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海外でも人気を博すコダワリのコンパクトクロスオーバー

【徹底解説】新型スバル・クロストレック 2023.04.14 ニューモデルSHOWCASE 佐野 弘宗 取り回しのしやすいボディーサイズに、スバルならではの質の高い走り、先進運転支援システム(ADAS)「アイサイト」の採用と、さまざまな魅力が詰まった「スバル・クロストレック」。その特徴を、グレード構成や装備、価格、燃費性能と、全方位的に徹底解説する。
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今や本家「インプレッサ」を超える人気者に

スバル・クロストレックは、日本でこれまで「XV」と呼ばれてきたクロスオーバーSUVの後継機種である。エクステリアやインテリアの基本デザインを同世代の「インプレッサ」と共有するという手法も、XV時代と変わりない。

スバルのXVといえば、2010年に国内で発売された3代目インプレッサの派生モデル「インプレッサXV」が元祖。続く2012年には4代目インプレッサをベースとした2代目が登場して、このモデルからXVという独立機種あつかいとなった。ちなみに北米では、このモデルから「XVクロストレック」という車名が与えられている。

新型クロストレックは、始祖であるインプレッサXVから数えて4世代目にあたる。これまでは日本以外にも豪州や欧州でXVを名乗っていたが、今回を機にグローバルで商品名をクロストレックに統一したというわけだ。この車名は“クロスオーバー”と“トレッキング”を組み合わせた造語で、「カジュアルなトレッキングシューズのように、街なかからアウトドアまでシーンを選ばず、どんな場所にもマッチするクルマ」といった意味が込められているという。

クロストレックとインプレッサは、スバルの自社製モデルとしてはもっともコンパクトで手ごろなエントリー商品である。両車は今回も基本的に同じ開発チームで、ほぼ同時並行で開発されたという。

クローバルでの販売台数は、インプレッサから独立した最初のモデル=先々代の時点ですでにインプレッサをおよそ6:4の比率で上回っていたが、その差は年を追うごとに拡大。先代におけるXV/クロストレックのグローバル販売台数は、インプレッサの5倍以上になっているらしい。

それでも、わが日本市場では伝統的なハッチバック/セダンのインプレッサの人気がまだ比較的高かったが、傾向としてはグローバルの流れと同じ。日本自動車販売協会連合会が公表している「乗用車ブランド通称名別」の登録台数は、XVとインプレッサをひとくくりにして“インプレッサ”として公表しているので分かりにくいが、先代の実績では、日本でもXVの販売台数のほうが多くなっているそうだ。

2022年9月に初公開、同年12月に発売された「スバル・クロストレック」。既存の「XV」の後継を担うモデルで、「インプレッサ」をベースとしたコンパクトクロスオーバーというキャラクターは変わらない。
2022年9月に初公開、同年12月に発売された「スバル・クロストレック」。既存の「XV」の後継を担うモデルで、「インプレッサ」をベースとしたコンパクトクロスオーバーというキャラクターは変わらない。拡大
インテリアについては、豪華さよりも機能性の高さ、そして「遊びに出かけたくなるようなデザイン」を重視。操作系のあつかいやすさと、充実した収納スペースも自慢だ。
インテリアについては、豪華さよりも機能性の高さ、そして「遊びに出かけたくなるようなデザイン」を重視。操作系のあつかいやすさと、充実した収納スペースも自慢だ。拡大
スバル独自のADAS(先進運転支援システム)「アイサイト」に関しては、センサーに初めて広角単眼カメラを追加。交差点の右左折時に、横断歩道を渡る歩行者や自転車なども検知できるようになった。(写真:向後一宏)
スバル独自のADAS(先進運転支援システム)「アイサイト」に関しては、センサーに初めて広角単眼カメラを追加。交差点の右左折時に、横断歩道を渡る歩行者や自転車なども検知できるようになった。(写真:向後一宏)拡大
「インプレッサ」の派生モデルとして登場した「XV/クロストレック」だが、今や両者の立場は逆転。その流れはリリースの順番にも表れており、現行モデルではインプレッサよりも先にクロストレックが発表・発売されることとなった。
「インプレッサ」の派生モデルとして登場した「XV/クロストレック」だが、今や両者の立場は逆転。その流れはリリースの順番にも表れており、現行モデルではインプレッサよりも先にクロストレックが発表・発売されることとなった。拡大
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【ラインナップ】
1.6リッターモデルを廃止し、新たにFFを設定

