KTM 390アドベンチャー(MR/6MT)/KTM 1290スーパーデュークR(MR/6MT)/ハスクバーナ・ヴィットピレン701(MR/6MT)
進化の果ての洗練と哀愁 2020.08.01 試乗記 欧州屈指のバイクメーカーであるKTMと、北欧発祥のハスクバーナ・モーターサイクルズが、2020年モデルの合同試乗会を開催。進化を続ける両ブランドの現在の姿とは? 「KTM 890デュークR」に続き、試乗がかなった最新モデル3台の走りをリポートする。欲張りな万能マシン――KTM 390アドベンチャー
「KTM 390アドベンチャー」は、スポーティーなシングルとして知られる「390デューク」をベースとしてサスペンションストロークを伸ばし、フロントに19インチホイールを装着。アドベンチャースタイルに仕立て上げたマシンだ。このエンジンと足まわりの組み合わせが予想外によかった。
ストリートを軽く流して走ってみる。3000~5000rpmぐらいでシフトアップしていくと、単気筒のトルクと軽快なフィーリングが実に楽しい。もちろん、その気になってスロットルを開ければ高回転も気持ちよく回る。ただし5000rpmぐらいからステップに振動が出てきて、回転が上がるに従いそれが大きくなったのは少し気になった。高回転を常用していると足がしびれてくるかもしれない。レブリミットの1万rpm直前ではシートにも共振と思われる振動が出てお尻がむずがゆくなる。
ハンドリングは“フロント19インチ”らしいしっとりとした味付け。大きめのカウルが付いていることもあって、普通のオフロードバイクに比べるとフロントタイヤにはしっかり荷重がかかり、路面に押し付けられている。フロントの接地感と安定感が高いから、長距離を走るライダーの疲労も少ないだろう。
オフロードでの走行も考えてサスペンションストロークは長めに確保されているのだが、このサスの出来がいいから、オンロードでコーナーを攻めてもピッチングが大きすぎるような印象はない。“ちょっとストロークが大きめのロードスポーツ”ぐらいの感じだ。ワインディングロードを走るレベルであれば、逆に加減速の姿勢変化を利用したライディングが楽しめるだろう。
オフロードでの本気の性能を確保しながら、オンロードでの快適性やスポーツ性までも手に入れた欲張りなマシンである。
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ライディングが楽しくて仕方ない――ハスクバーナ・ヴィットピレン 701
今回試乗したマシンの中で、最も感動したのが「ヴィットビレン701」だった。何しろエンジンが猛烈にいい。基本的には改良前のモデルと変わってないというけれど、いろいろな部分が洗練されているようだ。
低回転を使ってトコトコ走ることもできるけれど、このエンジンの素晴らしいところは6000rpmからの伸びと盛り上がり方。官能的な排気音とともに猛然とダッシュしていく。ビッグシングルでありながら回して走ることが楽しくて仕方ない。
シングルやツインはスロットルを戻した時、エンジンブレーキの利きが強くて乗りにくいこともあるが、ヴィットビレンの場合はバックトルクリミッターに加え、マネジメントによってエンブレの利きが意識的にコントロールされているようで、高回転まで引っ張ってスロットルを戻した時のエンブレの利き方も自然だ。
以前のモデルはフロントの直進性がとても高く、バンクさせてもフロントの舵角がつきにくい印象があったが、今回試乗した最新モデルはホイールやサスペンションが変更されたことで舵角のつき方も自然。とても素直で乗りやすくなった。軽量スリムな車体とこのハンドリングによって、コーナリングは文句なしに楽しい。
そうしてコーナーを攻めていてちょっと気になったのは、シートが硬くて腰高なのと、それに対してステップの位置が低すぎること。加えてステップにヒールガードがないから、下半身でマシンをコントロールしようとしたときに足でマシンをホールドしにくい。下り坂のコーナリングでは下半身を支えられず、低いハンドルに力がかかってしまう。
と、若干気になるところはあったものの、このマシンはとても魅力的。「もうバイクを増車しない」と固く心に決めていたにもかかわらず、ガレージにもう1台分の余裕をつくることができないか真剣に考えてしまったほどである。
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過去の姿に未練はない――KTM 1290スーパーデュークR
KTM製スポーツネイキッドの最高峰が「1290スーパーデュークR」だ。一番の魅力は強烈な中速トルク。4000rpmも回っていれば速度コントロールは自由自在。スロットルを大きく開けた瞬間、マシンがはじかれたように加速する。 高回転での気持ちのいい伸びは、一気筒あたり650ccもあるとは思えないほど軽やか。7000rpmからレッドゾーンが始まる1万0500rpmまでは一瞬だ。
しかし、今回試乗して感心したのは、そうしたパワーやトルクよりも扱いやすさだった。ストリートモードで一般道を走ってみたが、回転を抑えて走っていれば過激なスペックのツインエンジンであることが信じられないくらいに従順。3000rpmぐらいならギクシャクすることもないし、スロットルを開ければドンツキなど全く感じさせず、滑らかに加速する。
このエンジンよりさらに完成されていたのが車体と足まわり。リンク式となったリアショックは初期の作動がスムーズで乗り心地もいいし、速度が出ていないときでもよく動いてくれるから、路面状況や視界があまりよくないワインディングロードを流していても、全くストレスがない。スーパーデュークはこんなに乗りやすくなってしまったのかと思った。
今回、同時に試乗した890デュークRもそうだが、KTMのスポーツネイキッドは全体的な完成度が高くなった。このカテゴリーのマシンをつくり始めた当初に感じられた、「怖いぐらいに切れ味の鋭いハンドリング」はすっかり影を潜めている。独自の考えでスポーツライディングを追求していたKTMに引かれていたテスターとしては、飛躍的に完成度を高めたことに感心はするものの、若干寂しいような気分にもなるのである。
(文=後藤 武/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
テスト車のデータ
KTM 390アドベンチャー
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×--×--mm
ホイールベース:1430mm
シート高:855mm
重量:158kg(乾燥重量)
エンジン:373.2cc 水冷4ストローク単気筒DOHC 4バルブ
最高出力:44PS(32kW)/9000rpm
最大トルク:37N・m(3.8kgf・m)/7000rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:3.37リッター/100km(約29.7km/リッター、WMTCモード)
価格:75万9000円
ハスクバーナ・ヴィットピレン 701
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×--×--mm
ホイールベース:1434mm
シート高:830mm
重量:158kg(燃料を除く)
エンジン:692.7cc 水冷4ストローク単気筒 OHC 4バルブ
最高出力:75PS(55kW)/8500rpm
最大トルク:72N・m(7.3kgf・m)/6750rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:3.5リッター/100km(約28.6km/リッター、WMTCモード)
価格:125万8000円
KTM 1290スーパーデュークR
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×--×--mm
ホイールベース:1497mm
シート高:835mm
重量:189kg(乾燥重量)
エンジン:1301cc 水冷4ストロークV型2気筒DOHC 4バルブ
最高出力:180PS(132kW)/9500rpm
最大トルク:140N・m(14.3kgf・m)/8000rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:6.17リッター/100km(約16.2km/リッター、WMTCモード)
価格:217万9000円

後藤 武
ライター/エディター。航空誌『シュナイダー』や二輪専門誌『CLUBMAN』『2ストマガジン』などの編集長を経てフリーランスに。エアロバティックスパイロットだった経験を生かしてエアレースの解説なども担当。二輪旧車、V8、複葉機をこよなく愛す。
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