マクラーレン720Sスパイダー(MR/7AT)
まさに最速兼美 2020.06.02 試乗記 50km/hまでであれば走行中でも開閉可能な電動リトラクタブルルーフを有す、マクラーレンのオープンモデル「720Sスパイダー」に試乗。720PSの大パワーとオープンエアドライブの組み合わせを、ワインディングロードで味わった。気難しさや扱いにくさは皆無
初対面でものすごいオーラを感じて、ド緊張しながら話しかけたら意外とフレンドリーな人でホッとした──。マクラーレン720Sスパイダーに初対面した時の気持ちは、ちょうどそんな感じだった。
まずこのクルマは、他のスーパースポーツとは明らかに異なる個性と迫力があって、車両に近づくにつれて圧を強く感じる。有機的な面と線を組み合わせたフォルムは、ジャングルでうずくまっているネコ科の肉食獣を思わせるし、両側のドアを跳ね上げた状態だと子どもの頃に恐竜図鑑で見た太古の鳥類のようでもある。
しかも“720S”というネーミングが最高出力720PSに由来することも知っているから、乗り込む際にはちょっと心拍が速まる。
幅広いサイドシルに腰掛けてお尻を中心に体を反転、片足を室内に伸ばしながらお尻もシートに移動させる。最後にもう片方の足を折り畳むように室内に収納して乗り込みが完了。
こうしてマクラーレン720Sスパイダーの運転席に収まると、気難しさや扱いにくさが皆無であることにちょっと驚く。第一に、視界がいい。着座位置は低く、感覚的には地上数cmのところにお尻が位置しているように感じる。それなのに前がよ〜く見えるのだ。実際にやるかどうかは別として、自信を持ってテール・トゥ・ノーズのバトルに挑める。
あと、これは走りだしてから気づいたことだけれど、斜め後方もよく見えて、死角というものをほとんど感じない。実際にそういう場面があるかどうかは別として、斜め後方で虎視眈々(たんたん)とオーバーテイクを狙っているアラン・プロストのマシンをしっかり認識できる。って、いつから自分はアイルトン・セナになったのか。
人をドキドキさせるようなカッコなのに、乗り込むと安心して運転に専念できるクルマというのは、当たり前のようだけれどなかなか出会わない。そう感心しながら、4リッターのV型8気筒ツインターボエンジンに火を入れる。
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