第44回:100万円(?)の遊興
2022.04.06 バイパーほったの ヘビの毒にやられまして![]() |
ここのところおとなしかったwebCGほったの「ダッジ・バイパー」が、久々に牙をむいた。増大しつづける車検費用に、噴出するトラブル。ついに年間の整備代が100万円を突破するのか? 貧乏オーナーが放蕩(ほうとう)なアメリカンスポーツの実態を語る。
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電装系にもよくないですから……
読者諸兄姉の皆さま、こんにちは。webCGのほったです。突然ですが、今ワタクシとバイパーは過去6年で最大の窮地に立たされている。直截(ちょくせつ)に言ってピンチである。ここしばらくは小康状態が続いていたというのに、車体の奥底に潜んでいた諸所の問題が、一気に噴出したのだ。
はじまりはいつも雨……じゃなくて、いつも車検である。よりによって入庫の日にバッテリーがあがるなど(2年連続)、今回もバイパーはそのエンタメ性を遺憾なく発揮してみせたのだが、そんなことはどうでもよい。この程度は日常茶飯事、想定の範囲内だ。記者は冷静にロードサービスを呼び、冷静に「遅刻します」と主治医に電話し、能面の面持ちでお店に向かった。こまめな給油を怠った過去の自分を呪(のろ)いつつ、ガソリンスタンドに入れないサスペンスを味わいながら(バッテリーが弱っているので、エンジンを一度止めると再始動できないのだ)鶴川街道を行くのにも慣れたものだ。
で、お店に到着後は、前々より俎上(そじょう)に上がっていた整備箇所を主治医ことコレクションズの本多氏と共有。「ほったさん、入庫のたびにバッテリーあげてますよね?」ということで、+7万円でキルスイッチも付けることとあいなった(泣)。
ちなみに、webCGほったと本多氏が想定していた今回の施工内容は、以下のとおりである。
- ラジエーターの修理と強化
- 左前輪のガタの解消
- 左後輪のガタの解消
- リアデフボックスの整備(シールとデフオイルの交換)
- リアデフへのドレンプラグ敷設
- キルスイッチの敷設(NEW)
「……どのぐらいかかりますかねえ(お金)」
「2週間ぐらいで済むと思いますよ(時間)」
そんなねじれの関係の会話を交わして、この日は解散。無事に(?)入庫を済ませた記者は、新宿で下車して昔ながらの定食屋でかつ丼を食べたり、タワレコでCDを買ったりと、休日を満喫しつつ自宅へと戻ったのである。
96dBという鬼門
おもむろにバイパーが牙をむき始めたのは、それから程なくしてのことだった。ブルブルっと震えたスマホを開いてみると、本多氏よりFacebookのメッセンジャーで不穏な動画が。そこにはサビた鋼筒のそばでたなびく吹き流しが映っており、そして下記の言葉が添えられていた。
「排気音が大きすぎて、車検を通りません。マフラーに穴が開いていたので、ふさいで再測定しようと思います」
思えばこれが地獄の始まりだった。穴をふさいでも規定値をクリアするほど排気音が小さくはならならず、本格的な対策を要することが判明したのだ。
正直に言うと私は詳しくないのだが、今日の日本における自動車の騒音規制は、なかなかに厳しいらしい。測られるのは近接騒音だけだが、確か最高出力の75%を発生する回転数で、音量が96dB以下だったか(違ったらゴメンナサイ)。過去のにぎやかなバイパーのさまを思い出すに、今まででも十分にギリギリだったのだろう。どこかしらが劣化したのか。あるいは法改正などの外的要因か。とにかく記者のバイパーは、車検を通らなくなった。
さて困った。マジで困った。世に「ダッジ・バイパー Gen2用マフラー(1996-2002)車検対応」なんて都合のいい商品なぞあるわけもなし。仕方ないのでコレクションズのメカさんは、純正と同径の鋼管を使い、明らかに改造済みのヘダースおよびテールパイプとつなげられるようフランジを加工し……と、あのポンコツのために一品物のセンターパイプ(厳密には2品というか2本だけど)をつくってくれたのだ。毎回のことだが頭が下がる思いである。本当に、相模原には足を向けて寝られません。
問題は騒音だけじゃないんだよ
ほかにもなんやかんやと手を尽くし、結果的にはどうにか車検をクリアできる状態とあいなったバイパーだが、当然のことマフラーの施工に要したコストは、ほかになすべき修繕を圧迫することとなった。予算をここで使い尽くしたので、ラジエーターやデフなどの手当ては次回以降に持ち越しとなったのだ。
今回の車検における実際の施工の内容と、車検費用は以下のとおりである(〇は作業済み/▲は未対応)。
- ラジエーターの修理と強化……▲
- 左前輪のガタの解消……〇
- 左後輪のガタの解消……▲
- リアデフボックスの整備(シールとデフオイルの交換)……▲
- リアデフへのドレンプラグ敷設……〇(実はもとから付いていた)
- キルスイッチの敷設(NEW)……〇
- マフラーの車検対応(NEW)……〇
費用……49万8699円(重量税含む)
以上である。前回の2倍以上の費用をかけて車検を通したのに、当初予定していた施工箇所については、その多くが手つかずのままとなったのだ。ここ数年の健勝ぶりに「寛解の日は近い」と期待に胸を膨らませていた記者が、いかほどのダメージを負ったか。ええ、久々にヒザにきましたよ。
加えて、「これが車検対応のためである」という事実もまた記者を大いにヘコませた。今後も、法改正や検査方法の変更などがあるたびに、こうした出費を強いられるのか。1プレイ2ケタ万円の、地獄のモグラたたきだ。
しかも、しかもである。今回記者を襲ったショックはこれだけにとどまらなかった。車検のクリアを告げる電話にて、本多氏は以下のように述べたのだ。
「それとね、ほったさんのバイパー、そろそろクラッチが滑りだしそうなんだけど」
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沼にはまり込む思考のスパイラル
……いや、ホントはなんとなく「そろそろかなあ」とは思っていましたよ。オドメーターはめでたく5万5555マイルを突破したし、むしろ、この手のスポーツカーにしては持ったほうではあるまいか。わがバイパーをねぎらおう。
しかし今か。よりによって今か。前述のとおり、今回の車検でバイパーが丸のみした諭吉さんはアバウト50人。で、聞いたところではクラッチまわりのオーバーホールに要する費用はだいたい30万円とのこと。さらに上述のやり残しにも手をつけるとなれば、下手をすると2022年度のバイパーの保守点検費用は、100万円の大台を突破することになるのだ。ありえん、これはありえん。年間100万円の出費なんて、民草の道楽の域を超えている。
とはいえである。仮にここでバイパーを手放すとしよう。どうせ記者のことなので、クルマのない生活には耐えられまい。すると当然買い替えとなるわけだが、「中古並行+改造歴有り+過走行」というトリプル役満なバイパー(しかもボロ)の売値+数十万円で、再びこんなに面白いクルマを手に入れられるだろうか? それは明らかに否である。ああ、この思考の負のスパイラルよ。最近、記者の灰色の頭脳は鬱々(うつうつ)として堂々巡りの沼にはまり込んでいるのである。
居酒屋にて、そんな話を某自動車仲間(第27回にてバイパーのバッテリーをあげたJ氏)としたところ、冷静に言われた。「いや、そこは普通に買い替えろよ」。記者は言った。「そんなカシコい選択ができるなら、そもそもバイパーなんか乗ってねえよ」。
(webCGほった<webCG“Happy”Hotta>)
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堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。