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日産キャラバンAUTECH(FR/7AT)

さわやかな風は湘南から 2022.10.31 試乗記 生方 聡 日産モータースポーツ&カスタマイズが、AUTECHブランドでリリースするカスタマイズモデル「キャラバンAUTECH」に試乗。仕事に遊びにと幅広いニーズに対応する“頼れる相棒”は、「プレミアムスポーティー」のコンセプトによっていかなる変貌を遂げたのか?

茅ヶ崎でAUTECHに乗る

単なる偶然か、それとも担当編集のSさんが仕組んだのか、日産キャラバンAUTECHをその生まれ故郷、茅ヶ崎で試乗している。

神奈川の茅ヶ崎といえば、湘南で人気の街。マリンスポーツが盛んであることに加えて、俳優の加山雄三さんや、サザンオールスターズの桑田佳祐さんの出身地として、その知名度はいまや全国区だ。

そんな茅ヶ崎にゆかりのあるブランドが、クルマ好きなら一度は耳にしたことがあるはずのAUTECH(オーテック)である。1986年に神奈川・茅ヶ崎に設立されたオーテックジャパンは、日産車をベースとするカスタマイズカーや福祉車両を手がける企業だ。

現在は日産のモータースポーツ活動を担ってきたニスモと合併し、日産モータースポーツ&カスタマイズ株式会社となったが、カスタマイズカーブランドとしてのAUTECHは続いていて、新会社の本社とオーテック事業部はいまも茅ヶ崎にある。

今回試乗したキャラバンAUTECHには、そうした地元茅ヶ崎への思いが込められているという。

2022年7月に登場した「日産キャラバン」のカスタムカー「キャラバンAUTECH」。仕事でもプライベートでも、こだわりの一台を求める人に向けて開発されたプレミアムモデルとうたわれる。
2022年7月に登場した「日産キャラバン」のカスタムカー「キャラバンAUTECH」。仕事でもプライベートでも、こだわりの一台を求める人に向けて開発されたプレミアムモデルとうたわれる。拡大
AUTECHブランド発祥の地である湘南・茅ヶ崎の海と空をイメージしたという、ブランドのアイコニックカラーであるブルーが用いられたエンブレム。
AUTECHブランド発祥の地である湘南・茅ヶ崎の海と空をイメージしたという、ブランドのアイコニックカラーであるブルーが用いられたエンブレム。拡大
AUTECHブランド車に共通するドットパターンのグリルやブルーのシグネチャーLED、シルバーのアクセント入りのプロテクターなどが採用されたフロントフェイス。
AUTECHブランド車に共通するドットパターンのグリルやブルーのシグネチャーLED、シルバーのアクセント入りのプロテクターなどが採用されたフロントフェイス。拡大
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ブルーを配したこだわりの内外装

キャラバンといえば、「トヨタ・ハイエース」と人気を二分する小型貨物車。仕事のためのクルマというイメージが強いが、高い機能性や優れた収納力を求めて、趣味のためのクルマとして手に入れる人も多いという。

そんなキャラバンを、スポーティーなエクステリアとスタイリッシュなインテリアにより魅力アップを図ったのが、キャラバンAUTECHである。今回の試乗車のベース車両は「キャラバン バン プレミアムGX」。「ダークブルー」「ダークメタルグレー」「ミッドナイトブラック」「ピュアホワイトパール」が用意されるボディーカラーのなかから、訴求色でもある深みのあるダークブルーが選択されていた。

ベース車両とは異なるきらびやかなラジエーターグリルには「AUTECH」のエンブレムが配され、さらにスポーツモデルのようなフロントリップやブルーのシグネチャーLEDを備えたフロントプロテクターが、フロントマスクの精悍(せいかん)さを際立たせている。専用デザインのアルミホイールや、オプションとして用意されているエアロパーツも、スポーティーな雰囲気づくりに一役買う。

一方、黒を基調としたインテリアでは、ステアリングホイールやシフトノブ、シートなどにブルーのステッチを施すことで、AUTECHブランド車らしさを表現。さらに、耐久性や耐水性に優れるレザレットシートなどが室内をスタイリッシュに彩っている。

