日産ノート オーラGレザーエディション(FF)
小さな高級車 再び 2021.10.02 試乗記 「日産ノート」の派生モデルとして登場した、ハイブリッドのプレミアムコンパクト「ノート オーラ」。日産が「上質をまとったコンパクト」とうたうニューモデルは、言葉にたがわぬ仕上がりとなっているのか。本革仕様の「Gレザーエディション」で確かめた。お手本は1980年代にあった?
日産ノートをベースに車体をワイド化した、3ナンバーサイズのプレミアムコンパクト。日産ノート オーラは、ノートの派生モデルだと考えればいいのだろう。戸惑うのは、カタログを見ると「日産オーラ」と表記されていることだ。別の名前を持つ別のモデルのような扱いである。主要なコンポーネンツに違いはないのだから姉妹車であることは間違いないのだが、日産としては異なる性格を持つ上級モデルであることを強調したいのだろう。リアのバッジは大きな「AURA」のロゴの上に、控えめに「NOTE」という文字が添えられている。
わかりやすく言えば、コンセプトは“小さな高級車”ということになるだろう。日産は1980年代に同じような考え方のモデルを販売していたことがある。「ローレル スピリット」だ。小型大衆車の「サニー」をベースにして上質な内外装を与え、高級セダン「ローレル」の雰囲気をまとわせた。他メーカーも負けてはいない。「マツダ・ベリーサ」や「ホンダ・ドマーニ」といった例がある。
コンパクトカーだから安っぽくても許されるという時代はとうに終わっている。軽自動車が質感を高めているのだから、あからさまなコストダウンが気づかれれば競争力を失う。だから、素のノートだって決してチープなつくりにはなっていない。オーラはそこに特別感を加えなければならないので、単純にクロームパーツを盛って本革を多用するような手法ではダメなのだ。オーラには、ノートとは異なる世界観が求められる。
外観を見て、すぐに違いを見極めるのは難しい。なんとなくワイドな感じがするが、1695mmのノートに対しオーラは1735mmで差は40mm。よく見ると、フロントのホイールアーチが張り出した形状になっていることがわかる。タイヤサイズの拡大に対応するとともに、スポーティーな印象を与えることにもなっている。
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カフェのようなインテリア
ヘッドライトの形状も異なる。薄型でコンパクトになっており、シャープな目つきになった。グリルも幅広くなり、「Vモーショングリル」を強調する“く”の字型のメッキ装飾も姿を消している。リアコンビネーションランプの違いはわかりにくいが、点灯すると光る部分が左右に離れていたノートと違って、1本のラインになる。ただしランプ自体が左右2つのパーツに分かれているので、ラインのセンターには隙間があいていた。またリアフェンダーの微妙な違いは前方にまで影響を及ぼし、ドアパネルの形もノートとは異なっている。コストがかかりそうだが、その価値はあるという判断なのだろう。
リアまわりでいちばんわかりやすい違いとなっているのはバンパーだ。ノートが黒い樹脂製のパーツを使っているのに対し、オーラはボディー色が下端まで続いている。スポーティーさより、洗練を志向しているように感じられた。
インテリアを見ると、オーラの目指す方向性がよくわかる。ドアトリムやセンターコンソールなどに、ざっくりした質感の布が使われているのだ。ツイード調と説明されているが、むしろコットンサージに近いように見える。ウッド調パネルとの組み合わせで、カフェの店内のようなインテリアに仕立てようとしているのだろうか。かつて「キューブ」にコンランとのコラボモデルがあったことを思い出した。高級感より趣味のよさをアピールする戦略である。スポーティーなモデルはすでに「NISMO」があるので、素のオーラは別の道を行く。その判断には理があると思う一方で、だからこそセンターコンソールやドアトリムにアンビエントライトを配したのは方針がズレているように感じられた。
オーラのパワートレインは、もちろんノートと同じ「e-POWER」。ただしモーターが強化されている。ノートが最高出力116PS、最大トルク280N・mなのに対し、オーラは136PS、300N・m。4WDモデルにはさらに68PSのリアモーターが加わるが、今回の試乗車はFFだった。発電を担う1.2リッター3気筒エンジンは全モデル共通である。
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優秀なオーディオ空間
パワフルな走りを期待してワクワクしながらアクセルを踏み込む。たしかに強力である。モーター駆動らしくスムーズでリニアな加速だ。しかし爆発的というほどではなく、ノートとの差は明確ではない。考えてみれば当然だ。ノートだってもっとわかりやすくモーターのパワーを見せつけることもできたのに、節度を忘れなかった。日常で使われる乗用車なのだから、ロケットスタートは必要ない。パワフルなモーターは、余裕のあるパワーマネジメントに寄与しているのだろう。
バッテリー残量が十分なら、街なかを静かに走っていればエンジンはかからない。このときの静かさは圧倒的である。オーラは前席ドアの窓にラミネートガラスを採用するなどして遮音性能を高めていて、静粛性は向上しているはずだ。静かな車内は、優秀なオーディオ空間でもある。試乗車にはBOSEと共同開発した「BOSEパーソナルプラスサウンドシステム」がオプション装着されていて、これがなかなかの出来だった。
前席のヘッドレストにBOSEのスピーカーが内蔵されている。この2つを含む8つのスピーカーを調整するのが、サウンドの設定画面の「パーソナルスペースコントロール」である。ダイヤルを回して無段階に音の広がりを変化させることができるのだ。前方からストレートに聞こえるモードから包まれるような感覚まで、簡単に変えることができる。前席だけでなく、後席にいても効果は十分に感じられた。
