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第726回:三菱ラリーアートがついに復活! 総監督の増岡 浩がラリー挑戦の意義を語る

2022.10.22 エディターから一言 山田 弘樹
チーム三菱ラリーアートの総監督を務める増岡 浩氏。2002年、2003年のダカールラリーで優勝した経歴の持ち主だ。
チーム三菱ラリーアートの総監督を務める増岡 浩氏。2002年、2003年のダカールラリーで優勝した経歴の持ち主だ。拡大

世界中のラリーで勝利を挙げ、ファンを熱くさせてきた三菱ラリーアートが、いよいよ競技の世界に戻ってくる! 監督を務めるのは、2度にわたりダカールを制した増岡 浩氏だ。競技者としても一級の経歴を持つ氏に、三菱がワークス体制で競技に臨む意義を聞いた。

2022年の東京オートサロンで発表された「ヴィジョン ラリーアート コンセプト」。現行型「アウトランダー」のハイパフォーマンスバージョンといった趣で、ぜひ市販化してほしいモデルだ。
2022年の東京オートサロンで発表された「ヴィジョン ラリーアート コンセプト」。現行型「アウトランダー」のハイパフォーマンスバージョンといった趣で、ぜひ市販化してほしいモデルだ。拡大
チーム三菱ラリーアートは、2022年11月21日から26日にかけて開催される「アジアクロスカントリーラリー2022」に3台の「トライトン」で参戦。これが実質的なラリーアートの“復帰戦”となる。
チーム三菱ラリーアートは、2022年11月21日から26日にかけて開催される「アジアクロスカントリーラリー2022」に3台の「トライトン」で参戦。これが実質的なラリーアートの“復帰戦”となる。拡大
増岡氏へのインタビューは、三菱が開催したオフロード試乗会の合間をぬって実施。試乗会のプログラムには、アジアクロスカントリーラリーの競技車両開発に用いられた試験車の、同乗試乗も盛り込まれており、取材班もその実力の片りんに触れることができた。
増岡氏へのインタビューは、三菱が開催したオフロード試乗会の合間をぬって実施。試乗会のプログラムには、アジアクロスカントリーラリーの競技車両開発に用いられた試験車の、同乗試乗も盛り込まれており、取材班もその実力の片りんに触れることができた。拡大
試乗会に参加したメディアへ向け、ラリーアートの展望を語る増岡氏。復活後のラリーアートは、まずドレスアップ用品などの開発・販売からスタートし、今回いよいよラリー活動の再開を果たした。気の早い話だが、次のステップも気になるところだ。
試乗会に参加したメディアへ向け、ラリーアートの展望を語る増岡氏。復活後のラリーアートは、まずドレスアップ用品などの開発・販売からスタートし、今回いよいよラリー活動の再開を果たした。気の早い話だが、次のステップも気になるところだ。拡大

小さく産んで、大きく育てる

2020年に“三菱のスポーツブランド”としての復活を宣言。そして今年(2022年)のはじめには、東京オートサロンでコンセプトモデル「Vision Ralliart Concept(ヴィジョン ラリーアート コンセプト)」や、「アウトランダーPHEV」「エクリプス クロスPHEV」のアクセサリー装着車を発表したラリーアート。再始動したかつての三菱ワークスが、モータースポーツにおいても活動に本腰を入れ始めた。

皮切りとなるのが、ピックアップトラック「トライトン」で出場する「アジアクロスカントリーラリー2022」だ。この「チーム三菱ラリーアート」で総監督を務める増岡 浩氏に、ラリーアートの目指す未来について話をうかがった。

――今回のオフロード試乗会(参照)では、競技用トライトンの先行開発車両にも同乗させていただきました。日本でも久々に復帰を果たすようですが、とても素晴らしいピックアップトラックでした。

このトライトンが投入されるアジアクロスカントリーラリーを手始めに、ラリーアートはモータースポーツの舞台にも復帰するようですが、その目的はずばりなんなのでしょうか? どういう狙いがあるのですか?

増岡 浩さん(以下、増岡):われわれとしては、ここ数年ずっと「三菱らしさをどう表現するのか?」というテーマを持っていました。そしてその“らしさ”とはやはり「走り」であり、「運転しているときの楽しさ」だよね? ということを再認識したんです。三菱自動車にとってその頂点とはラリーアートであり、であれば“その活動”がなければならないだろうということで、ラリー活動を再開することにしました。

(用品事業のほうについては)現状はまだ、以前のようにエンジンや駆動系といった本格的な機能パーツまでは販売できないけれど、まずはラリーアートをスタートさせようと。朝のプレゼンテーションでもお話ししたのですが、「小さく産んで、大きく育てる」という考えです。そのためには確実にステップを踏んで、最終的にはお客さまに「ラリーアートってすごいな!」と思ってもらえるようにしたい。そう考えています。

三菱 の中古車

三菱とラリーアートを支える若い世代の成長

――ラリーアートは長い間、実質的な活動を停止していました。そして満を持しての復活となったわけですが、低迷したまま続けているよりも、心機一転が図れたのではないでしょうか?

