トヨタ・プリウス プロトタイプ<1.8リッター>(FF/CVT)/プリウス プロトタイプ<1.8リッター>(4WD/CVT)/プリウス プロトタイプ<2リッター>(FF/CVT)/プリウス プロトタイプ<2リッター>(4WD/CVT)
帰ってきたトヨタの顔 2022.12.22 試乗記 これまでのイメージを一変させる、衝撃的なルックスで登場した新型「トヨタ・プリウス」。では、その走りの質はどうなのか? 発売に先駆けて、パワーユニットや駆動方式の異なるプロトタイプでチェックした。大物だって変わらなきゃ
2022年11月中旬、ここ日本にてワールドプレミアとなった新型プリウス。なんといっても驚かされたのは大胆なプロポーションだ。
クルマというよりテック系を思わせるロジカルでストレートなプレスカンファレンスのプレゼンターを務めたのが、トヨタデザインの統括部長であるサイモン・ハンフリーズ氏だったことからもわかるとおり、5代目となるプリウスの第1の売りはデザインだ。
ディテールを見るに、直近のトヨタデザインのキーとなっているハンマーヘッドシャーク調の顔面に始まり、ボンネット、Aピラーからルーフトップへと一直線につながりながらリア側へとワンモーションの弧を描きつつ、ふくよかな前後フェンダーアーチとともにウエストの絞り感を強めてグラマラスな側面を形成。大幅にキャラクターラインを整理しシンプルな塊で見せる造形へと移行したことがわかる。
そして第2の売りは、走りの良さ。これはエンジニアのコメントうんぬんから推測される開発のポイントということにはなるが、デザインと走りという2点をもって、選ばれて愛されるオーナーカーとしての魅力を際立たせるという。この話は、プリウスのコモディティー化をむしろ受け入れようとする豊田章男社長の意向に対する開発陣のレジスタンスとして、プレスカンファレンスの場でも象徴的に取り上げられていた。
周知のとおり、現在のトヨタの販売を支えるのはハイブリッド車だ。2021年のトヨタ&レクサスブランドの年間販売台数が約960万台。そのうちの約260万台をハイブリッドが占めている。日本市場では約136万台中、約56万台がハイブリッドと、もはや2台に1台をうかがおうかという数だ。初代プリウスの登場から四半世紀でこれほどの勢力となったわけだから、海外勢が折につけBEV推しのゲームチェンジを仕掛けてくるのもむべなるかなである。
そのうえ、プリウスの四方には今やさまざまなハイブリッドモデルがある。燃費ホルダーとしての役割は既に「ヤリス」や「アクア」に押さえられ、ユーティリティーでは「カローラ ツーリング」や「ノア/ヴォクシー」にはかなわずと、内ゲバのみならず敵陣にも「e:HEV」や「e-POWER」が配備された。そのなかでプリウスはどこに存在意義を見いだすのか。トヨタの葛藤もよくわかる。
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空力性能は退化した!?
そんなこんなで対面した新型プリウス。その存在感は、やはりただならぬものだった。乗用車としては破格にぶっ飛んだ、でも全体の印象としては紛れもなくプリウス。うまいことやったもんだなあと思う。が、見た目の先進感とは裏腹に、空気抵抗係数のCd値は前型より0.03ポイント高い0.27となっている。
最大の理由はルーフのトップポイントを後退させたことによる上方向のエアフローだ。2~4代目のフォルムは、空気と親和させる理由があったところを、新型ではデザインのために思い切って変更したという。そのぶん、前面投影面積を小さくすることで、(前面投影面積も加味した)CdA値としては先代に限りなく近づけているそうだ。
デザインという点では、195/50R19というタイヤも意匠側の要望に加えて、前面投影面積や転がり抵抗の低減という双方の利から採用されたもの。供給元はブリヂストンとヨコハマで、ブリヂストンの側はBMWの「i3」用に供給していたタイヤに用いられたテクノロジー「オロジック」をプリウス用として採用している。
発売前の事前取材という位置づけだった今回の機会では、グレード構成やメカニズム的な詳細、価格等は発表されなかったが、搭載されるパワートレインは3種類が用意されることは判明している。ベーシックな1.8リッター4気筒ハイブリッドとスポーティーな位置づけとなる2リッター4気筒ハイブリッド、そして2リッター4気筒ハイブリッドのモーター出力を高めて前型より50%以上EV走行での航続距離を延ばしたプラグインハイブリッドという顔ぶれだ。うち、今回は1.8リッターハイブリッドと2リッターハイブリッドという、2023年1月中旬から販売開始予定の2バリエーションを短時間ながら試乗した。プラグインハイブリッドは2023年の春ごろの発売を予定しているという。
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「走りのよさ」にウソはない
外形から推察するに、乗降性や視認性はいかがなものかと心配していたが、いざ乗り込んでみると前席の足入れや頭まわりの窮屈さは思ったほどには感じない。プラットフォームは真っ先にTNGA化された先代をリファインしているが、フロントカウルが若干高く感じられるのは窓繰りとAピラーの角度ゆえだろう。後席は身長181cmの自分からしてみると、乗降性や頭上側方まわりの広さは前型よりも劣る印象だが、デザインに納得できるなら我慢できる範疇(はんちゅう)でもある。ただし、後部や後側方の見切りはさすがに厳しく、そのあたりはカメラに頼ることになるだろうか。
1.8リッターハイブリッドはエンジンこそ先代の「2ZR-FXE」ユニットを継承するも、電気システム関係は全面刷新され、バッテリーもリチウムイオンを採用している。要は現行のノア/ヴォクシーのアーキテクチャーをベースにプリウス用にキャリブレーションされているかたちだ。システム最高出力は先代より18PS大きい140PS。0-100km/h加速も1秒ほど短縮され9.3秒と、動力性能を高めている。
走り始めてすぐにわかるのはモーターの可動域が広がり、加速の要求にもエンジンの回転上昇をなるべく抑えて応えようという出力マネジメントだ。ペダルがオルガン式になったおかげで、自らのアクセルワークで静かに加速を引き出そうという微妙な操作をこなしやすくなったのも進化のポイントのひとつだろう。減速の側も電動サーボの作動制御が緻密化され、ブレーキの微妙な踏み加減に対しても減速力がリニアに追従するようになっている。先代と乗り比べてみると、この速度コントロール性や静粛性、加えて足まわりの精度感や低速域からの動きのよさといったところに、新型の美点がみてとれた。
プリウスより高負荷に対応した「C-HR」のサスアームなどをうまく使いながらワイドトレッド化と支持剛性向上を図り、フレーム側も前まわりの曲げ剛性を15%高めて操舵応答性を高めたというハンドリングもまた、新型の大きな特徴だ。この点、リアモーターをパワーアップするとともに最高速付近まで作動するようにマネジメントも変更された4WDシステム「E-Four」では、顕著に後軸の蹴り出しを体感できる。新型プリウスにおいて四駆は運動性能の向上という点でもひとつの武器といえるだろう。
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新鮮味のある2リッター車
