第726回:三菱ラリーアートがついに復活! 総監督の増岡 浩がラリー挑戦の意義を語る
2022.10.22 エディターから一言 拡大 |
世界中のラリーで勝利を挙げ、ファンを熱くさせてきた三菱ラリーアートが、いよいよ競技の世界に戻ってくる! 監督を務めるのは、2度にわたりダカールを制した増岡 浩氏だ。競技者としても一級の経歴を持つ氏に、三菱がワークス体制で競技に臨む意義を聞いた。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
小さく産んで、大きく育てる
2020年に“三菱のスポーツブランド”としての復活を宣言。そして今年(2022年)のはじめには、東京オートサロンでコンセプトモデル「Vision Ralliart Concept(ヴィジョン ラリーアート コンセプト)」や、「アウトランダーPHEV」「エクリプス クロスPHEV」のアクセサリー装着車を発表したラリーアート。再始動したかつての三菱ワークスが、モータースポーツにおいても活動に本腰を入れ始めた。
皮切りとなるのが、ピックアップトラック「トライトン」で出場する「アジアクロスカントリーラリー2022」だ。この「チーム三菱ラリーアート」で総監督を務める増岡 浩氏に、ラリーアートの目指す未来について話をうかがった。
――今回のオフロード試乗会(参照)では、競技用トライトンの先行開発車両にも同乗させていただきました。日本でも久々に復帰を果たすようですが、とても素晴らしいピックアップトラックでした。
このトライトンが投入されるアジアクロスカントリーラリーを手始めに、ラリーアートはモータースポーツの舞台にも復帰するようですが、その目的はずばりなんなのでしょうか? どういう狙いがあるのですか?
増岡 浩さん(以下、増岡):われわれとしては、ここ数年ずっと「三菱らしさをどう表現するのか?」というテーマを持っていました。そしてその“らしさ”とはやはり「走り」であり、「運転しているときの楽しさ」だよね? ということを再認識したんです。三菱自動車にとってその頂点とはラリーアートであり、であれば“その活動”がなければならないだろうということで、ラリー活動を再開することにしました。
(用品事業のほうについては)現状はまだ、以前のようにエンジンや駆動系といった本格的な機能パーツまでは販売できないけれど、まずはラリーアートをスタートさせようと。朝のプレゼンテーションでもお話ししたのですが、「小さく産んで、大きく育てる」という考えです。そのためには確実にステップを踏んで、最終的にはお客さまに「ラリーアートってすごいな!」と思ってもらえるようにしたい。そう考えています。
三菱とラリーアートを支える若い世代の成長
――ラリーアートは長い間、実質的な活動を停止していました。そして満を持しての復活となったわけですが、低迷したまま続けているよりも、心機一転が図れたのではないでしょうか?
増岡:そうですね。今ラリーアートは、三菱自動車のいろいろな部署の人間が兼任するかたちで、組織を再構築しています。これまでは別会社でしたが、今度は完全に社内です。そういう意味では、最終的に目指すところはクルマづくりです。現状はドレスアップパーツしか出せていないですが、機能部品はもちろん、将来的にはコンプリートカーをつくりたい! と思っています。
極端な言い方になるけれど、今日持ってきたようなラリーカーを市販したい。ラリーアートのクレジットでね。“パジェロ エボ”のときみたいに。
――今の若い人たちは、三菱のモータースポーツ活動を知らない世代です。社内の若い世代の人たちは、モータースポーツに関心を持っていますか?
増岡:社内にはいますよ。「モータースポーツやりたいか?」と尋ねれば、手を上げてくれる子たちがちゃんといます。だから、すごく今は、いい状態。「ウチのクルマは走って楽しくて、速くて安全で、そういうクルマだよね」という意思統一ができていて、同じベクトルにみんなで向かってる状態です。
ご存じのとおり、ここ数年でクルマが大きく様変わりしてますよね? エクリプス クロスやアウトランダーPHEVが、すごくよくなっていると思う。これらは、まさに若手を育てた結果なんです。三菱はちょうど、“世代が今変わるとき”なんですね。
ボクらも、もう還暦じゃない(笑)。今は若い人たちと一緒にたくさん仕事をして、いろいろ伝えている最中なんですよ。
――確かにZ世代をはじめとした世代と、われわれのようなクルマ好き世代は親和性が高いと思います。
増岡:そうですね。彼らは大事な次世代です。この人たちをきちんと育てながらね、三菱のスピリットを受け継いでもらいたいんです。エンジン開発をする人材も、シャシー開発をする人材も、そしてドライバーも。まさに今は、ラリーアートを復活させるには、ベストなタイミング。ちょうどいい時期だったんです。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
もう一度、世界に三菱をアピールしたい
――先ほどもアウトランダーPHEVの話が出ましたが、ラリーアートとしての、電動化に対するアプローチはなにか考えておられますか?
