販売終了まで待ったなし! 今こそホンダの軽スポーツ「S660」を買うべきか?
2021.03.24 デイリーコラム価格という名の現実問題
昨2020年末に、このコーナーで「どうせ買うなら価値あるクルマ 値上がりしそうな新車はコレだ!」と題して選んだ5台の筆頭に「ホンダS660」を挙げたら、約3カ月後に生産中止のニュースが届いた。「S660」「S660モデューロX」とも、「2022年3月をもって生産を終了することになりました」とのこと。同時に発表されたメモリアルモデルたる特別仕様車「S660モデューロX バージョンZ」については報告済みだ。
『webCG』編集部から、今度は「われわれクルマ好きは今こそS660を買うべきか?」というお題が示された。そんなもの、買うべきに決まっている。世界的にまれなマイクロミドシップにしてオープンスポーツである。しかも、オートマ免許で乗れるCVTに加え、いまや絶滅危惧種に認定される3ペダル式6段MTを選択可能。いま買わないで、一体、いつ買うというのでしょう?
「では、オマエはどうなんだ?」という声がいずこからか聞こえてきたので恥を忍んで告白します。手元不如意なんです。S660のベーシックグレード「β」が203万1700円、シートヒーターとスポーツレザーシート、アルカンターラ×本革巻きステアリングホイールが魅力的な「α」は232万1000円。最終モデルたる上記バージョンZに至っては、300万円超えの315万0400円である。いまさら、ではありますが、最近の「軽」はお財布が軽い消費者にとってはなかなかハードルが高い。
ご先祖までが気になってくる
あらためてまったくの私事で恐縮ですが、懐寂しいクルマ好き(←ワタシです)の心中で、周期的に「欲しい!」病が高じるのが、同じくホンダの軽ミドシップ「ビート」。発売が1991年だから、もう30年も前のクルマになる。光陰矢の如し。デビュー当時からピニンファリーナ発とささやかれていたキレイなプロポーション。元祖マイクロミドシップにしてオープンスポーツ。バブル期ならではのぜいたくなつくり。生産中止が1996年なので、自動車税も重量税も増税対象になりますが、まぁ、軽自動車なので絶対的な負担は許容範囲内といえましょう。うーん、現実的に、欲しい。
で、中古車情報サイトをあさる日々が続くわけですが、ビートも、ある程度の年数がたった趣味グルマにありがちな、価格の二極分化が進んでいる。ボディーカラーは「カーニバルイエロー」が望ましい。リアにラゲッジ用のキャリアが付いていたほうがカーライフとそのイメージが広がっていい。ホイールが換えられているのはオリジナルが再販されたからいいとして、車内があまりにバッチイのはヤだな。できればエアコンのガスも現行の134aに対応していて……とチェックしていくと、すぐに乗り出し価格が200万円を超えてしまう。
30年後も色あせない
そこで、熱に浮かされた足りない頭がちょっぴりさめるわけです。「新車当時は、138万円だったのに!?」と。続いてムクムクと頭をもたげるのが、「S660のほうがイイんじゃね?」という経済的かつ合理的な判断。ごく大まかに言って、ビカもの(極上品)のビートを買う金額で、5年落ちのS660を手に入れられる。その後の維持費用、メンテナンス代を考えると、21世紀の軽スポーツを購入したほうが明らかに賢い。
いやァ、6年前にS660がデビューした際には、真剣にビートと比べて迷う日がやってくるとは思いもしませんでしたね。ライフスタイル商品としての性格が強かったビート。ガチの“スポーツ”を目指したS660。そうしたキャラクターは、製品企画のうえでは大事だけれど、結局はクルマを成り立たせる基本骨格の重みが、時とともに増していくのでしょう。S660も、30年後には貴重な純内燃機関「軽」スポーツとして珍重されているに違いない。
蛇足ながら、S660の生産中止によって同車の中古車は値が上がるのか。はたまた、「せっかくなら」と潜在ユーザーが新車に流れることで中古の価格がさらにこなれるか。もしやビート中古車市場への影響はあるか!? 1年ほどの猶予期間中、小心者の心は千々に乱れるばかりである。
(文=青木禎之/写真=本田技研工業、田村 弥、webCG/編集=関 顕也)
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青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。