なグラフィックを用いてさまざまな情報を表示する大型液晶メーターの新採用や無線を通じた更新機能を含むコネクティビティー機能のアップデートなどはその一例。一方、送風モードによりダッシュボード上面から電動でルーバーがせり出す、他に例を見ない空調システムや、左右パッセンジャー間の独立性が強い“コックピット感覚”に富んだキャビンの造形など、デビュー時に話題となったFタイプならではといえる記号性は、しっかり踏襲されている。

シリーズの頂点に立つ4WDのホッテストモデル「FタイプR」に搭載されるメカニカルスーパーチャージャー付きの5リッターV8ユニットは、最高出力が従来の550PSから575PSへ、最大トルクも680N・mから700N・mへとアップ。その走りのパフォーマンスも注目される。ただし、2017年に追加設定されたターボ付き2リッター4気筒ユニットの、300PSと400N・mというスペックに変更はない。

ポルトガルで開催された国際試乗会では、そんな2種の心臓を積んだ2台の「クーペ」と、R用と共通の基本ディメンションながら、最高出力を450PSに、最大トルクを580N・mに“抑えた”エンジンをRWDシャシーと組み合わせた「コンバーチブル」の、計3台をテストした。

コーナー脱出時点でアクセルを踏み込むと、即座に後輪側が「ウリウリウリ!」と外側にはらみ出そうとする、FRレイアウトならではの挙動が刺激的、かつ快感なのがコンバーチブル。そして、8段のステップATが巧みでダイレクト感に富んだ変速を行うこともあり、絶対的な加速力に不足はなく、かつ思いのほか力強い快音を聞かせてくれる4気筒モデル……。そんな2台は、確かに“ピュアスポーツカー”と認めるに足る不満のない仕上がりだった。

全面液晶タイプのメーターパネル。円形の計器盤やカーナビのマップなど、必要に応じて表示内容を切り替えられる。
全面液晶タイプのメーターパネル。円形の計器盤やカーナビのマップなど、必要に応じて表示内容を切り替えられる。拡大
2リッター直4モデル(写真)は後輪駆動限定となるが、5リッターV8モデルや、日本で販売される3リッターV6モデルには四輪駆動車が用意される。
2リッター直4モデル(写真)は後輪駆動限定となるが、5リッターV8モデルや、日本で販売される3リッターV6モデルには四輪駆動車が用意される。拡大
「P300ファーストエディション クーペ」の20インチホイール。タービン型の特徴的なデザインが目を引く。
「P300ファーストエディション クーペ」の20インチホイール。タービン型の特徴的なデザインが目を引く。拡大
「P450 Rダイナミック コンバーチブル」のインテリア。電動によるルーフの開閉時間はそれぞれ12秒。
「P450 Rダイナミック コンバーチブル」のインテリア。電動によるルーフの開閉時間はそれぞれ12秒。拡大
今回はポルトガル北西部のポルトから首都リスボンまで、3種類の「Fタイプ」に試乗した。写真はオープントップモデルの「P450 Rダイナミック コンバーチブル」。
今回はポルトガル北西部のポルトから首都リスボンまで、3種類の「Fタイプ」に試乗した。写真はオープントップモデルの「P450 Rダイナミック コンバーチブル」。拡大

Rの官能性に感心

けれども、それらから乗り換えると「やっぱりこっちが真打ちでしょ!」と快哉(かいさい)を叫びたくなったのがRのクーペだ。どんな場面からでもアクセルオンとともに有り余るトルクで瞬時にスピードを増し、怒涛(どとう)の出力の持ち主ながらそれを決して持て余すことのないこのモデルの走りは、古き良き時代の大排気量スポーツカーならではの味わいと、最新のテクノロジーに裏打ちされたハイパースポーツカーとしての洗練された感覚を併せ持つ、まことに官能的な一台といえるものだったのだ。

5リッターのV8エンジンに過給機を加え、しかもシャシーは4WDとなれば、車両重量がそれなりにかさむのは避けられない。ところがこのホッテストバージョンには、1.7t超という車両重量から連想される重々しさはみじんもなく、コーナリングでは、フロント軸重がはるかに軽いはずの4気筒モデルとさして変わらない“軽やか”なターンインの感覚を味わわせてくれた。

従来のV8モデルに比べると、アクセルオフ時のアフターバーン的な演出がいくらか抑えられたかな? という印象は受けたものの、それでも十分刺激的なサウンドは、スポーツ派のドライバーには何ともうれしいプレゼントであるはず。そんなこんなで、走りのテンポが速まるほどに、他の2モデル以上に“血湧き肉躍る感覚”がヒートアップすることになったのが、このモデルだ。

