レクサスNX 開発者インタビュー
新しいレクサスの幕開けです 2021.10.07 試乗記 Lexus International製品企画 チーフエンジニア
加藤武明(かとう たけあき)さん
2021年6月に初のフルモデルチェンジが発表された「レクサスNX」。都会派のミドルサイズSUVは、いかなる進化を遂げたのか。国内仕様の発表にあたり、チーフエンジニアの加藤武明さんにブランド変革の方向性も含めて話を聞いた。
ヨーロッパからの要望でつくられたNX
レクサスNXは、「RX」「UX」とともにレクサスの“SUV三兄弟”と呼ばれるラインナップの真ん中に位置し、日本では一番の売れ筋モデルだ。2021年3月に発表されたEVコンセプト「LF-Z Electrified(エレクトリファイド)」で示された考え方を体現したモデルでもある。
今回インタビューした加藤武明さんは、初代モデルに引き続きNXのチーフエンジニアを務める、まさにNXの生みの親ともいえる人物だ。
──NXは日本の交通事情に合わせたSUVですね。
加藤武明さん(以下、加藤):初代NXは、実は日本ではなくヨーロッパからの要望でつくられたんですよ。このサイズのSUVが欲しいと。アメリカからは、いらないと言われました(笑)。2008年にデビューしたRXが、アメリカではちょうどいいんです。ラグジュアリーでは一番のボリュームゾーンですね。ただ、マーケットの流れはコンパクトに向かっていて、そのアメリカでもだんだんボディーのダウンサイジングが進んできました。
──NXはレクサスSUVの次世代像を提示しているということですが……。
加藤:SUVというより、レクサス全体ですね。セダンもクーペも含めて。機能に根ざしたデザインとか、「Tazuna」コンセプトに基づくコックピットにするとかは、SUVとかセダンとか関係なくやっていきます。
──コンセプトモデルのLF-ZエレクトリファイドはSUVなんですか?
加藤:あれはまあ、SUVっぽくも見えますし、クーペにも見えます。電動化を引っ張るカーボンニュートラルに向けてのひとつの象徴的なモデルとして出しました。
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カーボンニュートラルに向かう多様性
──カーボンニュートラルに向けて電動化していく?
加藤:もちろん電動化はカーボンニュートラルに向けて優れた方法なんですが、世界中ではコンベンショナルなエンジン車をご愛顧いただいている方が多くいらっしゃる。NXでも、2.4リッターターボをTNGAの考え方で高熱効率にして、排気もできるだけクリーンにするという取り組みをしていますよ。
──エンジンが2種類にハイブリッド(HV)、プラグインハイブリッド(PHEV)と、パワーユニットの種類が多いですね。
加藤:NXは世界90以上の国と地域で販売しています。地域によってマーケットの状況がまったく違うんですよ。ヨーロッパではエンジン車は売れませんから、HVとPHEVだけ。ただ、東ヨーロッパやロシアは逆で、エンジン車の需要が圧倒的です。アメリカもエンジン車が中心なんですが、HVやPHEVの認知度も上がってきて、以前は10%ぐらい(の販売割合)だったのが今は30%ぐらいに。日本はどれもそれなりに売れますが、やはりハイブリッドが強い。初期受注ではPHEVが15%ほどですが、これからどれぐらい伸びるかはわかりませんね。
──ヨーロッパは電動化が必須という状況なんですか?
加藤:ヨーロッパは政府も電動車、電気自動車(EV)という発信をしていますよね。われわれはそれも一つの方向と思っているんですけど、やっぱりインフラ含めて世界中がEVになるのは時間がかかるでしょう。つくるところからすべての過程でのカーボンニュートラルということを考えると、必ずしもそれが一つの答えではないだろうと。水素エンジンとかeフューエルとかが研究されていますし、燃焼させることってまだまだ使われる技術だと思っていますね。レクサスにとって、多様性というのも重要なテーマになっています。
──それでも、電動化の流れには対応していくんですね?
