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第643回:ロングツーリングも安心・快適 ドゥカティが実現した“バイク初”の運転支援システムを試す

2021.03.26 エディターから一言
世界初の二輪車用先進運転支援システム(ARAS)が搭載された「ドゥカティ・ムルティストラーダV4」。
世界初の二輪車用先進運転支援システム(ARAS)が搭載された「ドゥカティ・ムルティストラーダV4」。拡大

イタリアのドゥカティが、ボッシュと共同で二輪車初の先進運転支援システムを実用化! バイクでのアダプティブ・クルーズ・コントロールは、ライダーにどのような体験をもたらすのか? 四輪車のそれとはどこが違うのか? 実際に使用して確かめた。

「ムルティストラーダV4」はドゥカティのアドベンチャーツアラーの最新モデル。2020年11月に正式発表された。
「ムルティストラーダV4」はドゥカティのアドベンチャーツアラーの最新モデル。2020年11月に正式発表された。拡大
本国仕様にはシンプルな装備のエントリーグレードも存在するが、日本へはARASが標準装備となる「V4 S」「V4 Sスポーツ」のみが導入される。
本国仕様にはシンプルな装備のエントリーグレードも存在するが、日本へはARASが標準装備となる「V4 S」「V4 Sスポーツ」のみが導入される。拡大
ACCとは、車両が自動で加減速を行い、前走車がいなければライダーが設定した車速での定速走行を、設定速度以下で走る前走車がいれば、前走車に対して追従走行を行う運転支援システムである。
ACCとは、車両が自動で加減速を行い、前走車がいなければライダーが設定した車速での定速走行を、設定速度以下で走る前走車がいれば、前走車に対して追従走行を行う運転支援システムである。拡大
フロントに装備されるボッシュ製の中距離レーダーセンサー。周波数レンジ77GHzのミリ波レーダーである。
フロントに装備されるボッシュ製の中距離レーダーセンサー。周波数レンジ77GHzのミリ波レーダーである。拡大

バイク初の2つの機能を搭載

昨今は自動車に搭載される先進運転支援システムの進化が著しいが、いよいよ二輪車にも「ACC(Adaptive Cruise Control/アダプティブ・クルーズ・コントロール)」と「BSD(Blind Spot Detection/ブラインド・スポット検知機能)」が装備されることになった。

先陣を切ったのは、2021年3月13日に国内での販売がスタートしたドゥカティの新型車「ムルティストラーダV4」だ。そして今回、その国内販売に合わせて開催された報道機関向け試乗会で、バイク初のACCとBSDを体験することができた。

一応説明しておくと、ACCとは前車との車間距離を一定に保つようアクセルやブレーキを自動で操作する運転支援システムのこと。BSDは、自車後方の死角に存在する車両、および斜め後方から高速で接近する車両を検知し、両サイドミラー上部のLEDを発光させてライダーに知らせる機能である。四輪ではすでに多数のモデルがこれらの機能を搭載し、ドライバーの安全運転を支援している。

ドゥカティは2018年、2025年に向けた安全に関する中期戦略「2025 Safety Road Map」を公開。ミラノ工科大学のエレクトロニクス/情報/バイオエンジニアリング学部と共同で、レーダーを使ったシステムの開発を進めていること、主要なテクニカルパートナーも選定済みであることや、そして2020年モデルの一部に、ACCとBSDを搭載することを発表した。予定からは少し遅れたものの、2021年モデルの新型車ムルティストラーダV4で、ドゥカティはその約束を果たしたことになる。

二輪独自のセンサーとコントローラーで車体を制御

ドゥカティのアドバンスド・ライダー・アシスタンス・システム(ARAS)の要は、ボッシュ製の中長距離レーダーセンサーであり、それを中心とした複数のコンポーネントである。レーダー本体を含め、システムの根幹をなすのはボッシュの四輪車用システムだが、その他のセンサーやコントローラーなどはバイク独自のものであり、したがってその制御や反応はバイク特有のものだ。

また現在、このボッシュのシステムを使用したACCの搭載をBMWとKTMが、ACCとBSDの搭載をカワサキが発表している。こう聞くと画一的なシステムが普及しそうだが、提供されるハード&ソフトウエアは同じであっても、それをもとに安全性を確保しながらモデルごとのフィーリングをつくり上げるのは各二輪車メーカーである。同じシステムを搭載していても、それらの制御にはメーカーやモデルの特色が表れることだろう。

