第165回:991型ポルシェ911 LOVE
2020.03.03 カーマニア人間国宝への道スゴイぜ! 7段MT
992型911に試乗して、なぜか991型への愛のようなものがふつふつと湧き上がってきた私。フェラーリへの愛に比べると、どことなくおっさん同士の愛に近い気もするが気にしない。
もちろん992型もすばらしいおクルマでしたが、991型はもっと自分の好みに合っていた。991型の前期型初期モデルは、もうちょっと乗り味がしなやかで、ウットリするような優しさがあったような気がするのだ。
991型の「カレラS」前期型は、かの池沢早人師先生も、現在まで7年という自己最長所有記録を達成されているほどである。かつて「ターボ」や「RS」「GT3」、果ては「ルーフCTR」まで乗ってこられた池沢先生が、「カレラSでなんの不足も感じない。いままでで最高のクルマだよ」とおっしゃっておられたのだ!
私も991型のカレラ/カレラSは、いままで乗ったポルシェ911の中で一番好き……だった気がする。学生時代の淡い恋みたいですが。
991型はとにかくヤサシイのですよ。乗り心地なんて「クラウン」みたいにふんわり。いやクラウンみたいつーと誤解を招くな。そうじゃなく、R35「GT-R」の2020年モデルみたいな感じ! つまりポルシェはGT-Rの8年先を行っていたってことだね! さすがポルシェ!
しかも991型は、MTが7段。私、後にも先にも7段以上のMT車は991型以外乗ったことがない。バイクみたいなシーケンシャルタイプじゃなく、フツーのゲート式MTで7段なんてちゃんとシフトできるかな? と思ったけど、第7速はちょっと遠く離れてる感じだったし、オーバードライブギアでめったに使わなかったので、操作に支障はゼロでした。
それよりも、「7速だぜ!」という新たな高揚感がカーマニアにはたまらなかった。やっぱカーマニアは、何ごとも数が多い方がコーフンするのである。
991型の中古車をリサーチ
思えば991型カレラは、新車価格もお安かった。初期のMTモデルはたったの1117万円だったもんね! ちなみにおっさんポルシェ(996型)は990万円から。乗り味は段違いなのにお値段は据え置きに近かったわけだ。一方最新の992型は1359万円から。ああ、991型の前期型ってなんてすばらしいんだろう!
という感じで、991型ポルシェ911への思いは増すばかりとなり、中古車サイトを検索しまくって、どんなグレードがどれだけ流通しているのか調べてしまいました。
991型911の中古車流通状況
MT比率 450分の51(約11%)
左ハンドル比率 450分の259(約58%)
グレードごとの台数
カレラ 108台
カレラS 78台
カレラ4 17台
カレラ4S 34台
カレラ4 GTS 9台
カレラGTS 35台
タルガ系 6台
R 11台
ターボ 8台
ターボS 15台
GT3 55台(うちMT 28台)
GT3 RS 41台
GT2 RS 11台
その他 22台
(すべて執筆時点)
アプルーブドカーの洗礼
わりとまっとうに、ベースグレードのカレラが一番売れていたみたいでホッ。ちなみにカレラ系は約95%がPDKだった。7段MTに未練は残るが、PDKでもよかろう。いつのまにか買うみたいな口調になってるが、あくまで脳内妄想です。
驚くべきは、GT3が想像を絶するほど多いことだ。あんな超絶ウルトラスーパースポーツが、中古車市場にゴロゴロしている! スゲエ……。
実際に売れた台数と中古車流通台数にどれくらい相関関係があるかは不明ですが、ベーシックか頂点かという志向は、カーマニア的にはいかにも自然であるようにも感じる。
ここまで調べたら行動に移さないわけにもいかぬ。私は991型911の実物を、正規中古車センターで見てみることにした。
すると、たまたま991型と992型が並んでいるシーンに遭遇!
うーん、992型のいかつい四角い口(グリル)に比べると、991型は控えめかつエレガントで、たおやかなやまとなでしこ風だなぁ。ヘッドライトも片側4灯のLEDより、瞳がひとつの991型前期型がスキ!
しかし……お高い。一番お安くて930万円。GT3は軒並み2400万円以上! そんなもんお外に並べておいてダイジョウブ? と言いたくなる。
やっぱアプルーブドカーは敷居が高すぎる。私が愛する991型の初期モデルもほとんどなく、ターボ化された後期モデルばっかりだし。
中古車サイトによると、991型カレラの初期型は、最安615万円から存在している。700万円出せば十分なんとかなるはずだ。もっと安い店に出撃し直さねば。うむう。
(文と写真=清水草一/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。