国内におけるクロストレックのラインナップはシンプルだ。パワーユニットは北米では排気量2リッター、ないし2.5リッターの純エンジン車も用意されるが、国内では「e-BOXER」を名乗る2リッターハイブリッドのみ。

つまり、先代XVにあった1.6リッターの純エンジン車は廃止となった。そのかわり……という意味もあってか、これまでなかったFF(2代目以降のXVは4WDのみ)を追加して、同グレードの4WDより22万円安い価格設定としている。

装備グレードについては、従来の「S」や「L」「アドバンス」といった区分けにかえて、手ごろな「ツーリング」と上級の「リミテッド」という2グレード構成となった。さらに、どちらのグレードにもFFと4WDがあるので、仕様の選択肢は都合4種類となるが、いずれにしても先代よりは選択肢は明らかに減った。

上級仕様のリミテッドは、ツーリングに対して、大径18インチホイールやステアリング連動のフルLEDヘッドライト、そして内外装のダークグレーメッキ加飾などが追加されるほか、11.6インチの縦型センターディスプレイ、ADASの追加機能、電動シートなどが標準装備される。

【主要諸元】

グレード名   ツーリング ツーリング リミテッド リミテッド
基本情報 新車価格 266万2000円 288万2000円 306万9000円 328万9000円
駆動方式 FF 4WD FF 4WD
動力分類 ハイブリッド ハイブリッド ハイブリッド ハイブリッド
トランスミッション CVT CVT CVT CVT
乗車定員 5名 5名 5名 5名
WLTCモード燃費(km/リッター) 16.4 15.8 16.4 15.8
最小回転半径 5.4m 5.4m 5.4m 5.4m
エンジン 形式 水平対向4気筒DOHC 水平対向4気筒DOHC 水平対向4気筒DOHC 水平対向4気筒DOHC
排気量 1995cc 1995cc 1995cc 1995cc
最高出力 (kW[PS]/rpm) 107[145]/6000 107[145]/6000 107[145]/6000 107[145]/6000
最高トルク (N・m[kgf・m]/rpm) 188[19.2]/4000 188[19.2]/4000 188[19.2]/4000 188[19.2]/4000
過給機 なし なし なし なし
燃料 レギュラー レギュラー レギュラー レギュラー
モーター 最高出力 (kW[PS]) 10[13.6] 10[13.6] 10[13.6] 10[13.6]
最高トルク (N・m[kgf・m]) 65[6.6] 65[6.6] 65[6.6] 65[6.6]
寸法・重量 全長 4480mm 4480mm 4480mm 4480mm
全幅 1800mm 1800mm 1800mm 1800mm
全高 1575mm 1575mm 1575mm 1575mm
ホイールベース 2670mm 2670mm 2670mm 2670mm
車両重量 1540kg 1590kg 1560kg 1610kg
タイヤ 前輪サイズ 225/60R17 225/60R17 225/55R18 225/55R18
後輪サイズ 225/60R17 225/60R17 225/55R18 225/55R18
グレードは「ツーリング」と「リミテッド」の2種類。ツーリングはエントリーグレードにあたるが、「アイサイト」やLEDヘッドランプ、悪路走行をアシストする「X-MODE」(4WD車のみ)などが標準装備となる。