ムルティストラーダV4のACCとBSDに話を戻そう。このシステムは中距離レーダーセンサーに加え、加減速の度合いや車体の傾きなどといった車体の状態を測定する慣性計測センサーユニット(6軸IMU)、ブレーキシステムを管理するバイク用スタビリティーコントロールユニット(MSC)、エンジンコントロールユニット(ECU)、ライダーに情報の通知を行う「インテグレーテッドコネクティビティークラスター」(メーターディスプレイ)の、5つのコンポーネントによって構成されている。

センサー類によって車両の状態や周囲の状況を正確に把握し、それらの集積データをもとに、ABS、トラクションコントロール(DTC)などとも連携し、車体をコントロールするのである。

世界初のARASを実用化したボッシュの本拠地はドイツだが、開発は日本(横浜)の研究拠点が中心となって行われたという。
世界初のARASを実用化したボッシュの本拠地はドイツだが、開発は日本(横浜)の研究拠点が中心となって行われたという。拡大
中距離レーダーセンサーについては、すでに実績のある四輪車用のユニットを採用。一台につき前方用、後方用の2基が搭載される。
中距離レーダーセンサーについては、すでに実績のある四輪車用のユニットを採用。一台につき前方用、後方用の2基が搭載される。拡大
ピッチ・ロール・ヨーの角速度と、前後・左右・上下方向の加速度を検知する慣性計測センサーユニット(右)と、バイク用のスタビリティーコントロールユニット(左)。
ピッチ・ロール・ヨーの角速度と、前後・左右・上下方向の加速度を検知する慣性計測センサーユニット(右)と、バイク用のスタビリティーコントロールユニット(左)。拡大
6.5型のTFTカラーディスプレイ。計器としての機能はもちろん、ライディングモードセレクターやACC、コネクテッドシステムの操作など、多くの機能がここに集約される。
6.5型のTFTカラーディスプレイ。計器としての機能はもちろん、ライディングモードセレクターやACC、コネクテッドシステムの操作など、多くの機能がここに集約される。拡大

操作方法は四輪車のACCそのもの

このように、複雑で高度な制御のもとに車体を操るACCだが、ライダーの操作自体はシンプルだ。あらかじめ30~180km/hの間で速度を、「Near」「Middle」「Far」「Very Far」の4段階から前車との車間距離を設定していれば、「システムON」→「セット」の2回のボタン操作で、ACCがアクティブになる。あとは設定した車間距離を維持しながら、設定した速度を上限に、ムルティストラーダV4は走行を続ける。前車が設定速度よりも低速で走っている場合は、その速度に合わせて減速。前車が加速すれば加速する。また四輪MT車のACCと同じで、そのときのギアがカバーする速度域を出そうになったら、ライダーは自身でギアチェンジする必要がある(クイックシフターがアクティブなので、クラッチ操作なしでシフトアップ&ダウンができる)。むしろ加減速の度合いに合わせてライダーが積極的にギアチェンジしながら走行した方が、スムーズで安全だ。

また前走車が同一車線上から離脱し、前方がクリアになれば、設定速度まで加速してその車速を維持。また前車を追い越そうと右にウインカーを出し、車線を変更すれば、ライダーの意思をくみ取って車線変更後に滑らかに、自動で加速する。もちろんライダー自身がアクセルを開けて加速することも可能だが、そうした状態でもACCのシステムはアクティブのままとなっており、アクセルを戻して加速を終了すると、車体は自動で定速走行/追従走行を再開する。

こうした機能については四輪車のACCと共通だが、ドゥカティのACCでは車体のリーンアングルや加減速による前後方向のG、コーナリング中の横方向のGを6軸IMUが感知。コーナーの曲率を認識し、設定スピードが高すぎると判断したら適切な速度まで自動的に減速する機能も備わっている。

