ピュアEVブランド化に向けた第1弾 「レクサスRZ」とはどんなクルマなのか?
2022.05.04 デイリーコラムトヨタ版とのちがいをアピールできるか
トヨタ初の量産電気自動車(BEV)である「bZ4X」に続いて、そのレクサス版ともいえる「RZ」が先日、世界初公開された。最終的には日欧米中をはじめとする約50カ国で、年間3万2000台の販売を目標とする。
いまだに安価とはいえないBEVについては、いまは高級車ブランドほど積極的で、野心的な戦略をかかげるのが世の流れだ。たとえば、ジャガーは2025年、ボルボとメルセデス・ベンツは2030年までに全車BEV化するとしているし、アウディは2033年に内燃機関(エンジン)の生産を終了する方針だ。もっとも、BMWだけはエンジン生き残りの可能性をいまだに捨てていないようで、傘下のロールス・ロイスは2030年、MINIは2030年代初頭の全車BEV化を宣言しつつも、BMWグループ全体では2030年時点でのBEV比率を5割と見込んでいる。
そんななか、われらが日本のレクサスも欧州のライバルに遅れまいと、昨2021年末に「欧州・北米・中国では2030年までに、グローバルでも2035年までにラインナップのBEV比率を100%にする」と宣言した。
そのレクサスBEV戦略において実質的にスターター役のRZは、土台となる「e-TNGA」プラットフォームをbZ4X(と双子車の「スバル・ソルテラ」)と共有する。肉づきのいいエクステリアデザインのおかげで、全長や全幅こそRZのほうが大きい(全高は逆に低い)が、2850mmというホイールベースや20インチのタイヤサイズはbZ4Xと共通だ。それでも、くちうるさい富裕層にレクサスであることを納得させられるかどうかが、RZ成功のカギだろう。
こだわり抜かれた前後駆動力配分
かつてならエンジンパワーを少し上げて、エンジン音をちょっと響かせるだけでドライブフィールもずいぶんと異なる印象になったものだが、BEVではそうもいかない。電動モーターは少しばかりパワーを上げたところでフィーリングや音はほとんど変わらないからだ。また、BEVで動力性能を決定づける最大のキモといわれる電池も、RZとbZ4Xは同じ容量71.4kWhのリチウムイオンを積むのだ。
そこで、RZはまず駆動方式を4WDのみ(bZ4XにはFWDもある)として、さらにフロントにより強力な204PSモーター(リアは109PS、bZ4Xは前後とも109PS)を配している。前後2モーターの電動4WDといえば、駆動制御次第でグリングリンに曲げまくることも可能で、実際、旋回時はリアに駆動力を集中させて、そういう味わいを前面に出すBEVも存在する。しかし、RZのプロトタイプにいち早く試乗した渡辺敏史さんによれば、RZの味つけはそうした極端なものとは正反対のナチュラルな方向性らしい。
BEVにおいて乗り味や操縦性を決めるキモ中のキモである駆動力配分も、RZのそれはなかなか興味深い。たとえばコーナーの進入時の駆動配分は75:25~50:50というフロント優勢制御だそうで、実際のターンインは安定したマイルド志向と思われる。その後も同じ配分ならずっと安定したアンダーステアのままだが、RZでは脱出時に50:50~20:80というリア優勢配分となり、最終的にきれいな弧を描く旋回性能をねらっているようだ。また、その間も駆動配分を細かくコントロールすることで、ピッチング=前後方向の揺れを抑えたフラット姿勢を保って、トラクションも最大限に高めるという。
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タイムリミットまであと12年
さらに、最近の「IS」や「NX」といった非BEVの新型レクサスの手法から想像できるのが、徹底した車体強化だ。NXもプラットフォームやディメンションはトヨタの「RAV4」や「ハリアー」と共通なのに、上屋や床まわりを徹底強化したことで、まるでクラスちがいの乗り味となっている。RZでも上屋からサブフレームまでレクサス独自の強化策がふんだんに取り入れられており、さらに車体前後に取り付けられたおなじみの「パフォーマンスダンパー」によって、ささくれだった振動や衝撃を吸収・抑制する意図が見て取れる。
最近のレクサスの開発陣は「すっきりと奥深い走り」を合言葉に乗り味の調律をおこなっているというが、こうして4WD制御のポイントを聞くだけでも、RZも同様に奥深くすっきりした走りを目指していると想像できる。積極的に前後駆動配分しつつも極端な旋回特性を強調せず、路面上を滑るようなフラットライド……といった乗り味のコンセプトがうかがえるからだ。現時点ではRZの走りが実際どれほどのものかは想像するほかないが、明かされている技術内容には、乗り味の決め手となる部分にレクサス独自の仕立ても多い。それらを見るかぎり、「bZ4Xと区別がつかない」といった不満が出てくる可能性は低い。
この原稿を書いている2022年5月の時点で、レクサスの市販BEVは「UX300e」しか存在せず、初のBEV専用車種である今回のRZもひとまず姿は見せたが、国内発売は年末の予定という。つまり、RZが発売された時点で、レクサス自身が定めた全車BEV化のタイムリミットまでは12年(!?)しかなく、率直に「間に合うの?」と思ってしまうのが正直なところだ。そう考えると、絶対的な生産台数ではトヨタブランドのbZ4Xのほうが圧倒的に多くても、背負っているものはRZのほうがはるかに大きい……といえなくもない。なにはともあれ、豊田章男社長言うところの「BEVも本気」にカジを切ったレクサス=トヨタのお手並み拝見である。
(文=佐野弘宗/写真=トヨタ自動車/編集=藤沢 勝)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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