加藤:電動化が進むのは間違いないこと。レクサスがそれを引っ張る役目を持つということはトヨタという会社のなかで決まっているし、僕らがその目標に向かって取り組んでいるんです。
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都会派SUV老舗の気概
──NXにはレクサスの電動化への考え方が反映されていると考えていいんですか?
加藤:まだまだわかっているようでわかっていないところがありますから、このNXからやっていこうということです。モーターは初期のトルクが出しやすいしレスポンスがいいじゃないですか。電動車の時代になってくると、駆動力をマネジメントするということが重要になる。電動車の走りにとって味の出し方、競争領域になるだろうと考えています。
──レクサスの電動化に向けての新たな第一歩がNXというSUVになったわけですね。レクサスはもともとセダンのイメージが強かったんですが……。
加藤:今やラグジュアリーでもノンラグジュアリーでもSUVが主流ですからね。SUVは昔と違って乗りやすいしNVH(騒音・振動・ハーシュネス)性能も進化し荷物も積めるしということになってきて、車高の低いのから高いのまでつくることができる。セダンよりもバリエーションを持ちやすいので、多様なニーズに応えやすいという面はありますね。それに、SUVはスペース的にも有利なので、バッテリーを積んだり水素タンクを積んだりするのが比較的容易なんです。
──電動化が進んでいることとSUVの普及は関係があるんですね。
加藤:実際、SUVやクロスオーバーにEVが多くなっていますよね。
──SUVの多くは都会派のクルマになっていて、レクサスは特にそのイメージが強い気がします。
加藤:今は普通になったオンロードの都会派SUVというものの先駆けがRXでした。日本では「ハリアー」という名前でしたね。最初は“こんなのあり?”と言われましたが、世界中で大ヒットしました。僕らはある種の老舗というか、いい意味での気概を持ってこのマーケットを引っ張っていきたいと思っています。レクサスには「LX」や日本では発売していない「GX」という本格オフローダーもあり、こちらも大事にしていきたいですね。
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言葉で示すよりファクトを積み上げる
──デザイン面でもNXは新しい方向性を示しているということですが、スピンドルグリルはやはりアイデンティティーとして保持していくんですね。
加藤:形は確かにスピンドルの格好をしていますが、もともとフレームはスピンドルでも中は今まででもいろいろ変えていました。NXはグリルの機能として冷却風をまず取り入れやすい立体にして、そこから骨格が始まる。単純にグリルというより、フォルムの起点にしています。将来的に機能に沿って表現が変化していく可能性はあると思いますね。デザインのためのデザインではなく、機能のためのデザインをやろうということです。
──内外装ともに、シンプルな高級感が感じられるようになったと思いました。言葉は悪いんですが、レクサスデザインはちょっとコテコテだった時期があったような……。
加藤:(笑)。日本に導入したころは“レクサスって何?”と聞かれることが多く、トヨタとの違いを見せるために間違い探しのようなことになっていたかもしれません。悩んできた歴史があります。ここ数年、僕らはどんなクルマをつくりたいのかということをしっかり考えてきて、その結果がNXに詰まっています。
──指針を表すスローガンのようなものはありますか?
加藤:ないですね。機能に根ざしたデザインとかシンプリシティーとかは言っていますが。走りの味も、すっきりとした奥深いとかありますけど、人間中心の先進技術とか。完璧にこういうワードというものがあるわけではない。言葉で示すより、ファクトを積み上げることが大事です。たとえばコックピットデザインのTazunaコンセプトでは、操作系がちゃんと手元にありますよ、とかのファクトを実感してもらうしかない。言葉先行ではなく、中身があってこそですから。
──NXがブランド変革の最初のモデルということなら、これから出るはずの新型RXなど、レクサス全体に今回の成果が取り入れられていくことになりますか?
加藤:ここから次のレクサスの新しいチャプターというか、幕開けということです。NXで開発した新しい技術というのは、上にも下にも展開していくことになりますね。これが第1弾なので、第2弾、第3弾が出てくれば、ああこういうことだったのかと、わかっていただけると思います。期待してください。
(インタビューとまとめ=鈴木真人/写真=花村英典/編集=櫻井健一)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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