2リッターハイブリッドのほうは、高速燃焼のダイナミックフォースユニットとなる「M20A-FXS」を軸に構成されたパワートレインで、システム最高出力は190PS、0-100km/h加速7.5秒となる。その動力性能はホットハッチとまでは言わずとも、いち乗用車としてみても相当速い部類に入るだろう。
パワーの乗りはかなりのもので、富士スピードウェイのショートサーキットでは、それを使い切るというよりも速さを持て余す場面も現れるほどに力強い。とあらば、195幅のタイヤでは心もとなさも感じそうだが、ボディーコントロールの制御は自然できめ細かく、トルクステアも現れずと、運動性能は丁寧に煮詰められている。なるほど、この力感は確かにプリウスに新しい魅力を与えてくれる。
燃費的なデータはまだ公表されていないが、エンジニアにねちねち聞いてみたところ、1.8リッターは先代と同等、2リッターは1.8リッターよりやや劣るが、高速巡航を多用するなどの使い方しだいではその差は縮まるのではないかということだった。フットワーク的には1.8リッターの上質で穏やかな乗り味も捨てがたいのに対して、2リッターのキビキビサクサク感こそが新型の新型たるゆえんということになるだろう。
そして価格もまた未定ながら、1.8リッターについては先代とかけ離れることのないところにおさめたいということだから、アクアやヤリス、カローラ ツーリングとは一線を画する動的質感の対価としては高くはないことになるだろう。ちなみに新型プリウスではAC100V・1500Wのアウトレットと車外にコードを引き出すための窓枠アタッチメントも標準装備になるという。環境性能だけではない社会的使命をいかに果たしていくかという点においても、プリウスはやはりトヨタの総代的な存在であることを再認識する。
(文=渡辺敏史/写真=トヨタ自動車、webCG/編集=関 顕也)
スタイリッシュな新型「トヨタ・プリウス」 乗ってみたらどうだった?
テスト車のデータ
トヨタ・プリウス プロトタイプ(1.8リッターFF車)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4600×1780×1430mm
ホイールベース:2750mm
車重:--kg
駆動方式:FF
エンジン:1.8リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:--PS(--kW)/--rpm
エンジン最大トルク:--N・m(--kgf・m)/--rpm
モーター最高出力:--PS(--kW)
モーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
システム最高出力:140PS(103kW)
タイヤ:(前)195/60R17 90H/(後)195/60R17 90H(ヨコハマ・ブルーアースFE)
燃費:--km/リッター
価格:--円
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:87km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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トヨタ・プリウス プロトタイプ(1.8リッター4WD車)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4600×1780×1430mm
ホイールベース:2750mm
車重:--kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.8リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:--PS(--kW)/--rpm
エンジン最大トルク:--N・m(--kgf・m)/--rpm
フロントモーター最高出力:--PS(--kW)
フロントモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
リアモーター最高出力:--PS(--kW)
リアモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
システム最高出力:140PS(103kW)
タイヤ:(前)195/60R17 90H/(後)195/60R17 90H(ヨコハマ・ブルーアースFE)
燃費:--km/リッター
価格:--円
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:914km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
トヨタ・プリウス プロトタイプ(2リッターFF車)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4600×1780×1430mm
ホイールベース:2750mm
車重:--kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:--PS(--kW)/--rpm
エンジン最大トルク:--N・m(--kgf・m)/--rpm
モーター最高出力:--PS(--kW)
モーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
システム最高出力:196PS(144kW)
タイヤ:(前)195/50R19 88H/(後)195/50R19 88H(ヨコハマ・ブルーアースGT)
燃費:--km/リッター
価格:--円
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:101km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
トヨタ・プリウス プロトタイプ(2リッター4WD車)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4600×1780×1430mm
ホイールベース:2750mm
車重:--kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:--PS(--kW)/--rpm
エンジン最大トルク:--N・m(--kgf・m)/--rpm
フロントモーター最高出力:--PS(--kW)
フロントモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
リアモーター最高出力:--PS(--kW)
リアモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
システム最高出力:196PS(144kW)
タイヤ:(前)195/50R19 88H/(後)195/50R19 88H(ヨコハマ・ブルーアースGT)
燃費:--km/リッター
価格:--円
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:121km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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