山道でも活発に走る。コーナーを抜けて強力に加速するのは爽快だ。ただし、調子に乗って走っていると上り坂では大量に電気を消費する。発電のためにエンジンが回りっぱなしになり、モーター駆動のクルマに乗っている実感は薄れてしまった。下り坂では強力な回生が行われ、のんびり走っていればモニターに表れるバッテリーの残量表示で、4目盛り中3目盛りを保持していられる。
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「快感ペダル」より強い減速力
先代ノートはアクセルペダルを離すと強力な回生効果でスピードが落ち、ワンペダルドライブを楽しむことができた。それが新型になって、アクセルオフ時の減速力が弱められた。オーラもブレーキを踏まずにスポーツ走行するのは不可能である。とはいえ、新型「トヨタ・アクア」の「快感ペダル」に比べればずっと強い減速力だ。トヨタは「従来の運転感覚を持っている人が違和感を覚えないよう制動力を設定した」と言っていたが、モータードライブを実感するには多少のひっかかりがあってもいいような気がする。
日産にとって、モーター走行感覚は大切な財産だ。電気自動車の「リーフ」とe-POWERのノートで新世代の走り方をアピールしたのだから、このままの路線を守っていくほうがいいのだと思う。高速道路での燃費がさほど伸びないのは、シリーズハイブリッドというシステムの特性なのである程度は仕方がない。得意な分野の性能に磨きをかけていってほしい。
ちょっと看過しがたい弱点もある。後席の乗員からクレームが出た。荒れた路面や目地段差の乗り越えで、我慢できないショックが伝わるというのだ。運転席でも決して乗り心地がいいとはいえないが、後席に移ってみると確かに腰にくる。サスペンションの設定が硬いというよりは、衝撃を受け止めきれていない感じなのだ。ファミリーカーとしても使われるのだから、このままというわけにはいかないだろう。
思想家のヴァルター・ベンヤミンは、オリジナルの芸術作品が持つ重みや崇高さを“アウラ”と呼んだ。オーラの別の読み方である。彼は、複製技術が進んだことによって、芸術からアウラが失われてしまったと指摘した。大量生産されるクルマに芸術性を求めるのは難しいが、日産は売れ筋商品のノートを使って新たな価値をつくり出そうとしているかもしれない。アウラを感じさせることができるかどうかに、“小さな高級車”の成功がかかっている。
(文=鈴木真人/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
日産ノート オーラGレザーエディション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4045×1735×1525mm
ホイールベース:2580mm
車重:1260kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:82PS(60kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:103N・m(10.5kgf・m)/4800rpm
モーター最高出力:136PS(100kW)/3183-8500rpm
モーター最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/0-3183rpm
タイヤ:(前)205/50R17 89V/(後)205/50R17 89V(ブリヂストン・トランザT005 A)
燃費:27.2km/リッター(WLTCモード)/33.0km/リッター(JC08モード)
価格:269万9400円/テスト車=341万9156円
オプション装備:ボディーカラー<ピュアホワイトパール/スーパーブラック 2トーン>(7万1500円)/ホットプラスパッケージ<ヒーター付きドアミラー+ステアリングヒーター+前席ヒーター付きシート+リアヒーターダクト>+クリアビューパッケージ<ワイパーデアイサー+リアLEDフォグランプ>+高濃度不凍液+PTC素子ヒーター(7万3700円)/ステアリングスイッチ+統合型インターフェイスディスプレイ+USB電源ソケット<タイプA×2、タイプC×1>+ワイヤレス充電器+NissanConnectナビゲーションシステム<地デジ内蔵>+NissanConnect専用車載通信ユニット+BOSEパーソナルプラスサウンドシステム<8スピーカー、パーソナルスペースコントロール>+ETC 2.0ユニット+プロパイロット<ナビリンク機能付き>+プロパイロット緊急停止支援システム+SOSコール(40万1500円) ※以下、販売店オプション ウィンドウはっ水 12カ月<フロントウィンドウ1面+フロントドアガラス2面>(1万0285円)/日産オリジナルドライブレコーダー<フロント+リア>(7万2571円)/フロアカーペット<プレミアム:消臭機能付き>(2万9700円)/トノカバー(2万4200円)/ラゲッジアンダーボックス(3万6300円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:1574km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:443.7km
使用燃料:24.0リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:18.5km/リッター(満タン法)/19.3km/リッター(車載燃費計計測値)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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