第655回:うたい文句にウソはなし! ミシュランの新オールシーズンタイヤ「クロスクライメート2」を試す
2021.08.18 エディターから一言 拡大 |
2021年8月18日に発表された、通年用タイヤ「ミシュラン・クロスクライメート2」。ミシュランが自信をもって送り出す新製品の実力はいかほどか? ドライ&ウエット路面に加え、実際の雪道でもチェックした。
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「スタッドレス並み」とは言いません
万能というイメージを避ける目的もあってか、「雪も走れる夏タイヤ」という独特の言い回しで紹介されるのが、ミシュランのクロスクライメートというニューコンセプトタイヤだ。このタイヤの使用が想定されるメインの舞台は、ドライおよびウエットの舗装路面といった、いわゆる通常の路面上。ただし、そのうえでコンパウンドやトレッドパターンなどに特別な工夫を施すことにより、雪道でも相応のグリップ力を発揮する機能が盛り込まれている点が、最大の特徴とされている。
この新しいコンセプトのクロスクライメートがローンチされたのは、2015年のヨーロッパ。その直後から通常の夏タイヤに引けを取らない走行性能の高さや、冬の通行規制時でも冬用タイヤとしての性能を有することを示す「スノーフレークマーク」が与えられていることで積雪時の通行規制を回避できる場合もある等のメリットから、いわゆるオールシーズンタイヤの一種と解釈されてきた。その一方で、「凍結路面に対する性能はスタッドレスタイヤよりも明確に低い」ということを他社より強くアピールするのもミシュランらしいところではある。
もちろん現実的には、「もはや季節や路面によって交換する必要などはない万能のタイヤ」という情報が広がった場合、スタッドレスタイヤの売れ行きに影響が及ぶ可能性も考えられるから、そのプロモーション活動には慎重にならざるを得ないのも当然のことである。
ちなみに、2021年春の時点で、世界最大の売上高を誇るタイヤ大手のブリヂストンがこの手のオールシーズンタイヤに本格的に手を出さないのも、そんな“誤解”を招かないようにするのが理由のひとつであると伝え聞く。
全方位的に進化した“2”
そんなミシュランの「雪も走れる夏タイヤ」が第2世代へと進化して、その名もクロスクライメート2としてリリースされる運びとなった。初代モデルのコンセプトはそのままに、そこからのリファインのポイントとして夏タイヤ/冬タイヤとしての両性能に加え、そんな性能の持続性、さらには昨今求められている環境性能の向上と、さまざまな性能を満遍なく高めることが目標として挙げられている。
そうした進化型クロスクライメート開発のための具体的手法としてまず報告されているのは、新開発されたコンパウンド「サーマル・アダプティブ・コンパウンド」の採用だ。さらに、従来と同様に回転方向性を備えたトレッドパターンも実は新しいデザインになっている。V字の切れ角が大きく、センター部からショルダー部にかけて溝の面積が増していくデザインは、ヘビーウエット時やシャーベット路走行時の排水性の向上を狙ったことは明らか。また、摩耗進行時にブロックの側面に新たな凹凸と溝が出現する「Pエッジ」と名づけられた技術も同様に、効率的な排水・排雪とエッジ効果によるウエット、雪上性能の向上を狙ったものとされている。
一方、トレッド部分には、サマータイヤ性能の向上に特化したアイデアも盛り込まれている。まず、「V-Ramp Edge(Vランプエッジ)」と呼ばれるトレッドエッジ部の倒れ込み防止策がそのひとつ。これは、制動時にブロックの倒れ込みを防止し接地面を最大化し、高い制動力を得ようという技術。もうひとつは「LEVサイプ」と呼ばれるパターンの技術。これは、隣り合うブロック同士が支えあって倒れ込みを防止し、効果的なグリップを獲得するとともに、耐摩耗性と転がり抵抗の低減を図るという環境性能向上のための技術でもある。
ミシュランの市場調査によれば、通年用タイヤのユーザーは近年、「夏性能(ドライ/ウエット性能)」「雪上性能」「(それらパフォーマンスの)持続性」の順に性能を重視する傾向にあり、開発する側もそのニーズを踏まえたうえで製品の進化を図っているとのことだ。
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違いははっきり体感できる
