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700万円超の衝撃価格 「マツダCX-60」は“高い”のか?

2022.04.04 デイリーコラム 佐野 弘宗
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BMWにでもなったつもり!?

マツダの次世代をになう「ラージ商品群」の第1弾となるのが、DセグメントSUVの「CX-60」である。CX-60は日本でも販売予定だが、まずは去る2022年3月上旬に欧州で先行デビューしたことは既報のとおりだ。それに合わせて欧州各国のマツダ公式ウェブサイトではCX-60現地価格も発表されたのだが、その価格が「高いのでは?」とクルマ好きの間でちょっとした話題となっている。

というわけで、ここでは英国におけるCX-60の価格を例にとってみる。スタート価格となる「エクスクルーシブライン」グレードの価格が4万3950ポンド(邦貨にして約703万円、以下同じ)、最上級の「タクミ」で4万8050ポンド(約768万円)である。いっぽう、現在のマツダ国内フラッグシップである「CX-8」は最上級グレードでも本体価格500万円を切る。こうして額面を単純に比較すると、なるほどCX-60は明らかに高価に見える。しかも、この後にはさらに高額になるであろう3列シートの「CX-80」も控えるのだ。

すでにご承知の向きも多いように、CX-60は、エンジンを縦置きするFRレイアウトをベースとした新開発アーキテクチャーを土台とする。FRレイアウトといえば世界的にもメルセデス・ベンツやBMWを筆頭とする高級車ブランドが好むレイアウトであり、マツダにしても一部のスポーツカーをのぞけば、1990年代半ばごろには横置きFFレイアウトベースに統一されていた。にもかかわらず、ここにきてのFRレイアウト回帰に加えて、このご時世に新しく直列6気筒エンジンまで新開発するという。しかも、その注目の第1陣が邦貨換算700万円台となれば、「マツダはBMWにでもなったつもりか?」と賛否を生むのも当然かもしれない。

しかし、実際のところ、CX-60は本当に高価なのだろうか。

マツダが今後展開する“ラージ商品群”の第1弾として披露されたSUV「マツダCX-60」。ベースには、新開発の後輪駆動用アーキテクチャーが採用されている。
マツダが今後展開する“ラージ商品群”の第1弾として披露されたSUV「マツダCX-60」。ベースには、新開発の後輪駆動用アーキテクチャーが採用されている。拡大
2022年3月上旬にマツダ・モーター・ヨーロッパが発表した「CX-60」は、プラグインハイブリッド車だった。その英国でのスタート価格は4万3950ポンド(邦貨にして約703万円)で、フランス価格が5万2000ユーロ(同702万円)。マツダ車としては高価格と思える額である。
2022年3月上旬にマツダ・モーター・ヨーロッパが発表した「CX-60」は、プラグインハイブリッド車だった。その英国でのスタート価格は4万3950ポンド(邦貨にして約703万円)で、フランス価格が5万2000ユーロ(同702万円)。マツダ車としては高価格と思える額である。拡大
最高水準の職人技と新技術、人間工学を駆使したという「CX-60」のインテリア。「日本の伝統に根ざしたプレミアムな仕立て」がセリングポイントとなっている。
最高水準の職人技と新技術、人間工学を駆使したという「CX-60」のインテリア。「日本の伝統に根ざしたプレミアムな仕立て」がセリングポイントとなっている。拡大
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よくよくライバルと比べてみれば……

この原稿を書いている2022年4月1日時点で正式発表されているCX-60は欧州仕様のみで、パワートレインは2.5リッターをベースにしたプラグインハイブリッド(PHEV)一択である。そのシステム出力は327PSで、容量17.8kWhのリチウムイオン電池を積み、駆動方式は4WD。車体のスリーサイズは全長×全幅×全高=4745×1890×1675mmとなっている。

そんなCX-60に直接に競合すると思われる日本車はトヨタの「ハリアー」と「RAV4」だろう。ハリアーとRAV4はプラットフォームやパワートレイン、ホイールベースを共用するきょうだい車である。

なるほどCX-60のスリーサイズはハリアーのそれ(4740×1855×1660mm)に非常に近い。そして、CX-60のPHEVパワートレインのスペックは「RAV4 PHV」のそれと見事なまでにガチンコである。RAV4 PHVのパワートレインも2.5リッターベースで、システム出力は306PS、リチウムイオン電池の容量は18.1kWh、駆動方式は4WDだ。そんなRAV4 PHVの国内本体価格が469万円~539万円であることも「CX-60は高い」と評される根拠のひとつとなっている。