「資金的に恵まれた年配者のための、ジェントルなサルーンのメーカー」。そんなイメージを今でもジャガーというブランドに対して抱く人がいるかもしれない。特に日本では、インポーター自らがそんな雰囲気を後押ししてきたという経緯もある。

けれども実際にはそれこそが今、このブランドが払拭(ふっしょく)したい事柄でもあるはず。Fタイプはマイナーチェンジ後も、そんな”新世代ジャガー”を象徴する最右翼なのである。

(文=河村康彦/写真=ジャガー・ランドローバー/編集=関 顕也)

最もパワフルな「Rクーペ/コンバーチブル」が0-100km/h加速に要する時間は3.7秒。出力が控えめな2リッターモデルでも5.7秒でこなす。
最もパワフルな「Rクーペ/コンバーチブル」が0-100km/h加速に要する時間は3.7秒。出力が控えめな2リッターモデルでも5.7秒でこなす。拡大
最上級モデル「FタイプR」には最高出力575PSの5リッターV8ターボエンジンが搭載される。
最上級モデル「FタイプR」には最高出力575PSの5リッターV8ターボエンジンが搭載される。拡大
「Rクーペ」のホイール。直径はほかの試乗車と同じ20インチながら、タイヤは前後とも10mmずつワイドなものが組み合わされる。
「Rクーペ」のホイール。直径はほかの試乗車と同じ20インチながら、タイヤは前後とも10mmずつワイドなものが組み合わされる。拡大

レーシーな雰囲気を醸す「Rクーペ」のインテリア。シートやメーターバイザーはスエード調の素材で仕立てられている。


	レーシーな雰囲気を醸す「Rクーペ」のインテリア。シートやメーターバイザーはスエード調の素材で仕立てられている。
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日本で選べるボディーカラーは全12色。「SVOプレミアムパレット」と呼ばれるメニューでスペシャルエフェクトをオーダーすることも可能だ。
日本で選べるボディーカラーは全12色。「SVOプレミアムパレット」と呼ばれるメニューでスペシャルエフェクトをオーダーすることも可能だ。拡大
ジャガーFタイプP300ファーストエディション クーペ
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テスト車のデータ

ジャガーFタイプP300ファーストエディション クーペ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4470×1923×1311mm
ホイールベース:2622mm
車重:1520kg(DIN)
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:300PS(221kW)/5500rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/1500-4500rpm
タイヤ:(前)255/35ZR20/(後)295/30ZR20(ピレリPゼロ)
燃費:8.1km/100リッター(約12.3km/リッター 欧州複合モード値)
価格:--万円/テスト車=-- 円
オプション装備:--
※数値はすべて欧州仕様車の参考値

テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

ジャガーFタイプP450 Rダイナミック コンバーチブル
ジャガーFタイプP450 Rダイナミック コンバーチブル拡大

ジャガーFタイプP450 Rダイナミック コンバーチブル

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4470×1923×1307mm
ホイールベース:2622mm
車重:1660kg(DIN)
駆動方式:FR
エンジン:5リッターV8 DOHC 32バルブ スーパーチャージャー付き
トランスミッション:8段AT
最高出力:450PS(331kW)/6000rpm
最大トルク:580N・m(59.1kgf・m)/2500-5000rpm
タイヤ:(前)255/35ZR20/(後)295/30ZR20(ピレリPゼロ)
燃費:10.6km/100リッター(約9.4km/リッター 欧州複合モード値)
価格:--万円/テスト車=-- 円
オプション装備:--
※数値はすべて欧州仕様車の参考値

テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

ジャガーFタイプRクーペ
ジャガーFタイプRクーペ拡大

ジャガーFタイプRクーペ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4470×1923×1311mm
ホイールベース:2622mm
車重:1743kg(DIN)
駆動方式:4WD
エンジン:5リッターV8 DOHC 32バルブ スーパーチャージャー付き
トランスミッション:8段AT
最高出力:575PS(423kW)/6500rpm
最大トルク:700N・m(71.4kgf・m)/3500-5000rpm
タイヤ:(前)265/35ZR20/(後)305/30ZR20 101Y(ピレリPゼロ)
燃費:11.0km/100リッター(約9.1km/リッター 欧州複合モード値)
価格:--万円/テスト車=-- 円
オプション装備:--
※数値はすべて欧州仕様車の参考値

テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

河村 康彦

河村 康彦

フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。

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