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第192回:座右の銘は「節約」

2020.10.26 カーマニア人間国宝への道 清水 草一

自宅の電力自給率ほぼ100%

不肖ワタクシ、「死ぬまでEVは買わねぇ!」と宣言しておりました。

いえ、決してガソリンカブ飲み万歳とか、浪費大好きとかいうわけではありません。なにせフェラーリは究極のエコカーです。めったに乗らないのでエネルギーを使わず、廃車がないので産廃も出しませんから!

この理論が世間一般で通用するかは未知数ですが、とにかく私はエコにはビンカンさん。だからエコじゃないクルマは大嫌い! 初代「プリウス」や「アクア」といったHVにも乗ってたし、現在の足グルマ代表の先代「BMW 320d」も、購入後の平均燃費は18.2km/リッター(車載燃費計データ)と、実に優秀なエコカーです。

極めつけは、自宅の屋根でソーラー発電も実施しておりまする。おかげで電力自給率ほぼ100%。まさにエコ人間! 座右の銘は「節約」です。

そんなエコ人間の私は、なぜ一生EVに乗らないつもりだったのか?

それは、EVは決してそんなにエコじゃない、と考えていたからです。

Well to Wheel(ウェル・トゥ・ホイール)のCO2排出量は、日本の発電割合だと、せいぜいプリウスあたりとイーブンでしょ? イーブンのクセに究極のエコカーとしてデカい顔するのが気に食わない。だいたいロングドライブでメチャ不便だし! ロングドライブが大好きな自分としては、EVという選択はあり得ない! だから一生買わない! と宣言しておりました。

2020年10月30日に発売されるホンダ初の量産電気自動車「ホンダe」。スタイリッシュで取り回しもいい。写真の外装色は「チャージイエロー」と呼ばれるもので、今回のテーマにふさわしいボディーカラーだといえる。
2020年10月30日に発売されるホンダ初の量産電気自動車「ホンダe」。スタイリッシュで取り回しもいい。写真の外装色は「チャージイエロー」と呼ばれるもので、今回のテーマにふさわしいボディーカラーだといえる。拡大
エコ人間を自認する私の座右の銘は「節約」。以前、大乗フェラーリ教オリジナルの「節約。キーホルダー」もつくり頒布した。
エコ人間を自認する私の座右の銘は「節約」。以前、大乗フェラーリ教オリジナルの「節約。キーホルダー」もつくり頒布した。拡大
自宅の屋根でソーラー発電も絶賛実施中。よってわが家の電力自給率は、ほぼ100%である。
自宅の屋根でソーラー発電も絶賛実施中。よってわが家の電力自給率は、ほぼ100%である。拡大
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EV購入意欲が湧いてきた?

ところが最近、その考えが変わってきた。それは、「欧州で風力発電のコストが下がりまくっている」という記事を読んだからです。

資源エネルギー庁のデータによると、風力発電の世界平均コストは8.8円/kWh。現在は6円を切っているというデータもある。日本の石炭火力(約12円)の半分じゃん! マジかよ!!

大規模ソーラー発電も、アメリカみたいな国だとコストは日本の半分以下で、もはや化石燃料エネルギーよりはるかに安いというのです! ヒエ~!

日本は気象や地理条件が大変厳しく、風力発電のコストは20円/kWhあたりで高止まりしていて設置が進んでないし、ソーラー発電もいろいろ障害が出ていて頭打ちだけど、今後ひょっとして日本でも、自然エネルギーでそれなりに安く発電できるようになるかも! そうするとEVのエネルギー効率は、ハイブリッドやディーゼルをぶっちぎる!

しかも、わが家のように自家発電している場合、EVを蓄電池としても活用できる。そう思うと、突如としてEVへの購入意欲が湧いてきたのです。あくまで将来的にだけど。

そこで、一夜漬け的にEV選びについて勉強してみました。今回はその浅薄なる研究発表をしてみたいと思います。

神奈川県横浜市にある磯子火力発電所。最新鋭の設備で環境負荷低減とエネルギー効率向上を世界最高水準で両立したという、コンパクトな都市型石炭火力発電所だ。総出力は120万kW。日本では火力発電の割合が約75%に達している(電気事業連合会2019年データ)。
神奈川県横浜市にある磯子火力発電所。最新鋭の設備で環境負荷低減とエネルギー効率向上を世界最高水準で両立したという、コンパクトな都市型石炭火力発電所だ。総出力は120万kW。日本では火力発電の割合が約75%に達している(電気事業連合会2019年データ)。拡大
フェラーリのマラネッロファクトリー。工場の屋根に並べられたソーラーパネルの発電によって、自社で使用する電力の一部をまかなっているそう。
フェラーリのマラネッロファクトリー。工場の屋根に並べられたソーラーパネルの発電によって、自社で使用する電力の一部をまかなっているそう。拡大
ホンダはブラジルに風力タービン9機からなる発電装置を設置。ブラジルにおける年間約14万台の車両生産に必要とする電力量を、再生可能エネルギーでつくり出している。
ホンダはブラジルに風力タービン9機からなる発電装置を設置。ブラジルにおける年間約14万台の車両生産に必要とする電力量を、再生可能エネルギーでつくり出している。拡大