増岡:そうですね。今ラリーアートは、三菱自動車のいろいろな部署の人間が兼任するかたちで、組織を再構築しています。これまでは別会社でしたが、今度は完全に社内です。そういう意味では、最終的に目指すところはクルマづくりです。現状はドレスアップパーツしか出せていないですが、機能部品はもちろん、将来的にはコンプリートカーをつくりたい! と思っています。

極端な言い方になるけれど、今日持ってきたようなラリーカーを市販したい。ラリーアートのクレジットでね。“パジェロ エボ”のときみたいに。

――今の若い人たちは、三菱のモータースポーツ活動を知らない世代です。社内の若い世代の人たちは、モータースポーツに関心を持っていますか?

増岡:社内にはいますよ。「モータースポーツやりたいか?」と尋ねれば、手を上げてくれる子たちがちゃんといます。だから、すごく今は、いい状態。「ウチのクルマは走って楽しくて、速くて安全で、そういうクルマだよね」という意思統一ができていて、同じベクトルにみんなで向かってる状態です。

ご存じのとおり、ここ数年でクルマが大きく様変わりしてますよね? エクリプス クロスやアウトランダーPHEVが、すごくよくなっていると思う。これらは、まさに若手を育てた結果なんです。三菱はちょうど、“世代が今変わるとき”なんですね。

ボクらも、もう還暦じゃない(笑)。今は若い人たちと一緒にたくさん仕事をして、いろいろ伝えている最中なんですよ。

――確かにZ世代をはじめとした世代と、われわれのようなクルマ好き世代は親和性が高いと思います。

増岡:そうですね。彼らは大事な次世代です。この人たちをきちんと育てながらね、三菱のスピリットを受け継いでもらいたいんです。エンジン開発をする人材も、シャシー開発をする人材も、そしてドライバーも。まさに今は、ラリーアートを復活させるには、ベストなタイミング。ちょうどいい時期だったんです。

