第184回:浦島太郎も悪くない
2020.07.14 カーマニア人間国宝への道失神覚悟のエキシージ
先日、ものすごく久しぶりに、「ロータス・エキシージ」に試乗させていただきました。「スポーツ410」というモデルです。
私が以前エキシージに乗ったのは、もういつのことだったかまったく記憶がないほど昔のことで、「シリーズ1」だか「シリーズ2」だかもわからないのですが、とにかくすさまじくハードボイルドかつハードコアなサーキットスペシャルマシンで、本当にすさまじい本気マシンでして、あまりのハードさに失神しそうになった覚えがあるのです。実はあのとき記憶を失ったのかもしれません。
とにかくそれくらいハードだったので、たぶんシリーズ1だったのでしょう。エンジンもまだトヨタ製じゃなかったし。
で、今回は、「現在国内で新車が買えるモデルの中で、一番ピュアなスポーツモデルは何か?」と熟考した末、2秒後くらいに思い浮かんだのがエキシージだったので、某担当者にお願いして、試乗させていただくことになりました。
現物に対面してビックリ。エキシージってこんなカッコになってたの~!? いやまぁそんなに変わっちゃいないけど、こんな顔になってたんだ。
超ハードなのにカイテキ
実は私、自動車ライターでありながら、エキシージの変遷をトンと知らず、まったくなんの予習もせずに、ただあの時のおぼろげな記憶だけを頼りに、「エキシージを借りてくれ!」とお願いしたのです。
現在のエキシージは「シリーズ3」になっていたのですね。それも8年も前に! たぶん私は、シリーズ2には乗ってません。エキシージに乗ると記憶を失ってしまうという恐怖があって、無意識に避けていたのだろうか。
なぜ私が、あんなに恐れていたエキシージをリクエストしたかというと、その時の取材の目的が、「レースクイーンを助手席に乗せてヒーヒー言わせる」というものだったからです。自分がヒーヒー言うくらいのクルマじゃないと、レースクイーンだってヒーヒー言ってくれないだろうから。
で、どうだったかというと、
「こんなにカイテキなのかよ~~~~~~!」
20年ぶりに孫の顔を見たおじいちゃんみたいな感じでした。
まずなんといっても、乗り心地が悪くない。ハードといえば超ハードだけど、ボディー剛性がウルトラ高いせいもあって、全然つらくない! 20年前の失神エキシージとは月とスッポン!
しかもエアコンやオーディオが付いてる! 20年前のエキシージがどうだったか記憶はないけど、「そんなもんが付いてる雰囲気はゼロ」だったような気がします。
空白の20年
さすがに今でもパワステはないので、ステアリングは重いっちゃ重いけれど、意外と軽いといえば軽い。そして、その手応えはダイレクトそのもので超カイカン! トヨタ製V6エンジンにスーパーチャージャーをかまして絞り出した416PSを吠(ほ)えさせつつ、6MTを駆使してコーナーを攻めれば、30歳くらい若返った気分! それでいて今のエキシージには、つらいことが何もない!
そのあたりについて、原稿を書く前に当サイトの山田弘樹君の試乗記を読んで確認したのですが、細かい部分をスッ飛ばして大意だけ見れば、だいたいその通りのようです。
いつのまにか、この世で最もハードなピュアスポーツカーであろうロータス・エキシージまでもが、こんなにカイテキになっていたのか……。厳密には、この上に「カップ430」というモデルがあり、そっちは失神マシンなのかもしれないけど。
ところでこのクルマ、お値段はいかほどなのだろう。800万円くらいだろうか?
某担当者:1358万5000円です。
イヤ~~~~~~ッ! そんなにするの~~~~~~!?
ああ、すべてが浦島太郎。20年で世の中こんなに変わるのか。
考えてみりゃフェラーリだって、20年前と今とじゃ、値段が2倍くらいになってるもんなぁ。ロータスが2倍になったって不思議はないし、エキシージがカイテキになったっておかしくない。約20年間(たぶん)エキシージを知らなかったおかげで、歳月の重みをズッシリ実感。
そういえば助手席のレースクイーン様も、最初はヒーヒー言ってくれたけど、5分後くらいには「割と好きかも……」みたいになったのでした。
(文と写真=清水草一/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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