その1:高級EVは超ロングドライブに向かない

「テスラ・モデルS」や「ジャガーIペース」、「メルセデス・ベンツEQC」などの1000万円級の高級EVは、80~100kWhの大容量バッテリーを積み、航続距離400km以上をうたうが、それを使い切っちゃうと、それ以上進むのがタイヘンだ。

私は先日、ジャガーIペース(90kWh)に同乗して都内から長野市まで遠出しましたが、往復約500kmあるので満充電では足りなかった。

そこでSAで30分間の急速充電(44kW仕様)を2回行ったのですが、1回の充電で入れられたのは20kWh。それだと80kmくらいしか走れない。まさに尺取り虫! これら高級EVの実質電費は、約4km/kWhくらいで横並びなので、どれもこれも尺取り虫です。

一方「日産リーフ」だと、40kWhバージョンの航続距離は280kmくらいと短いが、小さくて軽くてパワーも控えめな分、実質電費は7km/kWhくらい。つまり30分の急速充電で20kWh入れて140kmくらい走れる。リーフの場合バッテリー冷却が弱いので(詳しくは後述)、そんなにチャージできない場合もあるみたいだけど、それを無視すれば、例えば1000kmのロングドライブだと、充電回数はIペースの8回対リーフ6回となり、リーフのほうが1時間節約できる計算だ。あくまで机上の計算ですが。

ちなみにEVの場合、スピードを上げると二次関数的に空気抵抗が増加して電費がガックリ落ちる。よってロングドライブでは、大出力モーターによる強力な加速力はほとんど無意味。逆に抵抗で電気(=時間)がムダになるばかり。ロングドライブ好きにとっては、航続距離より電費が大事なので、高級EVはアカン! 高くて買えないけど。

テスラスーパーチャージャーみたいな大出力急速充電がスタンダードになれば状況は変わるけど、今のところはそれがひとつの結論です。

大容量バッテリーを積み込んだEVの代表といえる「テスラ・モデルS」。以前試乗した時にはEVの走行フィールに加えて、あまりの注目度の高さに驚いた。
大容量バッテリーを積み込んだEVの代表といえる「テスラ・モデルS」。以前試乗した時にはEVの走行フィールに加えて、あまりの注目度の高さに驚いた。拡大
先日、「ジャガーIペース」で長野までの往復ドライブを行った。Iペースの一充電走行可能距離はWLTCモードで438kmと発表されている。(写真=郡大二郎)
先日、「ジャガーIペース」で長野までの往復ドライブを行った。Iペースの一充電走行可能距離はWLTCモードで438kmと発表されている。(写真=郡大二郎)拡大
ロングドライブの途中で充電する「ジャガーIペース」。400km以上の航続距離を誇るEVであっても、長距離移動時には“尺取り虫”走行を余儀なくされる。
ロングドライブの途中で充電する「ジャガーIペース」。400km以上の航続距離を誇るEVであっても、長距離移動時には“尺取り虫”走行を余儀なくされる。拡大

その2:V2Hは国産EVしかできない

EVで重要なのは、航続距離もさることながら電費! なわけですが、もっともっと大事なのはバッテリーの寿命ですね。

日産リーフは、バッテリーの冷却が空冷式で、充電中はそれも止まるため温度管理が難しく、バッテリーの寿命を縮めてしまう。1万km走ると3%容量が低下し、10万kmで30%落ちるとか(伝聞です)。このバッテリーの劣化が、日本でのEVのイメージを悪くしてしまった。

ただ、現在日本で売られてるEVで、バッテリー空冷式はリーフだけ。あとは全部水冷式になっているので、バッテリーの寿命は断然長いはず。つまりリーフ以外のEVなら、下取りがガタガタになることはなかろう。テスラの中古車、下がってないからねぇ。

ただ、テスラなど輸入EVは、V2H(ビークル・トゥ・ホーム)、つまり家庭用電源への給電ができない。よってわが家の蓄電池としては使えない!

聞けば欧米では、「大災害による停電に備える」という意識がないらしい。停電が起きても短時間のトラブルだからV2Hなんかいらん! 日本でV2Hが重視されるのは災害大国の特殊事情! 知らんかった。

となると、選択肢は今のところ「ホンダe」しかない。

ホンダeはスタイリッシュだし取り回しがいいしバッテリーは水冷式だし電費もリーフとイーブンだけど、とにかく値段が高すぎる。50kWhの「プジョーe-208」が390万円なのに、35.5kWhで451万円はないだろ。まともに売ろうとしてない……。

というわけで、現状、私の条件に合ったEVはまだありませんでした。今後登場することを期待します。

(文と写真=清水草一/編集=櫻井健一)

「ホンダe」ではあえて航続距離を追わず、「街なかベスト」なコンパクトEVを目指したという。価格はベースグレードが451万円、アドバンスが495万円。
「ホンダe」ではあえて航続距離を追わず、「街なかベスト」なコンパクトEVを目指したという。価格はベースグレードが451万円、アドバンスが495万円。拡大
「ホンダe」に搭載される総電力量35.5kWhのリチウムイオンバッテリー。床下いっぱいに敷き詰められている。
「ホンダe」に搭載される総電力量35.5kWhのリチウムイオンバッテリー。床下いっぱいに敷き詰められている。拡大
わが家の究極のエコカー軍団。めったに乗らないしあまり走らないので、フェラーリはエコカーなのだ。
わが家の究極のエコカー軍団。めったに乗らないしあまり走らないので、フェラーリはエコカーなのだ。拡大
清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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