第202回:コーヒーよりシャシーがウマイ!
2021.03.15 カーマニア人間国宝への道ドイツ御三家を超えたか?
北米にて、「レクサスIS」に最高出力472PSの5リッターV8エンジンを搭載した「IS500 Fスポーツ パフォーマンス」が追加されたという。このカーボンフリーの時流の中、実にアッパレな仕儀である。
なにしろビッグマイナーチェンジを受けたレクサスISは、ドイツ御三家を超えている。メルセデスの「Cクラス」もBMWの「3シリーズ」も、そしてアウディの「A4」も超えた! シャシーの質感ではISがクラスナンバー1! である気がする。5リッターV8を積めば、「BMW M3」も超えられる! たぶん。
ただ、私が乗ったのは、今のところ「IS300h」のみ。アクセルレスポンスが眠いトヨタ・ハイブリッドシステムのハンデをものともせず、シャシー性能でドイツ御三家を超えた! と思わせたのだ。つまり、内燃エンジン(ICE)車ならもっといいはず! である。
同業のナベちゃん(渡辺敏史氏)に尋ねると、「さすがにそこまでは……」とのことであったが、私は「超えた!」と言いたい。いや、言わせてくれ!
われわれカーマニアは、心の中でレクサスをナメていた。私もナメていた。ナメ切っていた。ISなんて値段ばっかり高くて何が面白いのかと思っていた。IS買うより中古の3シリーズのほうが300倍はイイ! と確信していた。
しかし、ビッグマイナーチェンジを受けたISは、突如としてドイツ御三家を超えた。そして5リッターV8自然吸気も積む。まさに日本男児の壮挙である。
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中高年にちょうどいい速さ
そんな折、担当サクライ君より、「レクサスISに乗りませんか」というメールが入った。
「ISの何?」という返信に対しては、「よくわかりません」と、いつものとぼけた回答があったが、後日「IS300“Fスポーツ”」であるとの確報が入った。
おおっ! 待望のISのICE車! 眠いハイブリッドじゃなくICEを積んだISで、夜の首都高を走る! 胸が高鳴るぜえっ!
思えば、レクサスで首都高を走る予定に「胸が高鳴る」など、カーマニアとして革命的な出来事。これはレクサスの革命だ!
当日。
胸を高鳴らせていた割に私は、IS試乗の予定をすっかり忘れ、メシとフロを済ませてユニクロのルームウエアでくつろいでいた。
そこにサクライ君より「到着しました」との連絡が。やべっ! 今晩だったか!
私はフロでふやけた体にユニクロの激安ダウンを羽織り、「はあっ!」と一声気合を入れてISの運転席に乗り込んだ。
うむう……。
このボディーのしっかり感と、精緻極まりないサスペンションの動きおよびステアリング系の操作感は、まぎれもなくドイツ御三家を超えているっ!
2リッター直4ターボエンジンは245PS。その適度なパワーを8段トルコンATで路面に伝える。パワー感は低中回転域ではそこそこだが、ブチ回せばしっかり高まっていく。この古典的な感覚は、古きよきスポーツセダンのソレ。決して速すぎない、中高年にちょうどいい速さである。
もちろん、アクセルのダイレクト感はハイブリッドとは雲泥の差。これぞ中高年カーマニアが泣いて喜ぶ漢(おとこ)のセダンだ。あっぱれレクサス! 涙が出る。
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切腹寸前の情熱が伝わってくる
が、欠点もある。
まず、このノートPCのタッチパッドみたいな一世代古いインフォテインメントの操作系がまったくダメ! こんなもん運転しながら操作したら首都高の側壁に激突だ! そうならないよう衝突被害軽減ブレーキは装備されているが、ACC作動時のレーンキープシステムは数年前のレベル。ほんのちょっと進路を押し戻すだけである。
が、そんなことはいい! タッチパッドは使わなきゃいい! レーンキープなんかもともと要らぬ! 3シリーズに装備された渋滞時ハンズオフ機能がうらやましい気持ちもあるが、ここは日本男児の壮挙に免じてハンズオフを捨てよう!
「エコ」「ノーマル」「スポーツS」「スポーツS+」と、「カスタム」以外のすべてのドライビングモードを試した私は、「首都高ではスポーツSこそ最良ナリ!」との結論を得た。
首都高の中速コーナーをISのスポーツモードでトレースすれば、サスは無駄な上下動を見事に吸収し、針の穴を通すがごとき狙い通りのコーナリングラインを描く! うおおおお! ついにレクサスがここまで来た! ずっとナメてたレクサスが! 取りえはディーラーのコーヒーがうまいことだと思ってたレクサスが! コーヒーよりISのシャシーがうまい! エンジンもまままあです。レクサスのエンジニアたちの、切腹寸前の情熱が伝わってくる!
価格は535万円か……。うむう。買えぬ。高すぎて買えぬ!
がしかし、やはりISはドイツ御三家を超えていた。その感動に酔いしれるフロ上がりの私だった。
(文=清水草一/写真=清水草一、webCG/編集=櫻井健一)
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清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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