スバル・フォレスターSTI Sport(4WD/CVT)
STIの面目躍如 2022.12.05 試乗記 「スバル・フォレスター」にSTIの手になるスポーティーグレード「STI Sport」が登場。足まわりに専用のダンパーを装着した六連星のミドルクラスSUVは、「現行モデルではこれがベストバイ!」と言えるほどに、バランスのとれた走りを実現していた。最大の特徴はやっぱり“アシ”
「STI Sport」と聞けば、スバリスト垂涎(すいぜん)のSTI謹製コンプリートカーを思い浮かべるかもしれないが、さにあらず。スバルのラインでつくられるいちグレードとなる。ちなみに直近でSTI Sportが設定されているのは「レヴォーグ」「WRX S4」「インプレッサスポーツ」の3モデル。と、そこに第4弾として加わったのがフォレスターだ。
STI Sportの意匠的な特徴は、モデルごとに統一された共通項がなく示すのが難しい。強いて言えばグリルやモールなどの加飾類が黒フィニッシュであること、前後にチェリーレッドのSTIエンブレムが配されることくらいだろうか。対して内装には、シート表皮やオーナメント、メーターなどに赤系の差し色が用いられている。
共通項として乗り味に直結するのは、専用セッティングのサスペンションだ。レヴォーグとWRX S4はZF製の電子制御可変ダンパーを用いて統合的にチューニングが施される。インプレッサは前側に機械式の「SFRDダンパー」を用い、後ろ側はそれに減衰特性が合わせ込まれている。フォレスターの場合もインプレッサと同じで、電子制御可変機能は持ち合わせていない。低コストでシンプルな構造というところが、フォレスターの用途と相性がいいという判断だったのだろう。
SFRDダンパーはホンダ系サプライヤーの旧ショーワが開発したもので、現在はケーヒンやニッシンと統合されてできた日立アステモが供給している。小さなストローク用と大きなストローク用に別々の油圧経路を持っていて、それを入力時のオイル流量によって切り替えながら作動させるという仕組みだ。大入力時にはしっかり姿勢を抑え、少入力時には細かな上下動にもしっかり応答する……と、2つの顔を使い分ける。
キャパ不足の1.8リッターターボに物申す
一方で、コイルやスタビ、ブッシュなどは基準車と同じ。インプレッサのSTI Sportはタイヤが専用サイズとなるが、フォレスターについては他グレードと同じ、18インチのオールシーズンタイヤ(スノーフレークマーク無し)を履く。同じ製造工程で他と異なるダンパーを入れる、その最低限の手間でどれだけ乗り味の付加価値を高められるかがSTI Sportのポイントということになるだろうか。
個人的にはスバルのなかで最もSUV色の強い銘柄であるフォレスターに、STI絡みのグレードなんかいるわけ? という気はしなくもない。が、パイの大きな車種ゆえ、なかにはオンロード志向のユーザーもいるのだろう。それでも最低地上高は他グレードと同じ220mmが確保されているあたりにスバルの意地も見え隠れする。単純に大径タイヤのシャコタンでお手盛りにスポーツ感を演じるのではなく、フォレスターの素性をゆがめることなくスポーティネスを高めようということだろう。
フォレスターSTI Sportの価格は363万円。同じ1.8リッター直噴ターボを搭載する「スポーツ」に対して27万5000円高い。それでくだんの専用チューニングダンパーやナッパレザーを用いた本革シートなどが付いてくるとあらば、パワー&ドライブトレインはツルシのまんまといえども仕方ないかとは思う。
が、やっぱりケチをつけてしまうのはそのフィーリングだ。エンジンは低回転域からしっかりトルクが立ち上がりCVTの食いつきもよく、走り始めにはおっと思わせる余裕と質感を感じさせてくれた。が、そこからちょっと力強い加速を得ようとすると、エンジンの回転数がせわしなく跳ね上がる。スバルのCVTは熟成を重ねていわゆるラバーバンド感を苦心して抑えてきたが、いかんせん主力の1.8リッター直噴ターボは、アウトバックやフォレスターとの組み合わせではさすがにキャパ不足の感がある。アメリカでは2.5リッター自然吸気ユニットが主力となっているが、出力特性的にも燃費的にも、そちらのほうがフォレスターとは相性がいいのではないかと思う。
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現行フォレスターのベストバイ
本題の足まわりについてだが、現行フォレスターは特に低中速域での乗り心地にあまりいい印象がなかったが、STI Sportはそのネガを見事に払拭(ふっしょく)していた。舗装の粗さによってめまぐるしく変わるザラ・ビリ系のノイズ、マンホールや路面修復痕を乗り越えてのゴツ・ガツ系の跳ね返しなどを、総じて奇麗に受け止めて、しっかり丸め込んでくれる。首都高のジョイント的な段差の突き上げもほとんど気にならない。
この低中速域での上質感が、高速・高負荷域にシームレスに受け継がれているのもフォレスターSTI Sportの美点だ。巡航時には四肢をしっかり路面につけた接地感の高い乗り味が頼もしく、山岳路のワインディングではロールを適切に抑えつつも突っ張り感はない、きちんと操縦実感を伝えてくるハンドリングが印象的だ。タイヤがオールシーズンということで過信は禁物だが、急な腰砕けや滑り出しといったクセもなく、誰もが安心して気持ちよく走れる仕立てになっていると思う。
ともあれ、ダンパー構造とそのチューニングだけでよくここまで動的質感を引っ張り上げたものだと思う。恐らくは悪路走破性や耐久性への影響もなし……という前提ならば、あるいは無彩色しか用意されていないボディーカラーが我慢できるなら、フォレスターのベストグレードは間違いなくこれだろう。
そして今回思わぬ気づきとなったのは、アイサイトの追従クルーズコントロールの出来のよさだ。単に「タイムラグを極力抑えて前走車にきっちりついていく」というだけではなく、前方の微妙な速度変化に応じて、なるべくテールランプをともさないようにギリギリの減速Gを保ちながら車間を制御している。作動の確実性という領域はもちろん、作動の質感や周囲への影響というステップですでにスバルが鍛磨していることが伝わってくる、お見事な仕事ぶりだった。
(文=渡辺敏史/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
スバル・フォレスターSTI Sport
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4640×1815×1715mm
ホイールベース:2670mm
車重:1570kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.8リッター水平対向4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:177PS(130kW)/5200-5600rpm
最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/1600-3600rpm
タイヤ:(前)225/55R18 98H M+S/(後)225/55R18 98H M+S(ファルケン・ジークスZE001 A/S)
燃費:13.6km/リッター(WLTCモード)/16.5km/リッター(JC08モード)
価格:363万円/テスト車=378万4000円
オプション装備:ボディーカラー<クリスタルホワイト・パール>(3万3000円)/アイサイトセイフティプラス(6万6000円)/パワーリアゲート(5万5000円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:1147km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(5)/山岳路(1)
テスト距離:281.5km
使用燃料:26.8リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:10.5km/リッター(満タン法)/11.5km/リッター(車載燃費計計測値)
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渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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