システムのキャンセルも簡単だ。アクセル開度をゼロ状態からマイナス側に戻すような操作をしたり、ブレーキングしたり、長くクラッチを握ったり、ライダーのそのようなアクションでACCは瞬時に終了する。また(日本では試せないが)車速が180km/hを超えたり、ABSやトラクションコントロールが一定時間以上作動したり、車体のリーンアングルが50°を超えたり、ギアごとに設定されるACCの下限速度を5km/h以上下回ったりしたときも、自動的にシステムは終了。ACCをリスタートさせようと思えば、ボタンひとつで設定条件を維持したまま、システムを復帰させることができる。

ハンドルバーに装備されるスイッチボックス。ACCの操作方法は、基本的に四輪車のそれと同じで、走行中に2アクションで起動できる。
ハンドルバーに装備されるスイッチボックス。ACCの操作方法は、基本的に四輪車のそれと同じで、走行中に2アクションで起動できる。拡大
前走者との距離は4段階で調整可能。車速ともども、停車時にあらかじめ設定できるほか、走行中にも調整が可能となっている。
前走者との距離は4段階で調整可能。車速ともども、停車時にあらかじめ設定できるほか、走行中にも調整が可能となっている。拡大
ブレーキングする前走車にならい、減速する「ムルティストラーダV4」。同車のACCには、6速では50km/h、1速では30km/hと作動下限速度が決められており、車速がそれを5km/h以上下回ると自動でシステムがオフになる。
ブレーキングする前走車にならい、減速する「ムルティストラーダV4」。同車のACCには、6速では50km/h、1速では30km/hと作動下限速度が決められており、車速がそれを5km/h以上下回ると自動でシステムがオフになる。拡大
追い越しのために車線変更すると、車両はスムーズに加速を開始する。加速の仕方も、加速を始めるタイミングも実に自然だ。
追い越しのために車線変更すると、車両はスムーズに加速を開始する。加速の仕方も、加速を始めるタイミングも実に自然だ。拡大
ライダーによるクラッチやブレーキの操作、各種安全装備の作動状態、車体の傾きなどにより、ACCは自動でオフとなる。人間の意に添わぬ挙動が転倒につながる二輪車だけに、このあたりは人の判断を優先する方向で、慎重に開発したようだ。
ライダーによるクラッチやブレーキの操作、各種安全装備の作動状態、車体の傾きなどにより、ACCは自動でオフとなる。人間の意に添わぬ挙動が転倒につながる二輪車だけに、このあたりは人の判断を優先する方向で、慎重に開発したようだ。拡大

あくまでも運転“支援”システム

試乗していて驚いたのは、前車が減速したとき、予想していたよりも強くブレーキがかかる場面があったことだ。特に追従している前走車の前にも車両が連なっているような状態では、車列の後ろにいればいるほど減速のタイミングが遅れ、減速区間が短くなり、結果として強く減速しなければならなくなる。そうした場面での自動減速は、振り落とされるようなレベルではないが、予想よりは強いものだった。

この「予想と比べて強い/弱い」という加減速に対する印象は、ライダーによって感じ方が異なるだろう。自身の感覚に近いライディングをするうえでは、このACCは四輪車に採用されているACCよりも、さらに積極的に人間=ライダーが介入する必要があるように思えた。バイクが予想と違う反応をしたとき……例えばシステムは「安全マージンを確保している」と判断して定速/追従走行をしていても、ライダーが「もう減速したほうがいい」と感じたときなどは、瞬時に、積極的に操作するべきだ。判断の仕方やタイミングなどは、システムの理解度や習熟度によって変化していくだろうが、いずれにしても最終的には、ライダーは運転に介入しなければならない。四輪車とは違い、バイクは人間がバランスをとって走らせる乗り物だからだ。ドゥカティもボッシュも、「これは安全装置ではなく安全走行をサポートする装置だ」と強く訴えるのはそのためだ。

とはいえ、システムそのものは非常によくできていた。試乗はテストコースの限られた条件の下で行われたが、そのわずかな試乗時間のなかでも、「あんな事ができる」「こんな事ができる」「こんな風に反応するんだ」と理解が進み、システムを活用した走りをいろいろなシーンで試してみたくなった。そして、わずかな試乗時間が終わる頃には、このシステムを使って半日以上高速道路を走った自分が、どのような疲労度や精神状態でバイクを運転しているかが気になった。