グレードは「ツーリング」と「リミテッド」の2種類。ツーリングはエントリーグレードにあたるが、「アイサイト」やLEDヘッドランプ、悪路走行をアシストする「X-MODE」(4WD車のみ)などが標準装備となる。拡大
インテリアでは装飾類やインフォテインメントシステムなどを省くことで価格を抑えている。撮影車両は11.6インチディスプレイやピアノブラックのシフトパネル、本革巻きシフトレバーなどを備えているが、これらはいずれもオプション装備だ。
インテリアでは装飾類やインフォテインメントシステムなどを省くことで価格を抑えている。撮影車両は11.6インチディスプレイやピアノブラックのシフトパネル、本革巻きシフトレバーなどを備えているが、これらはいずれもオプション装備だ。拡大
「ツーリング」に装備される、シルバーステッチの入ったトリコット表皮のシート。「クロストレック」のシートは、乗員の骨盤をしっかり支えて頭の揺れを抑えることと、万が一の事故の際に、むち打ち傷害を軽減することを重視して設計されている。
「ツーリング」に装備される、シルバーステッチの入ったトリコット表皮のシート。「クロストレック」のシートは、乗員の骨盤をしっかり支えて頭の揺れを抑えることと、万が一の事故の際に、むち打ち傷害を軽減することを重視して設計されている。拡大
上級グレードの「リミテッド」。外装における「ツーリング」とのちがいは控えめで、ツートンの18インチアルミホイールが最大の特徴となっている。
上級グレードの「リミテッド」。外装における「ツーリング」とのちがいは控えめで、ツートンの18インチアルミホイールが最大の特徴となっている。拡大
インテリアにはピアノブラックやシルバーの装飾類、大型ディスプレイ+インフォテインメントシステムなどを標準で採用。アルミパッドつきスポーツペダルは「リミテッド」の専用装備で、「ツーリング」ではオプションでも選べない。
インテリアにはピアノブラックやシルバーの装飾類、大型ディスプレイ+インフォテインメントシステムなどを標準で採用。アルミパッドつきスポーツペダルは「リミテッド」の専用装備で、「ツーリング」ではオプションでも選べない。拡大
シート表皮はシルバーステッチ入りのファブリックで、前席には電動調整機構を装備。なお「リミテッド」「ツーリング」ともに、本革シートやフロントシートヒーターがオプションで用意される。
シート表皮はシルバーステッチ入りのファブリックで、前席には電動調整機構を装備。なお「リミテッド」「ツーリング」ともに、本革シートやフロントシートヒーターがオプションで用意される。拡大
テールゲートに装着される「SYMMETRICAL AWD」のバッジ。長らく駆動方式は4WDのみだった「XV」だが、新型にあたる「クロストレック」では、およそ11年ぶりにFF仕様が復活することとなった。
テールゲートに装着される「SYMMETRICAL AWD」のバッジ。長らく駆動方式は4WDのみだった「XV」だが、新型にあたる「クロストレック」では、およそ11年ぶりにFF仕様が復活することとなった。拡大

【パワートレイン/ドライブトレイン】
「e-BOXER」は基本的に従来モデルを踏襲

新型クロストレックのパワートレインは、先述のように従来の1.6リッターが姿を消して、2リッターのe-BOXERのみに統一。そのかわりかどうかはともかく、従来どおりの4WDに加えてFFも用意された。変速機は従来どおりの「リニアトロニック」、すなわちチェーン駆動のCVT一択である。

e-BOXERの仕組みを見ると、エンジンと変速機の間に最高出力13.6PS、最大トルク65N・mという比較的低出力のモーターを挟み込み、駆動アシストや回生充電を担わせるというもの。機構的にはパラレル方式のハイブリッドとなる。

