トヨタRAV4 PHVブラックトーン(4WD/CVT)/三菱アウトランダーP(4WD)
どこまでも万能 2022.04.26 試乗記 「トヨタRAV4 PHV」と「三菱アウトランダー」はサイズや価格帯がほど近い国産プラグインハイブリッド車の両雄だ。ともにSUVであり、納車待ちの行列ができているところまでもよく似ている。2台を同時に試乗して人気の秘密とそれぞれの個性を探ってみた。ガチンコのライバル
大人気モデル2台の比較試乗である。三菱アウトランダーとトヨタRAV4 PHVは、ともにプラグインハイブリッドシステムを持つミドルサイズSUVだ。電動化が加速するなかで現時点での現実的な解とされるプラグインハイブリッドと、乗用車の主流となったSUVの組み合わせ。注目が集まるのは当然だろう。現状では選択肢はこの2台だけであり、ガチンコでぶつかるライバルなのだ。
大きさやパワーユニットなどのスペックはとても似ている。ならば同じようなクルマかというと、さにあらず。乗ってみると、まったく異なるテイストのクルマだった。目指している方向性の違いがはっきりと分かる。RAV4が普遍性と安定性を志向しているのに対し、アウトランダーはプラグインハイブリッドの特性を強調しようとしているように見える。
アウトランダーは、2001年にデビュー。2012年に2代目となり、2013年にプラグインハイブリッドモデルの「アウトランダーPHEV」が追加された。プラグインハイブリッドの乗用車としては、「プリウスPHV」に次ぐ2番目である。2021年10月にフルモデルチェンジを受け、ガソリンエンジン車は国内ラインナップから外れた。電気自動車とPHEVに注力するという三菱自動車の方針に沿った決断である。3月までに1万台以上を受注し、マーケットからは好評なようだ。
RAV4は1999年にコンパクトでカジュアルなクロスオーバーSUVとして登場した。ボディーサイズが拡大していったことで4代目は海外専用モデルとなったが、2019年に5代目が日本にカムバック。2020年にPHVモデルが発表されると注文が殺到し、1カ月後に受注停止。8カ月後の2022年3月にようやく受注を再開した。ただし、生産が間に合わず、納車まで半年以上は待たなければならない。
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質感の高い内外装
RAV4にはガソリンエンジンモデルやハイブリッドモデルもラインナップされている。エントリーグレードなら、車両本体価格は300万円を下回る。試乗したRAV4 PHVは最上級グレードの「ブラックトーン」で、エントリーグレードの2倍近いプライスタグが付けられている。さまざまな助成金が利用できるので実際の支払額は下がるが、高価格であることは確かだ。それでもプラグインハイブリッドに乗りたいという需要が根強くあるのだろう。
RAV4はもともと内外装の質感が高い。エクステリアデザインはSUVらしい堂々たるたたずまいながら、土臭さを感じさせない都会的なイメージだ。試乗車のボディーカラーは赤と黒のツートーンで、オシャレ感を増量。タフさを表現したというクロスオクタゴンのフロントグリルは、PHV専用デザインが採用されている。
インテリアもワイルドさを排した都会的な洗練志向。ソフトパッドを多用し、赤いステッチで上質さを演出している。エクステリアと呼応して、水平基調のすっきりとしたデザインだ。巨大なセンターコンソールがSUVならではのおおらかさを感じさせるが、多角形のモチーフを反復するなど芸が細かい。コンソールボックスのフタやカップホルダーの底部などにトレッドパターン模様を施しており、少しだけ野性味を残している。
システムを起動してアクセルを踏んでいくと、ほぼ無音で走りだす。発進で使われるのはモーターのみなのだ。ハイブリッドモデルでも同様だったが、フロントモーターが強化されている。最高出力はハイブリッドの88kW(120PS)に対し、134kW(182PS)で1.5倍強の数値だ。リアにもモーターが配されるが、こちらはハイブリッドと同じ40kW(54PS)。メーター内に示される4WDの作動状況を見ると、ぬれた路面などで急発進でもしなければフロントモーターだけで駆動している。
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ハイブリッド車と共通の走行感覚
搭載するリチウムイオンバッテリーの容量は18.1kWh。プラグインハイブリッドとしては大容量で、満充電ならモーターだけで95kmの走行が可能だとされる(WLTCモード)。加速も強力だ。試乗車はバッテリー残量が少なくなっていたので、スピードを上げていくとエンジンが始動した。それでも静粛性は保たれていて、モーター走行からの移行に違和感はない。プリウスなどのトヨタのハイブリッド車に使われているものと同じシステムであり、走行感覚は共通している。プラグインハイブリッドの特別感より、連続性を優先しているのだろう。
センターコンソールにドライブモードを切り替えるボタンがあり、「EV」モードがデフォルト。バッテリー残量が十分であれば基本的にモーターで走行する。「HV」モードはエンジンを使って電力を節約する。この2つはバッテリー残量によって自動で切り替わる。「バッテリーチャージ」モードは、エンジンが積極的に発電して充電を優先。「オートEV/HV」モードでは、モーター走行を基本としながらエンジンも使って強力な加速を楽しめる。
さらにダイヤル式のモードセレクトスイッチもあり、「エコ」「ノーマル」「スポーツ」を選択。加速の程度やステアリングの制御、エアコンの作動状況の設定が変わる。エコモードだと少しもどかしい場面もあるが、高速巡航では有用だ。通常の走行ではEVモードとノーマルモードの組み合わせにしておけば、システムが適切な設定を選んでくれる。ドライバーが細かいことを考えず、クルマにおまかせするという態度が望ましい。
4WDシステムは前後のモーターを制御する「E-Four」。トルクの配分を100:0~20:80の間で自動的に変化させ、トラクションを高めて走行安定性向上を図る。本格的なオフロード走行を想定したものではなく、雪道などでの安心感をもたらすことが主目的だ。スタックした場合には「トレイル」モードを選べば空転輪をブレーキ制御して脱出をサポートする。いざという時の最後の手段であり、ハードな悪路は避けたほうがいい。
平均点が高い
山道を走っても、背の高さが大きなデメリットにはならない。コーナーでもロールは少なく、姿勢は安定している。「カムリ」から採用された低重心の「GA-K」プラットフォームがアドバンテージになるうえに、ボディー中心のフロアボードに重いバッテリーを積んでいることが功を奏しているのだろう。モーターとエンジンがタッグを組んでパワーを供給し、加速は強力だ。