ちなみに、シートのさざ波模様は茅ヶ崎の海をイメージしたもので、茅ヶ崎の海と空を象徴するオーテックブルーとともに、地元への愛が詰まっているのだ。

「キャラバンAUTECH」の運転席まわり。ステアリングホイールやシート、シフトノブなどにブランドのアイコニックカラーであるブルーを用いたステッチが施されている。
「キャラバンAUTECH」の運転席まわり。ステアリングホイールやシート、シフトノブなどにブランドのアイコニックカラーであるブルーを用いたステッチが施されている。拡大
フロントプロテクターに組み込まれたブルーに点灯するシグネチャーLED。ひと目でAUTECHブランド車であることがわかる、ベース車両にはない専用アイテムだ。
フロントプロテクターに組み込まれたブルーに点灯するシグネチャーLED。ひと目でAUTECHブランド車であることがわかる、ベース車両にはない専用アイテムだ。拡大
切削光輝タイプの「キャラバンAUTECH」専用15インチアルミホイール。試乗車には195/80R15サイズの「ヨコハマ・ブルーアースバンRY55」タイヤが装着されていた。
切削光輝タイプの「キャラバンAUTECH」専用15インチアルミホイール。試乗車には195/80R15サイズの「ヨコハマ・ブルーアースバンRY55」タイヤが装着されていた。拡大
「キャラバンAUTECH」の外板色は、同モデルのイメージカラーとされる写真の「ダークブルー」を含め、「ピュアホワイトパール」「ミッドナイトブラック」「ダークメタルグレー」の全4色が用意されている。
「キャラバンAUTECH」の外板色は、同モデルのイメージカラーとされる写真の「ダークブルー」を含め、「ピュアホワイトパール」「ミッドナイトブラック」「ダークメタルグレー」の全4色が用意されている。拡大

ラチエン通りから国道134号へ

キャラバンAUTECHには4ナンバーの「バン」と3ナンバーの「ワゴン」があり、今回は5人乗りバンを試乗した。バン仕様のエンジンとしては、2リッター直4ガソリンのQR20DEと2.4リッター直4ディーゼルターボの4N16が用意され、試乗車には後者が搭載されている。最高出力132PS、最大トルク370N・mを発生する4N16は、7段ATとの組み合わせ。後輪駆動または4WDが用意されるが、この車両は後輪駆動仕様である。

フロントドアを開けて運転席によじ登ると、ふだん接するSUVやミニバンよりも明らかにアイポイントが高い。フロントシート下にエンジンが収められ、ノーズがなく、フロントオーバーハングが短いぶん、運転席からの眺めは爽快だ。駐車場から出て、クルマ1台がやっとという細い道でも、全幅1695mmのボディーならラクに走れるのはうれしいところだ。

すぐに突き当たったのは、サザンの曲のタイトルにもある“ラチエン通り”。この道をキャラバンAUTECHで初めて走ることに縁を感じた。

“烏帽子岩”の方角に南下すると、海沿いの国道134号にたどり着く。ここから本格的に試乗をスタート。2.4リッターの直4ディーゼルターボエンジンは発進こそ力強さを感じるが、2000rpmあたりまではやや中だるみの印象。しかし、そこを超えると、再びディーゼルターボらしいトルクの太さを発揮し、4000rpmあたりまでそのパワフルな勢いが続く。

ブルーステッチ入りの本革巻きシフトノブや、「AUTECH」エンブレムが付くダークサテンクローム仕上げのセンタークラスターなどで、運転席まわりをドレスアップ。
ブルーステッチ入りの本革巻きシフトノブや、「AUTECH」エンブレムが付くダークサテンクローム仕上げのセンタークラスターなどで、運転席まわりをドレスアップ。拡大
「AUTECH」の刺しゅうやブルーのステッチが目を引くフロントシート。表皮には柔らかく耐久性や耐水性にも優れたレザレットが用いられている。水滴や汚れが拭きやすく、手入れも簡単だという。
「AUTECH」の刺しゅうやブルーのステッチが目を引くフロントシート。表皮には柔らかく耐久性や耐水性にも優れたレザレットが用いられている。水滴や汚れが拭きやすく、手入れも簡単だという。拡大
50:50の分割可倒機構とリクライニング機構が備わるリアシート。表皮の模様は海面の波の動きをモチーフにしたものと紹介されている。
50:50の分割可倒機構とリクライニング機構が備わるリアシート。表皮の模様は海面の波の動きをモチーフにしたものと紹介されている。拡大
今回の試乗車に装備されていたはさみ込み防止機能付きワンタッチオートスライドドアは、10万1200円のオプションアイテム。
今回の試乗車に装備されていたはさみ込み防止機能付きワンタッチオートスライドドアは、10万1200円のオプションアイテム。拡大