核となるボクサーエンジン=2リッター水平対向4気筒直噴ユニットの最高出力と最大トルクは、145PS/6000rpmと188N・m/4000rpm。前記のモーター性能や荷室下に搭載されるリチウムイオン電池の容量(4.8Ah)、そしてシステム電圧(118V)など、数値で表されるパワートレイン関連の性能値はほぼすべて、先代や「フォレスター」用のそれから変わっていない。

e-BOXERの駆動主体はあくまでエンジンなので、走行感覚はいわゆるマイルドハイブリッドに近い。ただし、e-BOXERは変速機とモーターの間に加えてモーターとエンジンの間にもクラッチを備えており、低負荷走行時にはモーターとエンジンを切り離してモーターのみによるEV走行も可能なのが、通常のマイルドハイブリッドとのちがいだ。しかしシリーズハイブリッド走行はできない仕組みなので、EV走行の範囲はあくまで限定的ではある。

このように新型クロストレックのe-BOXERは、基本構造や、数値で表現できる基本的性能は既存のそれと変わりない。しかし、高剛性液封エンジンマウントの採用や、オイルパンの改良によるクランクシャフト付近の剛性アップ、CVTの振動・フリクション低減、エンジン始動時の回転数やクラッチ制御の見直しなどで、これまでよりスムーズな走行感覚を得ているという。また、燃費も先代のe-BOXERと比較すると、同じ4WDの比較で15.0km/リッターから15.8km/リッターへと改善。新規追加されたFFの燃費は16.4km/リッターとなっている(数値はすべてWLTCモード)。

パワートレインは基本的に従来型と共通だが、よりスムーズな走りを実現すべく各部を改良。エンジン始動時のショックの軽減や、回生ブレーキの最適化による“カックンブレーキ”の抑制などを図っている。
パワートレインは基本的に従来型と共通だが、よりスムーズな走りを実現すべく各部を改良。エンジン始動時のショックの軽減や、回生ブレーキの最適化による“カックンブレーキ”の抑制などを図っている。拡大
モーターはCVTに内蔵されており、プライマリープーリーから動力を伝達。バッテリーはラゲッジスペースの床下に搭載されており、車内空間への干渉を極力抑えている。
モーターはCVTに内蔵されており、プライマリープーリーから動力を伝達。バッテリーはラゲッジスペースの床下に搭載されており、車内空間への干渉を極力抑えている。拡大
走りに関する装備は充実しており、例えばハンドルから手を離さずに変速操作が可能となるシフトパドルは、駆動方式やグレードを問わず、全車に採用される。
走りに関する装備は充実しており、例えばハンドルから手を離さずに変速操作が可能となるシフトパドルは、駆動方式やグレードを問わず、全車に採用される。拡大
「インテリジェントモード」と「スポーツモード」の2種類から走行モードを選べる「SI-DRIVE」。これも全車に標準で搭載されている。
「インテリジェントモード」と「スポーツモード」の2種類から走行モードを選べる「SI-DRIVE」。これも全車に標準で搭載されている。拡大
路面状況に合わせてパワートレイン制御の切り替えが可能な「X-MODE」。悪路での運転を支援するもので、ヒルディセントコントロール機能も備わる。グレードを問わず、4WD車に標準装備される。
路面状況に合わせてパワートレイン制御の切り替えが可能な「X-MODE」。悪路での運転を支援するもので、ヒルディセントコントロール機能も備わる。グレードを問わず、4WD車に標準装備される。拡大

【ボディーサイズ/デザイン】
これまでと変わらぬボディーサイズに見る“最適解”

先代のXV(インプレッサも含む)は、今日における自社製スバル車に共通の土台となっている「スバルグローバルプラットフォーム(SGP)」を、最初に採用したクルマだった。その後、SGPはフォレスター、「レヴォーグ」「WRX」「アウトバック」に採用されて一巡した。

新型クロストレックの車体は、全長が4480mm、全幅が1800mm、全高はシャークフィンアンテナやルーフレールを省略すれば1550mmという“立体駐車場対応”サイズで、シャークフィンアンテナつきは1575mm、ルーフレールをつけると1580mmとなる。いずれにしても、先代と比較して全長は5mm短く、全幅はまったく同寸、全高もほぼ同等。2670mmというホイールベースや200mmという最低地上高も変わっていない。

