第208回:ルノーはフツーだ!
2021.06.07 カーマニア人間国宝への道オシャレさんな“俺のナロー”
「ルノー・トゥインゴEDCキャンバストップ」を買って約3カ月。登場以来「いつか買わねば!」と思っていた憧れのクルマですが、実際に買ってみると、思い描いていたのとは若干違いました。
まず、RR独特の操縦性の部分。私はトゥインゴが出てすぐの頃、「まるで昔の『911』みたいな操縦性だ!」と感動し、以来トゥインゴをナロー・ポルシェの再来と書き続けてきたんだけど、愛車になったトゥインゴには、RRらしいリアの張り出しをほとんど感じなかった……。なにをやってもケツが流れそうな雰囲気はゼロ! タイトコーナーの立ち上がりで無理やりアクセルを踏んでも、軽く制御が入ってジ・エンド!
0.9リッターターボは、十分パワーがあって十分速いし、RRでエンジンが後ろにあるせいか、キャンバストップの割に室内は驚くほど静か。こんな静かだったっけ。空冷「ビートル」も、エンジン音が後ろに飛んでっちゃうから意外と静かなのを思い出した。
6段デュアルクラッチトランスミッションのEDCは、かなりギクシャクする。走行6万8000kmのせいもあるかもしれない。でも、直噴じゃないターボのターボラグも考慮しながら、アクセルを丁寧に踏んでやれば大丈夫。アクセルペダルの踏力が軽すぎるのは、ゴムひもで少し重くしてカイゼンしました。
トゥインゴは、操縦性に関しては思ったよりずっとフツーだったけど、とにかくスタイルと色がかわいくて、キャンバストップが気持ちいい、小粋でオシャレさんなフレンチコンパクトだった。もうRRうんぬんはどうでもいい! それよりこの水色のボディーが好き! 電球色のヘッドライトもいとしい!
購入したお店(横浜のMAMA)がやってくれたコーティングもメッチャ効いてて、雨に降られてもほとんど汚れない。いつでもオシャレさんな“俺のナロー”よ、かわいいぜ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ルノー変態に聞いてみる
あまりにも俺のナローが汚れないので、ラ・スッポン丸こと「フェラーリ328GTS」も、MAMAでコーティングをお願いすることにした。
コーティング中の代車は、なんと2006年式の「ルーテシア」! これぞフツーのルノー車ど真ん中。ルノー初心者が初心を知るにはもってこいではないか。
うーん、フツーだ。猛烈に。
かなりくたびれた感じの割に、そこそこダンピングは効いていて、接地感がしっかりしている。エンジンは超フツーにトルクフル。4段ATはシフトショックがでかくてダメダメで、いかにもAT軽視時代のフランス車らしいところも味わい深い。
思えば私は、プジョー&シトロエンは合計7台も乗ったけど、ルノー車のことはあまりよくわかってない。トゥインゴのこともまだよくわかってない気がする。
よし、専門家に聞こう。同業者の佐野弘宗氏である。彼は4台連続でルノー車を購入し、現在も2代目「ルーテシアR.S.」と「トゥインゴS」(5MT)を所有するルノー変態だ。
私:R.S.を除くフツーのルノー車の良さって何?
佐野:どってことないところですね。
私:やっぱりどってことないんだね!?
佐野:プジョーやシトロエンみたいに、わかりやすいフランス車じゃないし、全体にどってことないですよ。でも接地感があって、ハンドリングがクイックじゃないところが好みです。あと、MTを用意してるところも。僕は今までMT車しか買ったことないんで。
彼によれば、トゥインゴも、そんなに変わったクルマじゃないという。
わかりやすいってスバラシイ
つまり、トゥインゴをものすごく個性的なクルマと思っていた私が、実際買ってみて「こんなにフツーだったっけ!?」とビックリしたのは、フツーのルノー車を正しく認識しただけなのだ。
でも、フツーって意外といいもんだ。走りはフツーで見た目がオシャレって、おしゃれジャージみたいですっごく気楽。このところ私は、最近おしゃれになったと評判のワークマンの服ばかり着ているが、それに近い。
代車のくたびれたルーテシアも、パッと見はそこそこオシャレなフランス車。リモコンキーのボタン部(樹脂)が溶けてベタベタし始めてるけど、腐ってもフランス車だ。枯れたフランス車ってツウっぽくて、カーマニア的にすごくステージが高い気もする。
それに比べるとトゥインゴは、見た目が断然かわいくて真正面からオシャレさんで、ツウっぽくないけれど、俺はやっぱりトゥインゴが好き! わかりやすいクルマが好きだから!
そんなことを考えてるうちに、ラ・スッポン丸のコーティングが完了したので、MAMAに取りに行った。
うーん、このコーティングで黒光りした姿、なんてわかりやすくカッコいいんだろう。なんの説明もいらないし、世界中にこれほどわかりやすいクルマもない。美人といえば佐々木希、みたいに。わかりやすいってスバラシイ!
今後もカーマニアとして、わかりやすいクルマを愛していきたいと思います。
(文と写真=清水草一/編集=櫻井健一)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
第324回:カーマニアの愛されキャラ 2025.12.1 清水草一の話題の連載。マイナーチェンジした「スズキ・クロスビー」が気になる。ちっちゃくて視点が高めで、ひねりもハズシ感もある個性的なキャラは、われわれ中高年カーマニアにぴったりではないか。夜の首都高に連れ出し、その走りを確かめた。
-
第323回:タダほど安いものはない 2025.11.17 清水草一の話題の連載。夜の首都高に新型「シトロエンC3ハイブリッド」で出撃した。同じ1.2リッター直3ターボを積むかつての愛車「シトロエンDS3」は気持ちのいい走りを楽しめたが、マイルドハイブリッド化された最新モデルの走りやいかに。
-
第322回:機関車みたいで最高! 2025.11.3 清水草一の話題の連載。2年に一度開催される自動車の祭典が「ジャパンモビリティショー」。BYDの軽BEVからレクサスの6輪車、そしてホンダのロケットまで、2025年開催の会場で、見て感じたことをカーマニア目線で報告する。
-
第321回:私の名前を覚えていますか 2025.10.20 清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。
-
第320回:脳内デートカー 2025.10.6 清水草一の話題の連載。中高年カーマニアを中心になにかと話題の新型「ホンダ・プレリュード」に初試乗。ハイブリッドのスポーツクーペなんて、今どき誰が欲しがるのかと疑問であったが、令和に復活した元祖デートカーの印象やいかに。
-
NEW
レクサスLFAコンセプト
2025.12.5画像・写真トヨタ自動車が、BEVスポーツカーの新たなコンセプトモデル「レクサスLFAコンセプト」を世界初公開。2025年12月5日に開催された発表会での、展示車両の姿を写真で紹介する。 -
NEW
トヨタGR GT/GR GT3
2025.12.5画像・写真2025年12月5日、TOYOTA GAZOO Racingが開発を進める新型スーパースポーツモデル「GR GT」と、同モデルをベースとする競技用マシン「GR GT3」が世界初公開された。発表会場における展示車両の外装・内装を写真で紹介する。 -
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。








