以前、プリウスPHVに乗った時は、穏やかに走っていればなかなかバッテリー残量が減らないことに感心した。回生能力が高く、消費した分をすぐに取り返す。RAV4 PHVは重いだけあってバッテリーの減りは早いが、熟成されたシステムは効率がいいようで好燃費を記録した。急速充電には対応しておらず、自宅のガレージで夜間に充電することが想定されている。200Vなら5.5時間で満充電になるというから、通勤や買い物程度ならほとんどガソリンは消費しない。ガソリンとバッテリーを併用すれば最大航続距離は1300kmというのも頼もしい。
ラゲッジルームにはAC100V・1500Wのコンセントがあり、車内で電気製品を使うことができる。充電ソケットにコネクターをつないで外部給電することもでき、満充電ならばバッテリーのみでも一般的な家庭の使用量で約20時間、エンジンで発電すれば約5日間使い続けられる。キャンプなどで有用なだけでなく、非常時には頼りになる装備だ。
RAV4 PHVはパワーや燃費、静粛性、乗り心地などの基本的な性能の平均点が高い。ガソリン車やハイブリッド車から乗り換えても違和感はなく、ストレスなく運転することが可能。そのうえでプラグインハイブリッドのメリットを享受する。オールマイティーで、対抗するのは簡単ではない。しかし、アウトランダーに乗ってみると、同じ成り立ちでもまったく異なる魅力を持っていることが見えてきた。
(後編に続く)
(文=鈴木真人/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
トヨタRAV4 PHVブラックトーン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4600×1855×1690mm
ホイールベース:2690mm
車重:1900kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:177PS(130kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:219N・m(22.3kgf・m)/3600rpm
フロントモーター最高出力:182PS(134kW)
フロントモーター最大トルク:270N・m(27.5kgf・m)
リアモーター最高出力:54PS(40kW)
リアモーター最大トルク:121N・m(12.3kgf・m)
システム最高出力:306PS(225kW)
タイヤ:(前)235/55R19 101V/(後)235/55R19 101V(ヨコハマ・アビッドGT)
ハイブリッド燃料消費率:22.2km/リッター(WLTCモード)
EV走行換算距離:95km
充電電力使用時走行距離:95km
交流電力量消費率:155Wh/km(WLTCモード)
価格:539万円/テスト車=586万9820円
オプション装備:ボディーカラー<アティチュードブラック×エモーショナルレッドII>(9万9000円)/パノラマムーンルーフ<チルト&スライド連動>(14万3000円)/寒冷地仕様<タイマー付きウインドシールドデアイサーなど>(1万7600円) ※以下、販売店オプション T-Connectナビキット(10万6700円)/ETC2.0ユニット<ビルトイン&ナビキット連動タイプ>(3万3000円)/前後方ドライブレコーダー(4万4220円)/フロアマット<ラグジュアリータイプ>(3万6300円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:1906km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:338.8km
使用燃料:18.5リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:18.3km/リッター(満タン法)/18.9km/リッター(車載燃費計計測値)
三菱アウトランダーP
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4710×1860×1745mm
ホイールベース:2705mm
車重:2110kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.4リッター直4 DOHC 16バルブ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:133PS(98kW)/5000rpm
エンジン最大トルク:195N・m(19.9kgf・m)/4300rpm
フロントモーター最高出力:116PS(85kW)
フロントモーター最大トルク:255N・m(26.0kgf・m)
リアモーター最高出力:136PS(100kW)
リアモーター最大トルク:195N・m(19.9kgf・m)
タイヤ:(前)255/45R20 101W M+S/(後)255/45R20 101W M+S(ブリヂストン・エコピアH/L422プラス)
ハイブリッド燃料消費率:16.2km/リッター(WLTCモード)
EV走行換算距離:83km
充電電力使用時走行距離:85km
交流電力量消費率:239Wh/km(WLTCモード)
価格:532万0700円/テスト車=554万1434円
オプション装備:ボディーカラー<ブラックダイヤモンド/ディープブロンズメタリック>(13万2000円)/レザーシート<ブラック>(-2万2000円) ※以下、販売店オプション ETC2.0車載器<スマートフォン連携ナビゲーション用>(4万6882円)/フロアマット<7人乗り用>(5万4252円)/三角表示板(3300円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:7187km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:328.0km
使用燃料:30.0リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:10.9km/リッター(満タン法)/10.9km/リッター(車載燃費計計測値)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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