あくまで機能優先

運転席のすぐ下にエンジンが搭載されることもあり、エンジンが発するノイズや振動は明らかに大きめ。たまたまその前後に輸入SUVのディーゼルエンジン仕様に乗っていたので、そのギャップには驚くばかりで、ヨーロッパ車のクリーンディーゼルエンジンの進化をあらためて実感させられたのは余談である。

キャラバンAUTECHの走りは、乗り心地は想像と違って硬さはないものの、一般道でもピッチング方向の動きが大きく、慣れるのに時間がかかった。目地段差を越えたときのショックもやや大きめで、これを長時間運転するのはひと仕事である。

一方、荷室の広さには驚くばかり。全長が4695mmでありながら、後席使用時の荷室奥行きは1.8m以上もあり、その後席を畳めば床面長は2.4m近くになる。ホイールハウスの張り出しが少なく、高さもある荷室は、サーフボードでもマウンテンバイクでも何でもこいとばかりに余裕たっぷり。流行の車中泊も楽勝である。

後席はヘッドルーム、ニールームともに十分なスペースが確保されるが、前にエンジンルームがあるため足を前に伸ばすことができず、意外に窮屈だ。しかし、たくさん荷物を詰め込むという、このクルマ本来の機能を優先させたことを考えれば、十分納得のいく話。そんなプロの道具であっても、茅ヶ崎の海と空とを思い浮かべながら、穏やかな気分でドライブできるのが、このキャラバンAUTECHのいいところである。

(文=生方 聡/写真=神村 聖/編集=櫻井健一)

「キャラバンAUTECH」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4695×1695×1990mm、ホイールベース=2555mm。四隅の感覚がつかみやすく全幅も1.7m以下なので、狭い道での運転もさほど苦にならなかった。
「キャラバンAUTECH」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4695×1695×1990mm、ホイールベース=2555mm。四隅の感覚がつかみやすく全幅も1.7m以下なので、狭い道での運転もさほど苦にならなかった。拡大
小型貨物車4ナンバーバンクラストップとなる3050mmの荷室長や、1520mmの室内幅、1325mmの室内高などゆとりある空間が「キャラバン」の自慢。
小型貨物車4ナンバーバンクラストップとなる3050mmの荷室長や、1520mmの室内幅、1325mmの室内高などゆとりある空間が「キャラバン」の自慢。拡大
ルーフスポイラーは、サイドシルプロテクターやリアアンダープロテクターとセットで17万1600円の有償オプションとなる「エアロパッケージ」に含まれるアイテム。
ルーフスポイラーは、サイドシルプロテクターやリアアンダープロテクターとセットで17万1600円の有償オプションとなる「エアロパッケージ」に含まれるアイテム。拡大
2000rpm以上の回転域で力強い加速を体感させる2.4リッターの直4ディーゼルターボエンジン。7段化されたATにより、100km/h巡行時のエンジン回転数は従来型よりも400rpmほど下がり、約1850rpmとなっていた。
2000rpm以上の回転域で力強い加速を体感させる2.4リッターの直4ディーゼルターボエンジン。7段化されたATにより、100km/h巡行時のエンジン回転数は従来型よりも400rpmほど下がり、約1850rpmとなっていた。拡大

テスト車のデータ

日産キャラバンAUTECH

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4695×1695×1990mm
ホイールベース:2555mm
車重:2000kg
駆動方式:FR
エンジン:2.4リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:132PS(97kW)/3250rpm
最大トルク:370N・m(37.7kgf・m)/2000rpm
タイヤ:(前)195/80R15 107/105N LT/(後)195/80R15 107/105N LT(ヨコハマ・ブルーアースバンRY55)
燃費:11.3km/リッター(WLTCモード)
価格:422万0700円/テスト車=484万1228円
オプション装備:エアロパッケージ(17万1600円)/ワンタッチオートスライドドア<はさみ込み防止機能付き>(10万1200円) ※以下、販売店オプション ナビレコパック(27万9968円)/AUTECH専用フロアカーペット(1万8480円)/フロアカーペット<リア>(1万1000円)/ナンバープレートリム<AUTECHエンブレム付き>(2750円)/防水ラゲッジマット(3万0250円)/ナンバープレートロック<AUTECHロゴステッカー付き>(5280円)

テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:1289km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(6)/山岳路(0)
テスト距離:251.8km
使用燃料:27.4リッター(軽油)
参考燃費:9.2km/リッター(満タン法)/11.8km/リッター(車載燃費計計測値)

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日産キャラバンAUTECH
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生方 聡

生方 聡

モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースレポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。

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