そんなクロスクライメート2のプロトタイプでまず、乾燥した舗装路面を走り始める。初代モデルに対して新型は「目鼻立ちがよりくっきりとしたパターン」の持ち主ゆえ、ちょっと心配したのはノイズの悪化。ところが、それは杞憂(きゆう)にすぎなかったどころか、実際の印象はむしろ逆だった。
そもそもドライ路面を走行しても昔のスノータイヤのような盛大なパターンノイズとは無縁だった初代クロスクライメートだが、クロスクライメート2ではそんな特性に磨きがかかり、“特別なタイヤ”であることを全く意識させない、多くのサマータイヤとダイレクトに比較しても全く遜色のない低ノイズ性能の持ち主であると、実走行で確認することができたのだ。
そうしたなかでも特徴的だと思えたのは、かすかに耳に届くほどのパターンノイズにも、速度との関連性が目立って認められないこと。これまで「オールシーズン」をうたうタイヤの一部には、車速の上昇とリンクしてノイズの周波数が高まることが明確なアイテムもあったと記憶しているが、このタイヤではそうした傾向が非常に弱い。そんな点からも、なるほどオールシーズンではなく「夏タイヤ」と断じて紹介するのも、さもありなんと思えたのだった。
同様に、テストコースにおける走行で明らかになったのは、初代モデルに対するウエット性能の向上だった。コーナーにしつらえた水深一定の「水たまり」に突入した場合、車体の遠心力に負けて走行ラインが外側へと膨らんでしまう分量が、クロスクライメート装着車に対してクロスクライメート2装着車のほうが明らかに少ないのだ。このことからは、初代モデルに対してハイドロプレーニング現象が起こりにくく、路面への接地力がより高くなっていると推察できる。先に紹介したように高い静粛性を確保しながら、同時に排水性も向上させているのがクロスクライメート2の見どころだ。
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救世主となりうる一品
こうして、確かに「夏タイヤ」としての性能向上が明らかとはいえ、一方で「雪も走れる……」と豪語するからには、そちらの性能ももちろんおろそかにはできない。
というわけで、そちらのポテンシャルについては、強気なことに(?)同社のスタッドレスタイヤ「エックスアイス」との比較というかたちで、冬用タイヤ開発の舞台である北海道は士別の試験場で走行チェックを行う機会が用意された。
早速圧雪状態の路面を走り始めると、「これは全く、無理なく普通に走れちゃうな」というのが正直な第一印象。ただし、調子に乗って走りのペースを高めていき、ひとたびアンダーステアなどを出してしまうと、車体が流れる程度は間違いなくエックスアイスよりも大きく、しかもその流れがなかなか止まらないという印象だった。
このあたりが、雪道の走行適正も付加した夏タイヤの限界というところだろうか。加えれば、数多くのテスト車両の走行によって路面が「磨かれ」て、圧雪からアイスバーン状態へと近づいてくると、スタッドレスであるエックスアイスとのグリップ感の差が、さらに大きく開いてしまう。それもまた、ちょっと特殊なこのタイヤなりの特徴ということになるのかもしれない。
摩耗に関してのチェックはさすがにできなかったものの、通常の夏タイヤとしての性能に全く不満がないことは、ドライのハンドリング路でグリップ力の限界近くまで引き出す走りで実感することになった。逆に、「雪も走れる」のフレーズが偽りなしと納得できる一方で、これがスタッドレス代替のタイヤにはなり得ないというのも、あらためて認識された事柄であった。
冬が近づくと、これまで迷うことなくスタッドレスタイヤに交換していたユーザーはスルーで問題ナシ。しかし、年に1度か2度の積雪予報におののいて、慌ててスタッドレスやチェーン等を手配した経験のあるユーザーには、上手に使えば救世主となってくれそうな一品であることは間違いない。
(文=河村康彦/写真=日本ミシュランタイヤ、webCG/編集=関 顕也)
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河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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