前走車役の「アウディQ3スポーツバック」に続き、コースに入る筆者。
前走車役の「アウディQ3スポーツバック」に続き、コースに入る筆者。拡大
車列をなして走行する場合、後方の車両になればなるほど制動のタイミングが遅れ、ブレーキングが強くなる傾向が感じられた。
車列をなして走行する場合、後方の車両になればなるほど制動のタイミングが遅れ、ブレーキングが強くなる傾向が感じられた。拡大
ライダーがバランスをとって走行するバイクでは、車両の挙動とライダーの意図や予想に齟齬(そご)が生じるのは危険。ACCの作動中も、ライダーは主体的に運転に取り組むべきだろう。
ライダーがバランスをとって走行するバイクでは、車両の挙動とライダーの意図や予想に齟齬(そご)が生じるのは危険。ACCの作動中も、ライダーは主体的に運転に取り組むべきだろう。拡大
二輪車用ACC特有の制約はあるものの、ドゥカティ/ボッシュのシステムは非常によくできており、これが初試乗であるにもかかわらず、筆者はすぐにシステムへの理解を深めることができた。
二輪車用ACC特有の制約はあるものの、ドゥカティ/ボッシュのシステムは非常によくできており、これが初試乗であるにもかかわらず、筆者はすぐにシステムへの理解を深めることができた。拡大

ロングツーリングで実力を確かめたい

長距離ツーリングでのACCの効能について、ボッシュのエンジニアは「疲労度は圧倒的に軽減される」と説明する。確かに、最終的な判断はライダーに委ねられるとはいえ、車間や速度の維持といった操作をシステムにまかせるだけでも、ライダーの負担は大幅に軽減されるだろう。そして、そのことによってより広い視野でまわりの状況を認識し、判断できるようになる。

もちろん道路状況や渋滞状況、天候などによってシステムがライダーの期待に100%応えられない場合もあるだろう。またライダーの経験値や好みなどによって、システムの反応に対する期待の仕方も異なってくるはずだ。したがって、人間の側もこのシステムに慣れる必要がある。どの部分が自分のライディングの助けになり、どの部分が不要なのかを知っていく必要があるだろう。

もうひとつの機能であるBSDについては、今回は死角にいる後続車や後方から迫る後続車を意図的に用意し、ミラー内側のLEDライトの反応を確認したのみだった。実際に高速道路でテストしたドゥカティ・ジャパンのインストラクターによると、そのインフォメーション効果は非常に高く、高い安全運転へのサポート効果を体感したという。

クローズドコースでのテストという限られた環境ではあったが、少なくとも今回の試乗では、筆者はACCにもBSDにも有用性を感じた。実際の道路でアドバンスドライダーアシスタンスシステムがどのように作動し、それをライダーである自分がどのように感じ、どのようなアジャストが必要なのか試してみたい。そして、その先にどんなライディング体験があるのかを感じてみたい。

(文=河野正士/写真=山本佳吾/編集=堀田剛資)

悪路走行やワインディングロードでのスポーティーな走りに加え、ロングツーリングも得意な「ムルティストラーダV4」。オプションでパニアケースも用意される。
悪路走行やワインディングロードでのスポーティーな走りに加え、ロングツーリングも得意な「ムルティストラーダV4」。オプションでパニアケースも用意される。拡大
テールランプの下に備わるBSD用の中距離レーダーセンサー。自車の後側方を走る車両を検知すると、サイドミラーのLEDランプを点滅させてライダーに知らせる。
テールランプの下に備わるBSD用の中距離レーダーセンサー。自車の後側方を走る車両を検知すると、サイドミラーのLEDランプを点滅させてライダーに知らせる。拡大
ACCやBSDのほかにも、快適性や利便性を高める装備が多数採用された「ムルティストラーダV4」。坂道などでの停車や、登坂発進などに重宝する、ブレーキホールド機能も搭載される。
ACCやBSDのほかにも、快適性や利便性を高める装備が多数採用された「ムルティストラーダV4」。坂道などでの停車や、登坂発進などに重宝する、ブレーキホールド機能も搭載される。拡大
いよいよ二輪車にも採用されるようになった運転支援システムが、実際のツーリングでどれほどの効果を示すのか。公道でぜひ試してみたくなった。
いよいよ二輪車にも採用されるようになった運転支援システムが、実際のツーリングでどれほどの効果を示すのか。公道でぜひ試してみたくなった。拡大
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