会場には、増岡氏が2015年のバハ・ポルタグレでステアリングを握った「アウトランダーPHEV TE仕様」も展示されていた。
会場には、増岡氏が2015年のバハ・ポルタグレでステアリングを握った「アウトランダーPHEV TE仕様」も展示されていた。拡大
「アウトランダーPHEV TE仕様」は、市販のアウトランダーPHEVをベースにラリー向けのパワートレイン制御を採用するとともに、足まわりを刷新してサスペンションのストローク量と最低地上高をアップ。大径のタイヤを履かせたものだ。
「アウトランダーPHEV TE仕様」は、市販のアウトランダーPHEVをベースにラリー向けのパワートレイン制御を採用するとともに、足まわりを刷新してサスペンションのストローク量と最低地上高をアップ。大径のタイヤを履かせたものだ。拡大
増岡氏の言う“パジェロ エボ”とは、1997年に発売された「パジェロ エボリューション」のこと。改造制限が強化される1998年のダカールラリーの規定に対応したモデルで、通常のパジェロより足まわりを大幅に強化。最高出力280PSの3.5リッターV6 DOHCエンジンを搭載していた。
増岡氏の言う“パジェロ エボ”とは、1997年に発売された「パジェロ エボリューション」のこと。改造制限が強化される1998年のダカールラリーの規定に対応したモデルで、通常のパジェロより足まわりを大幅に強化。最高出力280PSの3.5リッターV6 DOHCエンジンを搭載していた。拡大
富士ヶ嶺オフロードの特設コースを走破する現行型「アウトランダー」。オン/オフを問わないその走りは、定評のあった従来型と比べても、長足の進化を遂げていた。
富士ヶ嶺オフロードの特設コースを走破する現行型「アウトランダー」。オン/オフを問わないその走りは、定評のあった従来型と比べても、長足の進化を遂げていた。拡大
思い入れのある2台のラリーカーを前に、当時の思い出や三菱がラリーに挑戦する意義について語る増岡氏。
思い入れのある2台のラリーカーを前に、当時の思い出や三菱がラリーに挑戦する意義について語る増岡氏。拡大
世界に先駆けて電気自動車「i-MiEV」を世に問うた三菱は、モータースポーツにも積極的に電動車で挑戦してきた。写真は米コロラド州で開催される「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」の2014年大会の様子。三菱はこの年、EV改造車クラスで優勝、総合でも2位、3位に入ってみせた。
世界に先駆けて電気自動車「i-MiEV」を世に問うた三菱は、モータースポーツにも積極的に電動車で挑戦してきた。写真は米コロラド州で開催される「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」の2014年大会の様子。三菱はこの年、EV改造車クラスで優勝、総合でも2位、3位に入ってみせた。拡大
三菱は、ジャンルを問わず世界中のラリーで勝利を挙げてきた。スピードラリーの最高峰、世界ラリー選手権では、1996~1999年までドライバーズタイトルを連覇。1998年にはマニュファクチャラーズタイトルにも輝いている。
三菱は、ジャンルを問わず世界中のラリーで勝利を挙げてきた。スピードラリーの最高峰、世界ラリー選手権では、1996~1999年までドライバーズタイトルを連覇。1998年にはマニュファクチャラーズタイトルにも輝いている。拡大
世界一過酷なモータースポーツと言われるダカールラリー。優勝回数12回という三菱の記録は、今も破られていない金字塔だ。
世界一過酷なモータースポーツと言われるダカールラリー。優勝回数12回という三菱の記録は、今も破られていない金字塔だ。拡大
ラリーにおける「アウトランダー」のポテンシャルを高く評価する増岡氏。アジアクロスカントリーラリーやバハ・ポルタグレなどで実際に同車のステアリングを握ってきた人物だけに、その言葉には説得力がある。
ラリーにおける「アウトランダー」のポテンシャルを高く評価する増岡氏。アジアクロスカントリーラリーやバハ・ポルタグレなどで実際に同車のステアリングを握ってきた人物だけに、その言葉には説得力がある。拡大
ラリーアートの展望に、後進育成の大切さ、三菱がワークス体制で競技に挑む意義と、さまざまな話を披露してくれた増岡氏。終始笑顔で取材に応じてくれた気さくさに、ダカール王者の人となりが表れていた。
ラリーアートの展望に、後進育成の大切さ、三菱がワークス体制で競技に挑む意義と、さまざまな話を披露してくれた増岡氏。終始笑顔で取材に応じてくれた気さくさに、ダカール王者の人となりが表れていた。拡大

もう一度、世界に三菱をアピールしたい

――先ほどもアウトランダーPHEVの話が出ましたが、ラリーアートとしての、電動化に対するアプローチはなにか考えておられますか?

増岡:もちろん。本当だったら、ラリー活動だってEVでやるべきですよ。ただ、今の三菱の状況を考えると、アジア圏での活動を一番にやる必要があります。だから、(アジア圏で好調な)トライトンでアジアクロスカントリーラリーに参戦するんです。これがもし「自由にやっていい」ということになったら、当然EVですごいラリーカーをつくります(笑)。

――では、そのイメージはもうできていたりするのですか?

増岡:もちろん。最終的には、グローバルでやりたいですよね。もう一度世界に、三菱自動車をアピールしたいです。

――もし理想のEVラリーカーで出場するなら、どのようなラリーになりますか? アドベンチャーラリーでしょうか、スピードラリーでしょうか。両者ではクルマに求められる性質も異なってくると思いますが。

増岡:ボクは、どちらも変わらないと思ってるの。ウチで言うと「ランサー」がスピードラリーで、パジェロがアドベンチャーラリーだったでしょ? それをミックスしたあたりにあるのが、サファリラリーかな? どれも、スタートから目的地に早く着くという意味では同じなんですよ。そしてどんな路面でも、どんな天候でも、確実に速く、目的地に安全に着けるクルマが必要。

今で言うと、アウトランダーが理想ですね。あのクルマはどこでも行けるし、走れるし、安定している。これが三菱の、今の最適解。雪道もオフロードも、そしてサーキットも走れる。きちんと曲がって、止まれます。

――私もアウトランダーPHEVには、たくさんのシチュエーションで試乗させていただきました(参照)。そこで感じたのは、やはりこれだけのポテンシャルを持つPHEVであれば、その走りを磨き上げてほしいということです。ぜひ、「ラリーアート仕様」の登場を期待しています。

増岡:そうですね。期待に応えられるように、がんばります!

――ありがとうございました。

(文=山田弘樹/写真=向後一宏、三菱自動車、webCG/編集=堀田剛資)

「三菱パジェロ 2002ダカールラリー優勝車」と増岡 浩氏。
「三菱パジェロ 2002ダカールラリー優勝車」と増岡 浩氏。拡大

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山田 弘樹

山田 弘樹

モータージャーナリスト。ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。

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