第14回:“プラットフォーマー”への脱皮を目指すフォルクスワーゲンの苦悩(後編)

2021.09.07 カーテク未来招来
目指すは自動車界のGAFAか? VWが掲げる野望の詳細を、彼らが取り組む4つの事業領域に分けて解説する。
目指すは自動車界のGAFAか? VWが掲げる野望の詳細を、彼らが取り組む4つの事業領域に分けて解説する。拡大

いち完成車メーカーから、他社へビジネスやサービスの土台を提供するプラットフォーム企業への転身をもくろむフォルクスワーゲン(VW)。彼らが取り組む大変革とはどういうものなのか? その中身を掘り下げ、VWが夢に見る“未来の姿”を探った。

VWグループには現在5種類のプラットフォームが存在するが、将来的には「SSP」に統一されるという。ロードマップに「ポルシェ・タイカン」「アウディe-tron GT」に用いられる「J1パフォーマンスプラットフォーム」が見当たらないのは、それがグループ内で「MSBの発展型」という認識だからだ。
VWグループには現在5種類のプラットフォームが存在するが、将来的には「SSP」に統一されるという。ロードマップに「ポルシェ・タイカン」「アウディe-tron GT」に用いられる「J1パフォーマンスプラットフォーム」が見当たらないのは、それがグループ内で「MSBの発展型」という認識だからだ。拡大
「ID.3」から導入がスタートしたVW初のEV専用プラットフォーム「MEB」。同社の急速なEVラインナップ拡大を支えている。
「ID.3」から導入がスタートしたVW初のEV専用プラットフォーム「MEB」。同社の急速なEVラインナップ拡大を支えている。拡大
2021年の上海ショーで発表された「アウディA6 e-tronコンセプト」。「PPE」の採用を想定したEVのコンセプトモデルである。
2021年の上海ショーで発表された「アウディA6 e-tronコンセプト」。「PPE」の採用を想定したEVのコンセプトモデルである。拡大
広範な分野で協力関係にあるフォルクスワーゲンとフォード。EVに加え、自動運転やモビリティーサービスの領域でも協業を模索している。写真はフォルクスワーゲンのヘルベルト・ディースCEO(左)とフォードのジム・ハケットCEO(右、2019年当時)。
広範な分野で協力関係にあるフォルクスワーゲンとフォード。EVに加え、自動運転やモビリティーサービスの領域でも協業を模索している。写真はフォルクスワーゲンのヘルベルト・ディースCEO(左)とフォードのジム・ハケットCEO(右、2019年当時)。拡大

EVプラットフォームは早くも次世代へ

これまで2回にわたり続けてきたVWの戦略解説も、今回が最終回。前回は彼らの研究開発費と設備投資が業界の水準から見て突出していること、それが“自動車メーカー”から“プラットフォーム企業”に脱皮するための投資であることに触れて終わった。最後となる今回は、VWが具体的にどのようにしてプラットフォーム企業になろうとしているのかを見ていきたい。

前回の繰り返しになるが、経営戦略「NEW AUTO−MOBILITY FOR GENERATION TO COME」で説明された事業領域は、次の4つだ。

  • 車両の物理的なプラットフォーム
  • ソフトウエア
  • バッテリーと充電インフラ
  • サービス

今回の発表でまず驚かされたのが、EV(電気自動車)プラットフォームが早くも刷新されることだ。EV専用プラットフォーム「MEB」を採用したVW初の量産EV専用車「ID.3」が発売されたのは、2020年9月のこと。2022年にはプレミアム車向けの「PPE」も量産車に導入される。にもかかわらず、その4年後の2026年には、次の世代のプラットフォーム「SSP」の導入が計画されている。

これにより、VWは現在のエンジン車用プラットフォーム「MQB」「MSB」「MLB」と、EV用プラットフォーム「MEB」「PPE」の、合計5種類のプラットフォームが存在する状態から、最終的にはすべての製品のプラットフォームが「SSP」に統合される予定だ。将来的には4000万台以上の車両が、このSSPに基づいて生産されるとVWは予測している。

さらに重要なことは、VWがSSPを他の完成車メーカーにも提供するとしていることだ。MEBも米フォード・モーターに提供される予定だが、SSPは恐らく、より多くの完成車メーカーへの提供を想定しているはずだ。つまりVWは、SSPによって「プラットフォームのプラットフォーマー」のポジションを狙っていることになる。ただ、一口にSSPと言っても、実際には車両セグメントに応じてSSP1、SSP2……というようにいくつかの種類が存在するようで、基本構造を共有しながらスケーラブルな展開ができるように設計されているということだろう。

鶴原 吉郎

鶴原 吉郎

オートインサイト代表/技術ジャーナリスト・編集者。自動車メーカーへの就職を目指して某私立大学工学部機械学科に入学したものの、尊敬する担当教授の「自動車メーカーなんかやめとけ」の一言であっさり方向を転換し、技術系出版社に入社。30年近く技術専門誌の記者として経験を積んで独立。現在はフリーの技術ジャーナリストとして活動している。クルマのミライに思いをはせつつも、好きなのは「フィアット126」「フィアット・パンダ(初代)」「メッサーシュミットKR200」「BMWイセッタ」「スバル360」「マツダR360クーペ」など、もっぱら古い小さなクルマ。

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