しかし、クルマの価格というのは、同じクルマでも市場によって大きく変わるのが常識である。実際、RAV4 PHVも英国での価格は日本のそれよりかなり高い。英国仕様のRAV4 PHVの価格はエントリーグレードの「デザイン」で4万2575ポンド(約681万円)、最上級の「ダイナミックプレミアム」で4万6975ポンド(約751万円)であり、大まかな価格帯はCX-60に非常に近いのだ。それでもRAV4 PHVのほうが少し安価な設定のようだが、車体サイズはCX-60のほうが大きく、写真や資料などで見るかぎり、内外装の質感表現もCX-60のほうが凝っている。つまり、競合車と同じ市場で比較すれば、CX-60が高飛車な価格設定とはいいがたい。

堂々たる車格の「マツダCX-60」。プラグインハイブリッド車の0-100km/hの加速タイムは5.8秒と、パフォーマンスもなかなかのものだ。
堂々たる車格の「マツダCX-60」。プラグインハイブリッド車の0-100km/hの加速タイムは5.8秒と、パフォーマンスもなかなかのものだ。拡大
プラグインハイブリッド仕様から世に出た「マツダCX-60」だが、将来的には3リッター直6ガソリンエンジンと3.3リッターのクリーンディーゼルも追加される。
プラグインハイブリッド仕様から世に出た「マツダCX-60」だが、将来的には3リッター直6ガソリンエンジンと3.3リッターのクリーンディーゼルも追加される。拡大
「トヨタRAV4 PHV」の国内価格は469万円~539万円。それが英国で約750万円することを考えれば、今回発表された「マツダCX-60」(プラグインハイブリッド車)の価格も決して高いとはいえないのではなかろうか。
「トヨタRAV4 PHV」の国内価格は469万円~539万円。それが英国で約750万円することを考えれば、今回発表された「マツダCX-60」(プラグインハイブリッド車)の価格も決して高いとはいえないのではなかろうか。拡大

目指すは上級セグメント

CX-60の国内価格はその発表まで待つ必要があるが、英国を筆頭とする欧州での価格設定を見るかぎり、高価なPHEVモデルでもRAV4 PHVの価格帯(500万円前後)から大きくハズれるとは考えにくい。また、日本での当面の売れ筋はガソリンやディーゼルのマイルドハイブリッドとなるはずだから、国内スタート価格は300万円台になるのでは……と勝手に予想しておく。

マツダはそもそも「世界シェア2%という現状の販売規模のまま、独立した自動車メーカーとして単独で生き残る」ことを経営方針としている。そのためにも1台あたりの利幅を増やすことがキモとなるのは間違いなく、販売の主力をラージ商品群に代表される上級セグメントに移行させようとしているのは事実だろう。

実際、藤原清志マツダ副社長兼COOも「小型車は(マツダでは)収益が厳しい領域」と明言しており、「CX-3」も2022年6月をもって国内生産を終了して、タイとメキシコに移管することになっている。以降は国内向けのCX-3もタイからの輸入となり、欧米での販売は終了するという。ハッチバックの「マツダ2」も欧州向けはすでに「トヨタ・ヤリス」のOEMへと切り替えられつつあり、コンパクトカーは少なくとも電気自動車になるまでは、新興国(と日本国内)向けに特化させるのがマツダの戦略かもしれない。

とはいえ、欧州でのCX-60の価格を見るかぎり、マツダが思い描く未来像は、一部でウワサされるような「割高な高級車ブランドに転身する」とも、ちょっとちがうようだ。ラージ商品群を引っ提げたマツダは、はたしてどうなっていくのか。間もなく……ともいわれるCX-60の国内発表で、その全貌は明らかになるのか?

(文=佐野弘宗/写真=マツダ、トヨタ自動車/編集=関 顕也)

2021年12月に発表された欧州向けの「マツダ2ハイブリッド」は、なんとトヨタからのOEM製品。「トヨタ・ヤリス ハイブリッド」の鼻先にマツダのエンブレムが付いたものだった。
2021年12月に発表された欧州向けの「マツダ2ハイブリッド」は、なんとトヨタからのOEM製品。「トヨタ・ヤリス ハイブリッド」の鼻先にマツダのエンブレムが付いたものだった。拡大
マツダの脱小型車の動きのなかで、コンパクトSUV「CX-3」は生産拠点が国内から海外へと移される。欧米での販売打ち切りも決まっている。
マツダの脱小型車の動きのなかで、コンパクトSUV「CX-3」は生産拠点が国内から海外へと移される。欧米での販売打ち切りも決まっている。拡大
マツダは2023年までに、ラージ商品をグローバルで計4車種投入する予定。SUVのラインナップを充実させ、ビジネスとブランドのさらなる成長を図るという。
マツダは2023年までに、ラージ商品をグローバルで計4車種投入する予定。SUVのラインナップを充実させ、ビジネスとブランドのさらなる成長を図るという。拡大
佐野 弘宗

佐野 弘宗

自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。

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