第176回:フェラーリ車両保険物語
2020.05.19 カーマニア人間国宝への道保険をめぐる奥深い世界
全国的にステイホームな日々が続いています。そこで今回は静かな話題、フェラーリの自動車保険の話を書きたいと思います。
というのも私儀、先日フェラーリを増車(「348GTS」を購入)し、新たに保険に加入する必要があったものですから。
実は、庶民がフェラーリを購入する場合、保険こそが最大の壁だったりします。そこには大変奥の深い世界が存在いたします。
私の場合、自家用車が3台(「フェラーリ328GTS」「BMW 320d」「シトロエンDS3」)あり、すべて20等級でした。よって今回は、保険料節約のため、DS3の保険を348GTSに入れ替えました。
すると驚いたことに、残期間10カ月ではありますが、追加保険料がたったの1万3800円! これには本当にビックリ!
保険の内容は、ともにごく普通のフルサポートで、車両価格はDS3が120万円、348GTSが800万円という設定です。348は実際には990万円でしたが、平均相場は600万円くらいなので仕方ありません。
違うのは車両免責額(事故の際の自己負担額)で、DS3は1回目10万円(2回目以降も同様)だったのを、348はともに20万円にしました。
今日び、車両保険を使うと翌年以降の保険料がドカンと跳ね上がるので、クルマをぶつけたとしても、保険を使うのはかなりグッチャグチャにしちゃった時だけ。よってフェラーリの車両保険は、免責を上限の20万円に設定しているのです。
こうすると、保険会社によって異なりますが、免責0円に比べて24%くらい保険料がお安くなる。10万円でも17%割引です。
ということで、今回の車両入れ替えでは、年間保険料が7万0480円から8万4280円に変更になったのでありました。安っ……。
加入申請に高い壁
DS3のほうは、ネット通販型で新規加入しましたが、これが3万3000円くらい(車両保険なし)。合計でわずか4万7000円ほどで済んだのです。
そう聞いても、特に何も思わない方もいらっしゃるでしょうが、例えば新車のフェラーリを3000万円で買ったとして(もっと高いけど)、全年齢担保のフルサポートで新規加入すると、保険料は年間250万円くらいになっちまう。私が買ったのはド中古の底辺フェラーリではありますが、この程度の出費で保険に入れるのは、信じ難いほどの福音であります。
思えば、フェラーリを初めて買ってから27年。この間、保険だけをとっても物語がありました。
まず、フェラーリの自動車保険は、損保会社がなかなか引き受けてくれません。
そんなバカな。自分の入っている保険の車両入れ替え手続きをすればそれでいいんだろう? と思われるでしょうが、次のクルマがフェラーリと知った瞬間、損保会社の対応は激変します。断られたり、渋々受けてくれても、車両評価額を実勢価格より大幅に下げられたり。その上で「外部から完全に遮断される車庫が必要」ということで、車庫の実地調査などを実施した上で、稟議(りんぎ)申請が通らないと加入できません。
私が初めてフェラーリを買ったのは93年で、当時はまだ現在より緩かったのですが、それでもフェラーリの保険加入には信用ある紹介者が必要で、しかも「最初の年に保険金の支払い(=事故)があった場合は、翌年の加入をお断りします」と言われました。
保険代理店側も、フェラーリの加入申請が来るのは初めてというケースが多く、何の気なしに上げたらはねられて驚く、というパターンが一般的です。
限定Aからの大出世
とにもかくにも、私は幸運にも知人がいい代理店を紹介してくれたため、保険に入ることができましたが、当時はまだ31歳でしかも新規加入だったので、普通に車両保険に入ると年間70万円くらいになる。そりゃカナワンということで、自損事故は対象外のエコノミー車両保険を選択。これで確か36万円くらいになりました。
1年目は無事に過ごしましたが、2年目、サーキット走行の帰路、外環道の三郷料金所で「チェロキー」に追突してしまい、修理に保険を使いました。自分の「348tb」が71万円、相手が15万円くらいです。
思えば、生涯、自動車保険を使ったのはこれが最初で最後だっただろうか……。あと飛び石とイタズラ修理で使ったかな。
とにかく私は、フェラーリで追突するという大失態を犯したため、翌年の保険料が跳ね上がりました(当時は2等級落ち)。
そこで、「もう絶対事故は起こさねぇ! 絶対自爆しねぇ! 自爆したら自決する!」くらいの決意を固め、車両保険は限定Aのみに変更。つまり盗難とイタズラのみ保障という片道特攻な内容に変更して、以後それで耐えました。
で、348tbから「512TR」(赤)に買い替えた時、さすがに12気筒フェラーリに限定Aじゃヤバイだろと思い、割引率も9等級に進んでいたので、エコノミーに復帰。この時の保険料は年間16万円ちょい。
その後長年無事故で頑張り、15年後に「360モデナ」から「328GTB」(ブルー)に買い替えた時、ついにフルサポートに加入。「F355」(黄)でまたエコノミーに戻しましたが、512TR(えんじ)と「458イタリア」と328GTS(赤と黒)、そして今回の348GTSは堂々フルサポートという、黄金の晩年を過ごしております。
今回もエコノミーでいいかなとも思ったんですが、エコノミーにしても2~3万円しか節約にならないので、ならフルサポートのほうがコスパがイイ! という判断になりました。血と涙の節約物語。
(文と写真=清水草一/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
第324回:カーマニアの愛されキャラ 2025.12.1 清水草一の話題の連載。マイナーチェンジした「スズキ・クロスビー」が気になる。ちっちゃくて視点が高めで、ひねりもハズシ感もある個性的なキャラは、われわれ中高年カーマニアにぴったりではないか。夜の首都高に連れ出し、その走りを確かめた。
-
第323回:タダほど安いものはない 2025.11.17 清水草一の話題の連載。夜の首都高に新型「シトロエンC3ハイブリッド」で出撃した。同じ1.2リッター直3ターボを積むかつての愛車「シトロエンDS3」は気持ちのいい走りを楽しめたが、マイルドハイブリッド化された最新モデルの走りやいかに。
-
第322回:機関車みたいで最高! 2025.11.3 清水草一の話題の連載。2年に一度開催される自動車の祭典が「ジャパンモビリティショー」。BYDの軽BEVからレクサスの6輪車、そしてホンダのロケットまで、2025年開催の会場で、見て感じたことをカーマニア目線で報告する。
-
第321回:私の名前を覚えていますか 2025.10.20 清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。
-
第320回:脳内デートカー 2025.10.6 清水草一の話題の連載。中高年カーマニアを中心になにかと話題の新型「ホンダ・プレリュード」に初試乗。ハイブリッドのスポーツクーペなんて、今どき誰が欲しがるのかと疑問であったが、令和に復活した元祖デートカーの印象やいかに。
-
NEW
レクサスLFAコンセプト
2025.12.5画像・写真トヨタ自動車が、BEVスポーツカーの新たなコンセプトモデル「レクサスLFAコンセプト」を世界初公開。2025年12月5日に開催された発表会での、展示車両の姿を写真で紹介する。 -
NEW
トヨタGR GT/GR GT3
2025.12.5画像・写真2025年12月5日、TOYOTA GAZOO Racingが開発を進める新型スーパースポーツモデル「GR GT」と、同モデルをベースとする競技用マシン「GR GT3」が世界初公開された。発表会場における展示車両の外装・内装を写真で紹介する。 -
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。









































