第238回:スーパーカーのあるべき姿
2022.08.08 カーマニア人間国宝への道4年ぶりのフレンチスポーツ
担当サクライ君よりメールが入った。
「近いうちに『アルピーヌA110 S』にお乗りになりますか」
乗る乗る~!
新・アルピーヌが日本に上陸したのはいつのことだったか。調べてみたらちょうど4年くらい前。思えばその前年に自分は、「フェラーリ458イタリア」を降りて「328GTS」に回帰している。「もはや過剰な速さはわが人生にとって無意味ナリ!」と悟ってのことだった。
わが心境の変化とほぼ時を同じくして、小型軽量で適度なパワーのミドシップマシン、アルピーヌA110が登場したのは、わが意を得たりの感アリだった。新・アルピーヌに乗り、私は、「現代のスポーツカーにこれ以上のパワーは必要ナシ!」「アルピーヌA110こそ、今あるべきスーパーカーの姿である!」と感服した次第である。
と言う割には、アルピーヌが欲しいという思いは特に湧かず、4年前に乗ったきりでその後はトンと縁がなかった。4年ぶりに会えるのかアルピーヌよ! 成長したのかアルピーヌよ!
サクライ:300PSになりました。
オレ:出たときはもうちょっと低かったよね。
サクライ:252PSです。
そうそう。当時、これくらいが公道で楽しめる限界と思ったんだけど、それが、いつの間にか「S」がつき、300PSになったのか。それって正しいのか!? という思いも頭をかすめるが、小難しいことは乗ってから語ればヨシ!
ということで、いつものように夜8時、サクライ君がアルピーヌに乗ってやってきた。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
アルピーヌの走りは首都高にピッタリ
アルピーヌがわが家にやってくる。それは、いつもとはちょっと違う感覚だった。アルピーヌは、フェラーリ328の生まれ変わり。つまり“来世“が家にやってくる。そんな気がしたからである。
アルピーヌをガレージの328の横に並べると、“来世”はだいぶ全高が高い。A110 Sは1250mm、328は1120mm。全長はだいたい同じだが、これだけ高さが違うと、だいぶコロコロして見える。
ところが車両重量は、A110 Sのほうが200kgくらい軽い。328の車両重量が諸説あってよくわからないのだが、とにかくかなり軽い。1980年代の名車よりも軽いなんてスゲエ! 328が意外と重いってのもあるが、とにかくソンケーである。
そして馬力は、アルピーヌA110 Sの300PSに対して、328は270PS。直4ターボとV8自然吸気の違いはあるが、パワーが近いエンジンの横置きミドシップというだけで、「他人じゃないぜ!」という気持ちになる。よし、行くぜアルピーヌよ! 夜の首都高で試してやるぜ!
走りだして数十m。
オレ:サクライ君、乗り心地がいいね!
サクライ:いえ、これはSなので硬くて一部で不評です。その点、「GT」はものすごく乗り心地が良くて最高です。
オレ:そうなの!? これで硬いの!? これ以上乗り心地が良かったら、シトロエンになっちゃわない!?
サクライ:シトロエン、最高ですね。
サクライ君はそう言うが、アルピーヌA110 Sも十分最高だ。低速域では多少路面からの突き上げもあるが、首都高に乗って速度を上げると、ほぼフラットライドに変身した。ルノー・スポールのエンジニアは首都高でもテストしていると聞くが、まさに首都高にピッタリだぜアルピーヌよ! コーナリングもスバラシイ! これを「足が硬い」とか「GTはもっとラクチン」とか言ってるフヌケはどこのどいつだ! そんなヤツはシトロエンとか、プジョーの猫足にでも乗ってろや! そっちも好きだけど!
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
土俵際でプジョーの猫足がうっちゃり
やっぱりこれが今あるべきスーパーカーの理想形だ! もうフェラーリやランボルギーニは古いのだけあればヨシ! 新しいのは押し入れにでもしまっとけ!
ふと前を見ると、左右に横一文字のテールランプが。
オレ:あれはアウディ?
サクライ:たぶん「ポルシェ911」ですね。
オレ:ホントだ。ずいぶんゆっくり走ってる。
他にライバルっぽいクルマもいないので、わがアルピーヌは、911の後方でいつでも撃墜できる体勢をとりつつ、急カーブでだけ「見せてやるぜ、ユーとミーのテクニックの差をな!」と叫びなら前に出たりしていたが、だんだん面白くなくなってきた。
オレ:サクライ君、このクルマ、なんにもしなくても曲がるね。
サクライ:はい、ハンドルを切れば。
オレ:荷重移動とか、なんにもいらないんだね。
サクライ:いりませんね。最近、そんなことした覚えがありません。
オレ:ATだし、なんにもやることがないよ!
サクライ:そうですか?
オレ:スッポン丸(328GTS)は違うよ! ちゃんと荷重移動しないとまるっきり曲がらないし、ブレーキだって、いつもコーナー手前で「抜けたかぁっ!?」ってビビるしさ!
サクライ:古いですからね。
オレ:これじゃ運転が簡単すぎる! これならシトロエンとか、プジョーの猫足に乗ってたほうがよくない?
サクライ:猫足には賛成です。
ということで、逆転でアルピーヌよりもプジョーの猫足! と決まったのだった。猫足最高!
(文=清水草一/写真=清水草一、webCG/編集=櫻井健一)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
第326回:三つ子の魂中高年まで 2026.1.5 清水草一の話題の連載。ホンダの新型「プレリュード」で、いつもの中古フェラーリ販売店「コーナーストーンズ」に顔を出した。24年ぶりに復活した最新のプレリュードを見た常連フェラーリオーナーの反応やいかに。
-
第325回:カーマニアの闇鍋 2025.12.15 清水草一の話題の連載。ベースとなった「トヨタ・ランドクルーザー“250”」の倍の価格となる「レクサスGX550“オーバートレイル+”」に試乗。なぜそんなにも高いのか。どうしてそれがバカ売れするのか。夜の首都高をドライブしながら考えてみた。
-
第324回:カーマニアの愛されキャラ 2025.12.1 清水草一の話題の連載。マイナーチェンジした「スズキ・クロスビー」が気になる。ちっちゃくて視点が高めで、ひねりもハズシ感もある個性的なキャラは、われわれ中高年カーマニアにぴったりではないか。夜の首都高に連れ出し、その走りを確かめた。
-
第323回:タダほど安いものはない 2025.11.17 清水草一の話題の連載。夜の首都高に新型「シトロエンC3ハイブリッド」で出撃した。同じ1.2リッター直3ターボを積むかつての愛車「シトロエンDS3」は気持ちのいい走りを楽しめたが、マイルドハイブリッド化された最新モデルの走りやいかに。
-
第322回:機関車みたいで最高! 2025.11.3 清水草一の話題の連載。2年に一度開催される自動車の祭典が「ジャパンモビリティショー」。BYDの軽BEVからレクサスの6輪車、そしてホンダのロケットまで、2025年開催の会場で、見て感じたことをカーマニア目線で報告する。
-
NEW
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
NEW
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
NEW
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。 -
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】
2026.1.17試乗記BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。 -
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る
2026.1.16デイリーコラム英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。












