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価格もすっかりスーパーカー! 3000万円の「GT-R」はアリなのか?

2023.04.24 デイリーコラム 清水 草一

本気なのか? と疑いたくなる

今回の「GT-R」の価格、特に「NISMOスペシャルエディション」の2915万円という数字を見て、同時にふたつの思いが湧いた。

ひとつは、「さすがに調子に乗りすぎじゃないの」というまっとうな(?)もので、もうひとつは正反対の、「こういうのはむしろ、高ければ高いほどいいのかも!」だった。

実際のところ、GT-Rの2024年モデルは瞬時に売り切れた。販売方法はディーラーに委ねられたが、基本的には抽選で、競争率は平均数十倍、一部グレードでは100倍を超えたともいわれる。ここまでくると、ポケモンカードの販売日に並ぶ列に近い気がしてくる。レアものが当たればもうけモン! という。

私は2580万円で中古の「フェラーリ458イタリア」を購入したことがあるが、GT-Rの2915万円は、いくらなんでも高いと感じる。なぜなら、ベースグレード(1375万円)に対して、トップグレードの価格が2倍以上という例は記憶にないからだ。

フェラーリを例に挙げると、「488GTB」が3070万円からで、「488ピスタ」は4036万円。それくらいがこれまでの常識だったので、GT-Rの価格設定は「本気!?」と思ってしまう。

しかし今の世の中、バカ高いと感じるものほど取り合いになっている。世の中が狂っているようにも思えるが、現実を否定した瞬間に、その者は敗北者にならざるを得ない。

いろいろ考えれば考えるほど、GT-Rというクルマは、ユニコーン的な存在だ。

2023年1月にお披露目された、「日産GT-R」の2024年モデル。なかでも写真の「NISMOスペシャルエディション」は、2915万円という極めて高額な値札をつける。
2023年1月にお披露目された、「日産GT-R」の2024年モデル。なかでも写真の「NISMOスペシャルエディション」は、2915万円という極めて高額な値札をつける。拡大
「日産GT-R」の“極み”とうたわれる2024年モデルは、上下に2分割されたグリルなど、外観にも大きく手が入れられた。写真の「プレミアムエディションT-spec」の価格は1896万0700円。
「日産GT-R」の“極み”とうたわれる2024年モデルは、上下に2分割されたグリルなど、外観にも大きく手が入れられた。写真の「プレミアムエディションT-spec」の価格は1896万0700円。拡大
NISMO仕様のモデルには、専用の「カーボンバックバケットシート」が装着される。
NISMO仕様のモデルには、専用の「カーボンバックバケットシート」が装着される。拡大
大きなウイングが目を引く「NISMOスペシャルエディション」のリアまわり。
大きなウイングが目を引く「NISMOスペシャルエディション」のリアまわり。拡大
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とてつもない快挙ではある

2007年のGT-R登場時の価格は、たったの777万円だった。それでも従来の「スカイラインGT-R」に比べてあまりにも高いということで、「GT-Rは俺たちを捨てて富裕層ビジネスに走った」と、庶民派カーマニアの怒りを買った。私は「パフォーマンスを考えれば777万円は激安!」と思ったが、GT-Rの価値は、あくまでその点にあった。つまり、激安じゃなければ意味がないはずだった。

そういうクルマが、登場から16年後の今日、正価2915万円を掲げ、それに対して何十倍(未確認情報です)もの注文があったのだ。2915万円は、「ポルシェ911 GT3」のベースグレードよりもかなり高く、「911 GT3 RS」よりわずかに安い。2915万円のGT-R NSMOスペシャルエディションは、911 GT3 RSに匹敵するパフォーマンスを持っていると推測されるが、価格はほぼ同じだから、激安でもなんでもない。

つまり、激安スーパーカーから出発したGT-Rが、16年後、一度もフルモデルチェンジを受けることなく、ポルシェのトップモデルに肩を並べたのだ。これはとてつもない快挙であり、想像を絶する登り竜ぶりというしかない。

ただ、私が気になっているのは、この異常人気、どうやら日本だけの現象らしい……という点だ。

GT-Rは昨年、欧州の販売から撤退したが、その前からほとんど売れなくなっていたし、アメリカでもここ数年、大きく販売台数を落としている。GT-Rは、かつてはアメリカが最大市場だったが、2022年の販売台数は2ケタにとどまった。やっぱり、フルモデルチェンジなしに値上げが続いたのが原因だろうか。米自動車誌は、NISMOの価格に対して、「天文学的」と皮肉交じりに報じている。

ところが本国では、2020年モデルのビッグマイナーチェンジ以来人気が大復活。「ニッポンの至宝の生産が間もなく終わる」という焦燥も重なって、値上げをものともせず、2022年は732台を売った。それでも2022年モデルまでは、先着順で買えたのだから、かわいいモンだったわけですが。

2915万円は、間違いなく天文学的な値段だ。しかしそれでも日本では、狂ったように注文が殺到した。常識は敗れ、GT-Rが勝った。そしていつのまにかポルシェに並んだのだ。これは日本製品として、近来まれに見る快挙かもしれない。

このブーム、海外にも飛び火しないもんだろうか。ポケモンカードのように。ちなみに一枚30円のポケモンカードは、海外で約6億円の値をつけたものがあるという。やっぱり世の中狂ってる!

(文=清水草一/写真=日産自動車、ポルシェ、webCG/編集=関 顕也)

2007年10月に登場した「日産GT-R」。初期モデル(写真)のスタート価格は、現在のものよりおよそ600万円安い777万円だった。
2007年10月に登場した「日産GT-R」。初期モデル(写真)のスタート価格は、現在のものよりおよそ600万円安い777万円だった。拡大
2915万円という「GT-R NISMOスペシャルエディション」の価格は、「ポルシェ911」のラインナップで言えば、写真の「911 GT3 RS」(3134万円)や「911ターボS」(3074万円)、「911ターボ」(2627万円)などが近い。
2915万円という「GT-R NISMOスペシャルエディション」の価格は、「ポルシェ911」のラインナップで言えば、写真の「911 GT3 RS」(3134万円)や「911ターボS」(3074万円)、「911ターボ」(2627万円)などが近い。拡大
価格の面では「911 GT3 RS」に迫らんとする「GT-R」。600PSの最高出力は、911 GT3 RSのそれ(525PS)を上回る。
価格の面では「911 GT3 RS」に迫らんとする「GT-R」。600PSの最高出力は、911 GT3 RSのそれ(525PS)を上回る。拡大
「日産GT-R」の2024年モデルは、2023年4月下旬に発売される。「トラックエディションengineered by NISMO」を含めたNISMOチューンのモデルは、同年夏の発売が予定されている。
「日産GT-R」の2024年モデルは、2023年4月下旬に発売される。「トラックエディションengineered by NISMO」を含めたNISMOチューンのモデルは、同年夏の発売が予定されている。拡大
清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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