こうしたディメンションに加えて、新型クロストレックもSGPを土台としていることから、一部には「これはビッグマイナーチェンジでは?」との声があるのも事実だ。しかし、SGPはもともとシリーズ開発として、プラットフォームそのものが各モデルの開発ごとにアップデートされていく設計思想である。よって新型クロストレックには、構造用接着剤の塗布範囲拡大や、サブフレームおよびフロントシートの取り付け剛性強化、フルインナーフレーム構造の導入、デュアルピニオン式パワーステアリングおよび電動ブレーキブースターの採用など、その後の開発で得られた知見や新技術がすべて投入されている。とくにフルインナーフレーム構造を採用したということは、少なくとも上屋設計は先代とは別物である。これは掛け値なしのフルモデルチェンジというべきだろう。

先代からサイズを大きく変えていないのは、このコンパクトさこそがXV/クロストレックの商品性のキモであり、メイン市場の北米を含めて、サイズアップの要望はほとんどなかったからだそうだ。

いっぽうで、デザインについては「控えめすぎる」との声があったという。それもあって新型クロストレックでは、尻上がりのベルトラインと、逆にリアに向けて下降していくルーフラインの組み合わせで躍動的な前傾姿勢を表現。フェイスデザインやホイールアーチ、ルーフレールなどでにぎやかなガジェット感を演出している。

従来モデルから基本的なフォルムは踏襲しつつ、よりダイナミックさを増したエクステリア。空力性能も向上しており、走行安定性や燃費性能の改善に寄与している。
従来モデルから基本的なフォルムは踏襲しつつ、よりダイナミックさを増したエクステリア。空力性能も向上しており、走行安定性や燃費性能の改善に寄与している。拡大
ヘッドランプは「ツーリング」(上)ではハイ/ロービームのみLED式なのに対し、「リミテッド」(下)ではポジションランプやウインカーもLED式となるほか、“目頭”の部分にはLEDコーナリングランプが装備される。
ヘッドランプは「ツーリング」(上)ではハイ/ロービームのみLED式なのに対し、「リミテッド」(下)ではポジションランプやウインカーもLED式となるほか、“目頭”の部分にはLEDコーナリングランプが装備される。拡大
ホイールサイズは「ツーリング」(左)が17インチなのに対し、「リミテッド」は18インチ。デザインも、前者はダークメタリックのモノトーンだが、後者はそこに切削光輝加工を施したツートンとなっている。
ホイールサイズは「ツーリング」(左)が17インチなのに対し、「リミテッド」は18インチ。デザインも、前者はダークメタリックのモノトーンだが、後者はそこに切削光輝加工を施したツートンとなっている。拡大
ルーフレールやグリルバー、ドアミラーカバーの色もグレードによって異なり、「ツーリング」はブラック、「リミテッド」(写真)はダークグレーとなる。
ルーフレールやグリルバー、ドアミラーカバーの色もグレードによって異なり、「ツーリング」はブラック、「リミテッド」(写真)はダークグレーとなる。拡大
ボディーカラーは写真の9種類で、青系の色が多いのが特徴。グレードによって選べない色などはない。
ボディーカラーは写真の9種類で、青系の色が多いのが特徴。グレードによって選べない色などはない。拡大

【インテリア/荷室/装備】
端々に見る細かな改良・改善の跡

インテリアデザインはまったく新しい。11.6インチの縦型センターディスプレイ(リミテッドに標準、ツーリングはメーカーオプション設定)を中心としたレイアウトはいかにも最新のスバルらしい。ただ、メーターパネルがフル液晶ではなくアナログ式となるのは、安価なエントリーモデルゆえだろう。