増岡:もちろん。本当だったら、ラリー活動だってEVでやるべきですよ。ただ、今の三菱の状況を考えると、アジア圏での活動を一番にやる必要があります。だから、(アジア圏で好調な)トライトンでアジアクロスカントリーラリーに参戦するんです。これがもし「自由にやっていい」ということになったら、当然EVですごいラリーカーをつくります(笑)。
――では、そのイメージはもうできていたりするのですか?
増岡:もちろん。最終的には、グローバルでやりたいですよね。もう一度世界に、三菱自動車をアピールしたいです。
――もし理想のEVラリーカーで出場するなら、どのようなラリーになりますか? アドベンチャーラリーでしょうか、スピードラリーでしょうか。両者ではクルマに求められる性質も異なってくると思いますが。
増岡:ボクは、どちらも変わらないと思ってるの。ウチで言うと「ランサー」がスピードラリーで、パジェロがアドベンチャーラリーだったでしょ? それをミックスしたあたりにあるのが、サファリラリーかな? どれも、スタートから目的地に早く着くという意味では同じなんですよ。そしてどんな路面でも、どんな天候でも、確実に速く、目的地に安全に着けるクルマが必要。
今で言うと、アウトランダーが理想ですね。あのクルマはどこでも行けるし、走れるし、安定している。これが三菱の、今の最適解。雪道もオフロードも、そしてサーキットも走れる。きちんと曲がって、止まれます。
――私もアウトランダーPHEVには、たくさんのシチュエーションで試乗させていただきました(参照)。そこで感じたのは、やはりこれだけのポテンシャルを持つPHEVであれば、その走りを磨き上げてほしいということです。ぜひ、「ラリーアート仕様」の登場を期待しています。
増岡:そうですね。期待に応えられるように、がんばります!
――ありがとうございました。
(文=山田弘樹/写真=向後一宏、三菱自動車、webCG/編集=堀田剛資)
拡大 |
◇◆こちらの記事も読まれています◆◇
◆三菱ラリーアートが復活! “ダカールの覇者”増岡 浩 総監督を突撃インタビュー【Movie】
◆三菱アウトランダーP/デリカD:5 P/トライトンAXCR試作車【試乗記】
◆三菱アウトランダーP(4WD)【試乗記】

山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
-
第855回:タフ&ラグジュアリーを体現 「ディフェンダー」が集う“非日常”の週末 2025.11.26 「ディフェンダー」のオーナーとファンが集う祭典「DESTINATION DEFENDER」。非日常的なオフロード走行体験や、オーナー同士の絆を深めるアクティビティーなど、ブランドの哲学「タフ&ラグジュアリー」を体現したイベントを報告する。
-
第854回:ハーレーダビッドソンでライディングを学べ! 「スキルライダートレーニング」体験記 2025.11.21 アメリカの名門バイクメーカー、ハーレーダビッドソンが、日本でライディングレッスンを開講! その体験取材を通し、ハーレーに特化したプログラムと少人数による講習のありがたみを実感した。これでアナタも、アメリカンクルーザーを自由自在に操れる!?
-
第853回:ホンダが、スズキが、中・印メーカーが覇を競う! 世界最大のバイクの祭典「EICMA 2025」見聞録 2025.11.18 世界最大級の規模を誇る、モーターサイクルと関連商品の展示会「EICMA(エイクマ/ミラノモーターサイクルショー)」。会場の話題をさらった日本メーカーのバイクとは? 伸長を続ける中国/インド勢の勢いとは? ライターの河野正士がリポートする。
-
第852回:『風雲! たけし城』みたいなクロカン競技 「ディフェンダートロフィー」の日本予選をリポート 2025.11.18 「ディフェンダー」の名を冠したアドベンチャーコンペティション「ディフェンダートロフィー」の日本予選が開催された。オフロードを走るだけでなく、ドライバー自身の精神力と体力も問われる競技内容になっているのが特徴だ。世界大会への切符を手にしたのは誰だ?
-
第851回:「シティ ターボII」の現代版!? ホンダの「スーパーONE」(プロトタイプ)を試す 2025.11.6 ホンダが内外のジャーナリスト向けに技術ワークショップを開催。ジャパンモビリティショー2025で披露したばかりの「スーパーONE」(プロトタイプ)に加えて、次世代の「シビック」等に使う車台のテスト車両をドライブできた。その模様をリポートする。
-
NEW
トヨタGR GT/GR GT3
2025.12.5画像・写真2025年12月5日、TOYOTA GAZOO Racingが開発を進める新型スーパースポーツモデル「GR GT」と、同モデルをベースとする競技用マシン「GR GT3」が世界初公開された。発表会場における展示車両の外装・内装を写真で紹介する。 -
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。














































