第233回:地雷を踏んだらサヨウナラ
2022.05.30 カーマニア人間国宝への道何が当たるかわからないガチャ的な面白さ
カーマニアにとって、レンタカーを借りるのは大きな楽しみだ。普段は自家用車かメーカーさまの広報車ばかり乗っているが、レンタカーはいわば外界。ひ弱なカーマニアが巣から飛び出し、野生の風をじかに感じることができる機会なのだ!
付け加えると、レンタカーはどの車種が当たるかわからない。「今日は何がくるかな~」とドキドキするのも楽しい。先の読めない弱肉強食の世界なのである。
私が借りるのはほぼ毎回コンパクトカークラス(たまに軽クラス)だが、そこには明確な地雷(カーマニア的見地におけるハズレ)が存在する。地雷があるからこそ、アタリがきた時のヨロコビは大きい。
昨年レンタカーを借りた際は、車種を見て息を飲んだ。それは「三菱ミラージュ」だったのだ! しかもダイナミックシールド付き! こんなの初めて~!
コンパクトカークラス最大の地雷は「マーチ」、続いて「ヴィッツ」と考えておりましたが、まさかミラージュがくるとは想定外! 地雷としては最大級なれど、めったに踏めないのでむしろヨシ!
思えば現行ミラージュが出てから約10年の歳月が流れ、顔はダイナミックシールドになりましたが、2014年末のマイチェンで1.2リッターモデルが出たのを最後に、試乗しておりません。その後の7年間で中身も進化したのでしょうか!?
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今回もコンパクトカークラスで勝負!
結論。走りの質感に関しては、むしろ退歩したように感じました……。周囲の進化ゆえの錯覚でしょうけど、地雷としての破壊力はマーチより上か? 実に貴重な体験でした。レンタカー屋さんありがとう! もちろんトラブルなくちゃんと走り切って、義務は果たしてくれたしネ!
前回の地雷がすごかったので、今回は少しビビっていた。2回続けて地雷は避けたい。それってなんかツイてないヤツみたいだから。
地雷を避けるなら、軽クラスを借りれば解決する。軽はどれがきてもハズレがないのだ。しかしそのぶんワクワク感もない。やっぱり男は逃げちゃダメだ! 今回もコンパクトカークラスで勝負!
岡山駅そばのレンタカー屋で、緊張しながら結果を待つ。見える範囲にあるのは、ヴィッツと先代「フィット」と「ヤリス」だった。ヴィッツは地雷で先代フィットはフツー、ヤリスがくれば大当たりだ。
と思ってたら、ヤリスがきた! しかもほとんど新車! 登録されてまだ3カ月、走行たったの3000km! うおー最高!
思わずレンタカー屋さんに笑顔で「新車ですね!」と話しかけたが、「あ、そうですか?」とスルーされた。レンタカー屋さんにすりゃ、どれも同じなんだろうなぁ。カーマニアが男の勝負をかけていたとは夢にも思うまい。
エンジンをかけ、走りだして100m。私は感動のあまり目の奥が熱くなった。このスムーズさ。この1.5リッター3気筒エンジンの分厚いトルク。そしてカッチリとスポーティーな足まわり。なんていいクルマなんだろう……。前回が前回だっただけに、狂ったようにいいクルマに感じる! レンタカーの場合、比較対象はあくまでレンタカー。他のクルマは無関係です。
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ヤリスは前衛芸術だ
今回の旅の目的は岡山県の史跡巡り。自家用車で往復すると時間を食いすぎるので、新幹線&レンタカーにいたしました。
岡山インターから高速に乗り、「備中松山城」へ向かう。高速道路でのヤリスの走りがまたスゴイ! この路面に張り付くような感覚、キモチイ~! 前回(ミラージュ)のペナペナ感や接地感のなさがメガトン級だっただけに、感激もひとしおだ。
しかもラクチン! だって、ACCまで付いてるんだから! ミラージュと同クラスとはとても思えない。すべての基準がミラージュになっていて大変申し訳ございませんが、これはもう地方のローカル鉄道と新幹線くらいの差がある。いや、ローカル線も私は大好きですヨ! キハ40系最高!
実はヤリスについても、フロントマスクを「毒虫」と呼んで忌み嫌っておったのですが、前回ミラージュに乗って目が覚めました。これのどこが毒虫なんだ! 個性的で攻めたデザイン、いいじゃないか! 後付けのダイナミックシールドとはステージが違う! もうカケラも毒虫には見えない! 前衛芸術に見える!
備中松山城に続いて、古代山城の「鬼ノ城」を訪問。ついでに吉備地方最大の「造山古墳」と、桃太郎伝説の「吉備津神社」も巡回。ヤリスのおかげで、大変充実した史跡巡りを楽しむことができました。レンタカー最高! 次回はマーチに乗りたいな。ハズレがないとアタリのヨロコビもないからネ!
(文と写真=清水草一/編集=櫻井健一)
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清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。