新型クロストレックでは「頭部の揺れの低減」をテーマに疲れにくい走りを追求しており、そのためにフロントシートやシートレールを新設計したほか、静粛対策も徹底。さらに、スタイリッシュなプロポーションとしつつも、前方や斜め後方の視界は先代と同等レベルを確保したという。

プラットフォームの基本構造や車体サイズ、ホイールベースなどは先代をほぼ踏襲するだけに、室内空間も先代とほぼ同等……というか、絞り込まれたキャビンや下降するルーフライン、新開発フロントシートなどの影響もあってか、後席ヘッドルームや前後ショルダールーム、荷室容量などはわずかに狭くなっている。

もっとも、実際の使い勝手が大きく後退したわけではない。室内寸法の縮小はわずかだし、荷室はフル乗車時の容量こそ先代より25リッター小さい315リッターとなったものの、マウンテンバイク(前輪を外して積む)2台、82リッターのスーツケース3個、ゴルフバッグ3個といったリアルな積載性能は先代と同等レベルを維持している。また、リアドアを開けたときのサイドシルプレートなどは、ルーフレール上の荷物の積み下ろし作業をしやすいよう、踏み台としての安定性を高めた形状にするなどの工夫を施している。

最新の11.6インチ縦型ディスプレイは、レヴォーグやWRX、アウトバックに引き続いての採用だが、今回から内蔵ナビゲーション機能が強化されたほか、スマホとの連携も進化している。とくに「Android Auto」使用時の表示がこれまで上半分までだったのが全画面表示となり、より操作性を向上させた点は、当該スマホユーザーには朗報だ。

縦型のセンターディスプレイを中心としたダッシュボードまわりの造形は、現行型「レガシィ」(日本未導入)に端を発する、今日のスバル車ではおなじみのもの。広々とした視界と見切りのよさは、今も昔も変わらないスバル車の美点だ。
縦型のセンターディスプレイを中心としたダッシュボードまわりの造形は、現行型「レガシィ」(日本未導入)に端を発する、今日のスバル車ではおなじみのもの。広々とした視界と見切りのよさは、今も昔も変わらないスバル車の美点だ。拡大
メーターパネルは全車共通で、機械式の速度計とエンジン回転計に、4.2インチのマルチインフォメーションディスプレイの組み合わせだ。(写真:向後一宏)
メーターパネルは全車共通で、機械式の速度計とエンジン回転計に、4.2インチのマルチインフォメーションディスプレイの組み合わせだ。(写真:向後一宏)拡大
「クロストレック」では、従来モデル「XV」より後席のショルダールーム(-7mm)やヘッドルーム(-11mm)が若干縮小している。従来モデルのオーナーは、実車に触れて確認することをお勧めする。(写真:向後一宏)
「クロストレック」では、従来モデル「XV」より後席のショルダールーム(-7mm)やヘッドルーム(-11mm)が若干縮小している。従来モデルのオーナーは、実車に触れて確認することをお勧めする。(写真:向後一宏)拡大
荷室については、VDA計測による容量は315リッター、フロア長は814mm(2人乗車時で1591mm)、フロア幅(ホイールベース間)は1090mm、荷室高は708mmとなっている。従来モデルと比べ、後席格納時のフロア長や荷室高が、若干低下している。
荷室については、VDA計測による容量は315リッター、フロア長は814mm(2人乗車時で1591mm)、フロア幅(ホイールベース間)は1090mm、荷室高は708mmとなっている。従来モデルと比べ、後席格納時のフロア長や荷室高が、若干低下している。拡大

【バイヤーズガイド】
オプションを個別に盛るぐらいなら……

新型クロストレックの価格はもっとも安価なFFのツーリングで266万2000円。220万円のスタート価格だった先代XVと比較すると、ずいぶん値上がりしているのは事実だが、ツーリングが4WDでもなんとか200万円台におさめられているのは評価したい。

FFと4WDの価格差は先述のとおり22万円で、ツーリングとリミテッドの価格差は40万7000円である。ツーリングとリミテッドを比較すると、この価格差で、内外装の各部にダークメッキ加飾が追加され、ホイールが大径化し(17インチ→18インチ)、フルLEDヘッドライトやアルミペダル、フロントのパワーシートが標準装備となり、シート表皮が少し豪華になる。

このほかにも、リミテッドでは11.6インチ縦型センターディスプレイや、ADAS「アイサイト」の追加機能(アダプティブヘッドライト、デジタルマルチビューモニター、ドライバーモニタリングシステムなど)などが装備されるほか、コネクテッドサービス「スターリンク」にも標準で対応する。また先代XVでは、一部グレードの4WD車で路面に応じて走破性を高める「X-MODE」が省かれたりもしていたが、新型クロストレックでは両グレードともX-MODEを標準装備する。

細かい加飾装備以外の大半の機能装備は、安価なツーリングにもメーカーオプションで追加することは可能だが、それらをすべてトッピングするなら、最初からリミテッドを選んだほうがお得である。少なくとも、11.6インチの縦型センターディスプレイは内装デザイン的にも追加したいところだが、そこにADAS機能をフルで引き出す「アイサイトセイフティプラス」を加えようとすると、実際にはルーフレールや電動シート、前席シートヒーター/ステアリングヒーターなどもすべて抱き合わせで注文するしかない設定になっているのが少しもどかしい。

個人的には、よほど硬派なアウトドア趣味をお持ちでなければ、上級グレードのリミテッドをあえてFFで乗るのが、意外にお買い得なチョイスと思う。最低地上高が200mmあるので、普段使いで遭遇する程度の不整路ならほとんど困らないからだ。また、サンルーフ派のみなさんは、電動サンルーフが選べるのが上級のリミテッドのみとなっている点も要注意である。

(文=佐野弘宗/写真=スバル、向後一宏、webCG/編集=堀田剛資)

上級グレードより40万7000円も安い「ツーリング」。その状態でも機能・装備はそこそこ充実しているが、内装に関してはご覧のとおりの素っ気なさだ。
上級グレードより40万7000円も安い「ツーリング」。その状態でも機能・装備はそこそこ充実しているが、内装に関してはご覧のとおりの素っ気なさだ。拡大
安全装備や運転支援システムに関するちがいとしては、アダプティブドライビングビームやデジタルマルチビューモニター(写真)、ドライバーモニタリングシステムが、「ツーリング」ではオプションあつかい、「リミテッド」では標準装備となる。
安全装備や運転支援システムに関するちがいとしては、アダプティブドライビングビームやデジタルマルチビューモニター(写真)、ドライバーモニタリングシステムが、「ツーリング」ではオプションあつかい、「リミテッド」では標準装備となる。拡大
「スターリンク」とは、スバルが提供するコネクテッドサービスのこと。リコールなどの重要情報が自動で案内されるほか、ソフトウエアのアップデートにも対応。有償となるが、先進事故自動通報や、24時間のオペレーターサービス、遠隔での施錠/解錠や車載ナビへの目的地送信が可能なリモートサービスなども用意されている。
「スターリンク」とは、スバルが提供するコネクテッドサービスのこと。リコールなどの重要情報が自動で案内されるほか、ソフトウエアのアップデートにも対応。有償となるが、先進事故自動通報や、24時間のオペレーターサービス、遠隔での施錠/解錠や車載ナビへの目的地送信が可能なリモートサービスなども用意されている。拡大
電動開閉式のガラスサンルーフ。「リミテッド」のみにオプション設定される。
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装備の充実度や価格とのバランスを考えると、オススメは「リミテッド」のFF車。スバルファンのみなさんが4WDを好むのは承知のうえだが、ぜひご一考を。
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佐野 弘宗

佐野 弘宗

自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。

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